特集

NPPV療法の適応や設定モード、マスクフィッティングのコツとは?

NPPV療法の適応や設定モード、マスクフィッティングのコツとは? メイン

NPPV(非侵襲的陽圧換気)療法は気管挿管を行わず、マスクを介して行う人工呼吸療法です。一般的に在宅では、夜間にNPPVを行い、換気改善を図り、QOLを改善する効果が期待できます。NPPVの適応疾患や効果、設定項目や換気モード、マスクフィッティングなど基礎知識を分かりやすく解説します。

NPPV(非侵襲的陽圧換気)とは

NPPVは、挿管下人工呼吸(IPPV:侵襲的陽圧換気)に比べて非侵襲的ですが、患者さんにとっては陽圧による不快とマスク使用による不快などがあり、完全に非侵襲的とはいえません。IPPVと比較したNPPVのメリットとデメリットを表1に示します。患者さんがNPPVの必要性を理解し、自らNPPVに取り組むことが不可欠となり、アドヒアランスの維持が重要な看護となります。

表1 IPPVと比較したNPPVとメリット・デメリット

IPPVと比較したNPPVとメリット・デメリット

在宅NPPVの適応はⅡ型呼吸不全が中心

在宅NPPVの導入が適応となる病態は、高二酸化炭素血症を伴うⅡ型呼吸不全が中心となります。NPPVの効果は以下のとおりです。

  • 呼吸仕事量の軽減
  • 酸素化の改善
  • 換気の改善
  • 夜間睡眠呼吸障害の是正
  • 呼吸調節系のリセッティング(呼吸調節系:NPPVによりPaCO2が低くなると呼吸調節系がより低いPaCO2を維持する)

表2には在宅NPPVの対象となる主な疾患別にエビデンスレベルと推奨度をまとめました。

表2 在宅NPPVの対象となる主な疾患別エビデンスレベルと推奨度

在宅NPPVの対象となる主な疾患別エビデンスレベルと推奨度

文献1)を参考に作成(同文献のエビデンスレベル、推奨度についてはMindsの評価法が基本とされている)

NPPVの設定項目(図1)

IPAPとEPAP

吸気時にかける圧をIPAP(inspiratory positive airway pressure:吸気圧)、呼気時にかける圧をEPAP(expiratory positive airway pressure:呼気圧)、IPAPとEPAPの圧格差をプレッシャーサポート(pressure support:PS)といいます。IPAPを上げてPSが高いほど換気補助が大きくなります。PSには呼吸仕事量の軽減、吸気呼吸筋疲労の軽減、PaCO2の改善(PaCO2を下げる)といった効果があります。

EPAP

狭窄した気管や虚脱した肺胞を開き、酸素化を改善します。内因性PEEPが発生している場合、過膨張を防ぎつつ吸気トリガー感度を改善し、静脈還流量の減少により心負荷の軽減を図ります。

ライズタイム

気道内圧がEPAPからIPAPに到達するまでにかかる時間のことです。一般的に、閉塞性換気障害で0.05~0.1秒、拘束性胸郭疾患は0.1~0.2秒程度に設定します。

図1 NPPVの設定項目と効果

NPPVの設定項目と効果

在宅NPPVの換気モード

ここではS(spontaneous)モード、T(timed)モード、S/T(spontaneous/timed)モード、VAPS(volume assured pressure support)モード、Auto EPAPについて解説します(図2、3)。

Sモード

患者さんの自発呼吸に合わせて、吸気時にIPAP、呼気時にEPAPが入り換気を補助します。自発呼吸がない場合は換気を補助しないため、在宅NPPVではS/TモードやVAPSモードが多く使用されています。

Tモード

設定された呼吸回数で強制換気を行うモードで、自発呼吸に同期しません。

S/Tモード

SモードとTモードを合わせたものです。自発呼吸に合わせて換気を補助し、自発呼吸を感知できない場合は、設定された呼吸回数に切り替えるバックアップ換気が入ります。

VAPSモード

SモードやS/Tモードなどの固定圧モードに、目標換気量を維持するように設定した最大サポート圧(PS max)と最小サポート圧(PS min)の間でPSが変動するモードです。目標換気量の設定は、機種により一回換気量か、肺胞換気量か異なります。固定圧で、治療効果がみられない場合や圧の不快が強い場合などに使用されます。

VAPSモードの注意点として、リークが換気量に換算されてIPAPが上昇しないことがあるため、リークを最小限にする必要があります。

図2 在宅NPPVで使用する主な換気モード

在宅NPPVで使用する主な換気モード

Ti min(最小吸気時間)は、IPAPを供給する時間の下限。頻呼吸で吸気時間が短い場合、IPAP時間を確保する。
Ti max(最大吸気時間)はIPAPを供給する時間の上限。リークで吸気終了が検出できない場合、必要以上にIPAPが長引くことを防ぐ。また、COPD患者さんの場合、吸気終末に吸気流速が減弱しにくく、吸気終末が感知されにくいため適切な設定が必要。

Auto EPAP(図3)

睡眠時の上気道閉塞により換気が不十分な場合、最大EPAP圧(EPAPmax)と最小EPAP圧(EPAPmin)の設定範囲内で変動するAuto EPAPを併用します。睡眠中にEPAPが上昇しますので陽圧の苦痛を感じることなく気道閉塞を改善し換気量を上げることができます。VAPSモードで目標換気量が満たない場合は、PS minとPS maxの設定範囲内でIPAPも上昇します。

図3 Auto EPAP

Auto EPAP

NPPVマスクは適切な種類とサイズを選択

在宅NPPVでは、フルフェイスマスク(鼻口マスク)を使用することが多いです。表3にフェイスマスクのメリットとデメリットを示します。

また、フルフェイスマスクには、鼻口全体を覆うOver-The-Noseタイプと鼻根部を覆わないUnder-The-Noseタイプがあります(図4)。Under-The-Noseタイプは、鼻根部にマスクが当たらないので褥瘡予防になり、眼鏡をかけることもできます。

表3 フルフェイスマスク(鼻口マスク)のメリット・デメリット

フルフェイスマスク(鼻口マスク)のメリット・デメリット

図4 NPPVマスクの種類

NPPVマスクの種類

マスクやマスクの固定に使うヘッドギアには、それぞれいくつかのサイズがあります。サイジングゲージを使って、患者さんに適したサイズを選定します。サイジングゲージがない時は、軽く開口してもらった状態で、以下の点を確認します。

  • マスクが目に当たらない
  • マスクに圧迫されて鼻孔が閉塞しない
  • マスクより口角がはみ出さない
  • 少し開口しても下唇がはみ出さない

リークが少なくゆるいフィッティングが必要

マスクフィッティングの是非が、NPPVの効果とアドヒアランスの維持、在宅でのNPPV継続に大きく影響します。ポイントはリークが少なく、かつゆるいフィッティングです。患者さんは、入院中に適切なマスクフィッティングを学び退院しますが、在宅に帰るとリークを気にしてベルトをきつく締めたり、マスクの位置がずれてしまった状態で装着したりすることがあります。

医療者はマスクフィッティングの基本とコツ、リークの原因を理解しておくことが重要です。ここではマスクフィッティングのポイントをお伝えします。

マスクのシリコン部にしわがないか

鼻根部に当たるシリコン部にしわが寄らないように、シリコン部の形を整えて、軽く顔に当てます。シリコンにしわがあるとリークの原因になるためです(図5)。また、フルフェイスマスクの場合、下顎あるいは正面からマスクを当てることがポイントです(図6)。

図5 シリコン部にしわをつくらない

シリコン部にしわをつくらない

図6 フルフェイスマスクの当て方

フルフェイスマスクの当て方

顔の真正面、もしくはし下顎からマスクを当てる。マスクを上側(頭側)からスライドするように当ててしまうと、ひだが鼻に突き刺さり発赤が生じたり、しわができリークにつながったりする。

ヘッドギアを締めすぎていないか

ヘッドギアは指が1~2本入る程度に余裕をもたせ、きつく締めすぎないようにします(図7)。

図7 ヘッドギアを締めすぎない

ヘッドギアを締めすぎない

マスクの位置は適切か

マスクの位置が顔面の正中にあること、ヘッドギアが左右対称、上下平行となっていることを確認します(図8)。前からだけでなく、後ろもチェックしましょう。

図8 フルフェイスマスクやヘッドギアの正しい位置

エアクッションの有無の確認
マスクと皮膚の間に指1本分のゆとりをもたせることも大切。

エアクッションは機能しているか(図9)

フルフェイルスマスクは、マスクのフラップと内側のクッション部分に空気が入り込むこと(エアクッション)でより顔面にフィットします。マスクを強く締めつけず、IPAP時にエアクッションができるように調整します。

図9 エアクッションの有無の確認

エアクッションの有無の確認

IPAPの時にマスクのシリコン部分(斜線部)が膨らみ、マスクが顔面から少し浮く感じになるとよい。

アーム調整できるマスクの場合

アーム調整ができるマスクの場合は、額とマスクの間を一番あけた位置から電源を入れたときに眼側のリークが消失する位置までゆっくり締めていきます。

リークへの対応

リークには2種類ある

リークにはインテンショナルリーク(意図的リーク)とアンインテンショナルリーク(非意図的リーク)があります(図10)。

インテンショナルリークは、マスク内に貯留した呼気に含まれるCO2を排気するためのリークで、必要不可欠なリークです。CO2は呼気排出孔(呼気ポート)から出ますので、呼気ポートは絶対に塞いではいけません。

アンインテンショナルリークはマスクと皮膚の隙間や回路の途中から出るリークです。不要なリークのため、できるだけ少なくすることが大切です。

なお、リークはモニター上に示されます。表示方法はトータルリークとペイシェントリークがあり、どちらを表示するかは機種によって異なります。トータルリークはインテンショナルリークとアンインテンショナルリークを合わせたもの、ペイシェントリークはアンインテンショナルリークと同じです。使用している機種の表示を確認し、許容リーク量を超えないようにしましょう。

例えば、V60 ベンチレータ(フィリップス・レスピロニクス合同会社)やVivo50(チェスト株式会社)はトータルリークが表示され、許容リーク量は60L/分以下です。NIPネーザルV-E(レスメド株式会社)はペイシェントリークが表示され、24L/分以下です。

※「NIPネーザル」は、レスメド株式会社の商標登録です。

特にアンインテンショナルリークの量が多いと、吸気トリガーエラーを引き起こし、非同調をきたします。患者さんの苦痛につながるだけでなく、酸素化や換気効率を悪化させるため、マスクフィッティングの技術がカギとなります。また、一回換気量によって患者さんへの影響も異なるため、リークの数値のみにとらわれるのではなく、同調性などを観察し、できるだけリーク量を少なくすることが大切です。

図10 2種類のリーク

2種類のリーク

リークの原因をアセスメントし対処

リークの原因には、マスクフィッティングの不備(マスクのずれやベルトの緩みなど)だけでなく、回路や機器の異常、気道閉塞や無呼吸などがあります(表4)。

リークがあるとベルトをきつく締めがちですが、きつく締めすぎることでエアクッションを消失し、よりリークが起こってしまいます。医療者が適切なマスクフィッティングの方法を理解し、ゆるいマスクフィッティングに慣れること、リーク出現時にはベルトをすぐに締めるのではなく、なぜリークが起こっているのか原因をアセスメントし対処することが重要です。具体的な対処法については、次回ご説明します。

表4 リークの原因の例

リークの原因の例



監修・執筆:竹川 幸恵
地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター
呼吸ケアセンター 副センター長
慢性疾患看護専門看護師

監修:森下 裕
地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター
呼吸ケアセンター センター長

編集:株式会社照林社

【参考文献】
1)日本呼吸器学会NPPVガイドライン作成委員会.『NPPV(非侵襲的陽圧換気療法)ガイドライン 改訂第2版』.東京,南江堂,2015.
〇石原英樹,竹川幸恵編.『医師・ナースのためのNPPVまるごと事典』.大阪,メディカ出版,2019.

この記事を閲覧した方にオススメ

× 会員登録する(無料) ログインはこちら