特集

元気をもらえるエピソード【つたえたい訪問看護の話】第2回vol01

元気をもらえるエピソード【つたえたい訪問看護の話】

訪問看護の現場では、疾患や障害などがある中でも懸命に前向きに生きる利用者さんがたくさんいます。「みんなの訪問看護アワード2024」に投稿されたエピソードから、利用者さんの前向きな姿勢に力を分けてもらえるエピソードをご紹介します。

「私の恩師」

100歳の利用者さんが最期まで笑顔で過ごすことができた心温まるエピソード。

訪問看護師になりたての私は深呼吸をして玄関の扉を開けた。
入浴介助をしたら「100歳の体を見てどうするんだ」と怒られた。
突然、化粧を頼まれ「私が死んだ時に写真を仏壇の壁に並べて貼ってね。Hの生き様って筆で題名を書いておくから」と笑みをこぼした。
数ヶ月後、心不全が悪化し救急搬送され救急外来の医師より「数時間で亡くなります」と説明を受けた。
約40年入退院した病院でたくさんのスタッフに囲まれ「後、死ぬばかりだしもう来ないからお元気で」と笑顔で握手をしていた。自宅に戻ると安らかな表情に変わった。私は涙が止まらなかった。
伝えたい気持ちで胸がいっぱいになり手を握り「みんな、いますからね」と。ただ“ありがとう”って言葉が“さようなら”をするようで言えなかった。
ふと目を開けた。私を見て「ありがとう。あんたは私の神様みたいだった」と。4年間の看護任務を終えた。
2週間後、主治医がそっと私にダンボールを差し出した。直筆で「ありがとう H」と書いてあった。
主治医から「開業して35年も通ってくれた患者さんを大事にしてくれてありがとう」と。
仏壇の壁にはたくさんのHさんの笑顔が飾られ、息子さんが宝物だと涙されていた。

2024年1月投稿

「1年に1回の書道の先生」

褥瘡治療のために訪問している80代の書道の先生。毎年子どもたちに書き初めを教える生きがいを持つ前向きなエピソード。

数年前から足の褥瘡のために介入している80代男性の利用者さん。
独学で書道を学び、書道の先生をされていた方です。
昨年はご本人の希望もあり、訪問看護ステーションのスタッフの地域包括支援センター、ケアマネジャーも参加しました。
その後、利用者さんのところを訪問する際は、毎回書道教室での子どもたちの笑顔が忘れられないという話をされていました。
今年は会場の関係で、男性宅にて数名の子どもに書き初め練習会を開催。
見事2人の子どもが金賞を取りました。
また来年も開催できることを子どもたちは楽しみにしています。

2024年1月投稿

「訪問看護の魅力」

新米訪問看護師がこだわりの強い利用者さんと、あうんの呼吸で関われるようになっていくエピソード。

私は、昨年の春から訪問看護の世界に飛び込みました。
子どもを産んでからはクリニック勤めで、流れ作業のような、とにかく外来を早くまわすことに重きをおくような働きかたをしていました。
もともと人と関わることが好きで、人との深いつながりを大切にしたい私は、1人の患者さんとじっくり向き合える訪問看護に魅力を感じていました。
受け持ち看護師として、入浴介助をさせていただいた患者さん。とてもこだわりが強く、物の場所やお湯の温度から水圧まで、細かな好みがありました。また、スタッフが変わることにとても不安を感じており、私もとても不安でした。
ですが、回数を重ね訪問をしていくうちに、お互いに慣れていき、あうんの呼吸で入浴介助ができるようになっていきました。大きな耳垢が取れた時には、「こんなことまでしてくれるのあんたぐらいや。先生みたい。とっておかんなんくらい立派な耳垢やね」と冗談まで言い合える仲になり、とても嬉しい気持ちになりました。
「もういつ死んでもいいんや。でもあんたが風呂に来てくれる間は頑張るわ。」と新米訪問看護師の私にとっては涙が出るほど嬉しいお言葉を頂戴しました。これからも頑張る勇気をもらえ、とても感謝しています。

2024年1月投稿

「うなぎのタレ」

うなぎが大好きな90代女性が、最期まで大好きなうなぎのタレを味わい、笑顔で旅立ったエピソード。

昨年の春より週1回の訪問看護が始まった90代女性。
パーキンソン病と肺炎を経て寝たきりになり、同居する息子の妻の強い希望で在宅介護となりました。
食へのこだわりが強く、何よりうなぎが大好き。
訪問当初は常食を介助で摂取していましたが、レスパイト入院と肺炎治療をしてからは禁食、点滴静脈内注射、皮下注射となり、それでもうなぎが食べたいと言うので息子の妻がうなぎのタレを口に含ませていました。
息を引き取り、弔問に行くと、枕もとには鰻重が置かれており表情も笑顔で印象的でした。

2024年1月投稿

「忘れられない表情」

全身の疼痛がある中、大好きなカレーを食べたときの生気に満ちあふれた表情が忘れられないエピソード。

肺癌により緩和ケア目的介入させていただいていたH様。
徐々にADLも低下し、ベッド上で過ごす中、離床を強く望まれていました。
“どうすればその人らしく過ごせるのか”と、訪問看護ステーション内でカンファレンスを繰り返しながら、痛み止めの評価や、独居でいらっしゃるため安心感も持っていただけるよう、毎日複数回訪問していました。
血液検査のデータも悪く、離床にはリスクが伴うため看護師としての葛藤をしながらご本人の希望をいちばんに考え、その日は車椅子への移乗をしました。
そしてお好きだったカレーライスをご用意しました。食事量も減っていましたが、その日はカレーを黙々と召し上がり、「やっぱりこっちのほうが食べやすいよね。」と、H様は食後に一言お話くださいました。
全身の疼痛もあり短時間の離床でしたが、普段は寡黙なH様のその時の生気に満ちあふれた何ともいえない表情が印象的でした。
その後、ご自宅で最期を迎えられましたが、あの時の表情が忘れられず、今でも鮮明に覚えています。

2024年1月投稿


利用者さんの前向きな姿勢や人生の歩みは、関わる訪問看護師だけではなく読者にまで元気や力を与えてくれます。あらためて、訪問看護師と利用者さんの関係は共鳴するのだと考えさせられます。

編集: NsPace編集部

訪問看護まるあわかりBOOKバナー

× 会員登録する(無料) ログインはこちら