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インタビュー
2021年2月16日
2021年2月16日

皆にとって「よりよい場所」を

テンハート訪問看護ステーションは、新型コロナ流行以前から感染症対策や災害対策など「もしもへの準備」に力を入れています。 ステーション管理者であり、合同会社Beplace代表でもある佐渡本琢也さんは実はもともと臨床検査技師として働かれていたそうです。今回は、佐渡本さんがどんな思いでステーションを設立し、運営しているか伺いました。 自分の想いを追求した先にあったもの ー臨床検査技師から訪問看護師へ、それもステーションを経営するという選択をされていますよね。背景には、どんな思いがあったんですか? 佐渡本: 看護師へ転職したのは、患者さんとコミュニケーションする仕事の方が、検体相手の仕事より向いていると思ったからです。その上で、訪問看護ステーションの経営をしようと思ったのは、「自分の考える看護を追及したかったから」です。 看護師の中には、患者さんに対して敬語を使わなかったりきつい態度取ったりする人もいます。でも、それは違うと思いました。私は、利用者さんやご家族の思いを大事にする看護をしたかったんです。 医療面だけではなく「人生をみる」と言ったらおこがましいですが、人生に関われるような看護をしていきたいと思っています。 訪問する時も常に、「他にもっとできることはないかな?」と考えています。 ーステーション名の「テンハート」には、どんな意味が込められているのでしょうか? 佐渡本: 「テンハート」はもともと「Tender Heart(やさしい心)」という言葉から取った造語なんです。 スタッフにはいつでもやさしい気持ちでいることを意識してもらっています。 また、会社名の「BePlace」も、「Better Place」を短縮した、私たちが作った造語です。 経営理念にもしているように、利用者さんにとっても、ご家族にとっても、働くスタッフにとっても、「すべての人にとってよりよい場所を」という気持ちを込めて名付けました。 利用者さんやご家族から「いてくれてよかった」と思ってもらえるような看護をモットーに、気持ちの部分だけでなく、医療面や身体面でも、信頼してもらえるステーションを目指しています。 「テンハートなら大丈夫」と言ってもらえる地域密着ステーションへ ーステーションを運営する上で、心掛けていることはありますか? 佐渡本: なんでも話しやすい雰囲気を作るようにしています。 なぜなら、雰囲気が悪いと、報告・連絡・相談がスムーズにできなくなってしまうからです。 スタッフ間の年齢差は大きいですが、明るいムードでスタッフ同士が仲良く働けていると思います。 ーテンハートの特徴は、どんなところでしょうか? 佐渡本: 特徴と言えるかわかりませんが、ケアマネジャーさんから「ちょっと難しい方だけど、テンハートさんなら大丈夫だと思って」と電話をいただくことがあります。そういう風に言ってもらえると嬉しいですね。 利用者さんの割合としては、高齢者の方が多いですが、怒りっぽい性格の方や気難しい方など、対応が難しいケースの依頼も多いですね。 ーステーションとして今後、チャレンジしたいことはありますか? 佐渡本: 地域に根付いて、自分たちの理念に共有してくれる仲間と運営していきたいと思っています。 たくさん展開したいという訳ではありませんが、もう1ステーションは名古屋市内で早めに作りたいですね。 あとは、訪問看護ステーション以外にも「すべての人にとってよりよい場所を」提供できるような別事業も展開していきたいと思っています。 合同会社Beplace代表 / テンハート訪問看護ステーション管理者 / 感染管理認定看護師・臨床検査技師 佐渡本琢也 臨床検査技師として勤務する中で、患者と接する仕事に魅力を感じ、看護師の道へ。病院では脳神経外科、消化器外科を経験し、感染管理認定看護師の資格を取得。母を癌でなくした経験から「在宅で看護師ができることが、まだあるのではないか」という思いを持ち、同僚からの誘いをきっかけに愛知県名古屋市にテンハート訪問看護ステーションを立ち上げた。

インタビュー
2021年2月16日
2021年2月16日

異業種参入 第一の壁:採用

近年、異業種から訪問看護に参入する企業が増えています。 そんな中、参入した経営者が口をそろえて言うのが、「採用の難しさ」です。 看護師を中心に800人以上の専門職が在籍しているセントケア・グループの訪問看護事業では、どのように人材を確保しているのでしょうか。訪問看護部門統括次長の藤原祐子さんにお話を伺いました。 人材紹介会社に頼らない大規模採用 ―採用の方法について、教えていただけますか? 藤原: 基本的には、ホームページ、YouTube、Twitter、Instagramの活用と、社員紹介制度を利用した採用を行っています。今までは使っていた人材紹介会社も、今年からは積極的には頼らない方針にしました。 採用は「誰に伝えるか」「何を伝えるか」を考えながら行っています。 例えば、病院などで働いている若い方向けにはSNSやアニメーションなどを活用する、中堅ベテラン層向けにはハローワークで企業としての安定性や研修制度を売りにしてもらうなどです。 またハローワークや紹介会社には情報を出すだけではなく、窓口や担当の方がセントケアを紹介したくなるような関係づくりも意識しています。 SNS関連の採用事例の成果については検証中ではありますが、ホームページをみて入社する人は増えてきている実感はあります。全体的に見ると40代の方が多いですね。 これまでは自社アピールを全面に出し過ぎるのは良くないかなと思っていたのですが、ダイレクトに伝えないとわからない部分もあることがわかってきました。 今はオンラインセミナーなどで、「セントケア・グループでは看護師を積極的に募集しています」「セミナーや勉強会も開催しています」と言うようにしています。 社員紹介制度に関しては、紹介してくれた方と入社してくださった方に、入社お祝い金として3~5万円(キャンペーンなどによって変動あり)のお支払いをしています。地域会社によっては、社内紹介がすごく盛んなところもありますね。 将来的にはオンラインサロンのような、コミュニティ運営もやっていきたいです。 ステーション安定が私のミッション ―セントケア・グループとしての、採用基準はありますか? 藤原: 採用基準はステーションの状況に合わせてもらっているので、こちらから条件は特に出していません。 ただ、新規開設の場合には、正社員3人以上で始めること、24時間365日対応のためにオンコール対応ができることなどは決めています。 ―藤原さんご自身は、どのようにしてセントケア・グループに入職されたんですか? 藤原: 私の入職には、ちょっと変わった経緯があります。 私が訪問看護師になったのが32歳の時だったのですが、当時に勤めていたステーションが人員割れで閉鎖することになりました。 行き場のないお客様やスタッフを受け入れてくれてもらうため、同じエリア内のいくつかのステーションに連絡をしたところ、すぐに連絡をくれて、その日に会いに来てくれたのが、セントケアでした。 当時のセントケアはそのエリアでは訪問介護事業所しか運営していなかったのですが、訪問看護ステーションも立ち上げるということで、私が所長として入職することになりました。 その後、係長職や課長職を経て、現在は本社の訪問看護部門で統括次長をやっています。 ―本社の統括次長としてのミッションを教えてください。 藤原: 事業全体の中長期計画を立て基盤をつくるのが、本社の管理・企画部門の主な役割ですが、私自身は自社の訪問看護ステーションが安定できるようにサポートすることがミッションだと思っています。 特に魅力的な看護師にセントケアに来てもらって、長く働き続けていただくためにできることをやっていきたいですね。 ちなみに本社はとりまとめる役割なので、実際に事業を運営するのは各都道府県の子会社です。 本社の出した全体計画を各社が地域に合わせた形に落とし込んで、実行しています。介護や医療は地域ごとに状況が異なるので、それに沿って運営できた方がいいですからね。 セントケア・ホールディング株式会社 訪問看護部門 統括次長 藤原祐子 病院勤務で、在宅に受け皿がないために、帰りたくても家に帰れない高齢者が多くいる現実を見て、世の中の制度に疑問を感じるようになる。その後、結婚・出産を経て、2000年に介護保険制度がスタートするタイミングで、介護保険や訪問看護について勉強し、訪問看護師へ転身。管理者としてセントケア・グループに入職し、現在はセントケア・ホールディングの訪問看護部門統括次長として、訪問看護ステーションの安定運営をサポートする基盤づくりに注力している。 セントケア・グループ 1999年、株式会社として初となる訪問看護ステーションを開設。現在では97か所の訪問看護ステーションを全国に展開し、訪問入浴や訪問介護、デイサービス、有料老人ホームなどの幅広い事業にも取り組んでいる。(2020年11月時点)

インタビュー
2021年2月16日
2021年2月16日

のばな、成長の軌跡

大阪府岸和田市で認知症に特化した取り組みをしており、現在はケアプランセンター、デイサービス、訪問介護、訪問看護、サービス付き高齢者向け住宅、有料老人ホームを運営する「野花ヘルスプロモート(通称のばな)」。 今回は野花ヘルスプロモート代表取締役の冨田昌秀さんに、会社の経歴と事業内容をお伺いました。 はじまりは訪問入浴 ーさまざまな事業をされていますが、最初は何から始められたんですか? 冨田: 最初は、ケアプランセンター、訪問介護、訪問入浴の3つから始めました。 当時の岸和田市の訪問入浴事業所は、社会福祉法人だと1ヶ所しかなかったんです。在宅ケアが注目される中で、もっと必要になるはずだと思い、二番手として立ち上げました。 ー訪問入浴をやってみていかがでしたか? 冨田: 訪問入浴は、作業的、マニュアル的ことが多いですけれど、一番「ありがとう」が聞ける仕事でした。 立ち上げ時は看護師3人で運営していたので、訪問入浴中に医療的な面で気付けることもあり、ケアマネジャーさんにフィードバックしやすかったのもメリットだったと思います。 地域の評判は上々で徐々に利用者さんも増えました。 ただ、自分の給料も払えるくらいになったのは半年くらいしてからですね。 男性看護師で20代と若かったこともあって、会う方には「お前は何者や!」と警戒されるか、「面白い奴や!」と可愛がってもらえるか、反応はふたつに分かれましたね。 ーその後はどのように事業展開をされていったのでしょうか? 冨田: 次にトライしたのはデイサービスで、その後住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅を立ち上げています。 障害福祉の方面ではNPO法人を立ち上げ、復職支援・社会復帰支援のリワーク事業のシンクタンクとなっています。     ー地域の中で求められるサービスを増やしていったんですね。 冨田: そうですね。何が流行りかもありますが、経営者目線で安心安定の職場環境を作ることも模索しながら、地域で必要とされるものかをジャッジしながら作っていきました。 支える人を支えることが、持続可能な事業の柱となっています。     働きやすい環境のマニュアル化を目指して ー今後はどのようなことに取り組むご予定が教えてください。 冨田: 精神医療を提供しているクリニックや施設とのリワークのマッチング、コンサルティング事業が動いているところです。 訪問看護の多店舗展開はあまり考えていませんが、看護師が働きやすい環境についてマニュアル化していき、若い子たちがのれん分けのような形で展開していくときにサポートができたらと思います。     ー「働きやすい環境をマニュアル化」について、具体的にお伺いしてもいいですか。 冨田: のばなで働いている方のほとんどは女性で、子育てされている方も多いです。 ワークライフバランスを重視する方、バリバリ働きたい方、様々な課題や働き方に関する要望があります。 こういった課題や要望に対して、ICT技術などを活用しながら、それぞれのスタッフにあった働き方をマニュアル化して広げていけたらと思います。 そのために、クラウド化した電子カルテを利用したり、デバイスを配布したりするなど、看護師がリモートワーク出来る仕組みを整えています。 これから訪問看護が当たり前になっていく中で、他職種と良質なコミュニケーションを取ることが必要になります。そのための仕組みだったりツールだったりを、どんなものを使うと良いか経営側が考えていけたら、もっと面白く、うまくいくかと思います。 正解はないと思いますが、「より働きやすく」を意識しながら今後もやっていきたいです。 野花ヘルスプロモート代表取締役 冨田昌秀 祖母が看護師だった影響を受けて自身も看護師に。病棟での看護に違和感があり、介護保険施行のタイミングで起業を決意。代表を務める野花ヘルスプロモートは認知症ケアに注力しており、大阪府岸和田市にてケアプランセンター、デイサービス、訪問介護、訪問看護、サービス付き高齢者向け住宅、有料老人ホームを運営している。

特集
2021年2月16日
2021年2月16日

知っておきたい!病棟看護師が訪問看護師になるときのハードル

超高齢化社会を目前にし、2019年厚生労働省は訪問看護師の不足について実際の試算を発表しました。現在は5万人の訪問看護師が従事していますが、2025年には12万人が必要だと言われています。 しかし、訪問看護へ転向する際「看護経験が少ないと難しい」と多くの看護師が感じ、なかなか踏み出せないようです。 私は自身が訪問看護をスタートした時に感じた不安をベースに、訪問看護の楽しさとスムーズに仕事がスタートできる内容で勉強会と交流会を2018年11月より毎月開催してきました。実際に病棟看護師から訪問看護師へ転向した方のリアルな悩みや苦労に対してどのようなアプローチが有効か考えていきます。 未経験分野への挑戦 お話を伺った安原郁恵さんは、介護福祉士としてグループホームやデイサービスを10年ほど経験したのち、看護師の道へ進みました。 資格取得後は小児科病棟へ配属され、多忙な業務を必死で働き続けていく中、ふと介護福祉士時代の看取りを思い出しました。 一人ひとり患者とゆっくり向き合う時間や家族との関わりなど、看護の本質をじっくり追求できる看護をしたいと思うようになりました。その後、約3年働いた小児科病棟から訪問看護へ転向しました。「成人看護の経験がないことがとにかく不安でした」と安原さん。 看護師の経験は小児科のみ。病棟経験はあるものの、末梢静脈路確保、膀胱留置カテーテル交換、インスリン注射などの経験はありません。 訪問看護は介護保険を利用している方が6~7割程度を占めています。そのため、成人看護、老年看護が主体となっている訪問看護ステーションがほとんどです。 安原さんにとっては「未経験分野」への挑戦となりました。 少しずつスキルアップ 安原さんの訪問看護ステーションでは、見学同行(先輩のケアを見学する)、実施同行(先輩にケアに同行してもらう)というスタイルで全3回程度の同行をしています。 その後も「不安だったらもっと一緒に同行するよ」と先輩から声をかけてもらい、付き添ってくれることもありました。こうした手厚いサポートのおかげで、未経験ながらも安心して取り組むことができたそうです。 不安の大きい看護技術に対しては、手順を勉強して、動画で確認、イメージトレーニングを行いました。 自己学習した上で、見学同行で確認、実施同行で指導してもらうという学びを繰り返していくことで、出来ることが少しずつ増えていき、結果、自信につながったそうです。 はじめは誰もが「初心者」 訪問看護の対象者は、成人から老年期がメインです。小児科からのシフトは一見ハードルが高いと感じるかもしれません。しかし、病院でも一緒で、部署や病棟が変わればそこは「未経験分野」だったはずです。 新卒看護師の指導方法として、プリセプター制度があり、全国でも多くの病院に導入されていると言われています。 プリセプター制度の中心として欠かせないものに、実際に仕事をする中で業務上必要な知識・技術・技能を身につける OJT(On the job training)があります。 効果的な OJT の実施は、新卒看護師および先輩看護師がともに成長・ 発達できるとされています。 訪問看護においてもこれらのOJTを基本とした指導を受けることで、安原さんのように全くの未経験分野でも挑戦することができると考えられます。日本訪問看護財団(※1)や東京都福祉保健局(※2)でも「訪問看護師OJTガイドブック」を作成しています。 ここで、注意しなくてはならない点があります。 それは、訪問看護へ転向してくる看護師のほとんどは、臨床での十分な経験を積んできているだろうと思われているということです。 指導する側も「これだけの経験があればきっとこのくらいのことはできるだろう」「このような疾患の患者はきっとみたことがあるだろう」という思い込みで、任せてしまうことがあります。 また、臨床経験の長い看護師が訪問看護へ転向すると「いまさら知らない、経験がないとは言いにくい」という心理的ハードルがあります。原因として、年齢や経験年数が指導する側と指導される側でねじれが起きていることも考えられます。 そのため、経験や自信を可視化できるような技術・経験チェックシートを活用することがお互い納得のいく方法だと考えます。 看護師の経験年数に関係なく、訪問看護へ転向した際は「在宅領域では新人」と捉え、一定期間は新卒看護師と同じように精神的フォローを含めて関わる必要があります。どんなことでも相談できる体制を整えたり、研修制度を設けたりすることで安心して働くことができます。 また、新卒看護師の教育において、Off-JT(Off the Job Training)の集合研修との組み合わせは、スパイラル学習の効果があると言われています。 定期的なステーション内の集合研修、e-ラーニング導入、カンファレンスを活用した学習会などを行うことが訪問看護においても大切だと考えられます。 成功体験を共に積み重ねる 安原さんは、これまで1年間、訪問看護を続けてきました。 1人で訪問できる利用者を増やしていき、入職後4ヶ月目には24時間対応の携帯当番も担当させてもらえるようになったそうです。 もちろん初めての経験ですので、うまくいかないこともありました。担当した利用者の排便コントロールがうまくいかず、介護している家族に負担をかけてしまったという苦い経験をしました。 先輩からの助言を元に、内服の調整や観察にて試行錯誤を繰り返してきた結果、今では訪問時にトイレで排便をさせることができるようになったそうです。 何よりも、丁寧な関わりで家族の辛さに寄り添い、意図的なコミュニケーションの時間を持つことで信頼関係を築いていきました。 介護福祉士として生活を中心に携わっていた経験が介護者に寄り添う看護へとつながりました。その家族から「あなたでよかった」「長く続けてね」と言ってもらったことが、今までやってきて一番嬉しかったそうです。 このように利用者からフィードバックをいただくのはとても嬉しく、成功体験だといえます。 しかし利用者からの評価にとどまらず、先輩看護師からの評価をもらえることも必要で、スタッフの定着においても非常に大切だと言われています。 カンファレンスでは、訪問している看護師の関わりが、利用者にとってどのような良い状態につながっているのか言語化すると良いでしょう。訪問看護での成功体験の少ない看護師とって、自分の看護を先輩看護師に評価してもらう機会を自然に持つことができます。 また、複数の看護師が関わっている場合、新任看護師の対応に不備がないか確認し、フィードバックすることも有効だと思います。 まとめ 同行訪問でのOJTの効果的な指導を繰り返し、実際の訪問看護の中で成功体験を積み重ねることで未経験分野に対する漠然とした不安を払拭し、一人前の訪問看護師へと成長していきます。 そこには利用者からの感謝の言葉だけでなく、カンファレンスでの客観的な利用者のアウトカムの確認や先輩からの適切な評価が大切だと考えられます。     訪問看護師・ケアマネージャー マインヘルスケア株式会社代表取締役 西山 妙子 2001年 横浜赤十字看護専門学校卒業後、総合病院、大学病院手術室に勤務。結婚、子育てを経て訪問看護の道へ。2015年ケアマネージャー取得。病院の業務で疲弊しないでほしいと看護師の横のつながりや、新しい看護師のライフスタイルの提案を行うナースのためのオンラインサロン「ナースライフバランス 」を2017年10月より運営(現会員数約880名) 【参考】 ※1 日本訪問看護財団 訪問看護師OJTガイドブック ※2 東京都福祉保健局 訪問看護OJTマニュアル 【参考文献】 公益財団法人 日本訪問看護財団 令和2年度事業案内(2020) 訪問看護人材養成基礎カリキュラム(2016) 厚生労働省新人看護職員研修ガイドライン訂正版 小宮山陽子 、水澤千代子 、岡村典子 他(2017)看護研究交流センター 地域課題研究報告「プリセプター制度の現状と課題」

コラム
2021年1月22日
2021年1月22日

2020年、医療現場のオンライン化で訪問看護はどう変わる?徹底解説

コロナによる大幅な規制緩和 2020年はコロナ一色の1年となりましたが、医療現場のオンライン化をめぐる状況も大いに変化した年となりました。2020年は、2018年のオンライン診療保険収載後初の改定ということで、3月に告示された改定概要は注目されましたが、適応要件の若干の緩和(※1)があるのみで、オンライン診療をめぐる制度の大幅な変更はありませんでした。 むしろ現場に大きな影響を与えたのは、政府の緊急事態宣言発出直後の4月10日に通知された厚労省の事務連絡です。 非対面の診療行為が初診から可能に この通知による時限措置で、これまでさまざまな要件で縛られていた情報通信機器を用いた非対面の診療行為は、医師の判断により「初診から可能」となり、対象疾患の範囲も制限が事実上なくなりました(※2)。 この緩和は服薬指導の領域にも及び、本来9月の改正薬機法の施行をもってスタートするはずだったオンライン服薬指導は、薬機法の規定よりも大幅に緩和された形で、半年先だって事実上の解禁となりました。 この状況は時限的なものですが、菅総理も今回の緩和の枠組みの恒久化に意欲を見せており、厚労省も時限措置の延長決定を続けています。 厚労省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」(以下、ガイドライン検討会)の資料からも、2021年の夏~秋を目指して、時限緩和を踏まえた新たな恒久制度のとりまとめとガイドライン改定の検討が進んでいくものと思われます。(※3) オンライン化の実態は? 当然この通知直後は、オンライン診療システム「YaDoc」の開発を行っているインテグリティ・ヘルスケにも、混乱する現場から多くの問い合わせが寄せられ、実際にYaDocの導入件数も大きく伸びました。 一方で、前述のガイドライン検討会で報告された通り(※4)、2020年10月末時点で、当該時限措置を踏まえ電話や情報通信機器を用いた診療を実施可とした医療機関は、全体の15%にとどまっており、増加の伸びは第1波が終息した6月以降は停滞しています。 さらに増加した非対面診察の多くが電話での診察であり、またアプリを用いたオンライン診察の多くは小児科(若い世代の親がスマホなどを使って自宅の子供と遠隔の小児科医を繋ぐ形式)で、60歳以上世代での慢性疾患管理のオンライン化は依然進んでいない実態も明らかになりました。 電話よりも多くの情報をやり取りできるオンライン診療システムが、コロナ重症化ハイリスク層である慢性疾患を持つ高齢者に対し提供できる価値は大きいと考えます。しかし同時に、高齢者のITリテラシーという大きなハードルの存在を、2020年を通じ改めて認識されられました。 インテグリティ・ヘルスケアの感覚値としても、コロナ第2波、第3波では、第1波のような混乱と熱気はなく、医療機関も極めて冷静に、自院患者のニーズに応じたオンライン診療システム導入可否の判断を行っているようです。 むしろ秋以降、第1波でトライアルを回した大規模な病院が、満を持して予約や決済などの病院全体のオペレーションに適合したオンライン診療システムを改めて公募~正式採用、という事例が増えているように感じています。2021年に向けて国側で恒久制度のとりまとめが進むのと並行して、多くの大規模な病院で組織的なオンライン化が進んでいくものと思われます。 訪問看護領域への影響 このオンライン化の波が、訪問看護の領域にどのように影響を与えていくのでしょうか。 まず細かい点でいえば、2020年改定での退院時共同指導料の算定におけるオンライン活用要件の緩和(これまで退院時カンファは原則対面&やむを得ない場合にのみオンライン可だったが、今回から必要な場合はオンラインOKとなった)が挙げられます。 D to P with N しかし本質的な影響として重要なのは、「D to P with N」の普及と制度化だと思います。「D to P with N」とは、在宅の患者へのオンライン診療時、患者宅に看護師が同席し、デバイス操作を補助したり、医師による追加的な検査指示への対応をその場で行うモデルで、慢性疾患の増悪の早期発見などに役立つと期待されています。 厚労省のガイドライン検討会では、2019年7月にガイドラインのオンライン診療の定義内に「D to P with N」モデルを加筆しました。最近の検討会の議論の中でも、現状まだ過疎地や希少疾患などに限られている「D to P with N」の運用を、より一般的な疾患管理にも拡大し、有効な活用事例を収集・紹介するなどの推進策を検討してはどうか、といったやり取りがなされています。(※5) 今後、医療職へのワクチン接種などが進み、高齢患者宅への訪問看護のリスクが現状よりもさらに下がった暁には、オンライン化の大きなハードルである高齢者ITリテラシー問題を、「D to P with N」モデルが解消してくれる可能性が大いにあると期待しており、恒久制度にどのように盛り込まれるか、注視していきたいと思っています。 株式会社インテグリティ・ヘルスケア デジタルセラピー事業 増崎孝弘 2011年、株式会社メディヴァ(医療コンサル)にて、在宅医療・地域包括ケア関連のコンサルティング業務を担当、2017年よりインテグリティ・ヘルスケアに参画。福岡市でのオンライン診療の実証事業の現地事務局を担ったのち、現在は疾患管理システムYaDocを基盤に、製薬・医療機器メーカー向けのアプリケーションの開発やそれらを用いた臨床研究のプロジェクトマネジメントを担当中。 【参考】 ※1 事前の対面診察機関の6か月から3か月への短縮、慢性頭痛や在宅自己注射等の対象疾患の見直し等。令和2年度診療報酬改定の概要(全体版) ※2 0410対応における(株)インテグリティ・ヘルスケアの見解 ※3 第13回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会 資料1今後の検討のスケジュールについて ※4 第10回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会 資料2 令和2年4月~6月の電話診療・オンライン診療の実績の検証について、第11回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会 資料2-2 令和2年7月~9月の電話診療・オンライン診療の実績の検証の結果 ※5 2020-11-2 第11回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会  介護報酬、診療報酬改定についてもっと知りたい方は、こちらの特集記事をご覧ください。

コラム
2021年1月22日
2021年1月22日

今日からできるプチ災害準備

高齢者のための災害準備チェックポイント 高齢者の災害準備において気を付けなくてはいけないことにはどのようなものがあるでしょうか?高齢者特有の準備の特徴から考えてみたいと思います。 期限が切れている ・非常用の食事の消費期限が切れている ・懐中電灯やラジオの電池が切れている 高齢者のご家庭にお伺いして準備の状況をおたずねすると、「あ、そういうの、ちゃんとありますよ!」と言って見せてくださいます。 災害準備のための物資(非常食や懐中電灯、ラジオなど)は、多くの方のお宅にきちんと常備されていることが多いのです。ところが、中に入っているものを一つ一つ確認していくと、今、災害が起きてしまったらすぐに役に立たない物があることも見受けられます。 情報が古い ・通院中の病院や服用している薬の名前が書かれたノートの情報がアップデートされていない ・家族や親戚の連絡先が過去のものになっている 高齢の方は定期的に病院に通っていたり、薬を飲んでいらっしゃることが多いため、避難先に持っていけるように病院や薬の名前を記したノートを作ることが推奨されます。また、いざという時に助けを求められる家族・親戚の連絡先をメモしておくことも必要です。 しかしそれらの情報が古く、情報がアップデートされていないことも多々あります。 実際の避難を想定出来ていない ・避難用の非常袋が持ち出せない ・自分に必要な物資が入っていない 避難用の非常袋には2リットルの重さのお水などが詰め込まれていて、「これを実際に背負って逃げられますか?」とお尋ねすると、「ちょっと、重たすぎるねぇ」などという答えが返ってくることがあります。高齢の方の災害準備には、避難用物資の準備をする際は自分で運べる重さか、すぐ持ち出せる場所にあるかなど実際を想定した準備が必要です。 また、日頃の生活で必要なものというのは高齢者、お一人お一人で異なります。誰もが使うようなものは、災害が起きてもすぐに提供されるようになりますが、特有のニーズへの対応は、往々にして後手になりがちです。 メガネが必要な方、入れ歯が必要な方、薬が必要な方、補聴器が必要な方、またそのための充電ケーブルや電池等、どうしても無くては困るものをリストアップして、自分なりの準備品を考えておくことが大切です。 避難することの危険性を考慮していない ・自分の地域で起こりえる災害を把握していない ・とにかく避難所へ行かなければと思っている 防災というと多くの方が想像される「避難」については、避難場所をきちんと把握していらっしゃる方も多いのですが、高齢者には「避難によるリスク」というのが常に伴うことを知っておかなくてはなりません。 いつもなら何でもないような散歩道も、雨が降って視界が悪かったり、非常用の荷物を抱えて避難を急いでいる際には、いつものように冷静に歩くことができず、足元をとられて転ぶということもあり得ます。 避難を必要とする災害が起こりうるのか、もし避難をしないという選択をする場合にはご自宅は避難に耐えうるのか等を知っておくことが重要になります。 高齢者の方に「あなたのお住いのエリアではどのような災害が起こりうるかご存じですか?」とお尋ねすると、起こりうる災害を想定した災害準備をしている方は少なく、「とにかく避難所へ」とお考えの方も多いようです。リスクを減らすためにも、土砂崩れや川の氾濫など、避難をした方がよい災害が来る可能性があるのか、自宅にとどまった方がよい災害が起こりうるかを知っておくことは重要です。 ニーズに合わせた準備を 何より、高齢者と一言でいっても、身体機能や認知機能、必要な支援ニーズが極めて多様であるため、災害準備に必要なものは、それぞれに大きく異なる、ということが高齢者の特徴だと言えます。これがあれば大丈夫!という準備はなく、それぞれのニーズにあわせて災害準備を考え、それを定期的に確認することが重要です。 そうはいっても、いつ来るかわからない災害のために、日ごろからきちんと準備をしておくことは難しいのが実際です。また何もかも購入しようと思うと、お金がかかってしまいそうで、準備をする気も起きなくなってしまいます。そこで、あまり気負わず、日頃からちょっとした工夫で高齢者の災害準備を進めていただくポイントを考えてみましょう。 今日からできる「プチ災害準備」 起こりうる災害をチェック まず、お住いのエリアで起こりうる災害を調べてみましょう。これには市区町村の防災の手引きやホームページなどが役に立ちます。また、災害時ご自身の避難は想定されない場合でも、避難所を知っておくことは大切です。実際に災害が起こった際に、物資や情報が提供される場所になりうるからです。 3日間の物資を準備 次に、自宅で3日間、援助を待つことができるための物資を準備します。物資の準備のために、防災グッズを新たに買う必要はありません。 例えば、食べ物であれば、「今日から3日間、電気やガスが使えず、自宅から全く外出しなくても生活できるかしら?」という視点で、プラス3日分の食料品を準備するようにしておけば、非常食の賞味期限を気にする必要はありません。また、日頃食べ慣れたものであれば、口に合わないということもないでしょう。 また災害がおさまっても、その後に停電が一定時間来るということも、しばしばあります。夜間の停電の中、部屋を移動することなどは高齢者にとってとても危険です。 懐中電灯を各部屋に準備しておいたり、持ち出し品を就寝中は寝室に置いておくことや、暗闇の中割れたガラスなどを踏むことの無いように、スリッパや室内履きを持ち出し品に入れておくことなども、ちょっとした工夫の一つです。 防災プチ訓練 なお、高齢者の災害準備にありがちな、防災グッズの確認忘れを防止し、既往歴や連絡先などの情報を定期的にアップデートするために、防災プチ訓練をお勧めしています。台風が来ると予報が出た際や、小さな地震が来た際に「被害がなくてよかった!」で終わらせるのではなく、備品や食料の確認をしたり、避難場所までの経路を確認してみるなどの機会を定期的に持つようにしていただくといいでしょう。 まだ来ぬ災害への準備を一から始めようと思うと大変ですが、ちょっとした工夫と定期的な習慣として進めることで、災害準備は格段に進みます。高齢者の特徴でもある多様なニーズに合わせるためにも、自ら準備をすること、定期的に確認することを念頭に、高齢者の災害準備を考えてみましょう! 東京都健康長寿医療センター研究所 研究員・博士(保健学)・学士(工学) 涌井智子 専門は家族介護、老年社会学、公衆衛生。介護を支える社会の仕組みについて、個人、家族、社会構造といった視点で研究を実施。特に家族介護者の負担感軽減のための支援策の検討や、介護分野におけるテクノロジー導入の課題、要介護高齢者の家族のための災害準備等について日本と米国で研究を実施中。2013年10月より現職。   【参考】 これまでの研究調査を基に、高齢者の方の災害準備に必要な内容を簡単にまとめた「災害準備ノート」を掲載しています。災害準備されていますか?―要介護高齢者の災害準備を考える― 災害対応についてもっと知りたい方は、こちらの特集記事をご覧ください。

コラム
2021年1月22日
2021年1月22日

異なる支援ニーズへの対応と地域コミュニティ

情報提供の必要性 アメリカの疾病対策予防センター 日本の防災の手引きには、これまであまり状況や対象特有のニーズに合わせた情報提供がなされてきませんでした。 米国の疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)では、災害準備向けの情報発信を積極的に行っています。 北米はエリアによって、起こりうる自然災害が多岐にわたりますので、その災害タイプ別(地震、雷、火事、水害、津波等)に、個人で行える災害準備のポイントを解説しています。何より重要なこととして、災害発生時には手助けが来るまでに時間がかかることから、災害発生時に耐えうる自らの災害準備が重要であることがわかりやすく解説されています。 また興味深いのは、準備においてもその支援ニーズが異なることから、特に支援が必要な人やその家族向けに、例えば、高齢者向け、障がいのある人向け、妊婦や出産を予定しているご夫婦向け、医療ニーズのある子供とその家族向けなど、対象別に情報提供をしていることです。 このような情報提供は、支援ニーズが多岐にわたる高齢者にとっては非常に有用ですので、ぜひとも各自治体の防災の手引き等の情報提供に反映されることが望まれます。 異なる支援ニーズ また、高齢者と一言で言っても、生活の上で介護が必要な方、そうでない方、家族と住んでいる方、住んでいない方等様々ですので、その方の状況をまずはしっかり把握したうえで、災害準備の計画を立てる必要があります。 特に要介護高齢者の方の災害準備を進める上では、「ご本人が必要とする生活上の必需品」、「ご本人の身体機能や認知機能の程度」、「ご本人が得られる支援」という軸で必要な災害準備の内容を整理し、災害準備計画につなげることをおすすめします。 また「ご本人が得られる支援」は時間帯によっても異なります。就寝時、介護保険サービスの利用時、家族と家で過ごしている時、家族が不在の時等、災害は24時間起こりえることを理解し、その時々の状況について計画を検討する必要があります。 なお、災害時個別支援計画を作成している訪問看護ステーションの例もありますので、参考にしてみてください。 地域コミュニティの役割 身体機能が低下しつつある高齢の方にとっての災害準備には、地域のつながりも重要になってきます。 というのも、災害はいつ発生するかわかりません。いつもなら頼れる家族がそばにいても、災害発生時に仕事や買い物などで、近くにいないということも考えられます。 また災害の起こりうる状況は地域によって異なりますので、地域別の情報を共有しておくことはとても重要になってきます。 第1回コラムで紹介した調査結果においても、地域住民とのネットワークの状況が、介護が必要な高齢者の災害準備を進める鍵であることが示唆されています。 地域住民とのネットワークが密であるほど、つまり、地域においてネットワークがない人や日常会話程度のネットワークのみの人に比べて、ある程度介護のことを話したり、情報を共有するネットワークを持つ人の方が、災害準備が進んでいる状況が明らかになっており、災害準備において地域での情報共有が重要であることを示しています。 これは、介護が必要な高齢者の身体・認知機能を少しでも共有しておくことで、いざという時に声をかけてもらえたり、避難所や支援、災害準備に関する情報の共有が、日頃から自然と進められているためであると考えられます。 東京都健康長寿医療センター研究所 研究員・博士(保健学)・学士(工学) 涌井智子 専門は家族介護、老年社会学、公衆衛生。介護を支える社会の仕組みについて、個人、家族、社会構造といった視点で研究を実施。特に家族介護者の負担感軽減のための支援策の検討や、介護分野におけるテクノロジー導入の課題、要介護高齢者の家族のための災害準備等について日本と米国で研究を実施中。2013年10月より現職。  

コラム
2021年1月22日
2021年1月22日

高齢者にとっての災害対策

9月1日の「防災の日」が制定されている日本では、小中学校などで定期的に避難訓練が行われるなど、防災への意識が高いといえるでしょう。しかし、毎年起こる災害では、どうしても高齢者の被災が多くなってしまっており、改めて高齢者の防災への取り組みが注目されます。 高齢者にとっては、特に「災害準備」が大切になりますので、高齢者の多様な支援課題や防災における特徴を広く知っていただきながら、高齢者お一人お一人の防災について考えてみたいと思います。 なぜ、高齢者にとっての災害準備が重要なのか 初動期と展開期 災害は、大きく「準備期」「初動期」「展開期」に分類されます。 準備期とは災害発生以前を指し、「初動期」は災害が起こってからの約72時間を、そして「展開期」は災害発生から72時間経過後を指します。 高齢者は、これらのどのタイミングにおいても脆弱であると言われていますが、例えば、初動期においては体力的・精神的な理由で、避難するのが遅れてしまうことがあったり、生活環境の変化(避難所での生活)に対処しきれず、急激に身体機能が低下したり、認知症状が進行するなどの状況に陥ることが報告されています。 また、展開期においても同様で、長期にわたる避難所での生活や、生活再建のための疲れの蓄積によって身体的・精神的消耗が激しく、若い人に比べて命を落とすことも多く(災害関連死等とも言われます)、この時期の支援の重要性が言われています。 準備期 準備期においては、高齢者が災害のための準備ができていないことや避難訓練の参加率が低いこと等が報告されています。 初動期や展開期における高齢者への対策を強化することは容易なことではありませんが、時間のある準備期の対策を充実させることで、高齢者自らが、災害が発生した場合に生き残る可能性を広げることにつながります。 災害のための物資の準備をしておくことや、起こりうる災害を想定しておくこと、災害発生時に助かる可能性を広げるためのネットワークづくりをしておくことは、災害が起きた時に落ち着いて行動することを可能にし、また、高齢者自らが行うことができる最も基本の対策となります。 高齢者の災害準備が進まない理由 私の専門は介護が必要な高齢者の生活支援と、介護が必要な高齢者を支えるご家族の負担や健康を支えることです。そのため、災害準備においても、特に介護が必要な方とそのご家族の方、特に在宅で生活をされている方の災害準備ポイントを常々考えております。 といいますのも、施設入居の方の場合には、施設でマニュアル等が検討されますが、在宅の場合にはご家庭でそれぞれの災害対策を考えなくてはなりません。 災害のプロでもなく、介護のプロでもない高齢者やご家族にとって、災害に向けて準備を進めることは簡単なことではありません。 まず、どのような準備をしておく必要があるのか、何の災害に備えておかなければならないのかといった情報を集めるところからが難しいのです。 アンケート調査 実際、過去に行った調査(回答してくれた方は、在宅で介護を担う家族介護者1101名)から明らかになったのは、要介護の方のご自宅において避難計画をお持ちの方は24%、全般的に「災害の準備ができている」と回答した方は8%に過ぎませんでした。 中でも、認知症の方を介護するご自宅、経済状況が苦しいご自宅、介護者が若い場合等に、災害準備が進んでいない状況が明らかになっています。(この結果は、ロジスティック回帰分析や順序回帰分析という統計手法を用いて、性別や介護の程度といった他の変数を調整しても、統計的に有意な結果であることが示されています) これは、認知症の方を介護しているご家族にとっては何を準備しておいたらよいのかわからないということや、認知症の方の介護に手いっぱいで、災害準備を行うまでの経済的、精神的な余裕がないということが反映されています。 実際ご家族の方は、災害準備に関する情報支援が必要だと感じていますが、どこで情報を得られるかわからない方もいることや、避難が必要な場合には避難場所への移動を助けてもらえるような対策の必要性、地域住民との連携の必要性が課題として挙げられています。 東京都健康長寿医療センター研究所 研究員・博士(保健学)・学士(工学) 涌井智子 専門は家族介護、老年社会学、公衆衛生。介護を支える社会の仕組みについて、個人、家族、社会構造といった視点で研究を実施。特に家族介護者の負担感軽減のための支援策の検討や、介護分野におけるテクノロジー導入の課題、要介護高齢者の家族のための災害準備等について日本と米国で研究を実施中。2013年10月より現職。 災害対応についてもっと知りたい方は、こちらの特集記事をご覧ください。

コラム
2021年1月22日
2021年1月22日

医師・他職種とのコミュニケーションスキル

第1回では、「本人の思い・家族の思いを吸い上げるスキル」と「本人・家族の平時の生活を想像するスキル」について解説しました。今回は「医師・多職種とコミュニケーションを取るスキル」について解説します。 訪問看護師に必要な8つのスキル・知識 ①本人の思い・家族の思いを吸い上げるスキル ②本人・家族の平時の生活を想像するスキル ③他職種とコミュニケーションを取るスキル ④マネジメントスキル ⑤医師のいない場で医療的判断を行うスキル ⑥在宅療養利用者に起こりやすい疾患・状態に対しての看護スキル(工夫力) ⑦医療制度・介護制度などに関しての知識 ⑧礼節・礼儀などを実践できる素養 ③他職種とコミュニケーションを取るスキル(全般) 多くの専門職種とコミュニケーションを取ることは、在宅医療、介護領域において、利用者さんやそのご家族のQOL向上のために、重要となります。 そういった中で、訪問看護を経験したことのない病院勤務の看護師さんとコミュニケーションの話をすると、「ほかの職種とコミュニケーションを取ることは病院でもやっているので、特に難しいことはないと思います」という回答が返ってくることがあります。 もちろんそれ自体を否定するものではないですが、在宅医療・介護領域における他職種とのコミュニケーションは正確に言うと、多くの場合「物理的に距離のある別法人の他職種とのコミュニケーション」となります。(病院の場合は「物理的に距離が近い同一法人内の他職種とのコミュニケーション」) 俯瞰的に物事を考える力 つまり経営方針や、時には治療方針が異なる別法人所属の、すぐに会って話をすることが困難な他職種とうまくコミュニケーションを取ることが求められるのです。 そのために在宅医療介護領域において、良好なコミュニケーションを取るための考え方の基盤として、「俯瞰的に物事を考える力」が必要だと感じます。 俯瞰的に物事を考える力 ・相手の専門性を考えること ・相手の業務を考えること ・相手の法人内・事業所内での立場を考えること 事例 ここで私自身の失敗談を共有させていただきます。 私が訪問診療を開始した直後の話ですが、ある株式会社の介護施設で入居者向けの訪問診療を担当していました。 主治医交代で担当したばかりの私は、入居者の内服薬の種類の多さに非常に驚きました。そこで私はポリファーマシーの観点からも、それらの薬剤の整理を始めたのですが、その方針で施設看護師さんと大きな軋轢が生まれてしまい、結果としてその施設の担当を離れることになってしまいました。 当時の私は、軋轢が生じた理由がよく分からず「利用者さんのためにやっているのに、なぜこうなるのだろう・・・」と自身の診療スタイルに対して、自信を無くしていました。 しかしその後、当時の自院スタッフと議論を重ね、また別の施設担当看護師さんと話をしたことで見えてきたことがありました。 それは、私が施設看護師さんの業務や立場を俯瞰して考えられていなかったということです。 施設看護師さんが薬剤変更時にその都度、利用者のご家族に変更理由を電話で説明していたとことを知らなった私は、度重なる変更をしながら理由をご家族に説明しやすい形で施設看護師さんに伝えていませんでした。 また施設看護師さんが利用者のご家族は入居金などの支払者という意識を持ち、対顧客としてご家族との関係性構築に非常に気を遣っていることにも、株式会社所属という意識もなかった私は気づいていませんでした。 この時、私は大きな反省をしました。私は、少なくとも「相手の業務を考えること」、「相手の法人内・事業所内での立場を考えること」ができていなかったのです。 ここで得た反省から、薬剤変更を含めた医療的判断をする際は、ご利用者家族に説明しやすいように、その判断理由を他職種に伝えるように心がけるようになりました。 この事例からの示唆は、利用者さんのQOLを上げるための医療介護を実践するのは当たり前だとしても、「連携する他職種の立場も踏まえて、皆が実践できる方法を考える」ことであると言えます。 すべての職種にあてはまる ここでは医師の視点からの事例を述べましたが、これはもちろんどの職種でも当てはまることです。例えば、訪問看護師さんが医師やケアマネージャーに「○○をお願いしたが、中々が動いてくれない」といった時に、相手が動いてくれないからしょうがない、と結論付けるのは簡単です。 しかしここでぜひ、俯瞰的に相手の立場を見て、もし自身がサポートできることがあれば実践し、相手とベクトル合わせをしていただきたいと思います。 ③他職種とコミュニケーションを取るスキル(対医師) 前項では他職種とコミュニケーションを取るための考え方の基盤を述べましたが、ここではフォーカスを絞り、訪問看護師のみなさんが訪問診療医とコミュニケーションをうまく取るための方法(正確には業務を円滑に進めるための方法)を述べたいと思います。なお、ここではコミュニケーションを取る相手は同一法人でない在宅診療所の医師を想定しています。 医師との連携において、訪問看護師さんからよく聞く困りごとはいくつかあります。その中でも、コールの報告内容、頻度、訪問看護指示書に関しての事柄が多くあります。(訪問看護指示書については、次回のコラムに記載させていただきます) コールに関しては、 ・報告すると医師の機嫌が悪くなる ・詳しく報告しているのに医師の反応があまり良くない ・「私(医師)にどうしてほしいの?」と言われる などの声が訪問看護師さんからよく聞かれます。 一方医師側は ・報告だけなら連絡しなくてよいのに ・話が長くて、重要なことがわからない・・・ ・アセスメントがない といった声が多いです。 訪問看護師側としては、 ・医師に利用者さんの報告をするは当然 ・報告しないと不安 ・利用者さんの背景から現在の病態を詳細に説明したい ・端的に医師からの指示を仰ぎたい という気持ちがあるかと思います。こういった思いを持ちながら、医師とうまくコミュニケーションするにはどうすれば良いでしょうか。 ここであらためて重要なのは、SBARに則った行動ができているかです。こちらの訪問看護師と訪問診療医の連絡に対してのコメント対比させた表を元にご説明します。 SBAR 状況(Situation)、背景(Background)、アセスメント(Assessment)、提案(Recommendation)の頭文字を取った言葉。この順番で報告をすると相手に伝わりやすいというものであり、コミュニケーションにおいて非常に重要なフレームになる。 <訪問看護師と訪問診療医の連絡に対してのコメント対比> ➀報告必要性の検討 「報告すると医師の機嫌が悪くなる」については、SBARの前段である医師への報告必要性の検討でクリアできることが多いです。もちろん報告を求める医師もいるため、事前にどういった時に報告が必要か、医師と調整するのが良いでしょう。 ここで一点気を付けていただきたいのが、訪問看護師からの報告に対して、診療報酬上の電話等再診算定が発生する場合があることです。(算定は医療機関) 算定するか否かは医師の判断によることが多いですが、例えば22時以降の電話等再診の場合、約500点/回(ご利用者負担1割の場合、約500円/回)となり、これはもちろん利用者さんの経済的負担になります。 そのため医師に連絡をする場合は、必要性と共に経済的負担が発生する可能性を検討した上で、実施いただきたいと思います。 ②SとBの逆転有無確認 「詳しく報告しているのに医師の反応があまり良くない」については、SBARの状況(S)と背景(B)が逆転しているのが原因であり、SBARの順に伝えることでクリアできることが多いです。 背景(B)として、利用者さんの病態の背景や家族背景などの説明は重要ですが、ここに多くの時間をかけて説明してしまうと、医師は「何が一番伝えたいことなのかわからない」という状態となってしまいます。 まずは「今起きていること」と「判断を仰ぎたいこと」を伝えた上で、必要に応じて背景を説明すると良いでしょう。 ③AとRの有無確認 「『私(医師)にどうしてほしいの?』と言われる」については、SBARのアセスメント(A)と提案(R)が足りていないことが原因であり、これらをきちんと実施することでクリアできることが多いです。 逆に医師から「△△訪看ステーションはアセスメントや提案がしっかりしていて、非常にありがたい」というコメントがあると、医師と訪問看護ステーションが良好な関係性が築けているのだと感じます。 アセスメント(A)と提案(R)が足りていないとは、バイタルや状況を伝え、それで終了してしまうパターンです。 もちろん、各々の状況に対して臨床的判断することは医師の役割ですが、医師も少なからず判断に負担を感じていることがあります。ですから、看護側からのアセスメントや提案は非常にありがたく、臨床的判断をしやすくなるだけでなく、負担感も軽減にもつながります。 ただし、アセスメントと提案には、しっかりしたフィジカルアセスメント技術が必要です。訪問看護師さんはフィジカルアセスメントに長けている方が多いと感じていますが、今一度その重要さを振り返り、より良いアセスメントと提案につなげていただけると良いと思います。 医療法人プラタナス 松原アーバンクリニック 訪問診療医 / 社会医学系専門医・医療政策学修士・中小企業診断士 久富護 東京慈恵会医科大学医学部卒業、同附属病院勤務後、埼玉県市中病院にて従事。その後、2014年医療法人社団プラタナス松原アーバンクリニック入職(訪問診療)、2020年より医療法人寛正会水海道さくら病院 地域包括ケア部長兼務。現在に至る。

コラム
2021年1月22日
2021年1月22日

思いを吸い上げるスキル・想像するスキル

利用者さんご本人やご家族と接する時間が長く、より生活視点での看護的観察やアセスメントが必要なのが訪問看護です。本コラムでは、特に訪問看護師に必要なスキル・知識について、これまでの訪問診療医としての経験や、訪問看護師さんとのコミュニケーションから得た気づきを、私なりにまとめました。   訪問看護師に必要な8つのスキル・知識 ①本人の思い・家族の思いを吸い上げるスキル②本人・家族の平時の生活を想像するスキル③他職種とコミュニケーションを取るスキル④マネジメントスキル⑤医師のいない場で医療的判断を行うスキル⑥在宅療養利用者に起こりやすい疾患・状態に対しての看護スキル(工夫力)⑦医療制度・介護制度などに関しての知識⑧礼節・礼儀などを実践できる素養 さまざまな意見があると思いますが、これまで私自身が大学病院、市中病院、外来/在宅診療所などで勤務した経験から、訪問看護については最もその看護スキルを発揮できる場と私は捉えています。   ①本人の思い・家族の思いを吸い上げるスキル 利用者さん本人の医療、介護に対しての思いや考え方を吸い上げることは、最も重要なことと考えられます。なぜなら、医療介護は我々医療従事者の満足のために行われるものではなく、利用者さんご本人のために行われるものだからです。そのため、その思いや考え方の吸い上げなくして、医療介護方針の立案はないと考えています。ただし、意思の表出が難しい方や、本人や家族が我々(特に医師)への気遣いで考え方を述べることを躊躇され、その意向の吸い上げが難しくなることがしばしばあります。そういった時の意向の確認で、最も適している職種が訪問看護師であると考えています。 必要なことは何かを考えるスキル 私も連携している訪問看護師から、ご本人やご家族の思いや考え方を伺い、方針決定の参考にさせていただき、さらに方針変更をしたこともあります。その時に求められるのが、その方が希望する生活を継続するために、必要なことは何か考えるスキルです。さらに、その希望も時期によって変わるため、利用者さんにとって必要なことは何かを「考え続ける」こととなります。なお、意向の吸い上げは以下の項目について利用者さん側が理解した上で、初めてできると考えます。 利用者さんに必要な理解・医療に対しての理解・今後、起こりうることとその対処方法についての理解・医療介護サービス提供方法や頻度についての理解・必要な費用についての理解 前者2つは医療的な側面のため、説明が漏れることが少ないようです。一方、後者2つは制度面に紐づけられるため、特に訪問看護をはじめて間もない看護師さんは、病院や外来診療所ではこういった話をすることがほとんどなく、知識面から説明が不足することが多くなる傾向にあります。しかし、非常に重要な事項であるため、ぜひ知識を身に着けていただきたいと感じています。特に経済的側面と医療介護に対しての意向については、それが良いことか悪いことかの議論はあると思いますが、大いに相関すると感じています。それでも意思疎通ができる方の中において、意向や考えの表出が少ない利用者さんもおられるでしょう。ただ、考えのない方は絶対におらず、その場合、ちょっとした表情の変化や言動の変化などをもとにその考えを推測することとなり、場合によりそれをもとに、こちら側からの問いかけなどで、意向をより明確なものにしましょう。 思いを吸い上げるスキル さらにご本人が自身の考え方に気づいていないこともあるため、その際もこういったアプローチを繰り返すことで、ご本人に自身の考えを気づいていただくことが重要になります。利用者さんの思いを知ることにより、良いケアができた事例をひとつ紹介します。 ある高齢の乳癌ターミナルの女性の話です。その方は常に疼痛を訴え、自宅で布団をかぶり、うずくまっている状態でした。もちろん疼痛コントロールを目的として、麻薬などを内服していましたが、内服量を増やしても、その疼痛の訴えは一向に減らず、その方の活動性は向上しませんでした。ある時、訪問看護師が「何か不安や困っていることがあるのではないか?」という仮説のもと、その方と多くの時間を使い、色々と話す時間を設けました。話は1回ではなく、数回におよびましたが、結果として、その方は乳癌という病気についてのこと、そして今後、どういった病態になるのか、また疼痛が強くなるのではないか・・という不安と常に戦っていることがわかりました。それらに対して、その訪問看護師は病気のこと、内服によって多くの場合、疼痛は抑えられることなどを非常に丁寧に説明しました。その説明により、その方は不安が取れ、疼痛の訴えは急激に減少し、一時的にではありますが、内服による疼痛コントロールは必要ない状態になり、散歩もするようになりました。その数か月後にその方は亡くなりましたが、その方が与えてくれた強烈な示唆は、やはり本人の思いの吸い上げは何よりも重要だということです。私たちは常時それを念頭におき、治療に臨まないといけないと思います。   ②利用者さんの平時の生活を想像するスキル このスキルは、利用者さんの病態などの変化を感じるために必要なスキルです。利用者さんやご家族は我々が訪問診療や訪問看護でご自宅にうかがう時、部屋の整理整頓や掃除をして頂いていることが多いです。それ自体は決して問題ではないのですが、それにより日常の生活が見えなくなることがあります。 探偵力 例えば、日常から部屋を掃除されている方が、さまざまな要因から掃除の頻度が下がり、訪問診療や訪問看護の前だけ実施する場合などがあります。訪問者である我々から見ると、部屋は綺麗になっているため、掃除の頻度が低下していることに気付きにくくなり、その要因の発見が遅くなります。同様に、トイレに行っているかどうかなどについても、ご本人は事実と異なることを言われることがあります。これらに対して、我々は疑いの目というより、変化を感じる視線が必要となります。平常時を推察するために、特に独居の方などは、訪問した際に部屋の隅などを見て、その清潔感などの変化をみます。あるいは、トイレであれば、トイレットペーパーの端を折り曲げたり、トイレのスリッパなどを揃えて帰り、次回訪問時に、それらを確認し、トイレを実際に使っているかどうかを推察したりすることができます。また家屋や本人の臭いの変化などももちろん重要となります。要は利用者さんの日常の変化に気付く「探偵力」が必要となるのです。やはり我々がベンチマークとするべきは、利用者さんの日常です。これらのちょっとした生活環境の変化などに気付くことで、本人の病態や考え方の変化、家族を含めた介護力の変化を推測し、サービス提供方法の検討に生かすことが重要です。   医療法人プラタナス 松原アーバンクリニック 訪問診療医 / 社会医学系専門医・医療政策学修士・中小企業診断士久富護東京慈恵会医科大学医学部卒業、同附属病院勤務後、埼玉県市中病院にて従事。その後、2014年医療法人社団プラタナス松原アーバンクリニック入職(訪問診療)、2020年より医療法人寛正会水海道さくら病院 地域包括ケア部長兼務。現在に至る。

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