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試行錯誤の末に生み出した教育体制。オンライン同行訪問を活用した理由
試行錯誤の末に生み出した教育体制。オンライン同行訪問を活用した理由
インタビュー
2023年2月14日
2023年2月14日

試行錯誤の末に生み出した教育体制。オンライン同行訪問を活用した理由

「NsPace With(ナースペースウィズ)」は、多忙な訪問看護ステーションの新人教育をサポートするサービスです。現場経験やスタッフ指導経験のある看護師が、新任訪問看護師の訪問にオンラインで同行するほか、訪問前の準備や訪問後のフィードバック、定期的な管理者への評価結果報告なども行います。 しかし、こうしたオンライン同行訪問サービス(以下「オンライン同行」)は誕生したばかりのサービスのため、なかなか利用イメージが湧かない方も多いでしょう。実際にNsPace Withを利用した「しもふり訪問看護ステーション」の経営者 木和田さんと、所長・管理者の木下さんにお話を伺いました。前編である今回は、オンライン同行を利用した経緯についてお話しいただきます。 >>オンライン同行を体験した文屋さんの記事はこちら「一人訪問」の不安が軽減 訪問看護師1年目のオンライン同行サービス体験記 株式会社 ユニメコム 代表取締役木和田 俊治郎さん調剤薬局の運営会社での取締役時代、訪問看護ステーションの立ち上げ責任者に。企業買収に伴い2015年に独立し、訪問看護ステーション運営会社である株式会社ユニメコムを設立。 しもふり訪問看護ステーション 所長・管理者木下 亜矢子 さん銭湯の番台や外来勤務の准看護師を経て、正看護師になるタイミングで訪問看護の道へ。 しもふり訪問看護ステーション看護師 8名、理学療法士 3名、作業療法士 4名、言語聴覚士 1名、事務 1名が所属(2023年1月時点)。 リハビリスタッフとの連携で医療依存度の高い利用者をケア ―まずは、しもふり訪問看護ステーションの特徴を教えてください。 木下さん(以下敬称略): 当ステーションは、看護師とリハビリスタッフとの連携による質の高いケアの提供を得意としています。東京の町屋と駒込に事業所がありますが、二拠点は自転車移動が可能です。ケースによっては所属拠点に関わらずチームを組み、ステーション一丸となって利用者様のケアにあたっています。また、最近は人員面でも技術面でも看護スタッフが充実してきたこともあり、医療依存度の高い利用者様が増加傾向にあります。 ―しもふり訪問看護ステーションの運営会社は、途中で変更になったと伺っています。経緯を教えていただけますか。 木和田さん(以下敬称略): もともと、しもふり訪問看護ステーションは調剤薬局会社の新規事業として立ち上げました。当時、私はその会社の取締役で、新規事業として訪問看護ステーションを立ち上げる際、責任者を任されたんです。しかし、立ち上げ後に会社がバイアウト(買収)されることになり、ステーションは取り残されることになってしまいました。そこで、私が会社から独立して新たに「ユニメコム」という法人を立ち上げ、訪問看護ステーションの運営を引き継ぐことにした、という経緯ですね。 人材が定着せず、悩み抜いた結果生まれた教育体制 ―訪問看護ステーションの運営は、当初から軌道に乗っていたのでしょうか。 木和田: いえ、訪問看護ステーションの立ち上げ当初から2020年ごろまでは、人材がなかなか定着せず困っていました。ユニメコム本部で採用したら、研修は現場にお任せ、という流れでやっていましたが、どんどんスタッフが辞めてしまったんです。 ―どういった理由で退職される方が多かったのでしょうか。 木和田: 辞める方が本音で退職理由を言ってくれるケースはあまりありません。でも、おそらく「会社が自分のがんばりを評価してくれない」と感じていたスタッフが多かったのだろうと分析しています。 私は、仕事は何らかの「課題解決」「価値創出」に意味があると教えられ、自分自身もそう思って邁進してきました。「がんばっていることそのもの」が評価されなくても気に留めていなかったので、他者のがんばりへの承認にも重きを置いていなかったんですね。そこに従業員と私との間にズレが生じる要因があったんだと思います。従業員のことは以前も今も大切に思っていますが、気持ちが伝わらず、当時はかなり「ドライで冷たい経営者」だと思われていたようです。 ―そういったお話からは想像がつかないほど、現在のしもふり訪問看護ステーションは経営者・管理者からスタッフまで和気あいあいとした雰囲気に見えます。どういった改善策を講じられたのでしょうか? 木和田: 今は本当に雰囲気が良くなっていますが、当時はかなり悩みました。試行錯誤を重ねて学び直しをした結果、やっぱり「エンゲージメント」(従業員との確固たる信頼関係)と「オンボーディング」(採用した人材を定着させ、戦力化するための教育施策)が大事だという結論に至ったんです。「採用したらあとは現場にお任せ」という状況を打破して、きちんと教育プログラムを構築することにしました。 2021年からは座学の初期研修や計画的なOJTを行うようになり、そこで一旦教育体制の土台が作れました。現場のみんなの努力はもちろんのこと、こうした教育体制の構築も人材定着につながっていると思います。 ―教育プログラムについて、具体的な内容を教えてください。 木和田: 座学では、ユニメコムの理念をはじめ、訪問看護を取り巻く社会的な制度の概要や課題、従業員に期待していることなどを伝えています。OJTについては、3ヵ月目のひとり立ちに向けて必要な要素や計画を木下に練ってもらいました。通常業務の流れのなかでOJTをして、「時期が来たら一人で訪問に行ってね」ではなく、何がどこまでできているかをきちんと振り返って記録に残し、管理・指導するようにしています。 オンライン同行を利用したきっかけとは ―2022年に、当時入職したばかりだった訪問看護師の文屋さんがオンライン同行を利用されています。サービス利用のきっかけや理由について教えてください。 木和田: オンラインで外部の看護師が訪問に同行するサービスがあると紹介されて、「ぜひやってみたい」と思いました。教育体制がより充実することはもちろん、全国的に訪問看護師の数が足りていないなかで、こうしたサービスが普及していくことは、社会的にもプラスになると考えたんです。ただ、実は現場からは当初反対意見もありました。 木下: そうですね。最初は反対しました。私は訪問看護の現場を大切にしてきましたし、現場では五感をフルに使う必要があると考えています。対面で接することで積み上げてきた利用者さんとの信頼関係もあります。「オンラインで何がわかるんだろうか」と思ったのが正直なところです。 また、管理者としての方針や誇りをもってステーションを運営しているなかで、ステーション外の看護師さんにスタッフの育成を任せることに対する抵抗感もありました。自分のいないところで、私の方針とズレた指導をされてしまうと困ると思いましたし、どんな方に同行してもらうのかわからない本当の初期段階は、「大事なスタッフが困る事態になったらどうしよう」という思いもありました。実務面では、導入にあたって利用者様の許可をいただくなどの事前準備もありますし、工数面での負担感も心配でしたね。 ―そうした不安や懸念があるなかでも、オンライン同行をはじめた理由は何だったのでしょうか。 木下: 木和田の「導入する」という意志が固いことはわかっていましたし(笑)、気持ちとしては新しいスタッフに全力で寄り添いたくても、多忙で時間が足りず、なかなかそばにいてあげられない現状があります。 また、結局のところは実際にサービスを受けるスタッフが「やりたいかどうか」が一番重要だと思ったんです。文屋の場合は本人が「やりたい」と言いましたし、訪問時の安心感が上がるなら、やってみてもいいのでは、と思いました。もちろん、やってみてもしも本人の負担感が強そうなら、見守るだけではなく口を出そうと思っていました。 木和田: 最終的に木下がそのように受け入れてくれて嬉しかったですね。うちだけに限らず、訪問看護ステーションは管理者のカラーで方向性が決まってくる側面が大きく、「これが正解」というスタンダードがまだない状態だと思うんです。だから、第三者の目を入れれば、コンフリクト(対立)が起こりやすいですし、木下が反対した理由もよくわかる。でも、あえてそういう状況をつくることで、一段階レベルアップできるという想いもありました。 ―ありがとうございます。後編では、実際にオンライン同行を利用してみた所感や活用方法についてお伺いします。 >>後編はこちらオンライン同行訪問の活用ポイント 基本研修にプラスすることで安心感アップ 編集・執筆: NsPace編集部 ※本記事は、2022年12月の取材時点の情報をもとに制作しています。 *  *  *  *   ■ナースペースウィズ訪問看護スタッフ向けオンライン同行訪問サービス。訪問看護の現場景観と新任看護スタッフ指導経験のある看護師が同行訪問OJTをオンラインで支援

学び直しの機会を提供することが重要~看護の対象は目の前の一人だけではない~
学び直しの機会を提供することが重要~看護の対象は目の前の一人だけではない~
インタビュー
2023年2月14日
2023年2月14日

学び直しの機会を提供することが重要~看護の対象は目の前の一人だけではない~

訪問看護業界での人材戦略を考える特別トークセッション。第2回は、採用時の教育の重要性を考えます。「旧型の病院看護師を育てることに最適化された教育」をアンラーニングする機会を提供することが、望ましくない早期離職回避につながります。 第1回「人材採用難に立ち向かうために」はこちら>> 訪問看護に迎えるときにはルール変更の教育が必要 中原: 病院看護から訪問看護に移ることは「ゲームチェンジ」ですよね。その意識が必要だと思います。例えるなら、「将棋に熟達していた人」が突然、「チェス」を始めるようなもの。駒を使うところは同じなんだけれど、ルールが何もかも違う別の競技だよって話ですね。それぐらい異なるものだと、採用時に説明しなくてはならないでしょうね。 落合: そのとおりだと思います。やはり教育からチェンジが必要だと。 公的な訪問看護サービスは社会資源の一部であって、「目の前の人だけに最高の看護を」ではなく、「すべからく多くの人に、最低限度健康で文化的な生活が送れるための看護を」提供することが本来のはずです。ですが、看護教育で私たちが教わってくることは、「目の前の患者さんをどうやって幸せにできるか」に重きが置かれていて、そこでかなりギャップがある。 そういうわけで、社会保障のあるべき姿から逆行する発想をする傾向もある。「私がいいと思う看護を後輩ができないんだったら、そんな後輩はいらない」というような。そのときに「後輩を辞めさせた結果、ケアが届かなくなる患者さんはどうなるんだ」といった思考は持ち合わせていない。 看護の対象は「個人、家族、コミュニティ、地域」だと定められているんです。病気があるから対象になるわけではなく。ですが、旧型の病院看護師を育てるのに最適化された教育では、病気があり入院治療している個人をみることに焦点が当てられてきた。 そういう教育をされてきた過去はしょうがないので、訪問看護に迎えるときには、きちんと学び直しの機会を提供する。そんなオンボーディング注1が大切なのだろうと思います。 注1:新しく職場に入ってきた仲間が職場になじめるように迎え入れ、適応を支援する取り組み全般をいう。新しい職場で必要な知識やスキルの習得を教育・支援することも含まれる。 仲間を増やすことは看護と同じくらい大事だ 中原: 名前は同じ「看護」がついていて、似ていると思われやすいけれど、必要な資格が同じだけであって、私には「違う世界」に見えますね。その資格を持っているからといって、あるところでうまくいってる人が、次の世界に入ったときに必ずしもうまくいくとは感じないです。病院看護から訪問看護に移るときは、異国に行くイメージでいるといいのではないでしょうか。郷に入れば郷に従えといいますが、「前いた世界の自分」のまま「異国」に行って、自分を変えようとしないなら、確実に詰むでしょうね。 落合: うちでは、「この人を採用するかどうか」をみんなで決めるんです。面白いのは、経営で考えると採ったほうがいい状況で、「採らない」となりがち。「こんなに忙しいんだし採ったほうが絶対いいじゃん」って思うんですけど、なぜかそうならないんですよね。 私はよく「採用って看護と同じぐらい大事だよ」って言うんです。「自分1人では100件しか回れない、同僚と力を合わせたら200件回れる。同僚が増えると『すべからく多くの人に』適切な看護をに一歩近づく」ってことなんですけど、理解までかなり時間がかかります。 組織の成熟度が高まってくると、この考えが受け入れられるんだろうと思うんです。教育や学びが必要だなと思います。 離職者ゼロはベストではない 乾: 小さい規模で、いったん人間関係が悪くなってしまうと、もう厳しいですよね。病院だと配置転換で何とかなりますが、訪問看護のような小さい職場では、いちど嫌悪感を持ってしまうとギスギスが消えない。そして、ギスギスから距離を置くことができずに辞めるしかない。私も訪問看護で短期間働かせてもらったんですが、訪問看護の職場には逃げ場がないと強く感じました。 落合: おっしゃるとおりで、辞めない人を採るのが前提ではあるんですが、私がよく言うのは、「流動性を保たないといけない」。というのは、ある程度の離職率は保たないと組織の水が濁るので。 そのために、ちゃんとインしていきつつ、ちゃんと辞めてもらう。そうしながら組織は拡大していくのが理想だと。 ただ、訪問看護の採用担当者はだいたいが、いわゆる人材のプール、タレントプール(将来の採用候補者情報をためておくしくみ)を持っていないんです。採用が必要なそのタイミングで「今すぐ働きたい」人と運良く出会うことにかける、という狩猟みたいな採用だけで。「1年後働いてくれるかも」みたいな人がいないから、辞めさせられない面もあると思いますね。 中原: そう。「離職者ゼロ」は決して望ましいものではないんですよ。正しく貢献できない人には辞めてもらうことで止血するのも大事。本当は、異動ができれば退職に至らずにすむこともあるんですが、このサイズだとそれも難しいですね。 乾: 複数ステーションをお持ちとかで、配置転換ができるような事業者は多くないですからね。 だんだんと舵がとれなくなって縮小していくケースが目立つ 中原: 私のような業界外の立場から見たら、どうしてこのサイズなのかが不思議でしょうがないんです。「2.5人? マジ?!」って思う。1人抜けたらアウトで、また採用しなきゃならない、採用費100万円の借金を負わないといけない、ゼロから教えなきゃならない。2.5人よりは、逆に小さくするほうがうまくいきそうですが、1人ではできないんですか。 ─ 常勤換算で2.5人必要な決まりです。管理者ともう1人が常勤、パートで月半分、が開始時の一つのモデルです。 中原: 1人はダメなんですね。売上や顧客が決まってないのに人を雇わないといけない、相当なリスクですね。 落合: 訪問看護あるあるがありまして、思いを持って、仲の良い友だち2人を誘って立ち上げます。意気揚々と「○○病院にいました」「○○ができます」「こういう思いがあって独立しました」と営業をがんばる。そうすると御祝儀なのか、始めは依頼が結構来るんですよ。気心知れた仲間どうしだからトラブルも少ないし、そのころがいちばん儲かっています。それが、4~5人と人員が増えたあたりから、マネジメントロスが生じるとか、いろんな波が起こりはじめて、対処方法がわからず、乗り越えられずに縮小化するイメージが、すごくあります。 「立ち上げてすぐ閉鎖」よりも、仲間だけでやって、スタートはうまくいくが、組織が拡大するにつれて、だんだんと舵がとれなくなっていく。そんな例が多い印象です。 >>次回「訪問看護管理者が真にやるべきこと」はこちら 落合実18歳から有床診療所、大学病院、訪問看護ステーションと、働く場所を移しつつ一貫して臨床看護に携わる。現在は、福岡にUターン移住し、ウィル訪問看護ステーション福岡の経営と現場を継続しながら、医療法人や社会福祉法人、ヘルステック系企業のコンサルティングも提供。ウィル株式会社は、訪問看護ステーション事業とフランチャイズ展開のほか、記録システムの開発・販売、採用支援、eラーニング開発・支援などを手掛けている。「スイミー」で小さな魚が集まって苦境を乗り越えられたように、皆で集まることでナレッジシェアができる組織を目指している。乾文良大手ITシステム会社、商社勤務を経て、2016年に株式会社エピグノを共同創業。エピグノで開発・販売している人材マネジメントシステムは、医療・介護領域に特化している日本初の製品であり、モチベーションやエンゲージメントを測定することが特長。エンゲージメントやモチベーション状態が具体的な指標にもとづいて測定され、その見える化を通し、組織と経営両面の健全化を図ることができる。中原淳「大人の学びを科学する」をテーマに、企業・組織における人材開発、組織開発について研究している。著書に、「職場学習論」「経営学習論」「人材開発研究大全」(東京大学出版会)、「組織開発の探究」(中村和彦氏との共著、ダイヤモンド社)、「研修開発入門」「『研修評価』の教科書」(ダイヤモンド社)、「駆け出しマネジャーの成長論」(中公新書ラクレ)、「残業学」(パーソル総合研究所との共著、光文社新書)、「フィードバック入門」「サーベイ・フィードバック入門」「話し合いの作法」(以上、PHP研究所)など多数。記事編集:株式会社メディカ出版 * * * * * ■ナースペーススタディ訪問看護スタッフ向けの完全オンライン教育サービス。専門看護師・認定看護師など、経験豊富な講師陣がスタッフ教育をサポート

「一人訪問」の不安が軽減 訪問看護師1年目のオンライン同行サービス体験記
「一人訪問」の不安が軽減 訪問看護師1年目のオンライン同行サービス体験記
インタビュー
2023年2月7日
2023年2月7日

「一人訪問」の不安が軽減 訪問看護師1年目のオンライン同行サービス体験記

訪問看護師は、基本的に一人で利用者さんの自宅に訪問します。新任訪問看護師に対しては、同行訪問でのOJT(On the Job Training)を行う訪問看護ステーションが多いでしょう。しかし、多忙でなかなか同行訪問に時間をさけないケースも多く、不安を抱えながら一人での訪問をスタートする新任訪問看護師も少なくありません。 「NsPace With(ナースペースウィズ)」は、そうした現場をサポートするオンライン同行訪問サービスです。今回は、実際にNsPace Withを使用したしもふり訪問看護ステーションの文屋佐都美さんに、体験談を伺いました。 しもふり訪問看護ステーション文屋 佐都美さん2018年に新卒で病院に入職。3年間勤務後、1年間介護事業所でホームヘルパーとして勤務。2022年4月より、しもふり訪問看護ステーションへ。利用者さん・ご家族との対話を大事にしている。一人ひとりの状況に応じた看護、「楽しく生きる」ことをサポートする看護を目指して邁進中。 利用者さんとの対話・関係性を大事にしたいという想いから訪問看護師へ ―文屋さんは病棟看護師やホームヘルパーとしてのご経歴がありますが、訪問看護師になったきっかけをおしえてください。 親が介護事業所を経営していて、幼いころから在宅ケアが身近だったこともあるかもしれませんが、ずっと「患者さん・利用者さんとの関わりを大切にしたい」「病気や障害等があっても楽しみながら生きていくためのお手伝いをしたい」という想いを持っていました。でも、病棟看護師時代は日々のルーティン業務に追われて、なかなか患者さんと関わる時間が持てない現実があったんです。次第に在宅の道のほうが合っているのではないかと考えるようになり、病院を退職しました。 退職後は、親の介護事業所でホームヘルパーとして1年間働きました。実際に在宅ケアに携わってみたら、利用者さん・ご家族との対話や、日常生活のなかに入らせていただくことが、本当に楽しかったんです。私には、やっぱり在宅の道が合っていると確信しましたし、看護師として働きたいという想いもあったので、訪問看護師に転職することを決めました。 ―多くのステーションがあるなかで、しもふり訪問看護ステーション様に入職された理由を教えてください。 スタッフ同士とても仲が良く、楽しい雰囲気に惹かれました。また、入職前に同行訪問をさせてもらったのですが、利用者さんとの関わり方が自分の理想どおりだったんです。仲が良いことはもちろん、信頼されて利用者さんの日常生活に溶け込んでいるように感じました。「私もこういう看護がしたい」と思って、しもふり訪問看護ステーションに入りました。 ―初めて訪問看護ステーションで働くにあたって、不安はありませんでしたか? ありました。なんといっても、「一人で訪問する」ことへの不安が大きかったです。病院であれば、何かあっても同じ建物内ですぐに質問をしたり助けを呼びに行ったりできますが、訪問時はそうはいきません。一人で訪問して、きちんと利用者さんと信頼関係を築けるかどうかも不安でしたね。 オンライン同行では、音声や映像を通じて訪問の見守り。質問・相談も可能 ―実際に入職した後の初期研修の内容や、オンライン同行訪問サービスを始めたきっかけについて教えてください。 2022年の4月に入職し、最初は本部での座学研修と先輩訪問看護師の同行訪問研修がありました。同行訪問時に先輩に確認してもらいながら徐々にできることを増やし、OKが出たら一人で訪問する、という流れです。 オンライン同行訪問サービスについては、所長から「使ってみるか」という話がありました。そういったサービスがあることも初耳でしたが、興味があったので「やってみたい」と言いました。 ―オンライン同行訪問サービス利用時の流れについて教えてください。【オンライン同行訪問 当日の流れ】 最初にオンラインで同行していただく看護師さんとの顔合わせ面談があり、自己紹介や目指す看護師像の共有などをしました。 実際に同行訪問する際は、事前に情報共有のためのミーティングがあります。訪問時には、オンライン同行の看護師さんはイヤホンを通じて会話内容を聞いています。基本的にオンライン同行の看護師さんからこちらに話しかけることはありませんが、聞きたいことがある場合にはこちらから声をかけ、その場で相談することもできます。 訪問終了後は、10分~30分程度の振り返りミーティングがあります。一緒にアセスメントを振り返ってもらうほか、次回までに学んでおいたほうがよいこと、調べておいたほうがよいことなどもアドバイスいただきました。 ―オンライン同行訪問サービスを使用するとき、緊張しませんでしたか? 顔が見えない状態ですべての会話を聞かれているので、結構緊張しました(笑)。でも、それは最初だけでしたね。ミーティングを重ねていくうちに同行していただく看護師さんとの関係性ができていきますし、途中からはイヤホンがあっても意識せず、自然体で訪問できるようになりました。 ―ミーティングでは、文屋さんからはどういった質問・相談をされていたのでしょうか。 医療的な質問はもちろんのこと、私は利用者さんやそのご家族を深く理解した上でケアをしたいという想いが強いので、コミュニケーションの取り方や利用者さんに合わせた対応についての相談もしていました。 例えば、「利用者さんに確認したいことがあるけれど、デリケートな話題なのでご家族の前では聞きづらい」と悩んだときには、「シャワー時に確認してみたらどうですか?」とアドバイスをもらいました。また、「教科書通りなら杖を使うほうがいいかもしれないけれど、Aさんの場合は配偶者の方と寄り添って歩くほうが幸せなのでは」といった相談をしたこともあります。 安心感や自信、スタッフ間の連携につながった ―オンライン同行訪問サービスについて、訪問時に感じたメリットを教えてください。 なんといっても、安心感が一番大きいですね。例えば訪問時にサチュレーション(SPo2)が低い利用者さんがいたとき、入職したての時期だったので、普段とは違う様子に焦ってしまいました。でも、オンライン同行訪問サービスの看護師さんにイヤホン越しに報告できたので、その場ですぐに対応方法に間違いがないことを確認でき、その後の報告に関する指示までもらえて、ホッとしたことを覚えています。オンライン同行のおかげで「一人訪問」の不安が軽減しました。 また、自分の看護に対しての自信もつきます。振り返りミーティングで、「この判断がよかったです」「このコミュニケーションの取り方がよかったです」という前向きなフィードバックも毎回いただけたので、「このまま前に進んでいっていいんだな」と思えました。不安軽減や自信につながるので、新任訪問看護師さんたちにはおすすめです。 ―事業所内のスタッフ同士が連携するきっかけにもなったと伺っています。 はい。もともと事業所内は相談しやすい環境なのですが、オンライン同行の看護師さんから確認されたことをきっかけに、「しもふり訪問看護ステーションとしてどういう対応をすべきか」を所長に確認する機会が複数ありました。事業所の方針・ルールの理解につながり、よかったと思っています。 右からしもふり訪問看護ステーション 所長/管理者の木下さん、運営会社ユニメコム代表取締役の木和田さん、文屋さん また、しもふり訪問看護ステーションにはリハビリスタッフもいるのですが、「〇〇についてはリハビリスタッフさんに聞いてみては」といったアドバイスをいただき、リハビリスタッフと連携する際のヒントになりました。しっかりした連携により、排便コントロールがうまくいった利用者さんがいらして、スタッフみんなで喜んだこともあります。 ―文屋さんはまもなく訪問看護師2年目を迎えますが、最後に今後の目標や取り組んでいきたいことを教えてください。 オンライン同行訪問サービスでのアドバイスを通じて初めて知ったことも多く、勉強すべきことがたくさんあると思っています。例えば、家族看護についてもっと理解していきたいですし、排便・排泄コントロールも奥が深いので、もっと知識や経験を積みたいですね。これからも利用者さんやご家族との関係性を大事にしながら、看護師として成長していきたいと思っています。 ―ありがとうございました。 編集・執筆:NsPace編集部 ※本記事は、2022年12月の取材時点の情報をもとに制作しています。 *  *  *  *  ■ナースペースウィズ訪問看護スタッフ向けオンライン同行訪問サービス。訪問看護の現場景観と新任看護スタッフ指導経験のある看護師が同行訪問OJTをオンラインで支援

人材採用難に立ち向かうために~訪問看護と病院看護の決定的な違いとは~
人材採用難に立ち向かうために~訪問看護と病院看護の決定的な違いとは~
インタビュー
2023年1月31日
2023年1月31日

人材採用難に立ち向かうために~訪問看護と病院看護の決定的な違いとは~

エキスパート三者が訪問看護業界での人材戦略を考える特別トークセッションを、今回から4回シリーズでお届けします。第1回の論点は、厳しい状況が続く早期離職・人材採用難に、訪問看護管理者はいかに立ち向かえるのか。解決への手がかりを探ります。 落合実ウィル訪問看護ステーション相談支援チーム、2016年緩和ケア認定看護師教育課程修了。ウィル株式会社を有志と共同設立。現在はウィル株式会社の取締役とあわせ、同社のフランチャイズ事業所の経営者でもある。乾文良株式会社エピグノ代表取締役CEO。医療介護分野に特化した人材マネジメントシステムを、開発・販売・運用している。MBA。中原淳 立教大学経営学部教授。専門は人材開および組織開発。立教大学大学院経営学研究科経営学専攻リーダーシップ開発コース主査。立教大学経営学部リーダーシップ研究所副所長。 訪問看護業界は人員確保が大きな課題 ─ 訪問看護ステーションの休廃止数は2020年で781事業所1)。休廃止の理由として過去の調査2)では、利用者獲得に関する要因に次いで、従業者確保や管理者不足といった人的要因が上位にあがっています。また、5人以下の小規模事業所が62.9%3)と、規模がきわめて小さい事業所が大半を占めることも訪問看護業界の特徴です。 乾さんは、医療・介護といったヘルスケア領域に向けて、エンゲージメント評価のシステムを提供されていますね。訪問看護の世界はどのように見えていますか。 乾: エピグノは、病院や在宅医療、訪問看護、介護の領域で支援を提供していますが、ヘルスケア領域のなかでもそれぞれ業界の特徴があります。訪問看護師さんは、心理的な安全性が担保されにくい職場環境なのかなと感じます。病院や介護施設と比べても、訪問看護はたとえば退職率の高さがかなり深刻です。 退職と採用のループは組織を疲弊させる 中原: 採用しては辞めて……が続くと、組織がどんどん傷んで、疲弊してしまう。そんな状況になってくると、「採用してはすぐ辞める」のループで、採用費だけが膨らんでいきますね。 ─ そうですね。1人の採用費を回収するのに1年かかるのに、早期退職が続いてしまう。そんなことを繰り返されている事業所さんも多いのかなと思いますが、落合さん、いかがですか? 落合: そのとおりだと思います。実はもっと深刻な状況も多くて、だんだんと辞めていくのではなく、1人辞めると「もう危ない」と、一斉退職が起こる。 中原: 退職は「伝染」します。一斉退職、どこの世界でも、あるあるですね。 訪問看護の職場環境は早期離職につながりやすい側面がある 乾: 私たちは、個々人のエンゲージメントやモチベーションの状態を細部にわたって測定していまして、訪問看護業界は特に「自信の高さ」が低い傾向があります。 訪問看護師さんは、病院で研鑽を積まれてから訪問看護に移られるのが一般的ですから、病院と訪問看護とのギャップが大きな要因ではないかと思っています。病院であれば他職種ふくめて周りに多くの同僚がいるけれど、訪問看護師さんはひとりで利用者さんのもとに行く。さらに、訪問看護は小規模事業所が大半で、教育の余裕もなく、入ったらほぼすぐに「ひとりで行ってこい」になる。 訪問看護に飛び込んだ人は、病院とは当然違う環境で、ひとりで利用者さんに対峙しなくてはいけません。そんななかで「本当にこのやりかたでいいんだっけ」「この意思決定でいいんだっけ」という悩みや不安感が、訪問看護師さんには多いなと感じます。 中原: ひとりで仕事をする環境では、フィードバックが働かないし、顧客との関係が悪化すればブラックボックス化する。見える化してうまくマネジメントでケアしないと、あっという間に早期離職にもなりえますね。 営業から人事までを担う、管理者にかかる負荷の大きさ 落合: 訪問看護事業所は、常勤換算で2.5人を満たせないと休止しないといけない。経営者が2.5人を集めることに必死になりがちな構造です。そうなると、定着どころではない。「採用費をどーんと使って3人にしたけれど、3人とも辞めることが決まっている」とか、「いついつには1人辞めてしまって2人になるから何が何でも人を入れないといけない」とか、ずっとそんな状況に追い立てられている印象がすごくあります。 中原: ここまで聞いて真っ先に思ったんですが、これは外の世界からみたら「無理ゲー(クリアが無理なゲーム)」に見えると思いますよ。いわゆる採用―育成―職場改善―離職防止を、経営者や管理者がひとりで実践するのは「無理ゲー」じゃないですか? いや、皆さんとても頑張っておられるのだと思いますが、外の世界からみたら、不思議です。なぜ、ひとりで取り組む「しくみ」になっているのか。分担するしくみや仕掛けはつくられないのか、と。 やるべきことが、本当に、たくさんありますね。採用でプール(将来の採用候補者をためておく)を増やすことと、育成のしくみを整えること。それと、ブラックボックスになりやすい職場・働きかたを、見える化していきながら、エンゲージメントがど・低くならないように何とかマネジメントすることかな。……とは思いましたけど、そもそもの枠組みがすごく厳しいですね。1.顧客(利用者)開拓2.顧客(利用者)へのサービス提供3.従業員採用4.離職防止(育成)を管理者が全部やる。そしておそらく、管理者はプレイヤーのひとりとして訪問もやっているんですよね。 ─ はい、そのとおりです。管理者はマネージングプレイヤーの典型例といえると思います。 中原: これはかなりビジネス的に厳しい状況ですね。一つでも落とすと危うくて、二つ落とせば確実に詰む。 厳しいなかでも、まずはどういうところが最も深刻な障壁になっているのか。そこから解決の道が見えるかもしれませんね。「こうなると事業が回らなくなる、人が回らなくなる」の典型的なパターンがありそうに思えますが、落合さんどうですか。 訪問看護と病院看護とは根幹のルールが大きく異なっている 落合: 病院看護と訪問看護とでは、売上に対して看護師がどう貢献するかが完全に異なるんです。にもかかわらず、そのようにルールが変わっていることを、マネジャーが説明できているかというと、やや怪しい。 少し語弊があるかもしれませんが、病院での看護師は、おもに直接の売上を上げる職種ではない、いわゆる間接部門なんです。売上に直接関与できるのは医師であって、医師の働きで病院にお金が入り、看護師は医師の稼ぎを支えるという収益構造です。ですから病院だと、経営面でみれば、看護師は若いほうがいい。人件費が安いからです。 一方、訪問看護での収益構造では、看護師の働きがそのまま売上です。目的は治療ではなく療養であるところも違いますが、どうやって報酬を得るかの点でも、病院看護の延長線上には訪問看護はない。 大きくゲームチェンジが起こっているんですが、病院から訪問看護にやってきた人に、そんなルール変更の説明もせず(できず)、目の前のOJTだけに終止しているように見えます。それが失敗の原因なんではないかなと。 中原: なるほど、興味深いですね。病院看護をやってきて訪問看護に来る人が多いから、そのキャリア上の連続性と、仕事の連続性を同一視してしまうのが、つまずきの大元。その間には断絶があり、もう完全に違う仕事をやる覚悟を持てるぐらいのアンラーニング注1が必要だということですね。 注1:通用しなくなった知識や常識を捨てて、新たに学び直すこと 「訪問看護は未開の地」は、事実と一致しない神話である 落合: それに加えて、かなり誤解もあると思っています。 乾さんのはじめの言葉は間違いではなくて、訪問看護はひとりで訪問する。でも、病棟看護もひとりなんです。ベッドサイドに行くのはひとりで、何かあったら相談する。エマージェンシーが起こったら応援を呼ぶ。病院でも在宅でも、ベッドサイドにいるのはひとりであって、それは一緒なんですよ。 もっと言うと、在宅には家に帰っていい人か、家で亡くなる覚悟を持った人しかいないんです。なのになぜか、高度医療を24時間365日支えている大学病院の看護師は、新卒も多くて年齢は若い。家に帰っていい人か、家に帰ると覚悟を決めた人しかいない在宅看護は、新卒には務まらなくて40歳代のベテランじゃないと支えられないと思われている。これも結構な勘違いだと。 中原: うん、なるほど。 落合: 病院看護がすごく完成された場所で、訪問看護は未開の地のような、事実ではない価値観もあるなと思います。 中原: おそらく長い間かけて作られてきた「神話」みたいなものですね。そう伝えられてきて、多くの人が信じてしまっているけれど、今のリアルと必ずしも一致しない。そういったものは解除する必要がありますね。 >>次回「学び直しの機会を提供することが重要」はこちら 落合実18歳から有床診療所、大学病院、訪問看護ステーションと、働く場所を移しつつ一貫して臨床看護に携わる。現在は、福岡にUターン移住し、ウィル訪問看護ステーション福岡の経営と現場を継続しながら、医療法人や社会福祉法人、ヘルステック系企業のコンサルティングも提供。ウィル株式会社は、訪問看護ステーション事業とフランチャイズ展開のほか、記録システムの開発・販売、採用支援、eラーニング開発・支援などを手掛けている。「スイミー」で小さな魚が集まって苦境を乗り越えられたように、皆で集まることでナレッジシェアができる組織を目指している。乾文良大手ITシステム会社、商社勤務を経て、2016年に株式会社エピグノを共同創業。エピグノで開発・販売している人材マネジメントシステムは、医療・介護領域に特化している日本初の製品であり、モチベーションやエンゲージメントを測定することが特長。エンゲージメントやモチベーション状態が具体的な指標にもとづいて測定され、その見える化を通し、組織と経営両面の健全化を図ることができる。中原淳「大人の学びを科学する」をテーマに、企業・組織における人材開発、組織開発について研究している。著書に、「職場学習論」「経営学習論」「人材開発研究大全」(東京大学出版会)、「組織開発の探究」(中村和彦氏との共著、ダイヤモンド社)、「研修開発入門」「『研修評価』の教科書」(ダイヤモンド社)、「駆け出しマネジャーの成長論」(中公新書ラクレ)、「残業学」(パーソル総合研究所との共著、光文社新書)、「フィードバック入門」「サーベイ・フィードバック入門」「話し合いの作法」(以上、PHP研究所)など多数。記事編集:株式会社メディカ出版 【参考】1)全国訪問看護事業協会訪問看護ステーション数調査2)全国訪問看護事業協会.「訪問看護ステーションのサービス提供の在り方に関する調査研究事業」2004.3)「第13回8次医療計画等に関する検討会」資料2.厚生労働省,2022.https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000979702.pdf2022/12/15閲覧 * * * * * ■ナースペーススタディ訪問看護スタッフ向けの完全オンライン教育サービス。専門看護師・認定看護師など、経験豊富な講師陣がスタッフ教育をサポート

命まで責任を負う団地自治会のまちづくり
命まで責任を負う団地自治会のまちづくり
インタビュー
2023年1月31日
2023年1月31日

命まで責任を負う団地自治会のまちづくり

在宅医療のスペシャリスト・川越正平先生がホストを務め、生活全般を支える「真の地域包括ケア」についてさまざまな異業種から学ぶ対談シリーズ。シリーズ最終回は、「日本一住みたい」と言われる東京都立川市の大山団地。会長を15年務めた佐藤良子さんに自治会加入率100%、住民主体の運営の秘訣をお聞きした。(内容は2017年5月当時のものです。) ゲスト:佐藤良子東京都立川市大山自治会相談役1999年より東京都立川市の大山団地で15年間自治会長を務める。現在は相談役。在任中に自治会加入率100%、自治会費回収率100%、孤独死ゼロ、格安自治会葬を手掛けるなど、そのアイデアと行動力で「日本一の自治会」と称される自治会を育て上げた。2004年内閣府男女共同参画局「女性のチャレンジ賞」受賞、09年「全国防災まちづくり大賞」受賞、11年東京都地域活動功労者表彰、14年厚生労働大臣賞表彰。 新聞配達も巻き込み孤独死ゼロを達成 川越●大山団地は、自治会活動が評価され「日本でいちばん住みたい団地」といわれています。どれくらいの規模で何世帯の住民がいるんですか。 佐藤●26棟約1,600世帯です。1棟100世帯以上のところはさらに2つに分けているので31区分あります。構成はざっくり高齢者が3分の1、子育て世代も3分の1、残りがその他です。 川越●高齢者の多い団地では、孤独死が重要なテーマになっていますが、大山団地ではどうですか。 佐藤●実は、団地内でも以前、住民が孤独死されました。隣近所に助け合いの意識があれば防げたかもしれないと、以後、見守りネットワークができました。住民には自宅の両隣、つまり2軒のお宅の存在を確認してくださいと呼びかけ、郵便や新聞がたまっていないか、洗濯物はどうか、ゴミを捨てている様子はあるか。もしいつもと様子が違うなら、住民がすぐ自治会に連絡します。自治会の携帯電話を交代で持ち、24時間いつでも対応していました。 川越●まさに向こう三軒両隣ですね。効果はありましたか。 佐藤●てきめんでした。自治会費が毎月集金制なのは、実は安否確認の意味もあるんです。ほかにも、公共料金の検針時に前月からまったく使われていなかったら連絡を、新聞も新聞受けにたまっていたら連絡してもらえるよう6紙の配達所にお願いしました。 川越●お金のやりとりなしに、みんな承諾していただけたんですか。 佐藤●はい。それでも孤独死ゼロになるまで5年かかりました。2004年からは1件もありません。 ゴミ出しボランティアも無償 川越●在宅医療をやっていると、地域包括ケアの行きつくところはまちづくりであることに気づきます。佐藤さんは、そんな地域のしくみづくりに20年近く取り組んでおられたことに驚きました。たとえば、引きこもりの方は把握していますか。 佐藤●いろいろな活動に誘っても出てこないから、わかります。訪問したり電話したりしますが、引きこもりの人って「この人なら話してもいい」と人を選ぶんです。 川越●それは相性なんでしょうか。 佐藤●そうですね。「民生委員さんもお隣さんもだめだけど、○○さんなら入れてくれる」とか。ささいな会話や昔話などからその人の趣味嗜好がわかり、そこから興味がありそうなサークルがあるとか、無料の古い映画上映会があるから来ないかとか、常にコンタクトをとって誘い出します。これでうつ病が治った方もいて、病院の先生がびっくりしていました。 川越●高齢者のゴミ出しはどうなっていますか。 佐藤●捨てに行けないからゴミがたまるわけです。大山団地にはゴミボランティアさんが何十人もいます。玄関先に置いておけば誰かが捨ててくれるしくみで、いつかはわが身だから全部無償です。 川越●団地は1,600世帯もあるわけですから、当然介護を受けている人もたくさんいるでしょう。ヘルパーさんが団地を車で巡っている感じですか。 佐藤●車を使っていますね。警察に申請すると公道に停めることができる許可証をもらえますが、公道から遠い棟の場合は、住民が借りている駐車場で、介護の車に日中貸してもいい人を募って、提供しています。もちろん無償です。 川越●住民の駐車場のどこかが空いている点は、大規模団地のメリットですね。 地域のいろいろな人によって化学反応が起こる 川越●独居の方を自治会で看取ったことはありますか。 佐藤●それはまだないですね。認知症になってひとり暮らしが難しくなった人に施設を紹介したことはあります。 川越●行政との調整が必要になりますね。 佐藤●はい、行政もそうですし、ふだんから近隣のホームともかかわりをもっておくと、施設から「食事を作ってくれるパートの人を紹介してくれないか」という依頼も来るわけです。そうやってお互いに持ちつ持たれつも大事です。 高齢者にはお弁当をとっている人もいますが、いつも家でつくっているお惣菜を少し多めにつくればやれるよねと、グループで食事をつくって提供している人もいます。私はそれが当たり前にできる世の中にしたいんです。 川越●どこまでも地域住民として活動していることが強みです。よく、自治会の役員をやりたがらない人が多いと聞きますが、どうですか。 佐藤●車いすの方が、車いすを押してくれれば会合に行けると言うので、サポーターを付けました。障害のある人が役員になることで、「歩道の凸凹が不便」「集会場の段差が超えられない」など、市への要望がたくさん出ました。健常者には気づけない視点です。班長になると言ってくれた要介護の人にもサポーターを付けて、夜の会議のときには送迎もしました。 川越●医療者は医療、介護者は介護の枠で考えがちなんですけど、そうではなくてみんな地域で生きて生活していて、いろいろな人がいて、そのなかで化学反応が起こるということなんでしょうね。 佐藤●医療も介護も、葬儀にしても、どんな場合でも困らないまちを作ることだと思います。誰かが困っていたら誰かが気がつき支え合える、困らないまちづくり。それが組織を作る上での目標であり、これからも追い続けていくテーマです。 あおぞら診療所院長 川越正平【略歴】東京医科歯科大学医学部卒業。虎の門病院内科レジデント前期・後期研修終了後、同院血液科医員。1999年、医師3名によるグループ診療の形態で、千葉県松戸市にあおぞら診療所を開設。現在、あおぞら診療所院長/日本在宅医療連合学会副代表理事。 記事編集:株式会社メディカ出版 「医療と介護Next」2017年5月発行より要約転載。本文中の数値は掲載当時のものです。

コミュニケーション力で教育や医療を変革し地域を創生する
コミュニケーション力で教育や医療を変革し地域を創生する
インタビュー
2023年1月17日
2023年1月17日

コミュニケーション力で教育や医療を変革し地域を創生する

在宅医療のスペシャリスト・川越正平先生がホストを務め、生活全般を支える「真の地域包括ケア」についてさまざまな異業種から学ぶ対談シリーズ。第13回は、演劇というツールを使いコミュニケーション教育に取り組んでいる劇作家・演出家の平田オリザさんと、医療や教育に必要なものについて話し合った。(内容は2018年7月当時のものです。) ゲスト:平田オリザ劇作家・演出家こまばアゴラ劇場芸術総監督・城崎国際アートセンター芸術監督。国際基督教大学教養学部卒業。1995年「東京ノート」で第39回岸田國士戯曲賞受賞。大阪大学COデザインセンター特任教授、東京藝術大学特任教授、四国学院大学客員教授・学長特別補佐、京都文教大学客員教授、(公財)舞台芸術財団演劇人会議理事長、埼玉県富士見市民文化会館キラリ☆ふじみマネージャー、日本演劇学会理事などを歴任。 医師の診療は患者との対話である 川越●平田さんは、劇作家、演出家としてだけでなく、教育の現場や自治体の依頼で演劇を用いたコミュニケーションデザインを教えていると伺いました。コミュニケーションをデザインするとは、どのようなことなんでしょう。 平田●たとえば「患者が医者に質問しにくいのは、医者が高圧的なのではなく、病院に来るまでに交通機関を乗り継いでへとへとになっているからかもしれない。それなら交通行政を変える必要があり、医療行政だけでは解決しない」というのがコミュニケーションデザインの考えかたです。 川越●がん治療中の人が、電車やバスを乗り継いで1時間以上かけて病院に来ても、外来で医師と話すのはせいぜい15分。医師がその時間で何もかも説明するのは難しく、ましてや患者さんが的確な質問をするのはより難しいでしょうね。 平田●あるセンテンスのなかで、本当に伝えたいこと以外の言葉がどれくらい入っているかを、冗長率といいます。家族との世間話がいちばん冗長率が高いように思えますが、ふだんの会話では、実は冗長率はそんなに高くならないんです。 川越●言いたいことだけを言っているわけですね。 平田●そうです。いちばん冗長率が低いのは、長年連れ添った夫婦間の「飯、風呂、新聞」という会話です(笑)。逆に冗長率が高くなるのは「会話」ではなく「対話」なんです。異なる価値観のすり合わせや新しいことを伝える瞬間なので、どうしても時間がかかってしまう。 川越●医者と患者の関係がまさにそうですね。医師の診察が「対話」だという認識はなかったです。どうしても問診をして、説明するという感じになっています。 平田●いわゆる家庭医、ファミリークリニックで実績のある方たちは、そこがうまい。 都会でも地方でも子どもの地域社会がない 川越●これだけコミュニケーションが大事といわれるのは、現代社会は人と人とのつながりが希薄になってきているからでしょうか。 平田●コミュニケーション能力とは本来、子どもがままごとやごっこ遊びで自然に身につけるものなんですが、少子化や核家族化、地域社会の崩壊などで、そういうことを経験していない子が増えています。特に小学校から私立だと、まず地域社会がない。 地方でも少子化で、隣の友だちの家まで1時間とか、学校の統廃合が進んでスクールバス通学になると、寄り道ができない。子どもにとって通学路ってとても大事なコミュニケーションの場所なんですが、社会が合理的になっていくと、どんどんコミュニケーションの機会が失われます。 川越●確かに電車通学だと、放課後一緒に遊べないですね。 平田●それに習い事などで忙しくて、同じ階層の子としか付き合わなくなってしまう。都心部だと7~8割が中学受験をするので、地域社会が完全に崩壊しているわけです。 川越●都心に住んでいても、遠くの大病院にわざわざ1時間かけて行くのと似ていますね。 平田●私は都内の国立大学でも教えているんですが、学生の8割が男子、7割が関東出身、6割が中高一貫校の出身で、ディスカッション型の授業をやっても、みな同じ意見になってしまう。「貧乏って何?」という感じで、実感としてわからないんですね。 川越●在宅医療はご自宅に行くので、さまざまな家庭があることを自然に経験できて、医療は画一的にはできないことを学ぶんですが、病院しか知らないと、ベッドの上の患者さんは生物としての対象になってしまうのと同じですね。 勉強はできても異性とちゃんと話せない 平田●ある進学校で演劇教育を取り入れているんですが、男子校なので、うちの劇団に「女性との付き合いに慣れさせたいので、そういう劇をやってほしい」というオーダーがくるんです。 それで行ったら、うちの女優が初対面の高校生にいきなり「バストいくつですか」と聞かれたことがあって、保護者会などでこの話をすると、さすがにお母さんたちも焦る。だってそういう子たちが弁護士や医者になるんですから(笑)。勉強はできても、異性とちゃんと話せないんですね。 川越●男性の生涯未婚率が23パーセント(注:2018年時点で最新のデータであった2015年数値)という現実もあり、均質化やコミュニケーション能力が乏しいことが少子化の原因の一つかもしれません。男女交際の話は、もう国家施策としてやったほうがいいかもしれませんね(笑)。でないと国が滅びます。 文化による社会包摂の機能が見直される 川越●これから都市部では孤独死などが増えていくと思いますが、あれはインフォーマルな見守り機能が崩壊しているからだと思うんです。 平田●あとは行政もなかなか手が出せないようなごみ屋敷の問題。あれも完全に社会と隔絶してしまった結果でしょうね。 川越●毎日、何らかのかたちで自然に社会とつながっていれば、そういうことは抑止されるかもしれないですね。 平田●最近、文化による社会包摂機能というものが見直されています。何でもいいから、とにかく社会とつながっていてもらいたいと。 川越●コミュニティとしてのつながりが増えないかぎり、包摂機能は尻すぼみになって、ごみ屋敷や孤独死として顕在化するのでしょうね。 今まで、学校は知識を与える場所、医療機関は医療を施す場所のように思われていましたが、そんな単純な話ではなくなっていて、これからは社会のあらゆるところにコミュニケーション教育をビルトインしていくことが求められているんですね。 >>次回「命まで責任を負う団地自治会のまちづくり」はこちら あおぞら診療所院長 川越正平【略歴】東京医科歯科大学医学部卒業。虎の門病院内科レジデント前期・後期研修終了後、同院血液科医員。1999年、医師3名によるグループ診療の形態で、千葉県松戸市にあおぞら診療所を開設。現在、あおぞら診療所院長/日本在宅医療連合学会副代表理事。 記事編集:株式会社メディカ出版 「医療と介護Next」2018年7月発行より要約転載。本文中の数値は掲載当時のものです。

ホームレスからホームヘルパーへの就労支援を創出し地域共生社会の旗を掲げる
ホームレスからホームヘルパーへの就労支援を創出し地域共生社会の旗を掲げる
インタビュー
2023年1月10日
2023年1月10日

ホームレスからホームヘルパーへの就労支援を創出し地域共生社会の旗を掲げる

在宅医療のスペシャリスト・川越正平先生がホストを務め、生活全般を支える「真の地域包括ケア」についてさまざまな異業種から学ぶ対談シリーズ。第12回は、路上生活者支援に始まり、制度の隙間にある人の生活支援、就労支援も行う「ふるさとの会」の佐久間裕章さん。共生社会のありかたについて話しあった。(内容は2018年11月当時のものです。) ゲスト:佐久間裕章NPO法人自立支援センターふるさとの会理事1996年ごろから山谷地区の炊き出しボランティアとして参加。出版社勤務を経て、1999年、自立支援センターふるさとの会へ事務局長として入職。ふるさとの会理事および有限会社ひまわり取締役を兼任。ふるさとの会は、路上生活者のための居所の提供、ケア付き住宅、就労支援ホーム、精神障害者グループホーム、ヘルパーステーションなど、時代とニーズに応じて多彩な事業を展開している。 すべては山谷の炊き出しから始まった 川越●長い歴史をお持ちのNPOとして、ふるさとの会は以前から知っていました。地域包括ケアシステムが目指す「地域共生社会」と、会の活動は深くつながっていると思います。 佐久間●ふるさとの会は、生活困窮者や路上生活者の炊き出しボランティアとして1990年にスタートしました。僕がふるさとの会でボランティアを始めたのは96年ごろでしたが、1年くらいやっていると、しだいに徒労感を覚えるんです。炊き出しをすることで路上生活の人が減るわけでもない、自己満足じゃないかって。 川越●リーマンショック後の「年越し派遣村」なども有名になりましたが、そこだけやって救えるものでもないということですね。 佐久間●そうなんです。炊き出しは必要だけれども、そのなかで一人二人でも路上を脱して畳の上で暮らせるような支援をやろうと考え、アパートの一室を借りて、食事と相談ができるサロンをつくりました。まずは対象を高齢者に限りました。特に高齢の方は「この冬、越せるかな」というリスクがあるので。ご飯を食べながら話を聞いて、「生活保護を受けて地域で安定して暮らしたい」と希望する人の役所申請に同行しました。 川越●交流できる場をつくり、そこで話がつながった人を行政につなげていったんですね。住所不定でも生活保護は受けられるんですか? 佐久間●受けられます。ただ、なかには、これまで何度か保護を受けたけれど家賃を滞納して失踪したとか、役所に顔を出しにくい人もいるんです。 川越●手続きがちゃんとできれば生活保護につなげられるし、ご本人が申請しづらければサポートするということですね。 NPO法の成立で支援の幅が広がった 佐久間●サロンに食事に来る人で、手伝いをしてくれるリーダー格のような人が、あるとき具合が悪くなって救急搬送されて、脳梗塞か何かで障害が残ったんです。住んでいたのはドヤと呼ばれた簡易旅館で、バリアフリーでもなく、戻りたいのに戻れず、転院を繰り返して病院で亡くなられて。 その方はご自身を、「インパール作戦の生き残り」と言い、みんなを束ねる人間的魅力のある人でした。入院後、山谷に戻りたいと言い続けましたが、僕らは結局、何もしてあげられなかった。 川越●彼らを家に戻せる支援や制度はなかったわけですね。 佐久間●そのうち、役所の人から「そんなに言うならふるさとの会で場所をつくればいいじゃない」と。ちょうどNPO法案が施行されたころで、法人格を取得して事業主体になれると言われて。自前の資源が何もない、力のなさを実感していたので、99年に法人格をとって宿泊所をつくったんです。 ホームレスからホームヘルパーへ 佐久間●このころ初めて「社会的入院」という言葉を知ったんですが、病院を転々として、数ヵ月後に自分がどこにいるかわからないでいる人も、広義のホームレスだと思いました。そこで、ふるさとの会でも介護ができるようなしくみをつくろうと決めたんです。 川越●困窮者支援から住まいの提供、介護も提供できる住まいへと転換していったんですね。 佐久間●当時、山谷はまだ危険な街というイメージで、依頼しても来てくれるヘルパーがいなかった。一方、働く意欲はあるのに長期的な失業状態の方がいたので、その人にヘルパーになってもらおうと(笑)。もともと建設業で働いていた人たちです。機械化が進んで仕事が減っていくし、工法が変わって昔の技術が必要とされなくなってきていたんです。 周囲からは「建設現場の日雇いにヘルパーができるわけがない」とさんざん言われましたが、僕と一緒に勉強して、当時のヘルパー2級資格をとった人がいたんです。新聞やニュース番組でも「ホームレスからホームヘルパーへ」と紹介してもらって(笑)。 川越●成功例があると行政へもアピールしやすくなりますね。 佐久間●その後、東京都がプログラムを組んで、地元の福祉事務所が協力してくれて、12人が修了して、実際にヘルパーとして働きはじめました。 孤立した世帯をまるごと支援 佐久間●介護保険は1人の利用者さんに対する支援ですが、世帯という単位で支援をしていく方向でないと、地域包括ケアはうまくいかないと思います。NPOのいいところは、ニュートラルに部署を横断してかかわれるんです。80代の認知症のおばあさんのところに行ったら部屋の奥に引きこもりの50代の息子さんがいたケースでは、地域包括支援センターと僕らと区の障害福祉課の保健師さんとがチームを組んで、世帯全体を支援することができました。 川越●現状の制度だけでは支援が届きづらい、地域で孤立した世帯をまるごと支援することも、地域包括ケアシステムの大切な役割です。 佐久間●地域就労支援や共生型サービスなどは、今の縦割りの政策では難しいところがありますが、これからは地域のなかで一つまるごと支援という方向も必要だと思います。地域包括ケアシステムも、当初はそれぞれのイメージがバラバラでした。10年、20年という単位でやっていくと、だんだんと浸透していくと思うんです。 川越●短期間にあれもこれもはできないことを認めた上で、10年後にこんな地域共生社会がくることを目指して取り組むことが大切ですね。 自分たちも医療の面から、住みやすい地域づくりにかかわっているわけなので、同じところを目指しているのですね。ありがとうございました。 ─第13回に続く あおぞら診療所院長 川越正平【略歴】東京医科歯科大学医学部卒業。虎の門病院内科レジデント前期・後期研修終了後、同院血液科医員。1999年、医師3名によるグループ診療の形態で、千葉県松戸市にあおぞら診療所を開設。現在、あおぞら診療所院長/日本在宅医療連合学会副代表理事。 記事編集:株式会社メディカ出版 「医療と介護Next」2018年11月発行より要約転載。本文中の数値は掲載当時のものです。

地域を巻き込みまちづくりをデザインする
地域を巻き込みまちづくりをデザインする
インタビュー
2022年12月27日
2022年12月27日

地域を巻き込みまちづくりをデザインする

在宅医療のスペシャリスト・川越正平先生がホストを務め、生活全般を支える「真の地域包括ケア」についてさまざまな異業種から学ぶ対談シリーズ。第11回は、「ものをつくらないデザイナー」として自治体からひっぱりだこの山崎亮さんから、まちづくりやワークショップの極意を聞いた。(内容は2016年7月当時のものです。) ゲスト:山崎 亮(コミュニティデザイナー/株式会社studio-L代表取締役)大阪府立大学大学院農学生命科学研究科修士課程修了(地域生態工学専攻)。株式会社エス・イー・エヌ環境計画室を経て、2005年studio-L設立。東北芸術工科大学芸術学部コミュニティデザイン学科教授(学科長)。2013年東京大学大学院博士課程修了。慶応義塾大学特別招聘教授。著書に「コミュニティデザインの源流」(太田出版、2016)「ケアするまちのデザイン」(医学書院、2019)などがある。 ヒアリングはアウェイではなく相手のホームで聞く 川越●地域包括ケアには、まちづくりが重要といわれています。山崎さんのお仕事であるコミュニティデザインはまさに人の集う場、居場所づくりに関連していますね。 山崎●コミュニティデザイナーは、地域のコミュニティとともに未来をデザインしていく仕事です。仕事の8割は自治体からの依頼で、たとえば東京都墨田区の食育計画にかかわったのですが、区民の健康的な食事を考えるときには、健康づくりや未病、環境に対する配慮やゴミの問題、郷土の歴史を含めた地域に関することや、教育などについても考えていきます。そのような計画は住民が参加しないことには意味がないので、地域の人々に集まってもらい、一緒に計画を作っていきます。 川越●建築・デザインの専門家である山崎さんが、地域の人とどのように共同作業を進めていくのか興味があります。 山崎●地域をフィールドにするコミュニティデザイナーは、誰とでもすぐ友達になれる力が必要かもしれません。「あの人は話しやすい」と思われる関係性を作っておくと、必要な情報がスーッと下りて来る。 川越●地域包括ケアでいろいろなセクターの人が共同で仕事をするとき、そういうふうに黙っていても情報が入ってくるのは「技術」だと痛感します。 山崎●自治体の地域計画などは、ユーザーが目に見えず、誰にどうやって意見を聞けばいいのかわからない。それで、ワークショップという形で地域の人の話を聞き、計画の設計に反映させていくことにしました。実際に地域で行動を起こしていくことが大切ですから、合意形成だけではなく、主体形成みたいなものをつくっていきます。 川越●地域包括ケアの文脈でいうと、地域ケア会議が地域課題の抽出や解決策の検討の場になるという発想ですが、今のところ抽象概念にとどまり、やっていることは地域によってまちまちです。 山崎●会議をやるから集まりましょうではなく、こちらから行くほうがいいですね。会議室に来てもらうと緊張して本音が出ない人も多いので、僕らは最初のヒヤリングでは職場や自宅で話を聞くようにしています。 川越●ホームかアウェイかで言ったら、相手のホームに出掛けていくほうがいいということですね。 山崎●そうです。相手のホームなら、話題に困ったときも話のきっかけとなる情報がその場所にたくさんあるので、目に入ります。そうやってヒヤリングを行い、100人の人の配置がわかると、ようやくワークショップの参加者募集をかけていきます。 ワークショップは合意形成から主体形成まで担う 川越●今、「地域づくり協議体」という会議を各自治体でやることになっていますが、山崎さんがおっしゃるように、まずは話を聞きに行くほうがはるかに実践的な方法ですね。 山崎●ワークショップの参加者は公募が前提です。テーマに沿ったアイデアを出し合うほか、課題とまったく関係のない、参加者自身がやってみたいことを発言してもいい。1チームは7人くらいで、数回メンバーを替えながらやっていくと、何となく「この人とこの人は意見が合う」というのがみえてきます。 地域包括ケアのケースなら専門職に入ってもらい、住民の方たちと地域を調査し、今ある社会資源とやりたいことをどう組み合わせられるか、アイデアを合意形成として出してもらう。そして、何ができるかが見えてきたらチームビルディングを行います。つまり主体形成です。ここからは実行してもらう段階で、社会資源となるような活動をそれぞれのチームに生み出してもらいます。 「楽しい」「かっこいい」を加えるとまとまりやすい 川越●山崎さんのお仕事は、地域医療や福祉など、地域包括ケアシステムで行なっていることと同じ方向を探っていると思うのですが、こちらはなかなか定着・持続という形で発展させていくのが難しいですね。 山崎●僕自身は今、社会福祉に恋をしていて、社会福祉士の勉強をしているんです。今やっと就労支援のところまできましたが、19科目全部面白いです。バイスティックの原則とか、これはコミュニティデザインに絶対必要なことだとか、たくさんの気づきがあります。 川越●かつてはその分野の専門家だけですむ時代でしたが、今は他分野の専門家と専門家をどうつなぐか、市民がどう参加するかが求められています。つなぎかたを考える役割の人が必要だと痛感します。 山崎●自治体の施策は、税金を使うために議会で説明する必要があるので、どうしても「正しさ」を訴えてしまいますが、ワークショップでは、「正しいとは何か」を議論すると、それぞれの「正しさ」をぶつけ合ってしまい、まとまらない。そこに「楽しい」「かっこいい」「美しい」など感性の要素を入れるとまとまりやすくなるんです。 理性だけの「正しさ」では動いてくれなかった人も、地域包括ケアが楽しかったり、かっこよかったりすれば、動き出していく。感性に訴える、広い意味での美しさをデザインすることを意識しています。 川越●山崎さんのお話をうかがって、ファシリテーターとして企画を練ったり、関係者にどう依頼すれば人が集まるのかなど、専門職とは関係ない能力のほうがはるかに大事だなと思いました。そして、ワークショップに象徴される関係性づくりや合意形成があって、初めて新しい動きが生まれてくるのですね。 ー第12回に続く あおぞら診療所院長 川越正平【略歴】東京医科歯科大学医学部卒業。虎の門病院内科レジデント前期・後期研修終了後、同院血液科医員。1999年、医師3名によるグループ診療の形態で、千葉県松戸市にあおぞら診療所を開設。現在、あおぞら診療所院長/日本在宅医療連合学会副代表理事。 記事編集:株式会社メディカ出版 「医療と介護Next」2016年7月発行より要約転載。本文中の状況などは掲載当時のものです。

根気強く話を聞いて介入を拒む人の心を開く
根気強く話を聞いて介入を拒む人の心を開く
インタビュー
2022年12月13日
2022年12月13日

根気強く話を聞いて介入を拒む人の心を開く

在宅医療のスペシャリスト・川越正平先生がホストを務め、生活全般を支える「真の地域包括ケア」についてさまざまな異業種から学ぶ対談シリーズ。今回のゲストはセルフネグレクトの研究に取り組む岸恵美子教授。地域づくりに欠かせない、高齢者や認知症を持つ人の孤立化防止を語り合った。(内容は2015年11月当時のものです。) ゲスト:岸 恵美子(東邦大学看護学部教授)日本赤十字看護大学大学院博士後期課程修了。看護学博士。保健師として勤務した後、自治医科大学講師、日本赤十字看護大学准教授、帝京大学大学院医療技術学研究科看護学専攻教授を経て現職(看護学部長と大学院看護学研究科長も兼任)。研究テーマは高齢者虐待、セルフネグレクト、孤立死など。 「ごみ屋敷」には支援が必要な人が住む 川越●岸先生は、高齢者虐待の研究からセルフネグレクトの研究に至りました。きっかけは何だったのでしょう。 岸●家族から心理的虐待を受けるうちに「自分はどうなってもいい、早く死にたい」と考えるようになっていく高齢者が大勢いました。でも近所や家族に迷惑をかけるから、自殺はしない。このまま静かに死んでいきたいとおっしゃる。そこで、虐待からセルフネグレクトに陥ることがあるとわかりました。 川越●セルフネグレクトのなかでも中核的なのが、「ごみ屋敷」ですね。 岸●ごみ屋敷に住む人たちは、最初は全然会ってくれない。でも不衛生な環境にいますし、明らかに支援の対象だと気づきました。なかには治療が必要な場合もありますから、まずはどう受診につなげるかが重要です。 川越●先生の著書(『セルフ・ネグレクトの人への支援』中央法規出版)に、ライフラインを止められても生活している事例が紹介されていますが、自治体に通報されるしくみはないんですか。 岸●自治体が個人情報保護法に縛られすぎて、民生委員からも「気になる人がいて訪問したいけど、情報がない」という話も聞きます。地域包括支援センター(以下、「包括」と称する)でさえ情報をもらえないことは多いですから。こういう場合は特例として個人情報を開示していいはずなんですが。 キーパーソンが病むと家族全体が崩れていく 川越●ごみ屋敷に限らず、広い意味でのセルフネグレクトの人たちはどのくらいいるんでしょう。 岸●2014年に全国的な自治体調査をしましたが、回答率が4割程度と低い。そもそも日本ではセルフネグレクトの定義が定まっていないので、調査するときに対象者の例を出しているのですが、「把握していない」という回答が多いですね。 川越●対象者には、認知症、統合失調症、アルコール依存なども入ってきますか。 岸●そういう人たちが孤立することが問題なんです。高齢の親と障害者の子どもという家族では、うまく介護できなくて、孤立していきます。こうなると、家族ごとセルフネグレクトになってしまいます。 川越●家族それぞれが問題を抱えているお宅では、患者自身がキーパーソンのため、家族全体まで崩れていくケースを在宅診療でもしばしば遭遇します。 岸●そうなる前の対策として、自治体は懸命に見守りをやっていますが、見守りの担い手(民生委員)が高齢者なので手が回らない。今まで困難事例といわれていた人は、実はセルフネグレクトかもしれないんです。 「帰れ」は「来るな」のサインではない 川越●本当は支援が必要なのに、助けを求める力がないんですね。 岸●そうなんです。訪問して「帰れ」と怒鳴られても、それが「来るな」というサインとは限らず、他人とほとんどコミュニケーションしていない人は、そもそも伝えかたがわからない。なぜ拒否しているのかをアセスメントしないといけない。疾患だけでなく、遠慮や気兼ね、過去に対人関係のトラブルがあって、他人とかかわりたくないという人もいます。 岸●人には自由権があるので、本人の意思を尊重しないわけにはいかないですし、明らかに医療が必要でも、本人が拒めば無理やり救急車に乗せることはできない。結局、繰り返し話を聞いていくなかで折り合いをつけていく、根気強い対応が必要です。 川越●そうしたなかで、拒否されていた人が心を開くきっかけはあるんですか。 岸●最も多いのは、自分の具合が悪くなったときです。急に痛くなったり立つのが大変になったりすると、病院に行ったほうがいいかなと思うようです。 訪問先で血圧を測って「今日は高いですね」と言うと、みなさん数値は気にするので、それで受診につながったりすることもありました。疾患を早く発見するという点では社会福祉協議会や包括が医療にももっと介入してほしいですね。 川越●北区の包括には、医師が支援につながらない認知症の人たちの訪問相談をするサポート医事業がありますね。 岸●サポート医事業で初めてごみ屋敷に踏み入る医師もいるわけです。拒否していた人でも、医者の話だと聞いてくれて、そこで一気に話が進む人もいます。 ごみ屋敷の場合、入院・入所がきっかけで、片づけが進むこともあります。入院して清潔な病室でおいしいものを食べているところに、「もうすぐ退院だけど、あの家には帰れないよね」と言うと、片づけを了承してくれる。もちろん、その前から少しずつかかわりを持って信頼関係を築けていないとだめですが。 基本的な生活を支えるサービスが必要 岸●高齢者の多い地域でよく話題となるのは、ごみの分別問題。認知機能が低下してくると、分別ができずにごみを出さなくなってしまうので、たとえば「目が悪くなって分別が大変」などの理由で分別免除シールみたいなのがあるといいですね。そうすると出しやすくなって家にため込まないと思うんです。 川越●分別ができなくなって、ごみ屋敷になってしまう人もいるんですね。配食サービスをやっている自治体は多いですが、それより前の段階で、ごみを出す支援があってもよさそうです。 岸●人が食事をするかぎり、絶対にごみはたまっていきます。ごみ出しにヘルパーさんを使おうにも、要支援にならないと使えない。庭の草むしりなども自分でできなくなると「いいや」と荒れ放題になる。介護保険以前の基本的な生活を支えるサービスが広がるといいと思います。 ー第11回に続く あおぞら診療所院長 川越正平【略歴】東京医科歯科大学医学部卒業。虎の門病院内科レジデント前期・後期研修終了後、同院血液科医員。1999年、医師3名によるグループ診療の形態で、千葉県松戸市にあおぞら診療所を開設。現在、あおぞら診療所院長/日本在宅医療連合学会副代表理事。 記事編集:株式会社メディカ出版 「医療と介護Next」2015年11月発行より要約転載。本文中の状況などは掲載当時のものです。

対話で変わる精神医療のありかた――オープンダイアローグとは何か
対話で変わる精神医療のありかた――オープンダイアローグとは何か
インタビュー
2022年11月29日
2022年11月29日

対話で変わる精神医療のありかた――オープンダイアローグとは何か

在宅医療のスペシャリスト・川越正平先生がホストを務め、生活全般を支える「真の地域包括ケア」についてさまざまな異業種から学ぶ対談シリーズ。第9回は、医療者・患者・家族が平等に語り合うフィンランド発祥の精神医療の新潮流、 オープンダイアローグについて語りあった。(内容は2018年1月当時のものです。) ゲスト:森川すいめいみどりの杜クリニック院長、精神科医、鍼灸師明治国際医療大学、日本大学医学部卒。国立病院機構久里浜医療センター勤務を経て、現在、医療法人社団翠会みどりの杜クリニック院長。ホームレス支援を行うNPO法人TENOHASI理事、認定NPO法人「世界の医療団」理事、同法人「東京プロジェクト」代表医師。著書に「漂流ホームレス社会」(朝日文庫)、「その島のひとたちは、ひとの話をきかない」(青土社)などがある。 対話によって入院患者が40%に激減 川越●精神科治療の分野で注目されているオープンダイアローグについて教えてください。 森川●オープンダイアローグは1984年にフィンランドのケロプダス病院で生まれた、開かれた対話による精神医療形全体を総称したものです。ニーズを聞いて、それに対する包括的なケアをするという考えかたを基礎にしています。 それまでは本人や家族が不在のなかで、医療者によって治療方針が決まっていったのですが、意思決定の場に本人と家族を招き、まずは両者に「ご加減いかがですか」と聞きはじめたのだそうです。ただそれだけで、入院患者が40%に減るということが起こりました。いかにそれまで本人の声を聞かなかったか、家族の声がそこになかったかがわかったともいえます。 川越●それまでは「精神疾患の人は自分で意思決定できないだろう」と判断されていたということですね。認知症の人の場合も同じ状況だといえそうです。 森川●もう一つ、「一対一で会わない」という決めごとがあります。医療者と患者だけだと、どうしても力関係が生じて対等になりにくい。でも複数の参加者がいて、そこにいるすべての人の声が同等に大切にされるように工夫されていくと、互いの関係性が対等になりやすくなる。本人の困りごとを共有している人が同席するので、学校の先生や近所の人も参加できます。 病名よりもその人の困りごとが大事 川越●認知症専門医が「これはレビーだ」「アルツハイマーだ」と診断するより、その人が何に困っているのかに注目しなさいということですね。 森川●はい。生きていくことにおいて困っているときに、病名が役立つことはあまりありません。求められていることは、困りごとについて一緒に考え試行錯誤していくことです。 川越●オープンダイアローグを行うためには、どんなトレーニングが必要なんですか。 森川●人は誰でも赤ちゃんのころから、言葉だけじゃなく体でも対話しています。でも大人になって頭で考えるようになると、そのやりかたを忘れてしまう。頭で考えることを外していく作業です。 川越●言葉だけじゃない、体を使った対話というと、ユマニチュードなどもそうですね。 森川●「オープン」といっても何でも話すという意味ではなく、本人たちにとって開かれている場であるという意味です。また、ダイアローグという言葉には、ギリシャ語で「あなたとわたしは違う存在」という意味があります。互いに違う人間だと確信し、相手を知らないと知ることから対話が始まるんです。 川越●日本の精神医療は「来ない人は診ない、治す気がない人は診ない」というスタンスが一般的ですが、それでは認知症やセルフ・ネグレクトの人などは診ないことになります。引きこもりの人やアルコール依存の人など、医療を断固拒否する人はどうしますか。 森川●家に行くための時間がつくれないのが今の精神医療の現状ですが、それをオープンダイアローグでは上手にマネジメントして、医療チームが外に出られるようにしました。 人生にかかわる症状が対話により解消 川越●オープンダイアローグの手法は、日本でも広がっていますか。 森川●日本でも広がりつつあり、私のクリニックでも2年前から実践しています。まずは日本の制度を使って、どう工夫するか。対話の場には医師がいなくてもいいので、訪問看護の制度でもオープンダイアローグが成り立ちます。セラピストとしての訓練はしなければなりませんが、精神科訪問看護は2人訪問が可能なので。私の場合は訪問診療という形で、対話をしに行きます。 先日は、高齢で幻覚・妄想が強くなった方のところで対話をしました。薬も全然効かなかった人です。その人は、家に泥棒が入るという幻覚・妄想を、家族を巻き込んで警察にまで相談していました。そこでわれわれは幻覚の問題はいったん置いて、本人と家族の困りごとを聞いていきました。幻覚として人が家に入ってくるということ。そのことに対して警察も家族もまともに対応してくれない。病気扱いされてしまう。それがどれほど本人にとって悔しいことかも見えてきました。 川越●思いを大切にすることで、安心するんですね。 診断や薬を使う前にまず対話を 森川●本人の気持ちを丁寧に扱っていくことができた。それが、本人にとっても家族にとってもよいことだったようです。閉じこもっていた人だったのに、デイサービスにも行くようになりました。人生にかかわっている幻覚を、対話によってみんなで共有することで、もう一度、人生に寄り添えるようになる。目的は治療ではなく、対話ができたことなんです。 川越●オープンダイアローグの手法を使って、同じ価値観、同じ方法論で情報が共有できると、物事が全部つながって、見える世界が変わってくる気がします。医療はどうしてもヒエラルキーのある世界で長年積み上がってきているので、まずはその考えかたを変えることが必要ですね。 森川●薬を使わない療法だというと、反対する人が多いんです。伝えかたが難しい。「診断や薬を考える前にまずは何度も対話をして、困りごとが何かを考えていこう」ということであって、対話で治すとか、そういうものではありません。 川越●大切なのは、医療の枠にとらわれず本人のニーズを基として何をするかという、人生にかかわる話ですね。 森川●本当に思います。そう簡単には広がらないとは思いますが、オープンダイアローグ、丁寧に広めていきたいですね。 ー第10回に続く あおぞら診療所院長 川越正平【略歴】東京医科歯科大学医学部卒業。虎の門病院内科レジデント前期・後期研修終了後、同院血液科医員。1999年、医師3名によるグループ診療の形態で、千葉県松戸市にあおぞら診療所を開設。現在、あおぞら診療所院長/日本在宅医療連合学会副代表理事。 記事編集:株式会社メディカ出版 「医療と介護Next」2018年1月発行より要約転載。本文中の状況などは掲載当時のものです。

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