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インタビュー
2021年5月18日
2021年5月18日

スタッフのモチベーション向上・維持を意識した環境づくり

訪問看護ステーションハートフリーやすらぎでは、スタッフのモチベーションの向上と維持のためにどのようなことを意識しているのか、引き続き常務理事の大橋さんと所長の田端さんにお話を伺います。 資格を積極的に取りに行ける環境を提供 ―ハートフリーやすらぎでは、資格取得や研修を受けに行きやすい環境が整っているのでしょうか? 田端: そうですね。2010年に大橋さんが認定看護師資格を取りに行き、「すごく勉強になるし、うちのスタッフみんなにも取ってほしい」と言われてから私も興味が湧き、2012年に訪問看護の認定看護師資格を取りました。大橋さんというロールモデルがいたおかげで、利用者さん宅に訪問する姿、地域の医師やケアマネとの連携のやりとりなど、間近で魅力を教わることができたんです。 2018年には、特定行為研修も受講しました。病院での胃ろうの交換には、ヘルパーさんの付き添いやタクシーの予約、移動の準備、病院での待ち時間などの負担がかかり、たった10~15分の処置に多大な労力が必要です。これが家でできれば、利用者さんが地域で暮らしていくのに役立つ資格ではないかと。 ―受講にあたり、金銭的補助はありましたか? 田端: 資格取得や研修に関しては出勤扱いで給料保障(ボーナス含む)をしてくれました。 なかなか、個人の訪問看護ステーションではこうした保障はないですよね。仕事を辞めてきたり、休職扱いで貯金を切り崩していたり、という人も多かったので…。学びやすく、研修に出やすい環境を整えてもらっています。 「オールOK」の精神でスタッフを後押し ―大橋さんはどうして、資格や研修などスタッフの学ぶ環境を後押しされているのですか? 大橋: もう私は、「ええやん、ええやん」言っているだけです。私が若いときに学びたい意欲が強かったのですが、「研修に行きすぎ」「あなたは2回行ったから、次はあの人に」と、頭から抑え込まれていたことがありました。別に研修に行きたくない人に嫌々行ってもらうくらいなら、学びたい人が行ってシェアすればと思っていました。 なので、自分がトップになったときには「オールOK」でやりたいと。学びたい人はどんどん学べ、学びたくない人は学ばなくてもいいと…。 ただ、学んだ人がそばにいることで、周りも自然に学べる。それは田端さんから教えてもらったことです。 褒めることがスタッフの活力に ―看護師さんからの人気が高く、魅力あふれるハートフリーさんですが、その理由はなんでしょうか? 田端: うちの看護師はみんな元気で、生き生きしているとよく言われます。それがいい看護に繋がり、患者さんや家族にもいい影響を与えると大橋さんからもずっと教えられているので、みんなで引き継いでいこうという思いがあります。 大橋さんは結構小さなことでも褒めてくれますね。「ありがとう」は毎日言うし、「今日の髪型似合っているな~」と何気ないことから、看護のことまで。利用者さんの家族がこう言ってくれていたという話を私から大橋さんに報告すると、スタッフ本人に「聞いたで~」と言いに行きますから。 大橋: 褒め言葉は無料ですから。特に褒めることは大事にしています。しかも一対一で、一人ひとりを特別に褒めます。 田端: 半年に1度、人事評価がありますが、一般的には課題や改善点を言われて、ネガティブなイメージも多いと思います。そこでも、必ず褒めることをしています。「ここができていないから頑張ろう」ではなくて、「ここができていたね、また頑張っていこう」と。 大橋: できていないところが目につくかもしれないけど、できていないところをわざわざ面接の場で言うなんて、管理職としてはあってはならないと思っています。その都度、注意したらいいんです。 「1週間前のあれな~」と言うなんて、こんな注意のしかたはありません。だから、人事評価ではしっかりとできていたことを褒める、そうしたらスタッフは元気に部屋を後にしますよ。 人事評価はご褒美をいただくような場であるべきだと思っています。 ** 医療法人ハートフリーやすらぎ 常務理事・統括管理責任者 大橋奈美   三次救急で8年、看護短大の非常勤講師として1年、公立病院で5年勤務の後、ハートフリーやすらぎを立ち上げる。 日本訪問看護認定看護師協議会 代表。 医療法人ハートフリーやすらぎ 訪問看護ステーション所長 田端支普  総合病院の小児科を含めた混合病棟で6年、産婦人科混合病棟で4年勤務後、ハートフリーやすらぎに入職し、訪問看護師に。2012年に訪問看護認定看護師の資格を取得。2018年に特定行為研修修了。

インタビュー
2021年5月11日
2021年5月11日

退院後の子どもや家族が安心して生活できる環境を

都内23区を対象エリアとし、小児に特化した訪問看護ステーションとして育児支援サービスを提供しているベビーノさん。今では、小児に特化した訪問看護ステーションの数も増えてきていますが、所長の平原さんはNICUでの長年の経験を活かし、退院後の子どものサポートが手薄だったころに訪問看護ステーションを立ち上げました。 開設してから10年という月日の中で、真摯に子どもと家族と向き合ってきた平原さんにお話を伺います。 ベビーノはなぜ小児に特化したのか ―ベビーノの事業内容について教えてください。 平原: NICUから退院してきた未就学児を対象に、医療保険で訪問が可能な方に看護を提供しています。事業所は新宿にありますが、訪問エリアは23区に対応しています。開設した当初は新宿や中野のエリアを想定していましたが、大学病院にはいろんなところから通ってきている家族も多く、退院後の住所がバラバラだったため、対象エリアを広げました。 ベビーノでは小学校に入るまでに今後の見通しを立て、繋げていく役割を担っています。小さく生まれた子どもや生まれながらに障がいがある子どもは、酸素や経管栄養を使うこともありますが、その後普通に保育園や小学校に行く子もいますし、反対に疾患や障がいが複雑になっていく子もいます。前者の場合には、医療サービスから福祉や教育のサービスに繋げていき、後者の場合には訪問看護ステーションを併用する必要も出てくるため、一緒に探していきます。だいたい3歳くらいで今後の見通しを考え始めて、子ども本人の状況とご家族と相談しながら決めていきます。 NICUからお家に帰ってくる子どもや家族をしっかりサポートしていきたいという思いから、乳幼児専門の訪問看護をしています。 ―ベビーノさんでは、どのようなケースが多いのでしょうか。 平原: NICUは、生まれてすぐに医療的なサポートが必要な子が集まっているので、小さく生まれた子や、心臓や脳の疾患など、本当にさまざまです。24時間呼吸器管理が必要な子もいれば、ちょっと小さく生まれはしたけど、医療ケアは必要なく、だけどご両親の不安が強いために、精神的なサポートも含めて訪問に行くこともあります。ご両親の精神面が不安定になると、子どもの体重の増えが悪くなることもあります。その場合には、医療保険で訪問をしているので、体重増加不良などの疾患名がついて訪問に行きますが、全体的に子どもたちの健康を守るために、子どものケアはもちろんですが、家族看護という視点で入らせてもらうことがほとんどです。 病院、他のステーションとの連携 ―病院との連携はどのようなことをされているのでしょうか。 平原: 子どもの訪問看護の場合には、ケアマネージャーがいるわけではないので、病院のソーシャルワーカーが地域のサービスに繋げるために動きます。そこでケースに入らせてもらうことが多いです。24時間医療ケアが必要な子どもの場合だと毎日のように訪問看護が入るので、訪問看護も2社使っていることがあり、一緒に組んで入らせてもらいます。 今は新宿にある病院だけではなく、母子医療センターがある病院とはだいたい連携をとらせてもらっています。開設した当初は「子どもの訪問看護って何?」という状態だったので、こちらからこういうサービスを行っていると病院に直接話をしに行くこともありました。今は、子どもたちに訪問看護を入れるのが当たり前になってきたので、病院からの連絡で訪問看護に繋がることがほとんどです。 ** 訪問看護ステーションベビーノ所長 平原真紀 (助産師、看護師) 大学病院のNICUで勤務し、主任を経験した後、2010年に訪問看護ステーションベビーノを開設。当時はNICUから退院した子どものサポートがなかったため、育児支援サービスとして乳幼児専門の訪問看護を提供している。 ※本記事への写真掲載はご家族の許可をいただいております。

インタビュー
2021年5月11日
2021年5月11日

利用者とスタッフの思いを反映する先進的な訪問看護ステーション

大阪市住吉区にある「医療法人 ハートフリーやすらぎ」。その訪問看護ステーションで、スタッフが生き生きとして働けるよう、さまざまな取り組みをされているのが、常務理事の大橋奈美さんと、訪問看護ステーション所長の田端支普さんのお二人です。今回は事業内容や職場環境についてお話しを伺いました。 常勤看護師17名が在籍する訪問看護ステーション ―ハートフリーやすらぎの事業内容について教えてください。 田端: ハートフリーやすらぎは医療法人で、『地域住民の命と尊厳を守ります』という法人理念のもと、診療所、訪問看護ステーション、居宅支援事業所、ナーシングデイを開設しています。 訪問看護ステーションは、2004年に2.5人からスタートし、現在では常勤看護師17人、非常勤看護師1人で運営しています(2021年1月時点)。訪問認定看護師、認知症認定看護師に加えて、特定行為研修(創傷管理関連、ろう孔管理関連、精神および神経症状に係る薬剤投与関連)を修了した看護師が在籍しています。 訪問看護での気付きからナーシングデイを開設 ―ナーシングデイの概要を教えてください。 田端: 小児医療が発達し、500gに満たない赤ちゃんも助かる時代になっています。しかし、なんらかの障害を持ちながら退院することが多く、その子たちが自宅に帰ってきたときに使えるサービスが余りにも少ないという現状があります。 ママが24時間離れずに吸引し、ちょっと散歩に行くにも器材など準備をしないと外出できず、ママが引きこもりになっている。そういうママたちがゆっくりお茶をしたり、安心して美容室に行けたりする時間を提供できるように、小児をメインとしたナーシングデイをオープンしました。 大橋: ナーシングデイは2020年の1月から全国で13か所目、大阪では1か所目として開設しました。障がいを持った子どもの親御さんとの出会いがきっかけです。障がいを持った子どもは、特別支援学校に通うまで受け皿がないので、ナーシングデイを立ち上げて全国にも広げていく必要があると考えました。 田端: 訪問看護では1時間や1時間半と限られたなかでの関わりですが、自分が見ていた部分は本当に少ないものだと、ナーシングデイをはじめてからよくわかりました。1日6~8時間と一緒に過ごすなかで、1日の変化や非言語的コミュニケーションも段々とわかるようになり、お母さんたちと一緒に育てていく気持ちで関わらせてもらっています。 ナーシングデイに通う子どものお母さんたちからは、「お風呂に入れるのが大変だったのですごく助かります」と言ってもらえています。何より、お母さんのリラックス具合がすごく変わりました。それが子どもにも大きく影響していると思います。 訪問看護でのニーズや看護師の意見・思いが反映される職場環境 ―訪問看護からニーズを感じてデイを作られたと思いますが、看護師の意見や思いが反映される法人の姿勢についてどう思われますか? 田端: 大橋さんの力が強いですね。ないものを作っていこうというパワーがあって、先見の明というか、必要なものを早いうちに取り入れていこうとされています。情報収集をいろいろなところでされていたり、常務理事という立場で経営にも参加されていたりと、新しいことを取り入れるために動かれています。「自分たちのステーションさえ良ければいい、ではなくて、法人全体の底上げをしていこう」とよく言われていますね。 常務理事になられたときに、経営の知識が欲しいと盛和塾に行き、経営について学ばれていました。学んだ内容について管理者への伝達講習があり、経営の考え方や人材の管理方法、新しい事業の進め方などをみんなで勉強させてもらっています。毎月の収支はスタッフが見られる場所に貼り出していて、収支の増減について原因を伝えるようにしています。 大橋: これまでは、訪問看護ステーションで利用者さんに対してケアをしてきましたが、ナーシングデイのように組織として地域貢献や社会貢献をするフェーズに来たとも感じていて、今後はより広い視野で活動をしていきたいと思っています。 ** 医療法人ハートフリーやすらぎ 常務理事・統括管理責任者 大橋奈美   三次救急で8年、看護短大の非常勤講師として1年、公立病院で5年勤務の後、ハートフリーやすらぎを立ち上げる。 日本訪問看護認定看護師協議会 代表。 医療法人ハートフリーやすらぎ 訪問看護ステーション所長 田端支普  総合病院の小児科を含めた混合病棟で6年、産婦人科混合病棟で4年勤務後、ハートフリーやすらぎに入職し、訪問看護師に。2012年に訪問看護認定看護師の資格を取得。2018年に特定行為研修修了。

インタビュー
2021年5月6日
2021年5月6日

地域住民の健康生活を支える場として

 「せわのわ」の名前は「世話の輪」から付けられました。その名のとおり、地域で住み続けるためのキーステーションとして健康支援ネットワークの役割も担っています。 最終回は、地域住民との「世話の輪」のコミュニティづくりを進める取り組みについて、せわのわ事業支援部長の半田さん、せわのわ事業本部長の目井さんにお話を伺いました。 地域に開かれたレストラン「健康食堂」 半田: 地域住民の方に普段使いをしてもらえるような、楽しく食事ができる場所を目指しています。車いすやベビーカーでもそのまま入れる、お一人さまもお母さん方や子ども、ご高齢の方も気軽に入ってこられるようなフリーアクセスな場所にしたい、というのが狙いとしてあります。 当初はもっと健康志向が強く、健康に寄与できる、役立つような場所として考えていました。最初は管理栄養士だけで、栄養素を重視した食事を提供したのですが、食事そのものを楽しみに来てもらえるような感じにはならず、リピーターもつきませんでした。 そこで、コロナ禍の影響もあり、営業自粛となった段階で食の部分は大きく考え直し、調理師を迎えてメニューを全部見直しました。基本はやっぱり食べておいしいもの、もう一度行きたいねとなるような食事。健康の捉え方にはさまざまあるでしょうが、身体も心も健康になるという観点でいえば、適度なカロリーやアルコールなどもあっていいだろうと考えています。 目井: ご高齢の方でもお肉が好きな方が多く、実は今一番の人気メニューはから揚げなんです(笑)。 ご高齢の方で毎日のように来られる方もいますし、お母さん方も多いです。意外にもお一人で食べに来られる女性・男性も多くて、一人でもふらっと入れるような雰囲気があるようですね。 ―地域の見守りネットワークみま~も(※1)のまちづくりにも参加されているそうですね。 半田: 窓口は私がやっています。 当初、健康食堂のコミュニティサロンを活用して、さまざまなコミュニティを引き込みたいと考えていたのですが、独自のアプローチだけでは難しかったのです。その後いろいろ探していたら、ちょうど大田区で地域のネットワークを作る活動をしている団体があるということで、入れていただきました。 目井: 今はコミュニティサロンの提供がメインになります。コロナ禍で今まで使っていたところが使えなくなったとかそういう話もありまして、無償で貸しています。高齢者の方々が簡単な運動をしたり、引きこもりの家族会、生活保護世帯の子どもの学習支援など、社会福祉協議会や地域包括センターなどとも連携し、いろいろやっています。 最初の3カ月くらいはどこの誰だと怪しまれましたが、段々と既存の町づくりをやっている団体ともつながりができてきたところです。 地域の拠り所、在宅のなんでも屋 ―せわのわさんは今、地域にとってどんな場所なのでしょうか。 目井: 大田区高齢福祉課から大田区高齢者見守り推進事業者に登録してもらっていて、地域の困ったときの拠り所として活動しています。 半田: せわのわとしても、「もやっと相談」という窓口を設けて対応しています。なんとなく「専門家がいるので相談できるかな」と、ふらっと来られる方もいます。 みなさん、お話がしたいんですね。そんな場所はほかにはなかなかないので。 目井: ここは、住民の方々との距離がすごく近いと思います。近所のおばあちゃんが毎日顔を出してくれたり、おすそ分けしてくれたり…。 その方々も今は元気ですが、今後、訪問看護などが必要となったときに、せわのわがいいと言ってもらえたら…と、そうしたことも考えながらやっています。着地点はそこですね。先の長い話ですが、ご高齢の方、地域のコミュニティをうちに呼び込むことが最終的な目的です。 住民の方々や利用してくださる方々から、「とにかく困ったときは『せわのわ』に…」と言われることがありますが、そうした声に応えられるようにしていきたいですね。 半田: あとは、今後の展開としてはデリバリーサービスですね。 階段があるのがしんどくてという相談があったりしたので、試験的に始めました。データを集めるために今は無料でやっていますが(2020年12月取材時点)、ある程度スキームが固まれば、2021年から有料化も考えていかなければとは思っています。 目井: 現場の声を集めるために始めましたが、まだ依頼はそれほど多くはないですね。現状ここに来るお客様は歩ける方が多いので、そもそも用がない人が多いのです。民生委員経由で独居の高齢者などにアプローチする方法もありますが、いきなりだと怪しまれることもあるので、社会福祉協議会や地域包括支援センターなどとも連携して、地道に足元から固めている段階です。 半田: 最終的には広域デリバリーの中に調剤薬局の薬を届けることも入れ込んで、ネットワークを作っていきたいと思っています。 ** 株式会社キュアステーション24 せわのわ事業支援部 部長 半田 真澄 30年以上臨床検査領域で働いた後、2013年にTRホールディングスグループに入社。代表取締役の田中氏とは社会人1年目が同期という縁。せわのわでは主に業務全般のサポートを行っている。 株式会社キュアステーション24 取締役/せわのわ事業本部 本部長 目井 俊也 ゼネコンや外資系保険会社などを経て、まったく畑違いの介護業界に。訪問介護ステーションやデイサービス、サービス付き高齢者向け住宅などの開業・運営経験がある。 【参考】 ※1 みま~も(おおた高齢者見守りネットワーク) 高齢者が安心して暮らせる街づくりのために、地域の医療・福祉・介護の専門職が活動する大田区の地域ネットワーク 関連記事:全国に拡大中!地域を支える『みま~も』とは?(牧田総合病院 地域ささえあいセンター センター長 澤登久雄)

インタビュー
2021年5月6日
2021年5月6日

外部センターとICTの活用で運営効率アップ!

株式会社ツクイでは、効率的な事業運営や現場スタッフの負担軽減のために、外部センターやICTの運用を進めているそうです。 今回は、事業企画推進部部長の竹澤仁美さんに、外部センターやICTの活用によって現場にどのようなメリットがあるのか、詳しくお話を伺いました。 外部センターを活用して現場の負担を減らす ―外部の事務センターを利用しているそうですが、どのように活用しているのでしょうか。 竹澤: 今は、医療保険の請求業務だけですが、全国の訪問看護ステーションのレセプト入力から提出までの業務を、すべて沖縄にある外部の事務センターが行っています。介護保険の請求業務はまだ体制が整っていないので、各地域、各県にある自社の事務センターで、介護保険の請求業務や勤怠管理、その他事務にかかわることを行っています。 今後、変更申請や事業所の新規出店、新しい加算の申請に関する書類手続きなどの事務作業も、全部やっていけるようにと考えています。 ―なぜ、外部の事務センターなのですか? 竹澤: 悠翔会さんとツクイが同じグループ企業になったということもあり、両者が育てばいいなという気持ちで、悠翔会さんの沖縄にある外部センターを選択しました。 また、一括集中できる事務業務は、外部の事務センターでも可能なので、事務作業のための事務員はステーションに置いていません。 現場のスタッフがサービスを提供しながら電話を受けるのは、お客様にも失礼ですし、スタッフも大変なので、2021年度からは夜間の電話だけでなく昼間の電話も、沖縄の事務センターで受けてもらうように調整しています。 ICT活用でステーション内のシステムを標準化 ―ICTの活用はどのようにされているのでしょうか。 竹澤: 悠翔会さんの在宅医療用クラウド型電子カルテhomis(ホーミス)を利用し、実績入力など請求関連をおこない、直行直帰ができるようになっています。 記録に関してはWyL株式会社のオマハシステム(※1)を実装してトライアル中で、それが終われば2021年4月から本格始動の予定です。オマハシステムはケアの質の標準化、情報共有、スケジュール管理も全部できます。また、携帯でとったものが転送され、大事なものを持ち歩かなくていいので、現場看護師の受け入れは良さそうです。今は記録が手書きなので、「楽になるよ」と、伝えています。 電子カルテは病院向けにできていることが多く、領域も少なく、在宅での汎用性の低さを感じていました。訪問看護をやっていくうえで、一人一人使ってきたカルテも違いますし、記録の書き方なども違うので、オマハシステムを導入することでやり方を全員統一することができるのは良いですね。 今後オマハシステムとhomisの連携作業を行い、さらに効率化を進める予定です。 ―今後、業務の効率化のためにやっていきたいことはありますか?  竹澤: とにかく現場の事務業務を無くすことです。 例えば今は、事故やトラブルが発生した際の業務を、本部の事故課で引き取るようにしています。初動は事業管理者がしなくてはならないですが、入力フォームがあって、そこに必要事項を入力すればシステム上にあがるようになっています。 本部でまだ作っているところではありますが、そのように事務業務を現場から取り上げて、現場のスタッフが業務に集中できるようにしたいです。 ** 株式会社ツクイ 事業企画推進部 医療系事業プロジェクト 部長 竹澤仁美 【参考】 ※1 オマハシステム 関連記事:ケアの質を向上させる!オマハシステムを徹底解説(ウィル訪問看護ステーション 岩本大希)

特集
2021年4月27日
2021年4月27日

介護施設での看取りをさらに推進、ACPの取り組み促す

2021年度の介護報酬改定では、介護施設や在宅での看取りの対応がさらに強化されました。報酬を手厚くする条件として、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の考え方を取り入れた「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」に沿った取り組みが盛り込まれました。 繰り返し、話し合い、記録に残し共有する ACPでは介護職もチームの一員 ACPでは、人の意思は心身の状態の変化に応じて変化するものと考えます。ですから、一度決めたら終わりではなく、医療・ケアの方針や、どのような生き方を望むかを日頃からよく話し合い、それを記録し関係者で共有していくというものです。 前のバージョンのガイドラインは、2006年に富山県射水市で起きた医師による人工呼吸器の取り外し事件が起こり、尊厳死のルール化の議論が活発になったのを受けて策定されたものです。病院で医療を停止する手続きが前提だったのに対し、新しいガイドラインは在宅医療・介護の現場で活用することが前提で、地域包括ケアの時代に対応できるよう2018年3月に策定され、さっそく、前回改定で、訪問看護ステーションには取り入れられました。ACPでは、医療の専門職だけでなく、介護職も情報を共有すべき医療・ケアチームの中に含まれると考えられています。 介護施設の看取り加算、45日前から算定可能に 特別養護老人ホームは、生活の場での看取りに先駆けて取り組んできた施設も多くありました。厚労省の調査では、8割の施設で人生の最終段階における医療・ケアについて、本人・家族に対して説明して意思確認または推定を行っていると回答しましたが、ACPが求める「繰り返しの話し合い」を行っているのは43%にとどまっていました。今回、報酬アップとともに取り組みを促すようにしています。 手厚くなったのは、看取り介護加算です。特養では死亡日30日前から算定できましたが、回復の見込みがないと医師が判断して施設で看取り対応を開始しているのは30日よりも前のことが多く、15日前倒しして、45日前から加算が取れるようになりました。1日75単位、15日分で1080単位の上乗せになります。 看取りに関する協議の場に、医療職ではない生活相談員の参加も明記されました。老健、介護医療院、介護付きホーム(特定施設入居者介護の指定を受けた有料老人ホーム等)、認知症グループホームも同様の扱いです。ガイドラインへの取り組みで先行する訪問看護ステーションへ研修の依頼も増えるかもしれません。 認知症グループホームは、軽度の認知症高齢者が家庭に近い環境で穏やかに過ごすことができるように制度化されたものですが、近年、医療ニーズのある人や看取りの対応も増えてきています。認知症の方は環境の変化に弱いので、本人のQOLの問題や医療機関での対応の難しさから考えても自然な流れとなっています。 認知症グループホームでは、看取り介護加算を算定するためには、医療連携体制加算を算定し、看護師を24時間体制で確保することが条件となっています。小規模で自前での人材確保が難しいために、地域の医療機関や訪問看護ステーションとの連携での人材確保や24時間対応が認められています。 改定では、医療ニーズのある人の受け入れを促進するために、より高い区分の医療連携体制加算を算定できるよう、要件となる医療的ケアが必要な人の状態像を拡大しています。褥瘡や気管切開など7項目が追加されました。近年、介護保険制度の中では、地域の他の事業所の助けをかりる「専門職シェア」ができる項目が増えてきていますが、認知症グループホームの医療連携はその先駆けです。 在宅でも看取り間に合わなかった場合も、準備したケアマネの報酬算定が可能に 在宅サービスに目を向けます。がん末期でご自宅での看取りを覚悟し、退院の準備をしていた方が、急変して間に合わないことも現実にはあります。その場合は、ケアマネジャーには「サービスの利用実績がなかった」という通常のルールが適用され、相談に出かけてサービスの調整をした分はタダ働きとなってしまっていました。今回の改定では、利用者が退院前に死亡した場合などは、通常のルールの適用外とし、報酬を算定できるように見直されました。(※1) 訪問介護では、看取り期の対応評価として「2時間ルール」の運用の弾力化をおこなっています。「2時間ルール」とは、訪問詰め込み防止のために、訪問の間隔が2時間未満の場合に合算した時間で算定し、報酬額を低く抑えるルールです。医師が回復の見込みがないと判断した場合も運用が弾力化され、それぞれの時間で報酬が算定できるようになります。サービス付き高齢者住宅や住宅型有料老人ホームなど、在宅サービスを利用してホスピスケアを行っているような施設で、役立ちそうです。すでにさまざまな手を打っているため、細かい内容の改定項目が多いのが今回の改定の特徴です。 介護での看取りは新たな生活文化 制度上、病院でない看取りの選択肢は着実に増えています。しかし、まだまだ日本人にとっては、ハードルの高い選択肢と言えるでしょう。「本人の覚悟があれば、今でも十分在宅で安らかに死ぬことができる」とあるベテランの訪問看護師は話していました。しかし、本人が納得していても、死に目に合えなかったことで苦しむ家族もいて、本人だけの問題ではありません。一人で立派に往生しても、周りから「孤独死」と言われたら浮かばれません。 看取りは、生活文化そのものです。もちろん、収入が増えるからといって、入院させずに施設を死に場所に選ぶことを強要することは許されません。関係者の揺れる気持ちに寄り添い、いつも話し合う。介護での看取りを増やしていくには、新しい文化としてACPが根付いていくことが必要でしょう。 【参考】 ※1  厚生労働省 令和3年度介護報酬改定における 改定事項について https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000768899.pdf ** 介護・福祉ジャーナリスト 川名佐貴子 介護保険の専門新聞、ケアマネ向け月刊紙の編集長を長年務め、2019年12月末に独立。フリーで活動中。介護保険制度の創設前から、介護福祉分野の幅広く取材してきた。

インタビュー
2021年4月27日
2021年4月27日

訪問看護ステーションの働き方改革

せわのわ訪問看護ステーションは、運営面でも先進的な取り組みを行っています。第3回は、週休3日制を取り入れた働き方改革などについて、引き続き、訪問看護管理者の竹之内さん、事業支援部長の半田さん、せわのわ事業本部長の目井さんに伺いました。 ワークライフバランスを考えた勤務体制 竹之内: 今のところ、常勤看護師2人、フルタイムのパート1人、非常勤の理学療法士(PT)2人、常勤の言語聴覚士(ST)1人が勤務しています。 せわのわ訪問看護ステーションの大きな特徴といえば、STがいることと、常勤で週休3日と2日と選べる体制になっていることだと思います。 一日の勤務時間が11時間拘束・10時間労働と長くはなりますが、その代わり残業時間がほぼありません。最後の訪問が17時30分か18時ぐらいに終わるので、戻ってからも1時間ぐらいは余裕があり、そこで記録をつけたりもできますので。 それと、僕自身が一時期人材紹介会社に勤めていたときの認識として、在宅で働きたいと思う人はワークライフバランスを重視している人や夜勤をやりたくない、子どもがいるので17時半には帰りたい、などという方も多い印象でした。先々を見据えると、お母さん世代が入ってくれるとコミュニティとも連携しやすくなるので、その世代が入ってきたいと思うような職場にしたいと思っています。 そのため、一番多くなりそうな10~15時、週3~4日のパート枠の方が増えたときにも、ある程度対応できるような下地を作っている所です。 半田: 長時間働く分、たくさん休みましょうという働き方改革の一環ですよね。週休3日を選択している人は副業をしている人も多いようです。 目井: 法律上は週40時間以下の変形労働時間制なんですが、経営側としても割増の残業代を払うことがなくなるのでメリットは大きいですね。 また求人を出す際にも、週休3日だと目につくのかもしれません。会社のLP(ランディングページ)、InstagramやFacebookなどでも紹介しているのですが、最近は問い合わせも増えてきていますね。 ―何かコミュニケーションを円滑にするために活用しているツールはありますか。 竹之内: 電子カルテを活用しているのはもちろん、コミュニティツールとしてTalknoteを使っています。LINEだと、後から入ってきた人が過去の情報をさかのぼることができないので。Talknoteはグループもいろいろ分けられて、そこに入れる人も調整できるので便利です。 できる限り記録と併用して、業務負担にならないように必要最小限の情報をのせるようにしています。 目井: Talknoteは、訪問看護ステーションだけではなく、全社、調剤薬局や経営者も入っています。 週休3日制だと管理者とも週1回しか会えない状況なので、全社的に情報はTalknoteで共有するようにしています。 他職種連携がもたらすメリット 竹之内: 一番のメリットは楽しいことですね。訪問看護ステーションの事務所だけだと、スタッフが顔を合わせる機会も少ないですから。ここでは薬剤師や管理栄養士などと、顔を合わせて気軽に話ができますし、お昼もせっかくだから戻って食堂で食べようかとか(笑)。 もちろん、いろいろな知識も得られます。利用者さんのために必要なことが、迷ったらすぐに相談できる環境にあります。看護師だけだと同じ視点でしか見られないようなことも、調理師のような医療に関わっていない人も含めて色々なアイデアが出てきて、新しい発見をすることもしばしばです。 目井: 多職種が一緒にいることによって、利用者さんに対していろいろな形でのアプローチが見つかる。そうした日々の発見が、結果的には利用者さんのメリットにもなっていると思います。 ―とはいえ、職種が違うといろいろと意見のぶつかり合いなどもあるかと思うのですが…。 目井: 訪問看護ステーションでいえば、看護師が管理者なので、PTやSTからは相談しにくいこともあるという話はたまにありますね。常勤のSTについては、メンター的な役割ができるSTを外部から週に一回呼んでフォローして、フィードバックをもらっています。 竹之内: どうしても自分の職種のことで熱くなってしまい、マウントの取り合いみたいになることはありますよね。特にカンファレンスだと看護師が主体になりやすいので、きちんと他職種にも話を聞いて、意見を言いやすい場にするようには心がけています。 お互いの意見をぶつけ合うだけでは平行線のままですから、主導権を渡すではないですけれど、ここは任せるので、ここはこちらに任せてほしいと分担をしたりして、お互いに落としどころを探しながら話し合いをしています。 目井: 職種が違うし、育ってきた環境が違えば考え方も違うので、最初のうちはやっぱり揉めますね。 でも一度地ならしが終わればルールができるので、次に人が入るときにはスムーズに進むと思います。 ―訪問看護ステーションの管理者として意識されていることは? 竹之内: 何よりもスタッフを大事にしたいと思っています。 看護師が忙しいと声をかけづらい状況ができてしまう、雰囲気が悪くなってしまうということが病院ではよくありました。スタッフが楽しく、幸せに仕事していれば、それは利用者さんにも伝わると思うので、いろいろな方が働きやすく、働き方も融通が利くようにしていきたいです。 事業所の規模も今の人数の倍くらいにして、次の事業につなげていきたいですね。 ** 株式会社キュアステーション24 せわのわ事業支援部 部長 半田 真澄 30年以上臨床検査領域で働いた後、2013年にTRホールディングスグループに入社。代表取締役の田中氏とは社会人1年目が同期という縁。せわのわでは主に業務全般のサポートを行っている。 株式会社キュアステーション24 取締役/せわのわ事業本部 本部長 目井 俊也 ゼネコンや外資系保険会社などを経て、まったく畑違いの介護業界に。訪問介護ステーションやデイサービス、サービス付き高齢者向け住宅などの開業・運営経験がある。 株式会社キュアステーション24 訪問看護事業責任者/管理者 竹之内 航輝 総合病院の脳外科や透析外来に勤務後、訪問看護ステーションの管理者になるための経験として看護師の人材紹介会社で働いた経験を持つ。代表の地域貢献に関するビジョンや、スタッフに対する思いなどに共感し、せわのわ訪問看護ステーションに入職。

インタビュー
2021年4月27日
2021年4月27日

低い離職率を実現する採用戦略と教育システム

人材不足が大きな問題となっている訪問看護業界。株式会社ツクイは訪問看護事業を拡大しつつも、低い離職率を実現しています。 今回は、事業企画推進部部長の竹澤仁美さんに、離職率低下につながる採用戦略や教育システムについて詳しくお話を伺いました。 採用プロセスの工夫 ―看護師の採用において何か工夫されていることは? 竹澤: 特別なことはしていないですが、採用説明会は時間とお金をかけて必ず3日間ほど開催し、私も必ず行くようにしています。その後体験会も実施しています。説明会の参加者は多いときで1日10~20人ほどで3回に分けて行うこともあります。 応募は、ハローワーク経由でも十分にありますし、友達の紹介や、社内の紹介制度で社内移動してくる人もいます。また、各地域に配属されている、リクルーターという採用担当者から、各地域の状況や分析した情報をもらっています。 ―説明会の後はどのような採用プロセスなのでしょうか。 竹澤: そのあとは一次面接が管理者、二次面接は私かエリア長が行います。管理者面接の場合は、私が一次面接から行きます。採用面接は大事にしていて、会社の概要から訪問看護の説明も含め一時間くらい話し、そこから面接に入ります。 その後着任するまでは、リクルーターから状況確認や必要資料の手配など、しっかりフォローをするようにしています。 ―応募される人は、病院に勤めている人が多いですか?皆さん、どのような理由でツクイを選ばれるのでしょうか。 竹澤: 休職中の方もいますし、病院勤務の方もいます。会社が大きいということと、会社としての教育体制が整っているという部分をご評価いただいているようです。 給与体系が東京を標準として全国で概ね一緒であることや、管理者にも残業代が出るという部分も理由かもしれません。 採用時大切にしているポイント ―採用する側として、こういう人を採用しているとかはありますか。 竹澤: 採用基準は設けていませんが、「つくいびと」という社内の指針に合っているかを面接で見ます。人間性が一番のポイントですね。看護経験はあとから積算できますし、看護技術や知識はこちらで教育することができるので。 最近、経験年数は少ない若い看護師が入りましたが、病院の経験に根付いているベテランよりも、若い子の方がスッと入り込める部分もあり、お客様からのクレームもすごく少なかったりします。そのとき最善の判断や、対応ができるようになるには時間がかかるかもしれませんが、新人の看護師でも採用して育てられる土壌にしていくのが目標です。 ―管理者はどのように探し、アサインされるのでしょうか? 竹澤: 知人の紹介などもありますが、他社と同様に人材紹介会社やハローワーク経由での募集もします。ツクイブランドの力もあってか、応募は結構あります。皆さん一般職で応募されてきますが、その中から「この人なら管理者に向いているな」と思った方をアサインします。 管理者になる人は、管理者経験や病院などで主任や副師長などをやっていた人が多いのは事実ですが、ツクイの管理者業務は明確に文章化されていて、わからない事を聞ける体制もしっかりしているので、引き受けてくれる方が多いです。 ―離職率はどのくらいですか。低い離職率を実現するためには何が必要でしょうか。 竹澤: 一年間で辞めた人は、10%ほどです。ミスマッチがないよう、採用面接のときにツクイの将来性も含めて、働くイメージをわかりやすく伝えるようにしています。 訪問看護だけでずっと働いて、疲れ果てて辞めてしまうということにならないよう、社内で異動ができたり、次のステージを用意したりして、夢を持って仕事をしてほしいという話もします。ご縁があってツクイで働いてくれている看護師には、「ツクイで働いてよかった」と思ってもらいたいです。 管理者には「10褒めて、1指導する」ということを伝えています。この仕事はストレスも多いので、スタッフに感謝を伝えることを大切にしています。 教育システムを効率化する ―教育についてはどのようなシステムになっているのでしょうか。 竹澤: 最初に、「ツクイの基本」を身に着けてもらいます。e-ラーニングを使って、制度の事や記録、ハラスメント、ダイバーシティ、コンプライアンス、ツクイの考える育成、衛生管理などさまざまな内容を3日間で受講します。 その後、管理者や所長によって看護のオリエンテーションを行い、現場でのOJTとなります。現場が忙しい事業所だとOJTに入りながらオリエンテーションを行うところもありますが、2021年度からは管理者に負担をかけないよう、WEBでも教育サポートができる体制を整えていく予定です。 ―OJTの後はどのようなフォローを?教育パスはあるのですか。 竹澤: 看護ではおおまかな教育パスのようなものがあります。一人ひとり経験値が異なるので、目標設定は管理者がそれぞれに応じて行い、フォローしていきます。 管理者教育に関しては、定期的なe-ラーニング研修を年に2回行い、数字の見方、営業戦略、医療的な内容などを学びます。新しく入った人が管理者になる場合は、導入研修のあとに試験があり、それに受からないと管理者にはなれません。 また、ツクイではキャリアパス制度を設けていて、スペシャリストコースとマネジメントコースに分かれています。eラーニングの中にも、それぞれのコースに沿った内容があり、一人ひとり、特性に合ったコースを選択できます。 管理者にはなりたくないと思っていても、スペシャリストとしてキャリアアップすれば給料もあがりますし、専門性も高めることができます。 ―それらの教育システムは誰が作っているのですか? 竹澤: 人事です。項目は100から200ほどありますが、今後は訪問看護ならではの項目も入れたいと考えています。日本訪問看護財団が出しているeラーニング(※1)も受講してもらっています。 教育システムはすべてマニュアル化され、eラーニングの見方から、いつ管理者になっても困らないようなシステムを整えています。 また、サービス管理部では、事故起こしたときの対応から書類の書き方まで、管理者がそれを見れば対応できるようなシステムを作っています。まだ足りていない部分もありますが、介護事業でツクイが培ってきた経験が、教育システム作りに活かされていると思います。 ―今後、教育に関して取り組んでいきたいことはありますか? 竹澤: ラダーにそった教育を可視化できるようにしたいです。導入研修や管理者研修など、管理者向けの部分が多いので、スタッフもスキルアップできる制度を作りたいと思っています。 他社のような研修室をつくるのもいいなと思います。オンラインもいいですが、対面でできる研修も大事にしたいです。   【参考】 ※1 公益財団法人 日本訪問看護財団 eラーニング https://www.jvnf.or.jp/e-learning/ ** 株式会社ツクイ 事業企画推進部 医療系事業プロジェクト 部長 竹澤仁美

特集
2021年4月21日
2021年4月21日

訪問看護あるある座談会 vol.3 服装・持ち物編

前回のインタビューでも少し出てきた、訪問看護の冬の寒さ対策。それ以外にも、雨の日の服装や訪問看護バッグなど制服以外についても悩む訪問看護師さんも多いのではないでしょうか。前回に続き、3人の訪問看護師さんにお集まりいただき、服装・持ち物をテーマに訪問看護の「あるある」についてぶっちゃけトークをしてもらいました。 冬の雨が辛い!訪問看護の冬の服装どうしてる? ゆり:何が言いたいって、雨で一番つらいのって冬の雨だと思うんですけど、どう思います? りさ:本当にそう!手袋選びからですよね。毛糸の手袋とかは使えない…。 ゆり:ワークマンの手袋知ってます?内側にフリース素材入ってて暖かいんです。内側がもこもこのブーツもワークマンにあるんですよ。 みほ:うちのステーションでもワークマン流行ってて。あったかグッズが安く買えていいですよねー。 りさ:ワークマン人気ですよね。横浜のほうにワークマン女子のお店がありますね。 ゆり:まさに訪問看護師こそワークマン女子になるべきですよ! みほ・りさ:笑 ゆり:バイクで訪問してるときは防水防風のジャケット着てたけど、リーズナブルでしたよ。訪問看護師にはワークマンかファストファッションブランドがおすすめ! みほ:きっとみんなお世話になってるはず! りさ:暖かい靴下も欲しいですよねー。 ゆり:たしかそれもワークマンに売ってると思う。作業員さんが着るようなやつ。ほら、私たちも外出る仕事だからぴったりじゃない!? みほ:確かに! 悩める訪問看護バッグ。経費で落ちるのはどこまで? りさ:訪問カバンも良いのがあるといいですよね。 みほ:迷いますよね。訪問カバン。 ゆり:既製品で売ってる訪問バッグって小さいし、ポケットが多いのはいいけど、どのポケットに何入れたかわからなくなるんですよね。 りさ:そうなんですよね。小物がどこ入れたか分からなくなりますよね。 ゆり:小物整理は100円ショップのメッシュポーチを何個か持つようにしてて、マスク、処置材、不織布とか入れてますね。 りさ:私も同じようなポーチ使ってます!はさみとか手袋とか入れてます。 ゆり:こういうメッシュポーチ使いやすいですよね。あと、認知症の利用者さんなどにメモを残すのに、A4のメモも100円ショップで買って。 みほ:A4メモとふせんはマストですね。ヘルパーさんにもメモ書いたりしますし。 ゆり:経費で落ちるといいんですけど、結局自分で買っちゃってるんですよね。 みほ:私も自腹で買ってます…。細かいので経費で落とすのも面倒になっちゃうというか。 ゆり:事務所にあるものもあるけど、それ以外は割と持ち出し多いよね。訪問看護師。 りさ:たしかに。意外とそうですね。 みほ:ちなみに、アウターとか訪問バッグって経費で落ちますか?アウターが意外と高いから経費で落としてもらえないか交渉したんですが、ダメだったことがあって。バッグは補助出るんですけど、他のところはどうなんだろうと思って。 ゆり:うちはアウターは出ない。バッグは貸し出しがあるけど、直行直帰の人は自分で買うルールになってる。カッパも経費出ない。 りさ:カッパ、意外と高くないですか? ゆり:ちょっと高いよね。バイクの時は上下のカッパ着てたけど、今は自転車だからカゴまで覆えるポンチョを着てる。雨が強い時はその上にもう1枚ポンチョを重ねて、長靴履いてしのいでる。 みほ:なるほど!うちはカッパは支給があるんですけど、ボロボロになっちゃったので結局買いましたね。 りさ:うちはカッパはわりとしっかりしたやつを支給してもらいました。制服代として年間2万円まで支給するから自由に買っていいよっていうスタイルで、それを使ってスクラブとかヒートテックを買っていますけど、結局お金が回らないからアウターは自費ですね。 みほ:でも支給でるのはいいですね。 ゆり:税理士さんに聞いたことがあるんだけど、制度的に経費で落ちる物もあるはずなんですよ。お金関連のところ、看護師は疎いと思います。 みほ:たしかに。善意で持ち出しばかりするんじゃなくて、会社に負担してもらえる部分もあることを看護師側も知っておくことが大事ですね。 ゆり:これは必ずかかるから経費に計上してもらいたいとか。でもなかなか難しいですね。 りさ:お金の話は疎い自覚あるし、詳しい友達の方が少ないですね。その辺りをもっと知れるといいです。 ゆり:税理士さんとかから話聞けるといいよね。 ** NsPace編集部より本記事掲載にあたり、NsPace編集部がワークマン様に掲載許可をいただきました。ありがとうございました。 記事編集:NsPace

インタビュー
2021年4月20日
2021年4月20日

多職種スタッフ連携による訪問看護サービス

せわのわでは、調剤薬局が在宅医療の支援に力をいれていることが一つの特徴になっています。第2回は、訪問看護ステーションと調剤薬局、栄養ケア・ステーションとの連携について、引き続き、事業支援部長の半田さん、せわのわ事業本部長の目井さん、そして訪問看護管理者の竹之内さんに伺います。 在宅支援に力を入れる調剤薬局 半田: うちの調剤薬局は、「せわのわ在宅支援&健康薬局」というように在宅という名前を入れているのが象徴的で、とにかく地域の在宅医療に深くコミットするというのが一番の理念です。 もちろん処方箋の対応など一般的な機能は持っていますが、処方箋を多くさばくということより、地域の医療に必要とされるタイミングで必要とされることをやるというのが大きな目標です。そのため、薬剤師二人で毎日のように訪問もしているので、在宅はちょっと…という方は採用できないですね。 目井: 薬剤師がもっと在宅にも出ていくべきで、意識改革が必要という話は、昔から代表取締役の田中ともしていました。今後のことを考えると、薬局も店舗閉鎖していくところは増えるでしょうし、薬剤師も余る時代が来るはずですから。 ただ、現実には在宅をやりたいという薬剤師はまだ少ないですね。薬剤師は病院や薬局で白衣を着て、カウンターで受付をする仕事というイメージがあると思うので。 半田: 今は薬学部で在宅医療についてもカリキュラム化しているので、若い世代は比較的在宅のイメージを持っている人もいるようですが、これまでの環境でやってきた人には訪問で個人宅にあがりこむ…となると、ギャップが大きいでしょうね。 竹之内: 今、うちにいる薬剤師は、在宅がやりたくて来てくれた人です。あれこれと意見を言い合えますし、お互いに連携、協力できる環境にあると思います。 例えば、利用者さんが「やっぱり薬は自分で入れないと…」と焦るような気持ちがあったり、薬の残数が合わなくなってしまったりすることがありますが、うちでは処方箋を一枚持ってきてもらえれば薬剤師にカレンダーセットしてもらえて手間がなくなるよと言えますし、僕らもその分、他のケアにまわせます。それをきっかけに次から頼んでくれる方もいますね。 そのほかにも訪問看護先で、利用者さんの薬のフォローをしてもらう場面が多いです。今出されている処方と前の病院で出されていた処方が混在していると、どれをどのようにしたらいいのか迷いますが、そこに薬剤師が入ってくれることでスムーズに確認ができます。また、在宅では麻薬の管理も難しいところがありますが、ICTを活用してオンタイムでアドバイスをもらえたりすることが、安心材料にもつながっています。 病院にいる感覚と近く、お互いに情報共有することで利用者さんにとってもプラスになるし、協力関係がいい形で結果につながっていると思います。 ―認知症で薬の管理が難しい方とかの依頼は? 竹之内: 調剤薬局と一緒に訪問に入ってほしいと言われるのは、認知症やターミナルの方が多いです。一度訪問すると、リピーターになっていただける確率が高いですね。 こうした在宅の取り組みが増えれば、これまでの調剤薬局とは全く違う形になると思います。 栄養ケア・ステーションの位置づけ 目井: 認定栄養ケア・ステーションは、地域の方々の栄養ケアの支援・指導をする拠点として日本栄養士会から認定されている施設です。管理栄養士が常駐して、栄養の相談を受けています。 また、食堂では調理師がメインで働いていますが、メニューの一部アドバイスなどもやってくれています。毎日栄養相談がある訳ではないので、ここでは事務スタッフ兼管理栄養士として働いていてくれていて、通常は訪問看護や薬局の事務をやりつつ、必要が生じたときに管理栄養士として動いてもらう形です。 ―褥瘡の方や低栄養の方の食事管理やアドバイスなどは? 目井: 元々は、摂食や嚥下障害の方の栄養指導などで、言語聴覚士(ST)と栄養ケア・ステーションが密接なつながりをもって展開していきたいと思っていました。2020年の4月から栄養ケア・ステーションにも保険点数がつくようになったのですが、まだ件数も少ないのでこれからですね。栄養ケアというニーズが世の中にあまり出てきていないので、しっかり稼働している栄養ケア・ステーションは多くはないかもしれません。 専任スタッフをどのように配置するか、事業制度としてどうするのかなど課題は多いですけれど、東京栄養士会がイメージしているのは、せわのわのようなモデルだと言って期待してくださっているので、調剤薬局、訪問看護ステーション、食堂、栄養ケア・ステーションの4部門で、このまま頑張っていきたいです。 ** 株式会社キュアステーション24 せわのわ事業支援部 部長 半田 真澄 30年以上臨床検査領域で働いた後、2013年にTRホールディングスグループに入社。代表取締役の田中氏とは社会人1年目が同期という縁。せわのわでは主に業務全般のサポートを行っている。 株式会社キュアステーション24 取締役/せわのわ事業本部 本部長 目井 俊也 ゼネコンや外資系保険会社などを経て、まったく畑違いの介護業界に。訪問介護ステーションやデイサービス、サービス付き高齢者向け住宅などの開業・運営経験がある。 株式会社キュアステーション24 訪問看護事業責任者/管理者 竹之内 航輝 総合病院の脳外科や透析外来に勤務後、訪問看護ステーションの管理者になるための経験として看護師の人材紹介会社で働いた経験を持つ。代表の地域貢献に関するビジョンや、スタッフに対する思いなどに共感し、せわのわ訪問看護ステーションに入職。

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