アセスメントに関する記事

【2月4日up】足のミカタ 重症化を防ぐフットケア 爪のケア実践編【セミナーレポート後編】
【2月4日up】足のミカタ 重症化を防ぐフットケア 爪のケア実践編【セミナーレポート後編】
特集 会員限定
2025年2月4日
2025年2月4日

足のミカタ 重症化を防ぐフットケア 爪のケア実践編【セミナーレポート後編】

2024年10月25日に開催したNsPace(ナースペース)オンラインセミナー「足のミカタ~重症化を防ぐフットケア~」。在宅でのフットケアにも尽力している倉敷市立市民病院 形成外科医長 小山晃子先生に、訪問看護で役立つ足病変の知識やケアのノウハウを解説いただきました。セミナーレポート後編では、具体的なフットケアの方法を紹介します。 ※約80分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 >>前編はこちら足のミカタ 重症化を防ぐフットケア アセスメント編【セミナーレポート前編】 【講師】小山 晃子先生倉敷市立市民病院 形成外科 医長平成16年に高知大学を卒業し、倉敷市立児島市民病院にて臨床初期研修を修了。平成18年から川崎医科大学附属病院 形成外科・美容外科にて、褥瘡・創傷治癒を学ぶ。平成24年より現職。入院・外来・在宅で医療を提供しながら、医療者や介護者、市民を対象としたセミナーも行い、褥瘡・フットケアの「ミカタ」を増やすべく活動している。 圧迫による鶏眼や胼胝を防ぐフットケア 鶏眼(魚の目)や胼胝(タコ)は、潰瘍につながる恐れがあるため、フットケアでの予防が大切です。鶏眼や胼胝は、皮膚に角質が「くさび」のように突き刺さってできており、踏み続けると皮膚が破れる可能性があります。なお、鶏眼や胼胝にできた黒い点は、赤血球の色によるもの。すでに出血しているので、早急な対応が必要です。 具体的には、専門外来に相談し、適切なフットウェア・履物を選びましょう。着用して実際に歩き、鶏眼や胼胝がある箇所に圧がかかっていないことを確認してください。 足病変がある利用者さんの中には神経障害がある方も多く、潰瘍に気づかないケースもあります。ぜひみなさんの目と手で、圧迫もケアしてください。 【ケアのための知識】爪の構造 爪切りを含むフットケアをするにあたっては、爪の構造理解や名称を押さえておくことも大切です。 爪母(そうぼ) 爪をつくる「工場」のような組織で、断面図で見ると爪の根っこにあります。爪母でつくられた爪が、「爪床」と呼ばれるベルトコンベアのような皮下組織によって前に送り出され、次に説明する「爪甲」ができあがります。つまり、根本に近い部分は最近できた爪で、爪先の爪は1〜1年半前に生まれた爪です。 爪甲(そうこう) 爪の甲。爪周辺の皮膚の中にも埋まっており、ケアする際は「見えない部分にも爪甲がある」ことをイメージする必要があります。 爪郭(そうかく) 爪の縁の皮膚。両横を「側爪郭(そくそうかく)」、根本を「後爪郭(こうそうかく)」といいます。治療で使われる言葉なので、知っておいてください。 【ケアのための知識】爪の役割と変形の原因 爪は歩行を支える役割を担っています。歩く際に地面から受ける圧力を爪甲が受け止めることで、正常に歩行できるのです。 しかし、「歩かなくなる(爪に圧がかからなくなる)」と、爪甲は次第に縦にも横にも湾曲。あまり歩けなくなった方の爪が曲がるのはこのためです。 また、爪先を踏みしめて歩けていない場合も、爪に力が加わらず、同じように湾曲します。その場合、足の母趾裏にタコができるのが特徴です(左下写真参照)。 このように爪が湾曲し、「巻き爪」「陥入爪」になってしまうと、爪が非常に切りにくくなります。指先を踏んで歩く、もしくは同様の圧がかかるような運動を行うなどして、日頃から予防に努めましょう。 ただし、湾曲の程度が深刻な場合(右下図参照)は圧をかけると爪がホチキスの針を畳むように食い込んでしまうので、可能な範囲で爪切りをしつつ、病院に相談してください。そのほか、 外反母趾がある 立ち上がることができない 痛みや傷がある といった場合も、病院の受診が必要になります。 正しい爪の切り方 爪を切る際は、上の写真の姿勢で行ってください。使用する爪切りは、力が伝わりやすいバネつきのもの、爪をしっかりとキャッチする「のこぎり刃」のものがおすすめです。 爪を切る際は、あらかじめ目安となる線を引き、少しずつ小分けにして切り進め、線のところまで切りましょう。上の写真の場合、20回ほど刃を当てて切るイメージです。 湾曲した爪も、ご紹介した爪切りで少しずつ切ると、写真のように整えられます。また、湾曲に爪切りを沿わせるようにすると、痛みを抑えられます。 在宅における取り組み 在宅でのフットケアに長く取り組む中で、すべてのケースで「足病の完全な解消」を目指すのは難しく、「現状維持」を選ばざるを得ない利用者さんもいらっしゃると感じています。ただ、治療の目標に関係なく、ケアを続けることは必要です。 今後は、すべての方に継続的にケアを提供できる体制づくり、例えば「病院と在宅・施設との連携強化」が重要になると考えています。その一歩として、本セミナーでお伝えした内容が、みなさんの日頃の看護に少しでも役に立ち、「利用者さんの味方」として良質なケアを実践するヒントになれば幸いです。 * * * 足病ケアの質を向上するためには、病院や診療所と在宅医療を提供する方々がしっかりと連携し、チーム医療を実現することが欠かせないと感じています。訪問看護師さんの中には、今フットケアについて悩んでいる方も多いでしょう。そんなときは、ぜひ病院に相談してください。近年、スマートフォンやタブレットを利用することで、時間や場所に依存せず情報を共有できるようになりました。特に「見方」を共有する上で、画像の共有は大変重要です。在宅の患者さんと医師との間をつなぐ訪問看護師さんの、強力な「味方」を活用くださいね。 これからの時代、足病の利用者さんを助けるには、訪問看護師さんの存在が絶対に必要です。よりよい未来に向けて、みなさんと連携していければと思います。 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

「褥瘡の評価とケアの実践」 対面実技セミナーレポート(12/7開催)
「褥瘡の評価とケアの実践」 対面実技セミナーレポート(12/7開催)
特集
2025年2月4日
2025年2月4日

「褥瘡の評価とケアの実践」 対面実技セミナーレポート(12/7開催)

2024年12月7日(土)に、帝人株式会社の東京本社にてNsPace主催の対面セミナー「褥瘡の評価とケアの実践」を開催しました。ご登壇いただいたのは、皮膚・排泄ケア認定看護師で、教育支援やコンサルティングのトップランナーとして活躍する岡部美保さん。デモンストレーションを交えた実践的なケア方法のレクチャーはもちろん、現場における不安や疑問解決につながる知識やリアルなテクニックを幅広くご講義いただきました。約4時間にわたるセミナーの様子をダイジェストでお届けします。 【講師】岡部 美保さん皮膚・排泄ケア認定看護師 在宅創傷スキンケアステーション代表1995年より訪問看護ステーションに勤務し、管理者も経験した後、2021年に「在宅創傷スキンケアステーション」を開業。在宅における看護水準向上を目指し、おもに褥瘡やストーマ、排泄に関する教育支援やコンサルティングに取り組んでいる。 褥瘡の評価やケア方法のイロハを復習 まずは講義形式での学習。参加者の皆さんには、以下のセミナーレポートをあらかじめお読みいただいた上で受講いただきました。 過去に岡部さんにご登壇いただいたオンラインセミナーのレポート記事 写真で解説!訪問看護の褥瘡ケア 褥瘡の評価/セミナーレポート前編 写真で解説!訪問看護の褥瘡ケア 事例に学ぶ創部の見方/セミナーレポート後編 治りにくい褥瘡ケア~低栄養への対応と基本指針~【セミナーレポート前編】 治りにくい褥瘡ケア~代表例と具体的なケア~【セミナーレポート後編】 講義では、褥瘡の定義や原因はもちろん、褥瘡状態の評価スケール「DESIGN-R(※)2020」について解説。特に評価に迷いやすい「G:肉芽組織」や「N:壊死組織」といった項目を評価する際のポイントや、外用薬・創傷被覆材選びの指標などを教えていただきました。「不良肉芽と壊死組織の見分けに悩む」「良性肉芽か不良肉芽か判断しにくい」といった不安に対しても、組織の硬さや色合い、見た目など、評価の具体的なポイントを解説いただき、参加者の皆さんは熱心にメモを取っていました。 褥瘡ケアにおいて重要な外用薬については、薬効成分だけでなく「基材」を考慮することも重要。また、創傷被覆材は「被覆材の大きさ、厚さ、吸水量などの特徴を理解した上で、創傷の状態に応じて選ぶこと」が基本とのこと。過去に開催されたオンラインセミナーの復習だけに留まらず、プラスαの知識も得られる贅沢な内容となりました。 より実践的な知識も解説された座学の時間 チームに分かれて症例の評価やケアを検討 座学の後は4人1組に分かれ、症例検討会が実施されました。【症例検討会の流れ】 具体的な症例に対する評価とケア方法を検討 創傷模型にケアを実施 上記の内容と理由を発表 岡部先生による解説 参加者には、療養者の資料や創傷模型、ケア用品などが配布され、まずはDESIGN-R2020を使った褥瘡の評価からスタート。「深さ(Depth)はd2(真皮までの損傷)かD3(皮下組織までの損傷)のあたりでしょうか」「サイズ計算は私が担当しますね」「壊死組織(Necrotic tissue)とポケット(Pocket)はないので、NとPは0点で良さそうですね」などと意見を交わし、お互いに協力し合いながら進めていきました。 外用薬は講義資料を参考に選定。講師の岡部さんから「外用薬は評価スケールの大文字に着目して、改善するための優先順位を考えながら選んでみましょう」といったヒントがあると、「やはりヨウ素系の外用薬ですよね」などとケア方法を確かめ合っていました。 評価スケールをもとに真剣にケア方法を協議 創傷模型を使ったケアの実践では、創傷被覆材やテープの厚さや大きさ、貼る位置を確かめながら丁寧に進めていました。「外用薬はこのくらいの量をガーゼに塗ってから貼るのが良さそう」「仙骨部の褥瘡の場合、肛門側は八の字貼りが良いのではないか」など、議論が活発に行われていました。 外用薬の塗り方や創傷被覆材の貼り方も検討 褥瘡の状態評価とケアが終わると、いよいよ発表の時間です。DESIGN-R2020の点数をはじめ、外用薬の選定理由やケアのポイントが各チームから発表されました。どの参加者も真剣に聞き入り、発表が終わると拍手が起きていました。 その後、岡部さんが評価とケア方法を解説。チームによって個性が出ていましたが、岡部さんの評価と大きくずれることはなく、外用薬の分類も岡部さんの選んだものと一致。 各チームの発表も先生の解説も真剣そのもの 前半の講義が活かしつつ、具体的な症例をもとに評価・ケア方法を検討し、ディスカッションすることで、褥瘡に対する学びをさらに深めていきました。 気づきの多いデモンストレーション 最後は岡部さんによるデモンストレーション。褥瘡周囲皮膚の洗浄や拭き方、外用薬の塗り方や創傷被覆材の当て方など、一連のケア方法を見せていただきました。 「洗浄料は何プッシュくらいすると思いますか?」という質問からスタートした実演は、いきなり参加者を驚かせる展開に。岡部さんは10プッシュ以上の泡を手に取り、多くの参加者が「泡はこんなに山盛りでいいんだ!」「こんなに使っていなかった!」などの声があがりました。また、ポケットがある方の洗浄方法やカテーテルの使い方、拭き方のコツまで丁寧にレクチャー。 食い入るように先生の手元を見つめる参加者の皆さん 外用薬の塗り方や量、臀裂部のケア方法、ワセリンの塗り方、患部を観察する際の注意点なども伝えられました。 参加者からは「褥瘡は治癒傾向なのに対し、ポケットが縮小しない場合のケア方法は?」「高機能な創傷被覆材を使用したいが、購入していただくのが難しい場合はどうすれば良いか」「褥瘡を繰り返している方で、皮膚に盛り上がりや凹凸がある場合のケア方法は?」などの具体的な質問が寄せられ、訪問看護現場での褥瘡処置に対する真剣な姿勢が感じられました。 参加者からの質問にも丁寧に回答する岡部さん 現場の「リアル」を語り合った懇親会 セミナー終了後は、懇親会も開催。参加者の皆さんから「状態にあった外用薬を処方してもらうには、担当医に対してどのように報告・相談したらよいか」「創傷被覆材を代用する場合、どのようなものが使用できるか」など、質問も多く挙がっていました。 NsPaceの「N」マークを作って記念撮影も ◆参加者の感想「DESIGN-R2020の重要性を改めて認識しました。セミナーを通して各項目の評価のポイントを学ぶことができて良かったです。これまで良性肉芽か不良肉芽か迷うことがあったのですが、具体的な判断の目安も知れたので、現場ですぐに活かせそうです」「この秋に新たに事業所を立ち上げて、管理や教育が必要な立場になったのでセミナーに参加しました。評価やケア方法を再確認する良い機会になったので、今日のセミナーを参考に、事業所の看護の質向上に努めたいです」 そのほかにも、「受講前は評価方法や外用薬の選定基準が曖昧でしたが、受講してみて不安が解決しました」「知識を得たことで、今後は根拠をもとに自信を持ってケアを実践できそう」といった声も聞かれました。 ◆講師 岡部さん コメント「普段から訪問看護の現場で褥瘡ケアを実践されている方々にご参加いただいたので、評価もケア方法の検討も非常に的確で、皆さまの日頃の看護風景が目に浮かぶようでした。肉芽組織や壊死組織の見分け方、炎症の有無など、参加者の皆さんが評価に悩まれているシーンもありましたが、評価スケールを日常的に使用することで、自身の評価の精度が向上します。ぜひケア方法を検討する指標としても、苦手意識を持たずに評価スケール を活用していただければと思います。また、私は今後、褥瘡の患者さんは増えていくと想定しています。看護の質を保ち、さまざまな職種がチームとなって、褥瘡に悩む患者さんを少しでも減らしていけると良いですね」 * * * NsPaceでは、月に1回程度、オンラインセミナーも開催しています。ぜひ学びの場をご活用ください。 ※ DESIGN-Rは、一般社団法人日本褥瘡学会の登録商標です。 取材・執筆・編集:高橋 佳代子

アレルギー性鼻炎の種類&原因|訪問看護の場での対応方法・予防法
アレルギー性鼻炎の種類&原因|訪問看護の場での対応方法・予防法
特集
2025年2月4日
2025年2月4日

アレルギー性鼻炎の種類&原因|訪問看護の場での対応方法・予防法

くしゃみ、鼻水、鼻詰まりといった症状により生活の質が低下するアレルギー性鼻炎は、通年性や季節性などが存在し、原因には住環境や食生活の変化、大気汚染などがあります。 訪問看護では、利用者さんの生活環境や習慣を踏まえた柔軟な対応が求められます。この記事では、アレルギー性鼻炎の種類や原因、対処法からケア方法まで解説します。本記事で解説する内容を、ご自身の健康管理や、利用者さんとそのご家族のアセスメントに役立ててください。 アレルギー性鼻炎の症状 アレルギー性鼻炎では、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりといった症状が見られます。 くしゃみ回数が多く連続して起こりやすいことが特徴です。 鼻水風邪のときのように粘り気はなく、無色透明でサラサラとしている傾向にあります。 鼻詰まり鼻粘膜の腫れによって起こります。 こうした症状が長引くと、 頻繁に鼻をかむことで粘膜が傷ついて鼻出血を起こす 集中力が低下する 睡眠不足になる イライラする といった症状も現れ、生活の質が著しく低下することもあるでしょう。 また、通常は鼻で呼吸をすると外気が鼻の中で適度に加湿され、体内に取り込まれます。しかし、鼻詰まりによって口呼吸になると、乾燥した空気がそのまま体内に入り、感染リスクも高まります。 アレルギー性鼻炎の種類 アレルギー性鼻炎は、アレルゲン(抗原:アレルギーの原因物質)が鼻粘膜から侵入しマスト細胞上のIgE抗体に結合することによって症状が引き起こされる抗原抗体反応(I型アレルギー)の一種です。これには、大きく分けて2種類あります。 ひとつは、ダニやホコリといったアレルゲンが原因となり、1年を通して症状が現れる「通年性アレルギー性鼻炎」です。もうひとつは、スギやヒノキなどの花粉が原因となり、花粉の飛散する時期に限定して症状が現れる「季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)」です。いずれのタイプでも、くしゃみ、透明で水っぽい鼻水、鼻詰まりといった症状が現れます。 なお、寒暖差によって引き起こされる「血管運動性鼻炎」と呼ばれるタイプもありますが、これは非アレルギー性の鼻炎です。 アレルギー性鼻炎の環境要因 アレルギー性鼻炎を発症しやすい環境要因を見ていきましょう。 住環境 現代の住宅は気密性が高いため、換気が不十分な状態が続くと、ダニやハウスダストといったアレルゲンが室内に溜まりやすくなります。さらに、高気密・高断熱住宅では梅雨時に室内の湿度が上がりやすく、アレルゲンとなるカビの発生を引き起こす要因に。そのため十分に換気をする、除湿機を使用するなど、室内の風通しをよくして適切な湿度を維持することが大切です。湿度が60%を超えると、カビやダニが発生しやすくなり、アレルギー性鼻炎をはじめとしたアレルギー疾患の原因となりますので、湿度の目安は60%以下とします。 また、現代社会では、単身世帯や共働き世帯が増え、掃除をする時間が限られている家庭も多くなっています。特に人が頻繁に行き来する廊下や洗面所などでは、目に見えないハウスダストが蓄積します。これらの場所を定期的に掃除し、アレルゲンを減らすことが重要です。また、観葉植物の葉や照明器具のカバー、天井などもハウスダストが溜まりやすいためこまめにチェックするようにしましょう。 食生活の変化 加工食品や添加物を多く含む現代の食生活が免疫バランスを崩し、アレルギー反応を引き起こしやすい体質を作るとされています。 排気ガス・PM2.5など 排気ガスやPM2.5などの大気汚染物質も、アレルギー性鼻炎を悪化させる要因です。特に都市部では、自動車の排気ガスや微細な粒子状物質が鼻の粘膜に炎症を引き起こし、症状を増悪させることがあります。 アレルギー性鼻炎による鼻詰まりの対処法 自宅では、生理食塩水や市販の鼻腔洗浄キットを使った鼻腔洗浄が有効で、アレルゲンの除去や粘膜の清潔を保つことができます。また、加湿器の使用や濡れタオルを部屋に干すことで部屋の湿度を保ち、鼻粘膜の乾燥を防ぐことも大切です。ただし、加湿器の水槽やフィルター、濡れタオルはカビの発生源となる可能性が高いため、加湿器は定期的に清掃し、部屋に干す濡れタオルも清潔なものにこまめに交換するなど、カビを防ぐための対策を欠かさずに行いましょう。 住環境の改善や生活習慣の見直しも、症状の軽減に大きな役割を果たします。しかし、現実には住環境を理想的に整えることが難しいケースも多いため、「できる限り改善に努める」という柔軟な姿勢が重要です。たとえば、部屋の掃除や換気を定期的に行うだけでも、ハウスダストやダニなどのアレルゲンを減らすことができます。また、カーテンや布団など、アレルゲンが溜まりやすい箇所の洗濯頻度を増やすよう伝えるのも良いでしょう。 そのほか、外出時にマスクを着用して花粉やホコリの吸入を防止したり、帰宅後に衣服をすぐに着替えてシャワーを浴びることでアレルゲンの付着を最小限に抑えたりなど、利用者さんの状況や状態に応じて対応策を検討してください。 アレルギー性鼻炎の治療法 症状がひどく改善しない場合は、医療機関での治療が必要です。アレルギー性鼻炎の治療法には、薬物療法とアレルゲン免疫療法、手術療法があります。 薬物療法抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬、鼻噴霧用ステロイド薬や経口ステロイド薬、点鼻用血管収縮薬などを処方します。 アレルゲン免疫療法アレルゲンを少量から徐々に増量して体内に取り込むことで、アレルゲンに対する体の過剰な反応を抑える治療法です。この治療法は、数年以上の期間が必要で、根気強く続けることが求められますが、薬物療法の副作用で治療の継続が困難だったり、薬物療法だけでは症状が十分に改善しなかったりする場合に選択されます。 手術療法鼻の粘膜をレーザーで凝固しアレルギー反応が鼻粘膜でおきにくくする下鼻甲介粘膜焼灼術や鼻腔の形を整えて鼻詰まりを改善する粘膜下下鼻甲介骨切除術、鼻漏改善やくしゃみ軽減のための後鼻神経切断術などがあります。 日常での鼻詰まり解消法 日常生活での鼻詰まり解消には、簡単に取り入れられる方法がいくつかあります。入浴することで体が温まり、血行が促進されるため、鼻詰まりの改善が期待できます。お湯から立ち上る蒸気が鼻の奥まで届き、鼻粘膜を潤してくれる効果もあります。また、蒸しタオルを鼻に当てる方法もおすすめです。タオルをお湯で濡らして絞り、鼻周辺に軽く当てると血流が良くなり、鼻詰まりを和らげる効果が期待できます。 子どもの鼻詰まりは、自分で鼻を上手にかむことができない場合、症状が悪化しやすいです。鼻水吸引器を使って鼻水を吸引することで、鼻詰まりを軽減させることができます。吸引器は電動タイプや手動タイプなどさまざまな種類があります。 快適な睡眠の工夫 上半身を高くして寝ることで、重力の影響で鼻の通りが良くなり、鼻詰まりが軽減されます。枕を少し高くしたり、リクライニングできるベッドを活用したりしましょう。 また、上述したように乾燥による鼻粘膜の刺激を防ぐためには、部屋の湿度を保つことが大切です。さらに、マスクをつけると、鼻周辺の湿度が保たれ、鼻の乾燥を防ぐと同時に外気の冷たさを和らげることにもつながります。 * * * アレルギー性鼻炎は、症状の辛さが日常生活に大きな影響を及ぼしますが、適切な治療や住環境の改善などによって、その負担を軽減することが可能です。訪問看護では、利用者さんの生活環境に合わせた提案やケアが重要です。今回紹介した対処法や予防策を活用し、アレルギー性鼻炎の悩み解消をサポートしましょう。 編集・執筆:加藤 良大監修:瀬尾 達(せお わたる)医療法人瀬尾記念会瀬尾クリニック理事長。耳鼻咽喉科専門医。クリニックでの診療の他、京都大学医学部講師や大阪歯科大学講師を兼任。祖父から代々の耳鼻科医の家系。兄は、聖マリアンナ医科大学耳鼻科教授。テレビやマスコミ出演多数。 【参考】〇東京都福祉保健局.「健康・快適居住環境の指針― 健康を支える快適な住まいを目指して ―」https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/hokeniryo/web_zenbun12025/1/30閲覧〇東京都福祉保健局「健康・快適居住環境の指針」https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/hokeniryo/web_arerugen_taisaku_kenkai_sisin2025/1/30閲覧〇日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会「アレルギー性鼻炎ガイド2021年版」http://www.jiaio.umin.jp/common/pdf/guide_allergy2021.pdf2025/1/30閲覧

足のミカタ 重症化を防ぐフットケア アセスメント編【セミナーレポート前編】
足のミカタ 重症化を防ぐフットケア アセスメント編【セミナーレポート前編】
特集 会員限定
2025年1月28日
2025年1月28日

足のミカタ 重症化を防ぐフットケア アセスメント編【セミナーレポート前編】

2024年10月25日、NsPace(ナースペース)オンラインセミナー「足のミカタ~重症化を防ぐフットケア~」を開催しました。講師にお迎えしたのは、在宅でのフットケアにも尽力されている小山晃子先生。訪問看護師が知っておきたい足病変とそのアセスメント、ケアの知識を、たくさんの症例とともに教えていただきました。セミナーレポートの前編では、足病変のアセスメントに必要な知識をまとめます。 ※約80分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)が特に注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 【講師】小山 晃子先生倉敷市立市民病院 形成外科 医長平成16年に高知大学を卒業し、倉敷市立児島市民病院にて臨床初期研修を修了。平成18年から川崎医科大学附属病院 形成外科・美容外科にて、褥瘡・創傷治癒を学ぶ。平成24年より現職。入院・外来・在宅で医療を提供しながら、医療者や介護者、市民を対象としたセミナーも行い、褥瘡・フットケアの「ミカタ」を増やすべく活動している。 訪問看護師さんに伝えたい足の「ミカタ」 本セミナーでは、フットケアをするにあたり「何を見て、どう考えて、どう行動したらよいか」、つまり足の「ミカタ(見方)」をお伝えします。あえてカタカナ表記にしているのは、「味方」の意味も込めているからです。みなさんには「利用者さんの味方になる」という姿勢でケアをしてほしいと考えています。 また、多職種との連携において重要なのは、言葉や考え方の統一。そして、利用者さんを中心に据えた共通の未来像を描くことです。在宅と病院の連携においても、同じ「ミカタ」で物事を捉え、同じ言葉で情報を伝え合うことで、共に利用者さんを支えてもらえたらと思います。 足病の定義と捉え方のポイント 最初に、「足病のミカタ」をご紹介しましょう。「重症化予防のための足病診療ガイドライン」では、足病を以下の7つに分けて定義しています。 糖尿病性足病変 → 血流・感染・圧迫 末梢動脈疾患(PAD) → 血流 慢性静脈不全症 → 血流・感染 慢性腎不全に伴う足病変 → 血流・感染 下肢リンパ浮腫 → 血流・感染 膠原病による足病変 → 血流 神経性疾患による足病変 → 圧迫 一見難しく感じるかもしれませんが、矢印右側の「血流」「感染」「圧迫」という3つの切り口で考えると、それぞれの問題や必要な対応を捉えやすくなるはず。私はこの3つの切り口を、「足病の3つのミカタ」と呼んでいます。 足を洗う前に必ず確認すべき「血流」 「足病の3つのミカタ」のうち、特に訪問看護師の方々に注目してほしいのが「血流」です。 ここでひとつ質問があります。みなさんはフットケアにあたり、利用者さんの足を洗いますか? 洗いませんか? その回答をふまえて、以下のケースをご覧ください。 [ケース1]糖尿病を患い、神経障害があるために足の状態が悪いことに気づいていない利用者さん。足を洗うと、皮膚が破れていた箇所に新しい皮膚が形成され、6週間後には傷が治りました。創傷処置もしましたが、足を清潔に保つことで治癒が促進されています。 [ケース2]糖尿病で足の一部が黒くなっている利用者さん。足を洗ったところ、感染が一気に進み、足の広範囲が壊死してしまいました。 ケース2で状態が悪化した理由は、「血流障害があり、傷を伴う足」だったためです。こうした状態の足を漫然と洗ってはいけません。 特に糖尿病性の足潰瘍は、血流障害の有無で治療方針が大きく変わります。血流障害がある冷たい足を洗浄し、垢やはがれかけた皮膚を除去する、つまり一種のデブリードマンをすると、状態が急速に悪化することがあるのです。 そのため、「洗うと悪くなる足」が存在することを念頭におき、足を洗うかどうか判断をしてください。よかれと思って洗った結果、利用者さんの足が壊死したら、利用者さんが大変な苦痛を強いられるだけでなく、ケアを提供するみなさんも心に大きなダメージを負ってしまうはず。後悔のないよう、覚えておいてほしいポイントです。 血流のアセスメント 末梢動脈疾患や下肢閉塞性動脈硬化症などにおける血流の状態を評価するスケールに、「Fontain分類」「Rutherford分類」があります。いずれも数字が大きいほど血流が悪いという評価です。間欠性跛行(歩いていると足が重く、もしくは痛くなって止まってしまい、少し休むとまた歩けるようになる状態。)の程度から動脈の詰まりを判断します。 ただし、歩いてもらわなければ評価できないため、あまり歩かない方の場合は間欠性跛行の進行に気づけません。無症状からいきなり足の痛みを訴えたり、壊疽が始まったりして、慌てて病院に駆け込む事態になりかねません。 在宅で実践してほしい「CRT検査」 そのほかにも血行の検査は数多くありますが、おすすめは「CRT(キャピラリィ・リフィリング・タイム/ Capillary Refilling Time)」です。道具を使わず、検査者の手だけで簡単に実践でき、動脈を探す手間もありません。 ご自身の手の親指と人差し指の先端を、ものをつまむような形で力を込めて5秒間合わせてください。指を開く時、指先に注目です。白くなっていた指先が、2秒以内に元の色に戻るかと思います。これが、血流が正常であるサインです。CRTでは、同じ要領で利用者さんの足の指先を検査者の指でぎゅっと押さえ、皮膚の色の変化を観察します。色が戻るのに3秒以上かかる場合は、血流障害の可能性を考え、病院への相談を検討してください。 形成外科医の傷の見方「神戸分類」 ここからは、「形成外医の足のミカタ」をさらに詳しくご紹介します。私たちは、血流と感染の状態を考慮しつつ、糖尿病性足潰瘍の「神戸分類」に照らし合わせて検討していきます。「神戸分類」とは、「知覚障害」「血流障害」「足の変形」という3つの「足病変の基礎因子」に注目して足の状態を4タイプに分け、治療を考えていくしくみです。 タイプⅠ知覚の障害や足の変形があり、足裏にタコができているような状態タイプⅡ血流障害があり、傷ができている状態タイプⅢ感染が見られる状態タイプⅣ血流障害と感染が合併している最重症の状態 タイプⅠの足の変形にはフットウェアの活用を、タイプⅢには感染した組織を除去するデブリードマンを選択します。一方で血行障害があるタイプⅡ、Ⅳは、第一に血行再建しなければなりません。血のめぐりが悪いまま、腐った組織を足浴で洗い流したり、デブリードマンをしたりすると、状態はかえって悪くなります。 次回は鶏眼や胼胝の予防や爪の構造や役割、爪の切り方などフットケア実践における必要な知識について解説します。>>後編はこちら足のミカタ 重症化を防ぐフットケア 爪のケア実践編【セミナーレポート後編】 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア 【参考】〇日本フットケア・足病医学会 (編).『重症化予防のための足病診療ガイドライン』南江堂,2022年

真菌症とは? フットケアにも活かせる知識【多数の症例写真で解説】
真菌症とは? フットケアにも活かせる知識【多数の症例写真で解説】
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2025年1月21日
2025年1月21日

真菌症とは? フットケアにも活かせる知識【多数の症例写真で解説】

在宅療養者によくみられる皮膚症状を、皮膚科専門医の袋 秀平先生(ふくろ皮膚科クリニック 院長)が写真を見比べながら分かりやすく解説。今回は真菌症の中でも、在宅で特に問題になる白癬菌とカンジダに絞って解説します。 真菌症とは 真菌症とは、真菌(カビ)が寄生して起きる疾患で、皮膚の角層、爪、毛や粘膜表面に生じる浅在性真菌症と、皮膚の深部(真皮、脂肪組織)や内臓に生じる深在性真菌症があります。後者はやや特殊で頻度も低いのに対し、前者は日常の診療で頻繁に遭遇します。 皮膚に病変を引き起こす真菌は複数ありますが、在宅で主に問題になるのは白癬菌とカンジダであると思われ、今回は浅在性の白癬とカンジダに絞ってみていきましょう。 診断確定には真菌の証明が必須 視診で疑うことはもちろんですが、診断確定は原因となる真菌を証明することにつきます。疑わしい部分の角層、毛、爪などを鑷子や眼科の剪刀で採取し、鏡検で菌糸や胞子を確認します(図1)。具体的には、採取した検体をスライドグラスに乗せて、その上から検出液*をかけてさらにカバーグラスを乗せ、軽く熱して角質を溶かしてから確認。慣れれば手技としては簡単ですが、検体を採取するときに適切な場所を選ぶことと、結果の判断が少し難しいと思います。 *検出液:20~30%の水酸化カリウムでよいのですが、さらに見やすくするために10~20%のジメチルスルホキシド(DMSO)を加えた検出液が市販されています。 図1 白癬菌の菌糸と胞子(鏡検像) A:白癬菌の菌糸(矢印)が見られる。B:菌糸の他、ブドウの房のような胞子(破線で囲まれた部分)が見られる。カンジダである。C:角層の隙間や角質細胞間の脂肪滴(破線で囲まれた部分)が白癬菌の菌糸のように見える場合があり、菌様モザイクと呼ばれている。 爪白癬については爪自体が硬く、白癬菌が存在している場所に偏りがある場合もあり、適切に検体を取るのがさらに難しくなります。 特に在宅で、「爪が肥厚しているから」というだけで白癬と判断されて治療されている例を見かけます。実は爪白癬ではない、爪甲鉤彎症(そうこうこうわんしょう)や掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)、厚硬爪甲など他の疾患による爪の肥厚(図2)などが含まれている場合もあるので、きちんと診断する必要があります(少なくとも皮膚科では、真菌検査をしないで爪白癬の治療を始めると、医療費請求時に査定されます!)。最近では抗原検査を行うキット(図3)も発売されており、免疫学的に調べられるので、他科の先生方には利用してほしいものです。図2 爪甲鉤彎症(左)と掌蹠膿疱症(右)   図3 爪白癬菌検出キットの例 テストライン部にラインが出現しており「陽性」と判定。 白癬 足に発症した場合は足白癬、爪なら爪白癬、陰股部であれば股部白癬、頭は頭部白癬、手は手白癬と呼び、それ以外の場所は一般に体部白癬とまとめることが多いです。足白癬は一般に趾間型、水疱型、角化型に分類されます(図4)。白癬はかゆみを伴うことが多く、またそういった印象があると思いますが、特に角化型ではかゆくない場合もあります。図4 趾間型(左)、水疱型(中央)、角化型(右) 外用治療が基本ですが、皮疹が見られない場所にも真菌が付着しているため、両足全体に外用することが必要です(図5)。薬を塗る量も重要ですが、最近は「finger tip unit」の概念が普及しているように思います(図6)。チューブから人差し指の末節分の薬を押し出して(約0.5g)、それを大人の手のひら2枚分に塗る、という概念です。だいたい片足全体で1unit(0.5g)、両足に1日1回塗れば1gですので、1ヵ月で30gを消費することになります。また、症状が改善しているように見えても深部に真菌が逃げ込んでいるので、「見た目の症状が消失してからあと1ヵ月」外用を続けることが基準といえます。図5 足全体に付着する白癬菌 皮膚に現れた白癬の症状(破線で囲まれた部分)は一部でも、足全体を培地に接触させるフットプリント法で、広い範囲に白癬菌が付着していることが分かる。(まるやま皮膚科クリニック 丸山 隆児先生 資料) 図6 finger tip unit 人差し指の末節分の長さまで出した塗り薬の量を1finger tip unit(約0.5g)という。その量を大人の手のひら2枚分に塗る。 手掌や足底以外の部位、例えば臀部や四肢、体幹などに白癬が生じた場合は、一般に「境界鮮明・堤防状隆起・中心治癒傾向」の3つの特徴を持つことが多いでしょう(図7)。図7 体部白癬 臀部と下肢に生じた体部白癬。境界がはっきりとしており、周辺が堤防状に隆起し、外側に拡大していくため、中心部が治癒する傾向にある。 爪白癬 爪に真菌が侵入したもので、「混濁・肥厚・崩壊」が特徴ですが、その見た目はさまざまです(図8)。周囲の皮膚に食い込んで感染を起こし壊疽に至ったり、転倒リスクが上昇したりすることが分かってきました1)。現在の日本の高齢者における足白癬・爪白癬の罹患率は高いとの指摘があり、「治せるうちに治しておきたい」疾患であると考えます。図8 爪白癬のさまざまな症状 治療は内服薬か外用薬を選択します。内服にはテルビナフィン塩酸塩かホスラブコナゾールを用います。肝機能障害の懸念があるため、定期的な採血を必要とします。外用にはエフィナコナゾールまたはルリコナゾールがあります。治癒率は内服薬のほうが高いので、日本皮膚科学会のガイドライン2)によれば内服治療の推奨度はA(行うよう強くすすめる)、外用治療はB(行うようすすめる)とされています。肝機能障害や併用薬などの問題がなければ内服治療が望ましい(図9)のですが、副作用の懸念や採血の問題があり、在宅では外用薬が選択されることも多いようです。図9 白癬の治療経過(70代女性) テルビナフィン塩酸塩内服による足爪白癬の治療経過。根元から新しいピンク色の爪が生えてきて、半年ほどで入れ替わる。 カンジダ症 カンジダも真菌の一種ですが、口腔内、腸管、膣内などの常在菌です。寝たきりの高齢者ではオムツの着用率が高く、入浴もままならないこともあり、臀部・外陰部のカンジダ症の発生リスクが高いと考えられます。 臀部・外陰部の白癬は前述のような特徴を持ちますが、一方でカンジダ症は膜のような鱗屑(りんせつ)がついていたり(図10)、衛星病巣といって周辺にパラパラと飛び散るような水疱や膿疱が見られたりすることがあります。ただし、図11のように、なんとなく境界がはっきりしており「膜様鱗屑?」と思っても真菌は検出できず、刺激性の皮膚炎だったという例もあります。やはり最終的には菌の存在の有無を確認することが重要です。在宅の現場や施設などいたるところに皮膚科医が存在していれば、と思うのですが、現実はそうではないため皮膚科医の一人として申し訳なく思っています。図10 膜様鱗屑が見られるカンジダ症 図11 真菌は検出されなかった刺激性の接触皮膚炎 境界明瞭?膜様鱗屑?に見えるが、真菌は検出されず、刺激性の接触皮膚炎だった例。 カンジダ症は外用治療を基本としますが、刺激性の皮膚炎を合併している場合もあります。ここで問題となるのはIAD(失禁関連皮膚炎)ですが、これについては次回で詳しく述べたいと思います。 余談ですが… 筆者が大学を卒業して皮膚科の教室に入局した時の教授が真菌を専門としており、真菌症の診療については厳しく指導されました。一番大切なことは真菌が原因となっていることを証明することであり、そうでない場合は抗真菌薬を使用してはいけない、と教えられました。 実際、例えば患者さんが受診される際に、「水虫だと思って市販の水虫薬を塗っていました」と言われると、非常に困ります。ある程度の期間塗ってしまうと真菌を検出できないことがあり、本当にいないのか、薬の効果で一時的に見えなくなっているのか、判断が困難になるためです。また、市販の外用抗真菌薬にはかゆみ止めをはじめとしたさまざまな成分が含まれており、それによる接触皮膚炎も多く見られます(図12)。図12 市販の水虫用外用薬にかぶれた例 もともと足白癬、爪白癬であったが、市販の水虫用外用薬にかぶれた例。 真菌は、角層のケラチンを餌にして生きています。ですから基本的には角層や表皮が欠損した潰瘍表面で悪さをすることはない、あるいは少ないと考えます。時々、褥瘡の潰瘍表面に真菌が感染したので抗真菌薬を外用した、という報告に触れることがあります。ところが実際に真菌を証明しておらず、「見た目が真菌っぽい」という理由で抗真菌薬を塗っているように見受けられ、筆者としては抵抗があります。 執筆:袋 秀平ふくろ皮膚科クリニック 院長東京医科歯科大学医学部卒業。同大学学部内講師を務め、横須賀市立市民病院皮膚科に勤務(皮膚科科長)。1999年4月に「ふくろ皮膚科クリニック」を開院。日本褥瘡学会在宅担当理事・神奈川県皮膚科医会副会長・日本専門医機構認定皮膚科専門医編集:株式会社照林社 【引用文献】1)加藤豊範, 吉田章悟, 鈴木絢子他:回復期リハビリテーション病棟における転倒予測因子の解析 - 足爪白癬のリスクとその治療の有用性の評価.PROGRESS IN MEDICINE 2020:40 (4);425-429.2)日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン改訂委員会:日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン2019.日皮会誌 2019:129(13):2639-2673.

アルコール依存症とは?原因・症状・対処法・訪問看護の注意点を解説
アルコール依存症とは?原因・症状・対処法・訪問看護の注意点を解説
特集
2025年1月21日
2025年1月21日

アルコール依存症とは?原因・症状・対処法・訪問看護の注意点を解説

アルコール依存症は、長期間にわたる飲酒習慣によって精神的・身体的な機能が損なわれ、症状が進むと日常生活に支障をきたす精神疾患です。 本記事では、アルコール依存症の症状から原因、合併症、訪問看護が介入する際の注意点まで詳しく解説します。アルコール依存症の疑いがある利用者さんやそのご家族のアセスメントにぜひお役立てください。 アルコール依存症とは アルコール依存症は、長期的かつ多量の飲酒によって精神的・身体的にアルコールへの依存状態が形成される精神疾患です。アルコールが生活の中心となり、耐性がつくことで飲酒量が増加し、自分の意志で飲み方をコントロールすることが難しくなっていきます。世界保健機関(WHO)が制定した国際疾病分類第10版(ICD-10)でも「精神および行動の障害」として正式に認められている疾患です。 アルコール依存症は年齢や性別を問わず、誰でも発症する可能性があります。長期間にわたって飲酒を続けることで、「飲酒したい」という欲求を抑えることが難しくなるほか、アルコールが体から抜けた際に手の震えや発汗、悪寒などの離脱症状(禁断症状)が見られるようになります。 アルコール依存症の方は「特徴的な顔つきになる」との噂がありますが、そのような事実はありません。肝機能の低下によって黄疸が出ている場合、顔が黄色く見えることがありますが、黄疸だけでアルコール依存症は判断できません。ただし、妊娠中に母親がアルコールを摂取した場合に出現することがある胎児性アルコール症候群(FAS)や胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)では、胎児期の顔面の形成不全により特徴的な顔つきとなります。 アルコール依存症の原因 アルコール依存症の原因はさまざまで、複数の要因が絡み合っていることも多くあります。 年齢と性別 若年齢から飲酒を始めるとアルコール依存症になりやすいといわれています。アルコール依存症は性別に関係なく発症しますが、飲酒機会の多い男性のほう有病率は高いです。ただし、アルコール分解酵素の量や女性ホルモンの関係で、女性のほうが依存症に陥るまでの期間が短いとされています。 家庭・職場の環境 アルコール依存症の親を持つ子どもはリスクが高いとされているほか、保護者の飲酒態度や虐待、家庭不和などが依存症を助長することもあります。家庭外の職場や友人関係でも、飲酒を助長する環境があればリスク要因になるでしょう。 他の精神疾患 うつ病や不安障害などの精神疾患との併存率が高く、若年の女性患者の場合は摂食障害との併存も多く見られます。他の精神疾患がもとで飲酒を繰り返して、依存症に陥ることがあります。 ※アルコール依存症をきっかけに他の精神疾患を併発するケースもあります。 アルコール依存症の進行度(段階)別の症状 アルコール依存症の精神依存症状としては、飲酒への強い欲求やそのコントロールの喪失、1日の大半の時間を飲酒に割く、飲酒以外の娯楽を無視する、精神的・身体的問題が悪化しているにもかかわらず節酒・断酒をしないなどの行動があります。 身体依存症状としては、飲酒の中止や減量によって離脱症状(禁断症状)が現れたり、「もっと酔いたい」という欲求によって飲酒量が増加したりします。離脱症状の具体例として、手指のふるえや発汗、悪心・嘔吐、不安、イライラ、不眠などがあり、重症化するとけいれんや幻覚が現れることもあります。 アルコール依存症は、以下のように進行します。 段階症状の特徴1段階 (機会飲酒)特定のイベントや会合で時々飲酒する程度で、日常的には依存はない2段階 (習慣飲酒)●日常的に飲酒するようになり、お酒に強くなる●飲酒が生活の一部となる※頻繁に記憶を失う(ブラックアウト)する場合は注意が必要となる        3段階 (軽度のアルコール依存症)      ●お酒がないと物足りなさを感じ、飲酒量が増える●軽い酔いでは満足できなくなる              4段階 (依存症初期)●健康診断で飲酒量を少なく報告するようになる●飲酒を控えるよう周囲から注意される●飲める時間になるまで待てず、落ち着かない状態が続く●飲まないと不眠に悩まされる●アルコール切れで発汗や悪寒など風邪に似た症状(離脱症状)が現れる  5段階 (依存症中期)●迎え酒(二日酔いの悪い気分を治すために飲むお酒)をする習慣が定着する●飲酒のために嘘をついたり隠れ飲みをしたりする●お酒が原因のトラブルが繰り返される●節酒を試みても失敗する6段階 (依存症後期)●アルコールが切れることなく連続的に飲酒するようになる●幻覚や重篤な離脱症状、肝障害などが進行し、仕事や日常生活が困難になる アルコール依存症の合併症 アルコール依存症は、広範な機能に影響を与え、さまざまな合併症を引き起こします。 肝臓への負担 長期間の飲酒は肝細胞の破壊を引き起こし、肝硬変や肝性脳症の原因となります。肝性脳症は、血液中のアンモニア濃度が上昇することで意識障害をもたらし、最悪の場合、昏睡状態に至ることもあります。 心血管系への負担 アルコールの過剰摂取は心血管系への負担も大きく、アルコール性心筋症の発症リスクが高まります。 栄養欠乏 アルコール依存症によってビタミンB群(B1、B12、葉酸)が欠乏しやすく、貧血や神経障害が悪化するほか、免疫力の低下により肺炎や敗血症などの感染症にかかりやすくなります。また、亜鉛やビタミンD不足による骨粗しょう症のリスクも増大します。 【監修・豊田先生のワンポイントチェック】 なぜアルコール依存症で栄養欠乏やビタミン不足に?アルコールには膵外分泌刺激作用があり、大量に飲酒すると、膵液が十二指腸に排出しきれず膵管内に溜まり、膵管内圧が上昇します。そして、膵管から漏れ出した消化酵素が膵臓を自己消化し、膵臓に炎症が起こります。この状態が続き、慢性膵炎になると、膵臓の機能低下が起こり、消化酵素の分泌が悪くなります。膵臓から分泌されている消化酵素は腸の栄養素の吸収に関与しているため、分泌が悪くなることで栄養不足やビタミン不足が起こります。加えて、アルコール依存症の方はお酒を多く摂取し、食事をあまり摂らない傾向にあるため、一層栄養不足に陥りやすくなります。また、ビタミンB1はアルコールを代謝する際に必要なため、アルコールを大量に飲むとたくさんのビタミンB1が消費されます。膵臓の機能低下によりビタミンの吸収率が悪くなっている状態下で、たくさんのビタミンが使われると、需要と供給のバランスが崩れ、ビタミン不足に陥ります。 アルコール依存症のチェック方法 アルコール依存症のチェック方法として、1990年代初頭に世界保健機関(WHO)が支援して開発したスクリーニングテスト「AUDIT(Alcohol Use Disorders Identification Test)」が広く用いられています。AUDITは10項目からなる自記式のテストで、各質問に対して0点から4点のスコアが与えられます。 テスト全体の合計点は0点から40点の間で評価され、得点に応じて飲酒問題の深刻度を判断します。日本では、アルコール依存症と診断する点数として15点を目安にしています。 各質問と回答については下記のとおりです。 問質問回答1あなたはアルコール含有飲料を、どのくらいの頻度で飲みますか?0:飲まない 1:月に1回以下2:月に2〜4回 3:週に2〜3回4:週に4回以上2飲酒をする時は、通常どのくらいの量を飲みますか?【基準】日本酒1合=2ドリンクビール大瓶1本=2.5ドリンクウィスキー水割りダブル1杯=2ドリンク焼酎お湯割り1杯=1ドリンクワイングラス1杯=1.5ドリンク梅酒小コップ1杯=1ドリンク0:1〜2ドリンク1:3〜4ドリンク 2:5〜6ドリンク 3:7〜9ドリンク 4:10ドリンク以上     3一度に「6ドリンク以上」飲むことが、どのくらいの頻度でありますか?0:ない1:月に1回未満2:月に1回3:週に1回4:毎日、ほとんど毎日      4過去1年間で、飲み始めると止められなかったことが、どのくらいの頻度でありましたか?0:ない1:月に1回未満2:月に1回3:週に1回4:毎日、ほとんど毎日5過去1年間に、普通ならできるようなことが、飲酒していたためにできなかったことが、どのくらいの頻度でありましたか?0:ない1:月に1回未満2:月に1回3:週に1回4:毎日、ほとんど毎日6過去1年間に、深酒の後の体調を整えるため、朝に迎え酒をしたことが、どのくらいの頻度でありましたか?0:ない1:月に1回未満2:月に1回3:週に1回4:毎日、ほとんど毎日7過去1年間に、飲酒後に罪悪感や負い目を感じたことが、どのくらいの頻度でありましたか?0:ない1:月に1回未満 2:月に1回3:週に1回4:毎日、ほとんど毎日8過去1年間に、飲酒のために前夜の出来事を思い出すことができなかったことが、どのくらいの頻度でありましたか?0:ない1:月に1回未満 2:月に1回3:週に1回4:毎日、ほとんど毎日9飲酒によって、あなた自身かほかの誰かが怪我をしたことがありますか?0:ない2:あるが、過去1年間にはなし4:過去1年間にあり10家族や親密な友人、医師、あるいはほかの健康管理にたずさわる人が、あなたの飲酒について心配したり、飲酒量を減らすようにすすめたりしたことがありますか?0:ない2:あるが、過去1年間にはなし4:過去1年間にあり出典:e-ヘルスネット(厚生労働省)「AUDIT」 アルコール依存症の対処法 アルコール依存症の治療は「解毒治療」「リハビリ治療」「アフターケア」の3段階に分かれており、個人の状態に応じて治療計画を立てます。治療の目的は、身体的・精神的な健康を回復させ、再飲酒のリスクを防ぎながら、社会復帰を目指すことです。 解毒治療 アルコールを体から排出する過程で生じる離脱症状の管理と、アルコールによって引き起こされた合併症への対応を行います。 リハビリ治療 個別カウンセリングやグループ療法によって自らの飲酒問題を直視し、断酒への意欲を高めることを目指します。アフターケアでは、医師のサポートと薬物療法による安定した精神状態の維持を目指し、自助グループでの仲間との交流も促します。 アルコール依存症の訪問看護の注意点 アルコール依存症の方の訪問看護を行う際は、次の注意点を押さえましょう。 病識の欠如に対する配慮 アルコール依存症は「否認の病」といわれることもあり、利用者さんは自分が病気であるという認識が乏しく、治療を拒否するケースもが多く見られるでしょう。無理に病識を押し付けようとすると、利用者さんの拒否感が強まり、治療への意欲が低下する可能性があります。利用者さんのペースに合わせた働きかけが必要です。 信頼関係の構築に時間をかける アルコール依存症の利用者さんは、孤独感を抱えやすく、他者への不信感が強いケースが多々見られます。信頼関係を構築するには時間と忍耐が必要で、急いで関係を築こうとすると逆効果になる場合も。焦らず時間をかけて接し、小さな変化を見逃さない、利用者さんの感情に寄り添い無理な介入を避ける、といったことを心がけましょう。 再飲酒・再発のリスク管理 アルコール依存症の方は、生活の中で再飲酒するリスクが常にあります。アルコール依存症の再発を防ぐためには、訪問看護師が環境を整備しつつ、利用者さんの変化を慎重に観察する必要があります。利用者さんの行動や表情の変化を細かく把握して早期介入し、飲酒の誘惑となる要素(人間関係や環境)を事前に特定して対策を考えていきましょう。 ご家族への病識の理解と協力の促し アルコール依存症からの回復にはご家族の協力が欠かせません。日常生活でのサポートや励ましはもちろん、再飲酒しそうになったときの対処も重要な役割です。 ご家族にとっては、利用者さんが断酒を続けられないことに対し、怒りや失望を感じることも少なくありません。しかし、アルコール依存症は個人の意志の弱さではなく、医療的な治療が必要な病であるという認識を持つことが必要です。アルコール依存症の治療は長期にわたるものであり、利用者さん本人だけでなくご家族にも大きな負担がかかります。そのため、訪問看護師は本人だけではなくご家族にも寄り添う姿勢を持つことが大切です。 * * * アルコール依存症は、一度発症すると長期間にわたる治療とサポートが必要な病気です。本人だけでなく、家族や支援者の理解と協力が治療成功の鍵となります。訪問看護においても、信頼関係の構築、病識の共有、再発リスクの管理といった要素を丁寧に進めることで、回復を促すことができるでしょう。 編集・執筆:加藤 良大監修:豊田 早苗とよだクリニック院長鳥取大学卒業後、JA厚生連に勤務し、総合診療医として医療機関の少ない過疎地等にくらす住民の健康をサポート。2005年とよだクリニックを開業し院長に。患者さんに寄り添い、じっくりと話を聞きながら、患者さん一人ひとりに合わせた診療を行っている。 【参考】〇厚生労働省「アルコールと依存」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-05-001.html2024/1/17閲覧〇厚生労働省「アルコール依存症の危険因子」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-05-003.html2024/12/13閲覧〇厚生労働省「AUDIT(おーでぃっと)」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-021.html2024/12/13閲覧

「パーキンソン病」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】
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特集
2025年1月14日
2025年1月14日

「パーキンソン病」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】

このシリーズでは、訪問看護師が出会うことが多い疾患を取り上げ、おさらいしたい知識を提供します。今回はパーキンソン病について、訪問看護に求められる知識、どんな点に注意すべきなのかを、在宅医療の視点から解説します。 パーキンソン病の基礎知識 パーキンソン病は、中脳の黒質にあるドパミン産生細胞が徐々に減少する神経変性疾患です。1817年イギリスのジェームズ・パーキンソンにより初めて報告されました。加齢は主要な危険因子で、60歳を超えると罹患率が増加します。罹患率は人口10万人あたり約150人です1)。 パーキンソン病の4大症状 パーキンソン病には4つの代表的な運動症状があります。安静時振戦、固縮、無動、姿勢反射障害です。 安静時振戦 安静時の振戦は左右非対称で、逆N字型(またはN字型)に進行します(図1)。例えば、右手→右足→左手→左足という順番で振戦が起これば、逆N字型進行です。 図1 逆N字型・N字型進行 固縮 体幹や手足がこわばります。上肢に歯車現象、下肢に鉛管様固縮を認めます。 無動 無表情となり、素早く動くことが困難になってしまう症状です。字を書くと次第に字が小さくなります(小字症)。歩行は前かがみで、最初の一歩を踏み出すことが難しく(すくみ足)、歩幅が小さくなったり(小刻み歩行)、歩行スピードは次第に速くなったり(加速歩行)、停止が困難になったりします(前方突進現象)。また、腕の振りが減少し、方向転換が難しくなるといった症状もみられます。 姿勢反射障害 体が傾いたときに姿勢を立て直すことができなくなり、転倒しやすくなります。 訪問時における病歴聴取/身体所見のポイント パーキンソン症状(パーキンソニズム)は非常によく遭遇します。身体所見の評価ポイントを復習しておきましょう。 顔の表情が乏しくなります(仮面様顔貌)。嚥下しないため、唾液がこぼれます。ベッドで斜めに寝る、斜めに体を傾けて座ります(斜め徴候)。眉間を繰り返し叩打したとき、瞬目が持続します(マイアーソン徴候)。歩行時に前傾姿勢、すくみ足、小刻み、すり足、前方突進現象、腕をふらないといった症状がみられます。方向転換ではまるで銅像が回転するようにぎこちなく回ります。狭い場所での方向転換が困難となるため、トイレの使用が非常に難しくなります。手を叩いてリズムをつけたり、床に一定の間隔で線を引いたりすると歩きやすくなります。上肢を肘関節で屈曲させると、歯車を回転させるときのようなカクカクとした抵抗を認めます(歯車現象)。下肢を膝関節で屈曲や伸展させると、鉛管のような硬さを感じます(鉛管様固縮)。 非運動症状にも注意 上記の運動症状が出現する数年前から非運動症状が出ることも知られるようになりました。早期診断の観点からも非運動症状も知っておくとよいでしょう。 嗅覚の低下(コーヒーや石けんの臭いが分からなければ疑う)便秘うつ症状起立性低血圧不眠や日中の過眠むずむず脚症候群(脚がむずむずしてじっとしていられなくなます)REM(rapid eye movement)睡眠行動障害(睡眠中に大声で叫んだり、隣に寝ている人を殴ったり、壁を蹴るなど) パーキンソン症候群とは パーキンソニズムは、パーキンソン症候群と呼ばれるパーキンソン病以外の疾患でも起こります。パーキンソン症候群には以下の疾患があります。 薬剤性パーキンソニズム向精神病薬(抗精神病薬、抗うつ薬)、消化性潰瘍薬(スルピリド)、制吐薬(メトクロプラミド、ドンペリドン)がよく問題になります。高齢者では常用量でも、しばらく飲んでいるとパーキンソニズムを起こしてくるため注意が必要です。脳血管障害性パーキンソニズム脳梗塞や脳出血が原因のパーキンソニズムで、下肢の固縮が強く、開脚で「逆ハの字」歩行(図2)となります。正常圧水頭症軽い認知症、歩行障害、尿失禁が特徴です。正常圧水頭症の歩行も開脚で「逆ハの字」となります。神経変性疾患レビー小体型認知症や進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症があります。 図2 パーキンソン病と脳血管障害性パーキンソニズムおよび正常圧水頭症の歩行の違い 脳血管障害性パーキンソニズムと正常圧水頭症では、開脚歩行で「逆ハの字」となるのが特徴です。 安静時振戦なし、左右対称の振戦、進行が早い、早期から転倒を繰り返す、治療薬(L-ドパ製剤)に反応が乏しい場合は、パーキンソン病ではなくパーキンソン症候群の可能性が高いです。 診断 パーキンソン病の診断は厚生労働省の診断基準に基づいて行われます2)。 <診断基準> 以下の診断基準を満たすものを対象とする。(Probableは対象としない。)1.パーキンソニズムがある。※12.脳CT又はMRIに特異的異常がない。※23.パーキンソニズムを起こす薬物・毒物への曝露がない。4.抗パーキンソン病薬にてパーキンソニズムに改善がみられる。※3以上4項目を満たした場合、パーキンソン病と診断する(Definite)。なお、1、2、3は満たすが、薬物反応を未検討の症例は、パーキンソン病疑い症例(Probable)とする。※1.パーキンソニズムの定義は、次のいずれかに該当する場合とする。(1)典型的な左右差のある安静時振戦(静止時振戦:4~6Hz)がある。(2)歯車様強剛、動作緩慢(運動緩慢)、姿勢反射障害(姿勢保持障害)のうち2つ以上が存在する。※2.脳CT又はMRIにおける特異的異常とは、多発脳梗塞、被殻萎縮、脳幹萎縮、著明な脳室拡大、著明な大脳萎縮など他の原因によるパーキンソニズムであることを明らかに示す所見の存在をいう。※3.薬物に対する反応はできるだけドパミンアゴニストまたはL-dopa 製剤により判定することが望ましい。文献2)より引用 治療 パーキンソン病の進行を遅らせる薬はありません。ドパミンの前駆物質であるL-ドパ製剤を中心としたドパミン補充療法が行われます。L-ドパ製剤は脳の中でドパミンに変換されて効果を出しますが、病気が進行すると効果持続時間が短くなります。副作用として嘔気があります。 若い患者にはドパミン受容体刺激薬(ドパミンアゴニスト)が用いられます。副作用で突発性睡眠や眠気、欲望が抑えられない症状が発現することがあります。最終的にはすべての患者にL-ドパ製剤が処方されることが一般的です。 REM睡眠行動障害は、パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症に合併することが多いです。クロナゼパムが著効します。 最新トピックスパーキンソン症状が進行した場合、脳深部刺激療法(deep brain stimulation:DBS)と呼ばれる手術療法が行われることがあります。DBSとは、脳内に留置した電極と前胸部に埋め込んだ刺激発生装置を接続し、脳内の標的部位に弱い電気刺激を行うことで症状を改善する治療法です3)。 ●パーキンソン病には4つの代表的な症状(安静時振戦、固縮、無動、姿勢反射障害)があります。●運動症状がでる数年前から非運動症状(嗅覚低下、便秘、うつ症状、起立性低血圧)が起こります。●安静時振戦なし、左右対称の振戦、進行が早い、早期から転倒を繰り返す、治療薬(L-ドパ製剤)に反応が乏しい場合は、パーキンソン病ではなくパーキンソン症候群を疑います。 執筆:山中 克郎福島県立医科大学会津医療センター 総合内科学講座 特任教授、諏訪中央病院 総合診療科 非常勤医師、大同病院 内科顧問 1985年 名古屋大学医学部卒業名古屋掖済会病院、名古屋大学病院 免疫内科、バージニア・メイソン研究所、名城病院、名古屋医療センター、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)、藤田保健衛生大学 救急総合内科 教授/救命救急センター 副センター長、諏訪中央病院 総合診療科 院長補佐、福島県立医科大学会津医療センター 総合内科学講座 教授を経て現職。編集:株式会社照林社 【引用文献】1)一般社団法人日本神経学会:パーキンソン病 疫学.https://www.neurology-jp.org/public/disease/parkinson_detail.html2024/12/13閲覧2)難病情報センター:パーキンソン病 診断基準.https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/upload_files/File/006-202404-kijyun.pdf2024/12/13閲覧3)横浜市立大学附属市民総合医療センター:パーキンソン病治療〜世界で初!アダプティブDBS機能を使用した当院のDBS治療の取り組み〜 Part 2.2024/09/06.YouTube.https://youtu.be/2v5mI--3AIQ?si=-AuVhhB5IU9mMOQT(横浜市立大学附属市民総合医療センター:パーキンソン病治療〜世界で初!アダプティブDBS機能を使用した当院のDBS治療の取り組み〜.2024.https://www.yokohama-cu.ac.jp/urahp/medical/medicalnews/parkinson.html2024/12/13閲覧) 【参考文献】○上田剛士編著:パーキンソン症候群.高齢者診療で身体診察を強力な武器にするためのエビデンス,シーニュ,東京,2014:101-115.○鈴木則宏:神経診察クローズアップ 正しい病巣診断のコツ 改訂第2版.メジカルビュー社,東京,2015.

特別先行公開! 足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~ セミナーQ&A
特別先行公開! 足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~ セミナーQ&A
特集 会員限定
2024年12月24日
2024年12月24日

特別先行公開! 足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~ セミナーQ&A

2024年10月25日(金)に開催したNsPaceオンラインセミナー「足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~」では、重症な足病変の予防やケアについて、倉敷市立市民病院 形成外科医長 小山晃子医師が解説。今回は、セミナー時に寄せられたご質問について、特別に小山先生に回答いただきました。 なお、本記事はQ&Aの抜粋版です。完全版はお役立ちツールにてダウンロード可能ですので、そちらもぜひご利用ください。 【セミナー講師/質問回答】 小山 晃子 氏倉敷市立市民病院 形成外科医長平成16年 高知大学卒 倉敷市立児島市民病院にて臨床初期研修終了平成18年 川崎医科大学付属病院 形成外科・美容外科にて 褥瘡、創傷治癒を学ぶ平成24年より現職入院・外来・在宅で医療を行いながら、医療者、介護者、市民を対象としたセミナーを行い、褥瘡・フットケアの「ミカタ」を増やすべく活動中です。 ■お役立ちツールも公開! お役立ちツール『「足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~」Q&A 一覧』では、より多数のご質問への回答を読むことができます。ぜひご活用ください。>>「足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~」Q&A 一覧 足の洗浄について <Q1>・セミナーでは、「血流がない場合は足を洗ってはいけない」とおっしゃっていましたが、なぜでしょうか?感染が広がるためでしょうか。湿潤や摩擦、温度が影響するためでしょうか。 ・血行不良の状態で洗うと、どういう機序で悪化するのでしょうか。 「血流がない足=すべて洗ってはいけない」というメッセージを受け取られた方が多いようで、私の説明不足を反省しています。漫然と洗浄してはいけないのは、傷のある血流のない足です。 ミイラ化を目指している場合には、極力組織の水分を減らしたいため、当然洗浄は避けます。血流の乏しい足の傷に壊死した皮膚皮下組織、腱などの血流のない組織が露出しているケースを想定してみましょう。血流がない(免疫細胞が到達しない)組織は、血流がある(免疫細胞が到達できる)生きた組織・人体側と接しています。その二つの境界で、人体側はゆっくりと傷を治そうとしています。この状態で血流がない組織に水を含ませると、その組織は細菌にとってのよい培地(湿気と温度がある環境)になってしまいます。生きた傷の表面に、細菌培地で「湿布」することになるので、水分を避けることが望ましいと考えています。 壊死組織がなく、傷のある血流の乏しい足については、漫然と洗わないでいただきたいです。洗ってそのままにするのではなく、翌日以降 痛みの訴え浸出液傷の周囲の腫れ壊死組織 等の変化がないかを見て、洗浄したことの功罪を慎重に判断してください。 <Q2>・患部を避けた清拭や入浴、シャワー浴は可能ですか? ・血流がなく壊疽して感染している場合の洗わないケア方法を教えていただきたいです。 患部を避けた入浴、シャワー、清拭は可能です。 血流がなく感染しているときは、ケアではなく、キュア(治療)が必要です。抗菌薬全身投与、局所処置(浸出液の除去、消毒)、疼痛管理などの治療を行います。 <Q3>月に1、2回の訪問をしている独居の方で、足病変があった場合、医師に処置の指示を依頼し、洗浄をするために訪問頻度を増やしたほうがいいでしょうか。毎日が難しい場合は、最低限どれくらいの頻度で洗浄が必要ですか? 自分で足が洗えない方だと理解をしました。靴下を履き替えるだけでもいいのではないかと思っています。 足病変があった場合、血の巡りがあるのかないのか、傷の深さがどうか、感染を起こしているかどうか、といったような専門の判断を一度受けて、みんなで「治療の組み立て」をしてからどれぐらいの頻度で看護師さんに助けていただくのが良いか、考えたいです。 「最低限」ということであれば、靴下を毎日履き替えるっていうことを、頑張ってみたらいかがでしょうか。清潔が何よりです。 ミイラ化について <Q4>血流障害の方は洗浄をしてはいけないとのことですが、ターミナル期で治療をしない方は、何もせずミイラ化を見守るだけでよいのでしょうか?軟膏塗布などの処置だけなのか、看護師がやるべき処置があったら教えていただきたいです。 ミイラ化を目指す場合、放置はすすめません。ターミナル期でも、目と手をかけることを続けていただきたいです。まずは、十分な除痛を行うことが最優先です。ミイラ化をしていく過程で生体と壊死部分の境目から浸出液が出る場合は、その境目をポビドンヨード液で清拭します。浸出液が多いときは、オムツパッド等で患部をふんわり巻いて、寝具が汚染したり、においで利用者さんやご家族が不快な思いをしたりしないよう配慮します。におい対策にはストーマ用のスプレーも有効です。 処置は、基本的に「シンプル」にすることも重要です。ターミナル期の利用者さんの大切な時間を浪費しないよう配慮してください。軟膏を使用した場合、次回の処置で落とす必要があります。落とすのに苦労するような種類の軟膏(ワセリン基剤のものは堆積します)は避けるようにしましょう。 足に傷・潰瘍がある場合について <Q5>訪問で、最初に創を見つけたとき、何をしたらよいのでしょうか?もちろん受診をすすめますが、すぐに行けない場合はそれまでどう手当てしたらよいのでしょうか?微温湯での洗浄もいけないのでしょうか。 初回の訪問では、まず微温湯で洗浄して足をよく観察していただくのがよいと思っています。よく見た結果、傷を見つけたら、以下の対応でよいと思います。 血流のない足は1日単位で悪化する可能性があるので直ちに受診をすすめる(少なくとも写真を病院に届けて、相談)血流に問題のない足は通常の創処置をし、1週間ごとの評価をする 保清・軟膏について <Q6>黒色壊死の方は洗ってはだめでしょうか?精製白糖・ポビドンヨードを使う場合が多いですが、微温湯洗浄をして処置をしていました。 血流があり、黒色壊死部をどんどん浸軟させて除去(物理的デブリードマン)したいときには、しっかり洗うこともあります。洗浄と併せて精製白糖・ポビドンヨードを使用し、浸出液の吸収と、抗菌を図ります。いずれにしても、行った処置の結果、傷が治癒傾向なのか悪化傾向なのかをしっかりと「見る」こと、悪化傾向の場合に主治医に伝えることが肝要です。 <Q7>・血流の悪い足を洗わない場合、毎日処置する際は軟膏の除去などはどうしたらよいのでしょうか?当院では基本的にほとんどの傷をしっかり洗浄するように指示があり、血流が悪い足の場合で血行再建前でもしっかり洗浄していました。 ・血流が悪い方の下肢の創処置を行う際に 医師からは洗浄し軟膏処置(ヨウ素軟膏)の指示が出ます。洗浄できない血流の悪い足の場合、軟膏を落とすためにはどのような方法が適切でしょうか? 病院で、「きれいな水がある」「しっかりと水分を拭き取ることができる」「十分な量の滅菌ガーゼがある」「毎日観察ができる」「すぐに医師に相談できる」環境があれば、創が悪化していかない限り、洗浄可能だと思います。一方、在宅においては衛生資材、観察環境、病院へのアクセスに制限のある環境を想定し、リスクヘッジのため無闇に洗わないことをおすすめしています。 また、洗浄の際に落としやすい軟膏を選択することも医師の責務だと考えています。ヨウ素軟膏を使っているということは、浸出液が多く、感染を制御したい傷があるということですね。浸出液が多いということは、血流はさほど悪くないと逆算できます。洗い流してよろしいのではないかと思います。 ウオノメ、タコのケア方法について <Q8>・市販のタコ、ウオノメ用シール(サリチル酸絆創膏)を使う際の注意点はありますか? ・毎日観察できるわけではないため心配な面もありますが、在宅でサリチル酸絆創膏を使用することについての先生のご意見をいただきたいです。 少しでもそのウオノメ・タコ自体を柔らかくして対処しやすくしてあげようという考えであれば、尿素配合クリームやサリチル酸を塗っていただくとよいと思います。ただし、皮膚を少しただれさせるような効果もありますので、周りの薄い皮膚には塗らないように、ウオノメ・タコのところだけピンポイントで塗るようにお願いします。 ウオノメシールを貼るときは、肥厚している角質よりも一回り小さく切って貼って下さい。3日ほど貼りっぱなしにすると浸軟した角質がとれやすくなります。シールを固定するためのテープでまわりの皮膚を損傷しないようにすることも注意しましょう。 ただし、シールは「その場しのぎ」で、前述のとおり外力の除去が根本的治療です。極論ですが、「寝たきり」になったら足の裏のウオノメ、タコは「完治」します。外力を減らせるような履物を使うことを強くおすすめします。 爪切り、爪のケアについて <Q9>・爪白癬、肥厚爪についてケアのしかたを教えてください。・かなり肥厚している爪を小さくするために在宅で簡単に用意できるものはありますか? ・ワルファリンカリウム錠を服薬中のため、ニッパーは避けてヤスリがけをしています。ほかによい方法はありますか? 爪が非常に分厚くなっていて、どこから手をつけたらいいか分からないというような爪の方も本当に多くいらっしゃると思います。在宅で、簡単に肥厚爪に取り組むことはなかなか難しいことかもしれません。 爪切りをする前に、まずは必ず「血流があるかないか」を見てください。血流がある方に対して爪切りをする前提でお話をします。私の場合は、爪切りにはニッパーを使います。十分に明るい環境で、切りやすい方向から、少しずつ爪切りをすることを心がけています。 その時に、爪の甲がどのように変形しているのかのイメージをしっかりと持ちましょう。爪白癬の場合、爪がバームクーヘンのように層になっているので、そのバームクーヘンの層を1枚ずつ剥がすようなイメージで、ニッパーを層と層の間に入れていただくとポロッと剥がれると思います。そのようにして使ってみてください。大まかなところをニッパーで減量して、爪床が近くなってきたなと思ったら、ヤスリで整える…という風に手当てをしていただければと思います。 <Q10>白癬により爪が剥がれた場合の対処方法を教えてください。 あまりに白癬がひどいと、爪の根まで白癬菌が食べてしまい、爪の甲がぽろっと自然と取れてしまうという現象が起こることがあります。この場合、剥がれた後に出血していなければ、そのままで結構です。剥がれた後に爪床や爪母の部分に傷があったら、消毒などをしてください。 実は、白癬の分厚い爪が指先から取れたということは、「白癬菌のお家がいなくなった」ということなので、爪の表面にいる白癬菌の量は確実に減っています。ここをチャンスとして爪の水虫の治療をすると、分厚い爪の甲に塗るよりも塗り薬の効き目が早くしっかりと出ます。傷が治った後に爪白癬、水虫の薬をしっかり塗って、水虫菌をしっかりとやっつけてあげてください。 <Q11>・反っている小さい爪のケアについて教えてください。・寝たきりの児童で、肥厚して足背側にどんどん反沿ってしまうので、とりあえずやすりをかけていますが、それがいいのか悪いのかも分かりません。 例えば、この患者さんの右足の第3趾と左足の2、3趾が反り爪で、4趾も少し反り爪っぽくなっています。このちゃんと踏めない指の爪が反ってくるということを時々経験します。この方も含めて、反り爪は爪の甲がブリッジしたようになっており、爪先が指の近位側、体の中心に近い側にあります。 そのため、そこの部分に注意しながら細い爪切りで切っていただくのが、最も手っ取り早くて、患者さんの指の痛みを除去できる方法じゃないかなと思っています。 なので、この爪の先を、できたら気を付けてニッパーややすりで切っていただくっていうことをやってみてください。爪先側に、指先側に爪先がないので、よく見てどこを切るかをよくよく考えながら対応していただけるとありがたいです。 <Q12>爪の同じところに亀裂が入ります。治す方法はありますか? 爪甲の縦方向の亀裂は(1)爪甲に白癬などの感染を起こしている(2)爪床の変形(3)爪母に腫瘍ができているということが理由として考えられます。 一方、爪甲に横方向の亀裂が生じる場合、その原因が爪甲に限られることはまれで(1)爪床の変形(2)爪母全幅の問題 a:抗癌剤などで爪母の爪甲製造能力が一時的に衰えていた b:爪甲を伸ばしすぎたことで爪甲の自由縁を圧迫され、爪母に圧が加わったことで 製造された爪甲に横皺を形成した等の状況がよくみられる状態です。 また、爪甲先端のひび割れ・剥がれの場合は過度の乾燥が考えられます。それぞれの原因に対処することで爪の亀裂が改善する可能性があります。 医師との連携について <Q13>・医師への報告のしかたについて教えてください。 ・看護師からの報告について困るケース、助かるケースを知りたいです。 私たち形成外科の領域は特に、傷の状態を見れば何が起こっているかが分かるという場合が本当に多いです。そのため、報告のしかたとしては、ぜひ写真に撮って見せていただきたいです。写真を撮る際のポイントとしては、足の全体像と病気があるピンポイントの部分の2種類を撮ることです。その2種類をいただくと、何かお役に立てることが多いです。また、写真からは伝わりませんがぜひ伝えていただきたい情報が、「血流」です。「この人の足は冷たいです。そしてこのような症状が出ています」と写真を添えて相談していただけると本当に助かります。写真を撮った日付もお願いします。 また、セミナーでも申し上げたとおり、体にできた傷は基本的には治ります。治らない傷には、治らない理由があります。その理由を見つけて取り除かない限りは、傷は「治りたくても治ることができない」んです。様子を見る期間は2週間です。皆さんが困って、あるいは主治医の先生が何か対応を始めて、それでも2週間経ってなかなか治らない傷には、理由が必ずあります。その治ることができない理由を、もしかしたら形成外科の医師は見つけることができるかもしれません。なので、2週間やってみて難しいケースは、傷を診る専門の先生にぜひ繋いでいただきたいんです。 NsPace読者の方は全国にいらっしゃるので「困ったら私に見せてください」といういつもの逃げ口上が言えないのですが、皆さんの地域にも形成外科はきっとあると思います。皮膚科の先生の中にも足の傷を診ることに長けた先生はいらっしゃるし、糖尿病専門の先生の中に足の傷まで診てくれる先生も全国に散らばっています。 フットケア・足病医学会のホームページを見ていただけると、どんな先生が頼りになるのかのヒントがありますので、ぜひ一度勇気を持って「困ったときには相談に乗ってもらえませんか?」という風に一度声を掛けていただいて、そして本当に困ったときには写真を持って、血の巡りの有無を添えて、相談していただければと思っています。 * * * 後日、オンラインセミナー「足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~」の講義内容をダイジェストにしたレポート記事も公開いたします。ぜひそちらもご覧ください。 >>シリーズ一覧はこちら「足のミカタ~重症化を防ぐフットケア~」セミナーレポート>>お役立ちツールはこちら「足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~」Q&A 一覧 編集: NsPace編集部

訪問看護の認知症ケア 学べる情報まとめ
訪問看護の認知症ケア 学べる情報まとめ
特集
2024年12月24日
2024年12月24日

訪問看護の認知症ケア 学べる情報まとめ コミュニケーション、栄養、口腔ケアetc.

訪問看護では、認知症の利用者さん・ご家族との関わりも多いですよね。NsPaceでは、これまで認知症に関連する多くの記事やセミナーをお届けしてきました。今回は、知りたい情報にアプローチしやすいように、記事をピックアップしてご紹介。気になる記事からチェックしていただき、日々の看護に役立てていただけたら嬉しいです。 「認知症」疾患の知識を深める! 認知症という病気がもたらす事象の原因や理由を理解することで、対応が変わり、できることが増えます。利用者さん・ご家族への貢献度が上がることはもちろんのこと、日々の看護の喜びも増えるはず。ケアする側のこころの状態が相手に大きく影響するので、好循環が生まれます。 【在宅医が解説】「認知症」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】 認知症の鑑別、認知症以外の可能性や治る認知症を見逃さない、悪化させないなどの視点で、わかりやすく解説いただいています。 また、鑑別に役立つ「せん妄アセスメントシート」を以下記事にてご紹介しています。ぜひご活用ください。>>せん妄への対応【精神症状の緩和ケア】 「高齢者のうつ病の特長」などについて解説されている以下の記事もおすすめです。>>【在宅医が解説】「うつ病」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】 【セミナーレポート】看護師が意識したい7つのポイント -在宅で行う認知症看護-   講師の福岡裕行さん(認知症看護認定看護師)の優しい言葉と関わりが心に染みる記事です。ポイントがわかりやすく紹介されていて、「すぐにやってみよう!」と楽しみになる内容です。後編では、「認知症患者を支えることは、その家族の心を癒すこと」という言葉が印象的。Q&Aセッションも学びが深まる内容です。あわせてお読みください。>>セミナーレポート後編【セミナーレポート】ご家族とのかかわり方 -在宅で行う認知症看護- 高齢者の栄養ケアマネジメント~窒息・認知症対応~【セミナーレポート後編】 高齢者の栄養管理を専門とする医師の吉田 貞夫先生にご登壇いただいたセミナーのレポート記事です。認知症の方に対しての具体的な食事支援や認知症予防につながる食事について学ぶことができます。 事例を通じてケアを磨く! 認知症のある方やそのご家族へのケアは多種多様。事例を通じて、引き出しを増やしていきましょう。 認知症のある患者さんに接するときの7か条(前編)   シリーズ「認知症患者とのコミュニケーション(全12回)」の第1弾の記事です。シリーズ第1回~2回では認知症患者さんと接するときのポイントを、第3回~12回では、「言葉による返事がない」「物盗られ妄想がある」など、ケースごとにケアのポイントを解説いただいています。実践に生かせる内容なので、興味のあるテーマから学んでみてください! >>認知症のある患者さんとのコミュニケーションシリーズhttps://www.ns-pace.com/series/dementia-patient-communication/ 自己流の介護を続ける家族への関わり【家族看護 事例】 認知症のある利用者さんのご家族は、複雑な心情や多くのストレスにさらされているからこそ、訪問看護師との関係性が難しくなってしまうこともありますよね。本記事では、「渡辺式家族アセスメント/支援モデル」を用いた事例解説を通じて、訪問看護ならではの家族看護について学ぶことができます。 認知症と義歯の関係 認知症があると口腔ケアに難色を示されることや意思の疎通が難しい状況で効果的なケアが行えないこともありますよね。咀嚼機能が回復した事例を通して、工夫のしかたを学べる記事です。 高齢者の頭の体操10選 脳トレに期待できる効果や方法について解説 脳トレや「脳トレ+運動」で、認知機能の向上、身体機能の向上が期待できます。具体的な方法と効果についてご紹介しています。利用者さんが楽しめるケアのヒントになれば幸いです。 「上手く伝えられない」に対応する! 認知症では、辛さや症状を上手く表現できないからこそ、看護師が異常を察知し、適切に評価できることが求められます。場合によっては表現通りの意味とは限らない訴えや拒否をいかに捉えられるかが重要です。利用者さんの価値観をおもんぱかるために、見識を拡げていきましょう! 悪性消化管閉塞への対応【がん身体症状の緩和ケア】 認知症の終末期は、症状マネジメントに苦慮しますよね。事例をとおして、悪性消化管閉塞について学びつつ、認知症の在宅看取りについてイメージを持てる記事です。 大学教授が解説!大量嘔吐でイレウスが疑われる場合のアセスメント 「イレウスの既往のあり、認知症が進み、自分からは訴えられない方が大量に嘔吐…。あなたはどう考えますか?」という事例とおして、フィジカルアセスメントについて学べる記事です。なお、このフィジカルアセスメントシリーズは全12回です。ほかにも『認知症のある患者さんが「転んだけど大丈夫」と話している場合』など、認知症の方の事例解説がありますので、あわせてご覧ください。 >>訪問看護のフィジカルアセスメントシリーズhttps://www.ns-pace.com/series/physical-assessment/ もしかしてネグレクト? 訪問看護師は虐待疑いにどう対応すべきか 虐待が疑われる場合、どのように行動すればよいか。状況に合わせた慎重な対応が求められ、特に認知症が疑われる場合は、判断が難しくなることもあります。このようなセンシティブな状況では、多角的な視点で考え、細心の注意を払った言動が求められます。本記事は、弁護士の外岡潤先生に解説いただいた、法律・制度を踏まえた事例解説記事です。訪問看護に発生する義務は何か?という点も含めて確認しておきましょう。 * * * 認知症のある方は、今後もますます増加すると予測されています。地域を支える訪問看護師のサポートへの期待もさらに高まっていくでしょう。認知症のある方が幸せに生きられる社会になるヒントは、日々のケアの蓄積の中から見出されていくようにも感じます。NsPaceでは、今後も日々の学びの機会を通して、訪問看護に携わる皆さまの力になる企画を提供していきます。 執筆・編集: NsPace編集部

寒冷蕁麻疹(寒暖差アレルギー)とは?症状・原因・治療法・予防法を解説
寒冷蕁麻疹(寒暖差アレルギー)とは?症状・原因・治療法・予防法を解説
特集
2024年12月17日
2024年12月17日

寒冷蕁麻疹(寒暖差アレルギー)とは?症状・原因・治療法・予防法を解説

寒冷蕁麻疹(かんれいじんましん)は、冷たい風や空気、冷水などの寒冷刺激によって皮膚に発赤やかゆみを伴う膨疹(ぼうしん)が生じる症状です。「寒暖差アレルギー」とも呼ばれ、冬場に多いイメージがありますが、季節を問わず冷えによって発症することがあります。 本記事では、寒冷蕁麻疹の症状や原因、治療法、日常生活でできる予防法について解説します。寒冷蕁麻疹を発見した際のアセスメントにお役立てください。 寒冷蕁麻疹とは 寒冷蕁麻疹は、皮膚に冷たい刺激が加わることで発症するアレルギー反応の一種です。通常の蕁麻疹と同様に、皮膚内の肥満細胞からヒスタミンが放出されることで、かゆみや炎症、膨疹が引き起こされます。膨疹とは一過性の真皮の浮腫で、皮膚の一部が突然、境界明瞭に赤く盛り上がった状態を指します。子どもから高齢者まで年齢を問わずに発症し、好発年齢はありません。 寒冷蕁麻疹の症状 寒冷蕁麻疹の主な症状は、冷たい刺激が加わった直後から数十分以内に皮膚に現れるかゆみや発赤です。数時間で自然に軽減することが多いものの、症状の現れるタイミングや強さには個人差があります。 寒冷蕁麻疹は、次の2つに分類されます。 局所性寒冷蕁麻疹 局所性寒冷蕁麻疹は、冷たいものが触れたところに円形や地図状の膨疹が現れ、通常はかゆみと発赤を伴います。ただし、かゆみがなく発赤が目立つものや、反対に発赤がなくかゆみだけが生じるもの、痛みを伴うものもあります。 全身性寒冷蕁麻疹 全身性寒冷蕁麻疹は、全身が冷えることで小豆大ほどの発赤とかゆみを伴う膨疹が腕や脚、背中、腹部、首まわりなどを中心に全身に現れます。 膨疹の外見は、運動や入浴後に発症するコリン性蕁麻疹と似ているため、見分けがつきにくい場合もあります。 寒冷蕁麻疹の原因 局所性寒冷蕁麻疹は、冷水や冷風などが触れた部位にのみ現れます。一方、全身性寒冷蕁麻疹は、エアコンの効いた部屋に入る、冷たい外気に触れる、運動後や入浴後に体が冷えるなど、全身の急激な冷えがきっかけで発症します。暖かい場所から寒い場所へ移動するような急な温度変化によって症状が現れることがよくあります。 どちらのタイプも、寒冷刺激を受けると皮膚の肥満細胞からヒスタミンが大量に放出され、それがかゆみや膨疹を引き起こす点に違いはありません。ヒスタミンの分泌メカニズムについては未だ解明されていませんが、アレルギー反応や免疫系の異常が関与していると考えられています。なお、全身性寒冷蕁麻疹の中には、遺伝的な要因によるものも報告されています。 寒冷蕁麻疹の予防策 寒冷蕁麻疹は、次のように予防しましょう。 温める 寒冷蕁麻疹は、温めることで症状が緩和される場合が多いため、冷やさない工夫が重要です。症状が出やすい部分は重ね着をして、暖かい部屋で全身を温めましょう。冷たい空気や風に長時間さらされないよう、外出時も防寒対策を徹底することが大切です。 掻きむしりによる悪化を防ぐ 強いかゆみを感じると掻きむしってしまいがちですが、それによって症状が広がったり、蕁麻疹が悪化したりするため注意が必要です。抗ヒスタミン作用のある市販の塗り薬や内服薬を利用することで症状が和らぐことがあります。また、潤いを保つために保湿剤を使用することで肌のバリア機能が高まり、蕁麻疹が出にくくなります。そのため、皮膚を日常的にケアすることも大切です。 ただし、かゆみが強く再発を繰り返す、症状がなかなか治まらない場合は、自己判断せず早めに皮膚科を受診しましょう。 冷えを避けるための日常の工夫 寒冷蕁麻疹を予防するためには、日常生活での冷え対策が重要です。寒暖差が原因となるため、気温の低い場所に行く際はしっかりと防寒対策を行いましょう。冬場だけでなく夏場も注意が必要です。たとえば、プールや入浴のあとにエアコンが効いた部屋に行くと、体が急激に冷えて寒冷蕁麻疹の原因となることがあります。 また、冷たい飲み物や食べ物は体を冷やすため、少量ずつ摂取し、体が冷えすぎないようにしましょう。足もとの冷えも寒冷蕁麻疹を悪化させる要因です。足もとが冷えやすい方は、厚手の靴下やスリッパなどを履きましょう。 寒冷蕁麻疹の治療法 寒冷蕁麻疹の治療では、原因となる寒冷刺激を避けることが基本です。症状が軽い場合でも、再発を防ぐために冷えを避けた生活を心がけることが重要です。症状が出た場合には、抗ヒスタミン薬を内服することで、かゆみや発赤を緩和できます。 皮膚科では、発症時の状況を詳しく問診し、必要に応じて寒冷負荷試験や血液検査を行い、寒冷蕁麻疹かどうかを診断します。また、息苦しさやむくみといった重篤な症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。 抗ヒスタミン薬を継続的に内服し、症状をコントロールする場合もあります。寒冷蕁麻疹は内科的な病気が関与していることもあるため、長期化する場合や改善が見られない場合には医師に相談し、適切な診断・治療を受けることが大切です。 * * * 寒冷蕁麻疹は、訪問看護の現場でも利用者さんが症状を訴えることがあるかもしれません。家庭環境や症状が現れたタイミングなどを聞き取りして、適切な対策方法を伝えましょう。 編集・執筆:加藤 良大監修:吉岡 容子医療法人容紘会 高梨医院 院長東京医科大学医学部医学科を卒業後、麻酔科学講座入局。麻酔科退局後、明治通りクリニック皮膚科・美容皮膚科勤務。院長を務め、平成24年より医療法人容紘会高梨医院皮膚科・ 美容皮膚科を開設。院長として勤務しています。

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