新型コロナ

コラム

COVID-19×訪問看護の最前線から~後編~

COVID-19が世界にとって未知の病気だった2000年初頭。社会全体が恐怖におびえ大きくうねり始めるなかで、いち早く訪問看護師という立場からCOVID-19と対峙し、現在もケアを続けている岩本大希さん。パンデミックのなかで岩本さんが行ったことや、第5波で看たCOVID-19感染者看護の実例、そして第6波に向けての心構えについて寄稿いただきました。後編では、COVID-19感染者看護の実例を中心にお届けします。 ≪ 前編はこちらからご覧いただけます COVID-19感染拡大の最中、命を守れないのではないかと感じることが増えていく 本文医療機関のひっ迫は一向に改善の様子がない。「入院待機者」という人々が在宅領域にもあふれ出し、2021年の8月にはピークを迎えた。1日10件全てコロナの入院待機者への訪問の日があるほどだった。 ・[感染case3]認知症の親御さんと暮らしている50代の方50代で認知症の親御さんと暮らしている方が動けなくなっていた。酸素、点滴を自宅で開始。なんとか酸素飽和度は上がる、でも呼吸回数は落ち着かず、苦しいだろうことが見てとれた。にもかかわらず、「母をなんとか助けてください。母をお願いします」自分より親御さんのことをとにかく心配されていた。ほぼ同時に親御さんも発熱し陽性となり、自宅にいることしかできない状況であった。誰がお世話するのか? 誰もいない。訪問看護師である自分ができることをやるしかない。親御さんは「私はいいから子どもを助けてくださいお願いします」と僕の手を握りしめる。お互いに想い合っていることがわかる。「はい、ちゃんと看ますので安心してください」と握り返す。親御さんも呼吸が悪くなり酸素を始めた。治療も大事だが、それよりも毎日の食べるものが用意できないので、併せて二人の食事を買い出す。重症化リスクも高いため毎日観察しに訪問し、食べやすいようおにぎりやアイス、うどんなどを買って行った。親御さんは顔もわからないような格好をした僕に驚かないどころか、手を合わせて「神様だわ」と言ってくれた。本当の神様だったらもっと色んな人を助けられるだろうが、僕はご飯を買って観察して励まして見守るだけしかできず、入院できるときを毎日待った。 ・[感染case4]家族と暮らす壮健そうな40代の方着いたときには酸素飽和度は80%代で、すぐに酸素開始するが7リットルでも酸素飽和度の上がりが悪い。オキシマイザーを使うとなんとか96%に。一度帰宅し、次の朝イチでまた訪問すると顔色の印象が悪い。呼吸数も多くマズイと冷や汗が出る。でも入院できないのだ。帰り際、小学校低学年くらいのお子さんが心配そうに犬を抱えて僕を見ていた。翌日以降のため、酸素濃縮器7リットル機をもう1台入れて2台連結し14リットルまで増やすため搬入予定とした。そうしているうちに入院が決まった。危機一髪で命を守れてよかったと安堵したことを覚えている。 ・[感染case5]全員がCOVID-19陽性の外国人家族の方40代の方。酸素飽和度が下がり、酸素が玄関先に届けられたと連絡をもらい導入のため向かう。しかし到着したら民間救急車がきていた。「入院が決まりました」とのこと。良かった。「パパどこいくのー??」窓から子ども3人が顔を覗かせていた。搬送される本人に付きそうパートナーを見ると明らかに顔色が悪かった。家族はみんな陽性と聞いていた。パートナーに「体調悪い?」と聞くと、「呼吸は平気だが吐いていて3日食べられていない」と言う。脱水症状だろう。すぐに依頼元から保健所に確認を頼んだが、パートナーは外国の方で日本語はあまり得意ではなさそうだ、聞き取りに工夫がいるため、きっと保健所の電話に的確に答えられておらず、見逃されたのかもしれなかった。この方も入院できるとよい。しかし両親ともに入院になれば、3人の子どもたちはどうするのだろう? どうすればよいかは保健所に任せるしかなく、次の現場に向かった。 ・[感染case6]犬と暮らす50代男性の方50代の男性でお一人暮らし。犬を飼っている。すでに酸素がなければ酸素飽和度は80%台と重症ラインにあった。点滴やステロイドを使って看護していると、保健所から入院の打診が入る。しかしこの男性は、飼い犬の世話があるため入院をお断りしていた。翌日改めて訪問すると、明らかに悪化している。保健所から僕は「どうにか犬の面倒を見られる人を確保してくれ」と言われた。ペットホテルを探したり、友人に頼んだりしたが、犬の面倒を見る人は見つからなかった。このままでは一晩持つかどうか、苦肉の策で「僕が面倒を見るから入院しませんか?」と提案し、無事入院の運びとなった。その日から一人ぼっちの濃厚接触犬へ、毎日トイレとエサ、水の交換のため訪問した。これでよかったのかわからなかったが、人懐こい犬は僕の来訪を毎日喜んでくれた。その様子を見るとやるべきことをやったかな、と思った。 第6波をいつでも迎えられるよう、連携と準備が必要だ 第5波のなかで、僕はこれら数十人と関わった。全員、ワクチンを打てていなかった人たちだった。予約をして待っていたり、1回目が終わっていたりする人たちばかりだった。日本のワクチン接種スピードの加速は諸外国に比べても脅異的で歴史に残るほどだと思う。しかし残念なことに、デルタ株の驚異的な速さに追いつかれてしまった。これから第6波がくることが予想されている。その日をいつでも迎えられるよう、多くの地域と連帯しながら準備を行い、沢山の人たちが予防行動を取れることを祈っている。 ** 岩本大希WyL株式会社 代表取締役 / ウィル訪問看護ステーション江戸川 所長 / 看護師・保健師・在宅看護専門看護師ドラマ『ナースマン』に影響を受け、「最も患者さんに近い存在」として医療に関わりたいと思い、看護師になることを決意。2016年4月にWyL株式会社を創立し、直営で2店舗、関連会社でフランチャイズ4店舗を運営。(2020年12月現在)「全ての人に“家に帰る”選択肢を」を理念に掲げ、小児、精神、神経難病、困難な社会的な背景があるなど、在宅療養のなかでも受け皿の少ない利用者を中心に訪問看護事業を展開している。 記事編集:YOSCA医療・ヘルスケア

コラム

COVID-19×訪問看護の最前線から~前編~

COVID-19が世界にとって未知の病気だった2000年初頭。社会全体が恐怖感におびえ大きくうねり始めるなかで、いち早く訪問看護師という立場からCOVID-19と対峙し、現在もケアを続けている岩本大希さん。パンデミックのなかで岩本さんが行ったことや、第5波で看たCOVID-19感染者看護の実例、そして第6波に向けての心構えについて寄稿いただきました。前編と後編に分けてお届けします。 COVID-19という未知の感染症拡大を前に、僕たちの毎日は変わろうとしていた 2020年初頭から国内で流行が始まったCOVID-19。2021年8月に第5波と呼ばれるパンデミックまで僕たちは経験した。僕自身のCOVID-19への対応の始まりは2020年の3月ごろだったと思う。今では当たり前になってしまったが、「緊急事態宣言」という言葉がなにを意味するのかも当時十分にはわからず、「緊急事態宣言ってなんだ? 外国のように都市封鎖がされるのか? 訪問はそもそもいけるのか?」とうろたえていたことを覚えている。でも在宅ケア領域ではまだ直接的になにかCOVID-19の対処することもなく、これから自分たちがどうなるのか、どうすればよいのか、対策をとる必要があるのかも不明な状況だった。そこで、自分にできることを探そうと思った。 緊急時、訪問看護の立場からできることはなにか?の模索が始まった まずは緊急事態宣言下で訪問看護活動はそもそも可能なのか?ということを中央行政に確認する必要があった。なぜなら、訪問看護ステーションにおける現場の対処の指針となるものや、運営に関するガイドラインとなり得る情報がどこにもなかったからだ。通常は学会や職能団体から発信されるものであるが、全国において未知の状況ばかりでまとめようがなかったためそれも当然であった。 そこで僕が始めたのは、正式なものが発信されるまでのつなぎとして、自ら信頼できる同業者たちを集め、有志で現場のためのガイドを作成し、FacebookやTwitterなどで発信していくことだった。僕と同じようにうろたえている人のためになにかできればと思った。 2020年8月、ホテル療養を行うCOVID-19感染者へのサポートをいち早く開始 その直後くらいからだろうか。急激に感染者数が増え始め、訪問看護の現場でもCOVID-19の濃厚接触者となったがん末期の方のお看取りの対応をしたり、沖縄県にあるウィル訪問看護ステーション豊見城では看護協会や保健所と協働して全国でも早い段階でホテル療養者へのサポートを開始したりした。 2021年に入り流行はさらに大きくなっていく。関西において極めて厳しい医療ひっ迫が起き、それに対処した北須磨訪問看護リハビリセンターの藤田愛さんをはじめとした訪問看護師や医師らとともに勉強会などを開きながら、その経験や知恵を取り込み、またWEBメディアや雑誌などで発信することを進めていった。 関西の第4波から少しだけ間をおいて、関東でも第5波が始まると、デルタ株の猛威は強く、医療機関のひっ迫まであっという間であった。入院できずに「入院待機者」という人々が在宅領域にもあふれ出し、保健所をはじめとした行政や医師会や看護協会などの職能団体もその急激な変化に追いつけず、皆が必死にどうにかしようとしていた。 2021年8月、COVID-19第5波はピークを迎え状況は様変わりしていく そのなかの一つに僕たちの訪問看護ステーションもあった。2021年の8月にはピークを迎え、1日10件全てコロナの入院待機者への訪問の日があるほどだった。20代、30代、40代、50代の中等症がほぼ全てを占め、明らかにそれまでの流行とは様相が異なっていた。いくつかケースを振り返る。 ・[感染case1]ご両親と同居している20代の方職場で感染し、毎日嘔吐してしまい数日脱水で苦しんでいた。呼吸も苦しく酸素投与も始めた。点滴で補正しなければ命の危険があるため連日でお伺いする。ご両親の不安もいかほどか、涙されながらの親御さんのお話を伺う。何もできないと思いつめなくても、そばで見守っているだけできっと本人は安心ですよ、と伝え続けた。 ・[感染case2]30代、妊娠初期の方僕と同い年くらいの方へ訪問すると、妊婦さんだった。それに気づいて必要以上に緊張を覚えた。呼吸はまだ平気そうであったが、つわりも重なり食べられず脱水になっていた。ここでも点滴を行う。フェイスシールドと手袋の向こう側で脱水の妊婦さんの血管を探すのは困難で、冷や汗をかきながら集中が必要だった。お母さんはお腹の赤ちゃんのことがとにかく不安であろう、しかし赤ちゃんにコロナがどういう影響を及ぼすのか、僕にはわからず、安心してもらえる言葉を探したいがうまく見つけられなかった。パートナーの方も動揺が強い。点滴して、療養についてできる限りのことを伝える。「来てくれるだけで安心しました…」。ほんとはすぐ入院できればいい、でもそれができない状況だったので、とにかくこれ以上悪化しないことを祈るだけ祈った。 後編では、「認知症の親御さんと暮らしている50代の方」のケースや、「全員がCOVID-19陽性の外国人家族の方」のケース、第6波に向けての準備についてお伝えします。 ** 岩本大希WyL株式会社 代表取締役 / ウィル訪問看護ステーション江戸川 所長 / 看護師・保健師・在宅看護専門看護師ドラマ『ナースマン』に影響を受け、「最も患者さんに近い存在」として医療に関わりたいと思い、看護師になることを決意。2016年4月にWyL株式会社を創立し、直営で2店舗、関連会社でフランチャイズ4店舗を運営。(2020年12月現在)「全ての人に“家に帰る”選択肢を」を理念に掲げ、小児、精神、神経難病、困難な社会的な背景があるなど、在宅療養のなかでも受け皿の少ない利用者を中心に訪問看護事業を展開している。 記事編集:YOSCA医療・ヘルスケア

インタビュー

コロナ禍に行ったアンケート調査にみる 不安を克服し前に進もうとする姿に誇り

公益財団法人日本訪問看護財団常任理事の佐藤美穂子さんインタビュー、後編は日本訪問看護財団が昨年から今年にかけて4回にわたり行ったアンケート調査から見えてきたものを中心に語っていただきました。コロナに翻弄される訪問看護師の不安と、その先にある光明とは。 コロナで明らかになった 日本人のヘルスリテラシー コロナ禍の中で1年半経って私が感じたのは、日本は諸外国に比べ、ヘルスリテラシーがしっかりしていると思っていましたが、実はそうでもなかったということです。「マスク着用」「手指消毒」といえば、みんな従うところは徹底しているなあと感心します。しかし、緊急事態宣言も度重なり、その効果はしだいに薄れてしまっています。 またコロナ禍で医療従事者にスポットが当てられ、報道番組などで多くのドキュメンタリーも作られましたが、メディアは「医療崩壊」などセンセーショナルな話題を取り上げる傾向にあります。現実には、感染病棟の看護師は、着脱に時間がかかる個人防護具のフル装備で、トイレを長時間我慢し、食事もままならないという現状がありました。医師は定期的に見回りに来ますが、人工呼吸器も経管栄養も、実際にベッドサイドでマネジメントしているのは看護師です。これらの行為は看護師の特定行為研修制度にもつながるのですが、そういう看護師の総合的な力量 —— 対応力、技術力、指揮力をこそ、メディアにもっと取り上げてほしかったですね。 看護師のメンタルヘルスを良好に保つためには 昨年から今年にかけて財団が4回実施しているアンケート調査からみえてきたのは、コロナ禍で働く訪問看護師のメンタルヘルスの不安定さが、完全に解消できていないことです。看護師は医療者として最前線に立ち、猛烈な感染力がある未知のウイルスに対峙しなければなりません。訪問先や、移動中に、万が一にも感染したらどうしようという恐怖心はどれだけのものだったでしょう。また、個人防護具が足りなくなることへの不安、本人たちの気分の落ち込み、疲労感、イライラ、孤立感を募らせた看護師が多かったことが、アンケートからうかがえました。利用者の命も、自分の家族の安全も守らなくてはならない緊張感に押しつぶされ、休職・退職していった看護師もいました。家族から「そういう(リスクの多い)仕事は休んだら」と言われ、身近な人から仕事に対する理解を得られなかったことで落ち込んだという人もいました。 一方で、不安でメンタルが低下したスタッフに対して、「このままではいけない」と別のスタッフが奮起してカバーしあっていることもアンケートからみえてきました。たとえば、ふだん控えめなスタッフが「とにかく感染に気を付けてこの危機を乗り越えよう」と発言したり、ウイルスについてもっと医学的・科学的・客観的に学ぼうという姿勢がみえたりしていました。なるべく接触時間を短くする分、ICTを活用して利用者の体調管理や健康相談を行っているステーションもありました。管理者はそういう姿を頼もしく感じ、スタッフに、いっそう感謝の気持ちを持ったといいます。 パンデミック下での訪問看護 管理者が行うべきこと 管理者ならではの悩みもあります。万が一スタッフが濃厚接触者や感染者になってしまうと事業所が回らなくなるので、とにかくみんなが安心して働けるよう、「スタッフの命は必ず守るし、健康な暮らしを第一に考えて行動しますから、皆さん安心して」など、管理者からのメッセージを丁寧に伝えて安心してもらっている様子もうかがえました。もちろんその裏付けとして、感染に対する正確な知識をみんなで共有する、個人防護具を全員が十分に使えるように整備するなどを、怠りなくやらなくてはなりません。 感染者に対する差別などが起こっている場合、スタッフの精神的な負担を管理者がフォローすることも大切なことです。濃厚接触者になって10~14日間仕事ができなくなったスタッフが職場復帰したときには温かく迎える。そして当事者の体験をしっかり共有して、根拠に基づく感染防護をさらに徹底する。そんなフォローも管理者には必要です。 訪問看護サミット2021で多くの仲間と会える日まで 感染症は、いつかは必ず治まります。来年あたりは、ポストコロナという新たな状況を描かないといけないでしょう。そして10年後くらいに、また新たなウイルスが出てくるかもしれません。今回、このような世界的なパンデミックをみんなが経験したのですから、これを契機に私たち訪問看護師には地域でどんな役割があって、どういうことをすればいいのか、地域とのつながりを強めるためにも、しっかり業務継続計画(BCP)を作成していただければと思います。 なお、これからも人材確保がままならない状況は増えてきます。みんなで集まることができない今、ICTを活用するなどして、屋根の下の連携ではなく大空の下での地域との連携をより強めていく必要があります。管理者層は、苦手意識を克服するためにも、ICTに強いスタッフの経験を共有し、若いジェネレーションとうまくやっていってほしいですね。 また、日本訪問看護財団の個人防護具無料提供は現在も続けています(2021年9月28日時点)。感染者対応に限定しているわけでもなく、フル装備でなくてもいいですし、ヘルパーさんにも使っていただけます。財団ウェブサイトより申し込みいただけますので、ご利用ください。◎日本訪問看護財団『感染防護具支援プロジェクト』https://www.jvnf.or.jp/covid-19_project2020.html また、11月6日には訪問看護サミット2021を開催します。テーマは「どんな時も共にある訪問看護をめざして、ポストコロナの最善のシナリオを描こう」です。ライブ配信を行いますので、ぜひご参加ください。 ◎訪問看護サミット2021の詳細はこちら↓https://www.jvnf.or.jp/summit2021/index.html ** 佐藤美穂子公益財団法人日本訪問看護財団常務理事 記事編集:メディカ出版

インタビュー

医療や介護を直撃した新型コロナウイルスが 訪問看護ステーションにもたらしたもの

トップランナーから現場へのエール 日本訪問看護財団は、現場の声を国や関係機関にあげ、職場環境改善や研修事業を行う訪問看護ステーションの職能団体の一つです。常務理事を務める佐藤美穂子さんに、新型コロナウイルス蔓延で訪問看護ステーションが受けた打撃について語っていただきました。 電話相談から見えてきた 感染対策、防護具不足、経営危機…… 新型コロナウイルスのパンデミック発生から1年以上が経過しました。この未知のウイルスは、訪問看護ステーションの運営をも直撃しました。私たち日本訪問看護財団は、情報発信と相談支援、国や関係省庁に要望を届けるための実態把握を、常日頃から行っています。コロナ禍においては、特に感染予防などに特化した形で数多く発信してきました。 情報発信としては、財団ウェブサイトに、感染症に関する特設ページを設けました。第一報は2020年3月6日で、平時の感染管理、利用者やスタッフの感染・感染疑い時の対応などを、細かく伝えました。この時の発信は、業務継続計画(BCP)としての側面に近い内容でした。 そのころすでに、外部者だからとの理由で、看護師の訪問が断られる事例が約15%発生していました。そこで、「訪問看護を利用する皆様へ」という利用者へのチラシのひな型を作成し、必要に応じて使っていただくようにしました。チラシには「訪問看護ステーションは感染管理を徹底しているので、部外者であっても安心です」といった内容をつづっています。 ウェブサイト上で無料電話相談の告知も行ったところ、新型コロナに関して300件を超える相談がありました。第1波が来たころは、感染対策をどうするかという相談が多かったのですが、すぐにマスクやフェイスシールドが手に入らないという相談が増えました。第3波が到来した2020年末~21年1月ごろは、変異株についての問い合わせが増えました。 管理者のこうした相談に丁寧に対応する一方で、新型コロナに関する緊急ウェブアンケート調査も4回実施しました。その内容は整理し、国へ提出しています。コロナ禍での混乱や管理者の不安が少しでも軽減されるよう、私たちも常に情報を発信しつづけ、かかり増し経費に対する交付金や、職員への慰労金についてもお知らせしました。 感染防護具や優先接種を国へ直接要望 財団が行った活動のなかで特に重要だったのは、先のアンケートの件もそうですが、厚労省や政府へ直接要望を伝えたことです。個人防護具の確保についても然りです。これは大変と思ったのが、訪問看護師はワクチンの医療従事者優先接種から外れていたことでした。最前線で活動している医療従事者であるにもかかわらずです。2021年1月15日にその事実を知り、すぐに、日本看護協会と全国訪問看護事業協会との連携で、田村厚生労働大臣に直接訴えました。そして、その月末には優先接種リストに訪問看護師を入れていただきました。 感染を防ぐために必須の個人防護具を訪問看護ステーションに届けることも、財団の急務でした。幸いにも、日本財団とネットライフ生命株式会社から7000万円の寄付をいただき、まずは4000箱(訪問看護ステーションや訪問介護事業所などが1週間使える程度の個人防護具のセット)を確保し、全国に無償で配送できるようにしました。これは現在でも続けているプロジェクトで、ぜひご利用いただきたいと思っています。 一時的な経営危機も 秋以降は利用者増へ コロナ禍では訪問看護ステーションも利用控えなどがあり、2020年4~6月は前年度に比べて1割程度収益が減少しているステーションが6割近くありました。ところが9月の段階では経営危機を乗り越えプラスに転じるステーションも多くなりました。 これには二つの理由があると思います。訪問看護ステーションは医療従事者が対応しているので、安心して利用できることを広く利用者に理解していただけたことが一つ。もう一つは、病院に入院していると面会制限で家族とも自由に会えないため、それなら家に帰って療養したいという人が増えたことです。 利用者が増えれば経営的には安定しますが、感染防護具の支出が増えて大変だという訴えもありました。医療保険では特別管理加算で算定できますが、介護保険では算定できません。そのため、2020年の第二次補正予算で、新型コロナウイルス感染症対策費としてかかり増し経費補助金が計上されました。介護保険事業者は、感染対策や人材確保によけいにかかった費用に対して、助成を受けることができるようになりました。2021年度は「サービス提供体制確保事業補助金」で、同様の助成金が受けられます。 このように財団は、訪問看護ステーションの生の声を国に届け、改善を訴えてきました。しかし新型コロナウイルス感染拡大は、平時の事業運営を根本から揺るがすものでした。それは、財団が4回にわたって行ったアンケート調査から明らかになりました。(後編へ続く) ** 佐藤美穂子公益財団法人日本訪問看護財団常務理事 記事編集:株式会社メディカ出版

インタビュー

自分自身を癒す時間も持ち、在宅での看取りを支えてほしい

トップランナーから現場へのエール 訪問看護の道を切り開いてきたトップランナーにお話を伺うシリーズ第2回、秋山正子さんの後編をお届けします。 「ただ医療処置をする人」ではない訪問看護師 コロナ禍で、在宅での看取りが見直されています。今、在宅を選ぶ方には、本人の意思も確認し、家族も残り少ない命なら家でみようと連れて帰る方が多くなっています。不安ながらも覚悟を決めている方が多く、訪問看護としてはケアに入りやすくなりました。 コロナ以前はというと、家には帰ってきたものの、本当は病院の方が安心という方が多く見られました。そうした方を担当する訪問看護師は、まず気持ちを解きほぐし、最期の日々をともに過ごしていく関係を築く必要があります。 特にがん末期の方には細やかな配慮が求められます。がんの最期は、元気そうに見えても急カーブで病状が悪化していきます。「治療はできなくてもまだ半年くらい余裕はあるだろう。」本人や家族がそう考えていても、実際には月単位、週単位の状態ということもあります。この先の病状の加速をどのように理解し、受け止めているのか。訪問看護師は丁寧に聞き取り、時には修正していくことが大切になります。 病気が見つかったとき。治療が始まったとき。医師から受けた要所要所での説明を、その方がどう受け止めてきたかを確かめます。そして、病気になったつらさや厳しい治療の日々に思いを致しつつ、必要であれば、残された時間に限りがあることにもあえて触れていきます。 そうしたやりとりは、決して「せねばならぬ」ことでも、「手順」として行うことでもありません。最期の時間をよりよく過ごしてもらうため、本人や家族の反応、受け止め方に応じ、丁寧な対話の中でなされていくものなのです。 その対話の中では、本人や家族に対し、訪問看護師として最期まで支えていく意思表明をすることも必要です。それがきちんとできていないと、人生最期の難しい時間をとも共に過ごし、支え切ることはできません。看取りを支える訪問看護師は、「死にゆくまでの医療処置をするために来ている人」であってはならないのです。 看取りを振り返り、意義を再確認する このコロナ禍はいつまで続くか、まだ先が見通せません。訪問看護の現場は、これからも緊張が続くでしょう。少しでもリラックスできる時間を持てればよいのですが、現状ではなかなかそれもかないません。そんな中、一つの支えになるのが『振り返り』の時間です。気になった事例をチームで振り返って話し合い、行ったケアの意義や価値を再確認するのです。 私たちが新宿区で運営する医療や介護、生活についてのよろず相談所、「暮らしの保健室」では、月1回、看取りを振り返る勉強会を開催しています。先日は、人工呼吸器を付けて在宅復帰した、脳腫瘍末期の30代の方の看取りを取り上げました。自宅で過ごせたのはわずか11日という方でした。 残された日がわずかであることを承知してケアにあたった訪問看護師ですが、振り返ると、もっとこうすれば良かったと、さまざまな思いがあふれます。その一方で、本人のすぐ傍らに母親と妹がいて、看護師に足をさすられながら、母親が「○○ちゃん」と娘さんに話しかけていた様子など、在宅ならではのよさも思い起こします。やがて、担当した看護師からは、「あの方は最期までよく頑張ってくれたと思う」という言葉があふれました。 自分自身では、提供したケアも看取った過程もきちんと受け止めていたつもりだった。でも、それを皆に伝え、共有することが必要だった。その看護師はそう語りました。振り返りのプロセスによって、グリーフケアが進んだことを実感できたのだと思います。 こうした振り返りは、共有したチームみなにとってのグリーフケアにもなります。このときも、「いろいろなことがあるけれど、もう少し頑張っていこうと思えた」「元気をもらえた」といった感想が聞かれました。 先日、「暮らしの保健室」では、オンラインで誰でも参加できる振り返りのカンファレンスを開催しました。コロナ禍の今、対面での振り返りが難しかったり、開催する余裕がなかったりするというステーションも多いかもしれません。ぜひオンライン開催なども検討し、少しでも現場の訪問看護師がリラックスしたり、元気を取り戻せたりする時間を持ってもらえればと思います。 ** 秋山正子株式会社ケアーズ 白十字訪問看護ステーション・白十字ヘルパーステーション統括所長、暮らしの保健室室長/認定NPOマギーズ東京センター長   取材・文/宮下公美子(介護ライター) 記事編集:株式会社メディカ出版

インタビュー

現場を苦しめる新型コロナが共に支え合う地域連携を進展させた

トップランナーから現場へのエール 今回より6回シリーズで訪問看護のレジェンドともいえる方々3人にご登場いただきます。第1回前編は、訪問看護ステーションのみならず多方面でご活躍の秋山正子さんに、コロナ禍での訪問看護ステーションの実情についてうかがいました。 陽性者対応だけでない新型コロナ問題 新型コロナウイルス感染症のまん延は、訪問看護の現場にもさまざまな影響を及ぼしています。一つには、運営のあり方です。自宅待機の新型コロナ陽性者を訪問するなど、最前線で利用者を支えている訪問看護ステーションがある一方で、発熱や咳のある利用者の訪問を極力控えているステーションもあります。 訪問看護ステーションはだいぶ大規模化が進んできましたが、それでもやはり看護師5~6人のステーションが中心です。もし職員に感染者や濃厚接触者が一人でも出れば、たちまち訪問が滞ります。小規模ステーションであれば、運営自体に大きな影響が出ます。そうなれば利用者にも迷惑をかけることになりますから、自分たちの身を守ることも大切です。ここは難しいところですね。 職員の家族の発熱への対応も悩ましい問題です。私が統括所長を務める白十字訪問看護ステーションでも、この春、職員の子どもが通う保育園でクラスターが発生し、職員が出勤できなくなりました。休むことになった職員の訪問を、誰がどうカバーするかなどの対応が必要になりましたが、慌ててもしかたがありません。そういうときは淡々と対処していくしかないですね。 職員のやりくりに苦心する一方で、感染の影響による新規の依頼もあります。クラスターが発生してデイサービスが休業したから、臨時で訪問看護を利用したい。入院した病院の面会制限が厳しいので在宅で看取りたいから訪問看護に来てほしい。そんな依頼です。 陽性者にどう対応するかだけでなく、その周辺も含めたさまざまな影響が今、訪問看護に出ていると思います。 この難局を地域で連携して乗り越える とはいえ、悪いことばかりではありません。新型コロナへの対応を通して、地域でさまざまな連携や新しい取組が生まれてきています。 例えば、白十字訪問看護ステーションのある東京都新宿区は、一時期、夜の町での感染拡大がセンセーショナルに取り上げられました。これに対応するため、新宿区医師会が動きました。区内の複数の大病院が重症者対応に注力できるよう、開業医の先生方が発熱外来を運用したり、訪問でPCR検査をしたり、後方支援に取り組んだのです。たとえ陽性者数が増加しても、重症者や死者を増やさない。今ではそんな意識がかなり徹底されています。 訪問看護も、事業所同士の連携が進んでいます。感染拡大初期、病院に比べて在宅では、防護服などの感染予防の医療用品が手に入りにくい時期がありました。そこで、連絡会として行政に訴えるなど解決に動いたことをきっかけに、連絡会による横の連携が活発になりました。一つの事業所だけで悩むのではなく、一緒に考えましょうという意識が強まったのです。今では、防護服などの行政からの支援物資は、少し広い事業所がまとめて備蓄し、そこから不足している事業所に出すというしくみがつくられました。 また、医師会の先生方と月1回情報交換するなど、医療職同士の連携も進みました。そのおかげで、PCR検査の実施方法、感染初期の対応など、今ではさまざまな情報共有が速やかに行われるようになっています。 定期巡回・随時対応型訪問介護看護(以下、定期巡回)でも、事業所同士の連携が進んでいます。訪問看護同様、限られた人数で訪問介護を提供している事業所では、感染者や濃厚接触者が一人出れば、やはり欠員となった職員をどうカバーするかが問題になります。 あるとき、一人暮らしの利用者を支える定期巡回の事業所で、夜間帯を担当していた介護職が濃厚接触者になり、訪問できる介護職がいなくなったことがありました。そのときには、事情を知った他の訪問介護事業所がカバーし、何とか利用者を守り抜いたのです。 新型コロナの感染拡大は、これまでに誰も経験したことのない危機的状況です。だからこそ、地域の中で他の事業所とのチームワークが芽生え、互いに支え合っていこうという意識が強くなったとも言えます。この難局は、そうしたいい面も引き出しているのではないかと思います。 (後編へつづく) ** 秋山正子株式会社ケアーズ 白十字訪問看護ステーション・白十字ヘルパーステーション統括所長、暮らしの保健室室長/認定NPOマギーズ東京センター長   取材・文/宮下公美子(介護ライター) 記事編集:株式会社メディカ出版

コラム

コロナ禍でも7割の訪問看護ステーションが収支悪化せず?訪問看護業界の現況

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は、世界各地の経済、ビジネスに大打撃を与えている。医療業界も、多くの病院やクリニックで外来患者が激減し、経営難に陥っている医療機関も少なくない。そんな中、「家」でサービスを提供する訪問看護業界は比較的、昨今のコロナ禍、「ステイホーム」の世の中でも好調と言えそうだ。 コラム執筆者: 株式会社メディヴァ/コンサルタント 内野宗治   7割以上はコロナで収支変化なしまたは増加 公益財団法人日本訪問看護財団が2020年10月19日に発表した「第3弾 新型コロナウイルス感染症に関するアンケート(※1)」によると、アンケートに回答した訪問看護ステーションの74.5%が2020年8月の収支状況について、前年同月(2019年8月)と比べて「変化はほとんどない」「1 割以上増加」と回答した。 アンケートに回答したステーションは計149施設と、限られたサンプル数ではあるものの、7割以上のステーションが「ウィズコロナ」の現在でも収支状況が悪化していないという事実は、訪問看護のニーズが根強いことを示唆している。 ちなみに日本全国が緊急事態宣言下にあった5月の収支状況についても、68.5%のステーションが前年同月と比べて「変化はほとんどない」「1 割以上増加」と回答。6月は74.5%、7月は75.2%と、いずれも75%前後の水準を維持している。病院の約8割がコロナ禍で経営悪化したとも報じられている(※2)のとは対照的だ。 訪問看護利用者は増え続けている 日本の訪問看護業界は、在宅療養の普及に伴い、ここ20年ほど右肩上がりの成長を続けている。厚生労働省の公開資料(※3)によると、2017年の日本における訪問看護の利用者数は、介護保険適用者が約46万人、医療保険適用者が約23万人となっている。 2001年の利用者数と比べると、介護保険適用者は2.5倍、医療保険適用者は4.7倍に増えた。ニーズの増加に伴う形で、訪問看護ステーションの数も増えている。全国訪問看護事業協会の調査(※4)によると、日本全国にある稼働中の訪問看護ステーション数は2010年時点で5,731件だったが、2020年4月時点で11,931件と、直近10年間で倍増以上となった。 課題は人手不足 業界全体が伸び盛りである一方、急成長中の業界だからこその問題もある。ひとつは「人手不足」だ。厚生労働省が2019年に推計(※5)したところによると、2025年に日本の看護職員は6〜27万人不足する見込みで、中でも訪問看護師の不足が懸念されている。 また、日本看護協会の発表(※6)によると、2018年における訪問看護ステーションの求人倍率は2.91倍で、病院や介護老人福祉施設(特養)を抑えて、最も求人倍率の高い(人手を必要としている)施設となっている。訪問看護師の絶対数こそ増えてはいるものの、「急増するニーズに追いついていない」というのが実態のようだ。 訪問看護が複雑化し、リハビリ中心に 在宅療養患者が小児から末期がん患者まで多様化する中で、単に看護師の数が足りないというだけでなく、訪問看護師に求められる知識や能力が複雑化していることも伺える。 訪問看護師が不足している状況もあり、実際には看護師ではなくリハビリ職員による訪問看護が主となっているステーションもある。前出の厚生労働省発表資料によると、訪問看護ステーション従事者に看護師が占める割合は、2001年には91%だったが2017年には71%まで低下。 代わりに理学療法士等(作業療法士、言語聴覚士を含む)の割合が5%から22%へと増加している。 診療報酬改定の見直し対象に 厚生労働省によると、リハビリ職員の割合が多いステーションは「24時間対応体制加算」の届出が少ないといった特徴がある。この問題は、2018年の介護報酬改定、及び2018年と2020年の診療報酬改定において見直しの対象となり、理学療法士等による訪問看護の単位数引き下げや、看護職員とリハビリ職員の連携を要件化するといった対応が取られた。2021年の介護報酬改定に向けた議論でも、リハビリ職員による訪問看護の扱いは主要な論点のひとつとなっている。 看護職員の割合に応じた報酬体系への変更 2020年10月22日に行われた厚生労働省の社会保障審議会(介護給付費分科会)(※7)では、次期介護報酬改定に向けて「看護職員の割合や看護職員による訪問割合に応じた報酬体系への変更」などを提案する声が上がった。また、8月3日の介護給付費分科会における事業者ヒアリングでも、日本訪問看護事業協会から「看護体制強化加算について、看護職の人員基準を設け、看護職が全体の60%以上とする要件の追加」という要望もあった。その他、2021年介護報酬改定における、訪問看護を巡る主な論点としては「退院当日の訪問看護費算定」や「在宅療養を支える訪問看護提供体制の強化(看護体制強化加算)」などがある。 さいごに これらの要望が実際の改定にどこまで反映されるかは未知だが、訪問看護について「看護職員による、手厚い訪問看護の実施を評価していこう」という大きな流れがあることは確かだろう。この流れを追い風に、業界全体が今後さらに発展していくことが期待される。 株式会社メディヴァ コンサルタント 内野宗治 東京都出身。国際基督教大学教養学部社会科学科卒業。IT系コンサルティング会社勤務、ニュースサイト編集者、スポーツライター、通信社記者(マレーシア支局)等を経て現職。メディヴァでは、ヘルスケア関連企業の新規ビジネス開発や先進医療の普及・実用化に向けた戦略策定支援、自治体の地域医療拡充サポート、中央省庁の調査案件等に携わる。 【参考】 ※1:第3弾 新型コロナウイルス感染症に関するアンケート~感染症発生状況と経営に及ぼす影響~ ※2:(NHK WEB)約8割の病院で経営悪化 新型コロナで外来や入院の患者数減少 ※3:訪問看護䛾利用状況等について ※4:訪問看護ステーション数調査 ※5:医療従事者の需給に関する検討会 看護職員需給分科会 中間とりまとめ(概要) ※6:2018年度 「ナースセンター登録データに基づく 看護職の求職・求人・就職に関する分析」 結果 ※7:訪問看護の報酬・基準について(検討の方向性)

インタビュー

感染管理認定看護師に聞く、新型コロナの感染対策

テンハート訪問看護ステーション管理者の佐渡本さんは「感染管理認定看護師」の資格をお持ちです。訪問看護ステーションでも参考になる、新型コロナウイルス感染症をはじめとした感染症予防で気をつけるべきことについて伺いました。 在宅でも気をつけたい、個人防護服の管理 ー新型コロナの疑いの利用者さんがいる時はどうしていますか? 佐渡本: まずは、訪問に行くか行かないかは主治医と相談して決めています。以前、利用者さんで新型コロナ感染疑いの方がいたのですが、その時は主治医と相談してサービスを一旦停止しました。 熱がある患者さんを訪問する時は、しっかり個人防護具を着て、マスクやフェイスシールドをつけて対応しています。ここでひとつ見落としがちなのが、個人防護具を外す時の感染リスクです。 ー「個人防護具を外す時」ですか。 佐渡本:   例えば、手袋を外す時やマスクを外す時に、不潔な部分に触れて手などにウイルスが付着してしまうことがあります。ですので、個人防護具を「つけているから大丈夫」ではなく「外して、破棄して、手洗いする」ところまでやって、はじめてきちんした感染症対策になると思います。 ー個人防護具を扱う際の注意点など、詳しく聞かせてください。 佐渡本: 個人防護具を外すタイミングは、利用者さんと2メートル以上離れた、部屋の出口や玄関先でいいと思います。その際も、脱いだエプロンで手や周囲を汚染しないように注意してもらえればと思います。 もうひとつ可能であれば実践してもらいたいのが、新型コロナに感染した疑いの利用者さん自身にもマスクを着用していただくことです。言わないとマスクをしてくれない利用者さんも多いかと思いますが、お互いにマスクをしていれば感染のリスクは下がります。 訪問看護師の持ち物も清潔に ー新型コロナ感染症に限らず、普段の感染症対策で大切にしていることを教えてください。 佐渡本: スタンダードプリコーション(標準予防策)は徹底しています。手洗いとか咳エチケットですね。 あとは物品の取り扱いですね。体温計とか血圧計など、利用者さんごとに消毒して綺麗にリセットすることを徹底しています。 ーこれは見落としがち、というものはありますか? 佐渡本: 在宅ではあまり問題視されていないのですが、気を付けないといけないと思うのが、多剤耐性菌です。 多剤耐性菌は健康な私たちには悪さをしませんが、高齢の方にはリスクになる菌です。 処置後の手洗いはもちろんですが、菌を次の家に持ち運ばないように気をつけるよう、いつもスタッフに指導しています。 また、訪問バッグの中の物を清潔に管理するのも訪問看護師として大事なことだと思います。 訪問バッグ自体も、もし床面に置いた場合は拭くなどして綺麗にしておいた方がいいと思います。 ステーションが全滅しない感染対策を ー最後に、感染管理認定看護師として他のステーションへのアドバイスなどあればお願いします。 佐渡本: ステーション運営の上で重要だと思っているのは、仮にスタッフに新型コロナウイルス感染症の陽性者が出たとしても、ステーションが全滅しない対策を取ることです。 例えば陽性者が1人出た時、保健所から「スタッフ全員が濃厚接触者です」と言われてしまったら、2週間休業になってしまいます。もし陽性者が出ても、濃厚接触者には当たりません、と言ってもらえるような対策を常に取っておくことが大事だと思います。 あとは、プライベートでも気を抜かずにスタッフみんなが予防を意識することも必要です。 ー万が一感染してしまった場合はどうしたらいいでしょうか? 佐渡本: どれだけ細心の注意を払っていても、感染してしまうことはあると思います。 実際に自分やスタッフが感染しても慌てないように、あらかじめ起こりうることを想定して、対策を具体的に考えておきましょう。これは災害対策も一緒ですね。 例えば、利用者さんとスタッフの体温をチェック表に毎日書いて管理するなども有効だと思います。見える化されていることで、早期に異常を発見できることもあると思います。 合同会社Beplace代表 / テンハート訪問看護ステーション管理者 / 感染管理認定看護師・臨床検査技師 佐渡本琢也 臨床検査技師として勤務する中で、患者と接する仕事に魅力を感じ、看護師の道へ。病院では脳神経外科、消化器外科を経験し、感染管理認定看護師の資格を取得。母を癌でなくした経験から「在宅で看護師ができることが、まだあるのではないか」という思いを持ち、同僚からの誘いをきっかけに愛知県名古屋市にテンハート訪問看護ステーションを立ち上げた。   新型コロナ感染症対策についてもっと知りたい方は、こちらの特集記事をご覧ください。

× 会員登録する(無料) ログインはこちら