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2021年11月16日
2021年11月16日

第5回 賃金・退職・懲戒・解雇編/[その2]その給与の差、説明できますか? 必読「同一労働同一賃金」の考え方のポイント

「パートタイム労働法」が「パートタイム・有期雇用労働法」へと新しく生まれ変わり、それに伴って、2021年4月1日から、中小企業においても「同一労働同一賃金」への取り組みが求められるようになりました。正社員だけでなく、パートタイム労働者や有期雇用労働者を雇用している事業所は多いかと思います。今回の改正は実務上とても重要なものですので、しっかりと理解しておきましょう。 私の事業所には、無期雇用労働者(正社員)と、有期雇用労働者と、パートタイム労働者がいます。無期雇用労働者(正社員)には自宅からの交通費の実費を「通勤手当」として支給していますが、有期雇用労働者とパートタイム労働者には一律支給していません。皆さん、これまでこの運用で納得してくれているので、特に問題はないですよね?いいえ。そのような取り扱いは不合理な待遇差として許されません。通勤手当は、有期雇用労働者やパートタイム労働者に対しても支給する必要があります。 同一労働同一賃金とは 「同一労働同一賃金」とは、平たくいえば、「同じ労働に対しては、同じ賃金を払いましょう」ということです。 これまでわが国では、「無期雇用労働者(正社員)が上」「有期雇用労働者やパートタイム労働者は下」といったゆがんだ差別意識のようなものがあり、その結果、ご質問のケースのように、通勤手当を無期雇用労働者には支払うけれど、有期雇用労働者とパートタイム労働者には一律支給しないといったような不合理な取り扱いが見られました。 しかし、法改正がされた結果、今後は、このような不合理な取り扱いは認められません。例えば、無期雇用労働者も有期雇用労働者もパートタイム労働者も、電車通勤をしている場合は交通費がかかることに変わりなく、そこに区別を設ける理由はありません。 今回の法改正では、このような視点を、基本給、賞与、手当、福利厚生など広い分野で適用することが求められています。 厚生労働省のガイドライン・マニュアル 厚生労働省は、この件に関して、とても詳細なガイドラインやマニュアルを出しています。 ・ガイドライン『短時間・有期雇用労働者および派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針』 ・マニュアル『不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(福祉業界編)』 考え方のポイントは? ポイントは、「手当などに差を設けるとして、その理由を合理的に説明できるか?」ということです。 例えば、ある事業所で4名ほどの部下を抱える無期雇用(正社員)のチーフに対して、チームを統率しなければならないという役割の重さに対する対価として「役職手当」を支給しているとしましょう。 他方で、この事業所では、ほかにももう1つチームがあり、そのチームのチーフが有期雇用労働者だったとします。ここで、この労働者が行っているチーフとしての業務は無期雇用のチーフと同じですが、有期雇用のチーフには「役職手当」が支給されていないとしましょう。 そうすると、両者は、チーフとしての責任の重さや仕事の内容は同じなのに、「無期雇用か有期雇用か」という雇用契約の形式的な側面のみをもって、「役職手当」の支給の有無が変わってくることになります。しかし、これでは、手当に差を設けた理由を合理的に説明できておらず、同一労働同一賃金の要請を満たせていないことになります。 手当の性質 手当の支給に差を設けた理由を合理的に説明するためには、まずその手当なりがどういう趣旨で支給されているのかを明らかにしなければなりません。 例えば、「業務手当」という名称はよく聞きますが、一口に「業務手当」といっても、それが何に対する対価であるのかは必ずしも明確ではありません。ある会社では「売上成績への対価」として支払っていることもありますし、ある会社では「固定残業代」として支払っていることもあります。 手当の名称から一義的にその手当の性質が決まるわけではありません。あらためて、事業所で支給しているすべての手当や賞与などについて「どういう趣旨で、どういう条件で支給しているのか」という点を確認しましょう。 支給に差を設ける場合の考慮要素は何か? そのうえで、無期雇用と、有期雇用・パートタイム労働者の役割などにどのような違いがあるのかを確認します。その際、①職務の内容、②職務の内容・配置の変更の範囲、③その他の事情を検討することになります(詳細は上記マニュアルの20頁参照)。 ①について、訪問看護の事業所であれば、チーフなどの責任の重い業務を担当しているか、オンコールに対応しなければならないか、休日・緊急出動をしなければならないか、教育担当か、外部の会議に出席するか、渉外交渉をするか、複雑な患者さんへの対応を求められるかといったことなどを考慮することになるでしょう。 ②については、転勤や昇進といった人事異動や役割の変化の有無などを考慮します。 ③その他の事情とは、①や②以外の事情を指しており、成果、能力、経験などを指します。 具体的に考えてみよう 例えば「オンコール手当」という手当があるとしましょう。 この手当の性質が、「オンコール待機をしてくれたことに対する1待機日あたりの手当」という趣旨だとします。 そして、この事業所では、「無期雇用と有期雇用はオンコール待機をしなければならないが、パートタイムはしなくてよい」とされているとしましょう。そうすると、①職務の内容としては、オンコールに関していえば、無期雇用と有期雇用で違いはありません。 とすれば、この事業所の場合は、オンコール手当を無期雇用と有期雇用に支給しなければなりませんが、パートタイムに対しては支払う必要はないということになるでしょう。 マニュアルを参照してチェックをしていこう このように、手当の性質を考慮したうえで、無期雇用と有期雇用・パートタイム労働者の役割などの違いを踏まえ、その手当を支給しないこと(もしくは、すること)を合理的に説明できるかを検討するわけです。 この検討はかなり手間を要しますので、上のマニュアルを参照しつつ、チェック表を設けて、順次チェック作業を進めていくようにしましょう。 従業員の間で手当などに「差」を設ける場合は次のことを検討します。①職務の内容②職務の内容・配置の変更の範囲③その他の事情(成果、能力、経験など) ** 前田 哲兵 弁護士(前田・鵜之沢法律事務所) ●プロフィール医療・介護分野の案件を多く手掛け、『業種別ビジネス契約書作成マニュアル』(共著)で、医療・ヘルスケア・介護分野を担当。現在、認定看護師教育課程(医療倫理)・認定看護管理者教育課程(人事労務管理)講師、朝日新聞「論座」執筆担当、板橋区いじめ問題専門委員会委員、登録政治資金監査人、日本プロ野球選手会公認選手代理人などを務める。所属する法律事務所のホームページはこちらhttps://mulaw.jp/ 記事編集:株式会社照林社

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2021年11月9日
2021年11月9日

第5回 賃金・退職・懲戒・解雇編/[その1]固定残業代、正しく理解・運用できていますか?

「固定残業代」は、適切に運用ができていないと事業者としてとても大きなリスクを負うことになりますが、正しく運用できていない事業所は少なくありません。ある日突然、元従業員から数百万円や、場合によっては1000万円を超える請求がくることもあります。法的に正しい知識を理解して、就業規則や運用の見直しを進めましょう。 私の事業所は残業が多いので、従業員に対して、基本給30万円に加えて、固定残業代として毎月5万円を支給しています。固定残業代を毎月払っているのですから、いくら残業させても問題ないし、残業代の計算はしなくても大丈夫ですよね? いいえ、残業時間は管理しなければなりませんし、固定残業代を超えた分の残業代は必ず支払わなければなりません。 固定残業代とは 「固定残業代」(「みなし残業代」や「定額残業代」とも呼ばれます。)とは、時間外労働や休日労働や深夜労働に対して支払われる割増賃金(これを俗に「残業代」と呼びます。)を、あらかじめ、一定額支払っておく制度のことをいいます。 この「固定残業代」は、ご質問のように、「固定残業代を毎月払っているのだから、いくら残業させても問題ないし、残業代の計算はしなくても大丈夫」と誤解されていることが多くあります。例えていうならば、固定残業代を、携帯電話の「ネット無制限使い放題」のようにとらえているわけです。 しかし、そのような完全な固定残業代制度というものは、労働基準法37条に違反するため許されません。 固定残業代とは、携帯電話で例えるならば、「ネット5ギガ使い放題」のようなものです。5ギガまではネット回線の利用料金は別途かからないわけですが、5ギガを超えて使う場合は、別途利用料金を支払わなくてはならないわけです。 固定残業代の考え方もこれと同じで、例えばご質問のケースのように5万円の固定残業代を毎月支払っているならば、残業代は5万円までは支払わなくてもよいですが、5万円を超える残業をさせた場合は差額を支払わなくてはいけません。ある月に7万円分の残業をさせたならば、2万円の差額を別途支払う必要があるということです。 そのため、いかに固定残業代を支払っていたとしても、月々の労働時間・残業時間はしっかりと把握しておく必要があります。そうしないと、一体いくらの差額が発生しているのか把握できず、差額を支払うことができないためです。 固定残業代制においても月々の労働時間・残業時間の管理は必要です。固定残業代を超えた差額分の残業代は必ず支払いましょう。 私の事業所では、事業所の事務長に対して、基本給として30万円を支払い、職務手当として10万円を支払っています。職務手当は、事務長という重要なポジションについていることに対する役職手当としての意味と、固定残業代としての意味があります。ただし、職務手当10万円のうち、いくらが役職手当で、いくらが固定残業代なのかは明確にしていません。この場合、10万円分の固定残業代を毎月支払っているのですから、それを超える残業代の差額のみを支払えばよいのですよね?いいえ。この場合、固定残業代という制度自体が無効になる可能性があります。 固定残業代が有効になるための要件 これまでに述べたとおり、固定残業代は、その額の分を超えて残業をさせた場合は、必ず差額を支払わなければなりません。 ここから、固定残業代が有効といえるための要件が導き出されます。すなわち、①固定残業代が、時間外労働などの割増賃金の「対価」として支払われていること(対価性の要件)、②その割増賃金部分が、他の賃金と判別することができること(判別可能性の要件)です。 少しわかりにくいと思いますので、具体的に見ていきましょう。 ①について。ご質問のケースでは「職務手当」という名称がついていますが、これだと「固定残業代」とは別の名称であるため、一見して、それが割増賃金の代わりに支払われているということがわかりません。そういった場合、事業所が、「この職務手当は、固定残業代として支払っているのですよ」と主張しても、裁判所に信用してもらえないことがあります。手当の名称ですべてが決まるわけではありませんが、少なくとも給与規程や雇用契約書において「その手当を割増賃金の対価として支払っていること」を明記しておくべきです。 次に②について。ご質問のケースを例にとれば、「職務手当」として10万円を支払っており、その中には、役職手当としての意味と、固定残業代としての意味が両方含まれているということです。この時、例えば「役職手当4万円、固定残業代6万円」のように、固定残業代の金額を、他の賃金から区別することができるのであれば、労働者としては、「固定残業代6万円を超えて残業したら、別途差額を支払ってもらえるんだな」と理解できるわけです。 しかし、ご質問のケースのようにその内訳が不明確な場合は、労働者の立場からすると、「固定残業代は10万円のうち一体いくらで、自分はどれだけ働いたら固定残業代を超える分の差額を支払ってもらえるのか」という点がわかりません。 もしも無効とされた場合は・・・・・・ そうすると、固定残業代制は無効とされるリスクが出てきます。無効となった場合は、割増賃金を算定する際の基礎賃金が40万円(30万円+10万円)に跳ね上がり、さらに、固定残業代はこれまで一切支払っていなかったことになるわけですから過去にさかのぼって割増賃金を払い直すことになるという「ダブルパンチ」をくらうことになります。 その結果、固定残業代が無効と判断された場合は、通常の残業代の未払い案件よりも支払うことになる残業代の額が高額になりがちです(1000万円を超えることもあります)。 現場の対応 そのため、(1)就業規則(給与規程)において固定残業代が割増賃金の対価として支払われるものであることを明記し、(2)個別の雇用契約書において、固定残業代の額と、そこに含まれる時間外労働などの時間数を明記し、(3)さらに、給与明細において、「固定残業代」といった費目を設けて他の賃金と明確に区別して給与を支給し、(4)固定残業代分を超える残業をしてもらった場合には、毎月差額を支払っておく必要があります。なお、(2)について、少なくとも、固定残業代に含まれる時間外労働の時間数は、36協定の延長限度時間である45時間を超えないようにしておくべきでしょう。 固定残業代が有効といえるためには2つの要件が必要です。①固定残業代が、時間外労働などの割増賃金の「対価」として支払われていること(対価性の要件)②その割増賃金部分が、他の賃金と判別することができること(判別可能性の要件)  ** 前田 哲兵 弁護士(前田・鵜之沢法律事務所) ●プロフィール医療・介護分野の案件を多く手掛け、『業種別ビジネス契約書作成マニュアル』(共著)で、医療・ヘルスケア・介護分野を担当。現在、認定看護師教育課程(医療倫理)・認定看護管理者教育課程(人事労務管理)講師、朝日新聞「論座」執筆担当、板橋区いじめ問題専門委員会委員、登録政治資金監査人、日本プロ野球選手会公認選手代理人などを務める。所属する法律事務所のホームページはこちらhttps://mulaw.jp/ 記事編集:株式会社照林社

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2021年11月2日
2021年11月2日

第4回 残業・休憩・休日編/[その4]有給休暇、パートでもアルバイトでも取れます

年次有給休暇(年休)は働く人にとって当然の権利です。今では、10日以上の年休のある人は、年5日の年休を取らなければならないようになりました。年休は、働く人の心身のリフレッシュを図ることを目的として設けられています。事業所のスタッフも、管理者も、正しい知識をもって、年休を上手に活用できる職場づくりを進めていきましょう。  訪問看護ステーションで働き始めて10か月が経ちました。週4日のパート勤務なので年休はもらえないのかと思っていましたが、同僚はパートでも年休はもらえると言います。本当ですか?   要件を満たせばパート勤務でも年休はもらえますので、事業所に確認してみてください。  2つの要件を満たせば有給休暇は取れる パート、アルバイト問わず、どのような勤務形態でも年次有給休暇(以下「年休」とします)を取ることができます。労働基準法では、業種や職種、雇用形態にかかわらず、一定の要件を満たしたすべての労働者に対して、年休を与えなければならないと定めています(労働基準法39条)。それでは、年休が取れる要件とはどんなものでしょう。以下の2つの要件が挙げられています。 ①雇い入れの日から6か月経過している②その期間の全労働日の8割以上出勤している 年休の日数は継続勤務年数によって変わる この2つの要件が満たされれば、パート、アルバイトを問わず年休が発生し、労働者は理由を問わず年休を取ることができます。取れる年休の日数は継続勤務年数によって変わってきますので、次の表1を参考にしてください。 表1 年次有給休暇の付与日数 なお、②の要件で示されている、全労働日の「8割以上」という率の計算をする際に注意したいのは、次のような場合は出勤したものとみなすという点です。 ・業務上の負傷・疾病などにより療養のため休業した日・産休や育児休業、介護休業、年休を取得した日 さらに、パート、アルバイトのように、週の所定労働日数が少ない人については、年休の日数は、所定労働日数に応じて、表2のように比例付与されます。 表2 週所定労働日数が少ない場合の年次有給休暇の付与日数 なお、年休の権利は、2年間で時効によって自然消滅してしまうので、これは十分に注意してください(労働基準法115条)。必ず2年間で消化するようにしましょう。 事業所から、必ず年5日は年休を取るようにと強く言われています。以前はそんな強制はなかったのですが、変わったのでしょうか? 法改正に伴い、年休が年10日以上付与される労働者は、年5日の年休を取らなければなりません。これは事業所の義務なのです。 確実に年休を取得できる環境づくりが必須 以前は義務ではなかったのですが、2019年4月から、使用者は年休が10日以上付与されている労働者に対して、年5日の年休を取得させなければならなくなりました。 この法改正の前までは、労働者の自主的な請求に任せると年休取得を申請しづらい、ということから年休の取得が進まなかった背景がありました。そのため、図1に示すように、年5日の年休の取得が進んでいない労働者に対しては、事業所が聴取して、年休取得を促すという意味があります。 さらに、年休の取得時季については、労働者に時季指定権があります。複数の労働者が同じ時期に年休取得の請求が集中したような場合などには、事業所には労働者に対する年休の取得時季の変更権が認められていますが、取得を認めないとすることはできません。 そのため、ステーションの所長は、定期的にスタッフと話し合いを行い、年5日の年休を確実に取得してもらえるような環境づくりを行っていきましょう。 図1 時季取得のイメージ ステーションの管理者ですが、年休管理に関して特に注意しなければならないことはありますか? また、これに関して相談できる窓口はありますか? 管理者は「年次有給休暇管理簿」を作成し保管する義務がありますので、注意しましょう。また、管理に関する情報は都道府県労働局のホームページが参考になります。相談窓口も設置されています。 管理簿は3年間の保存が必要 ステーションの管理者は、スタッフ全員の「年次有給休暇管理簿」を作成する義務があります。年次有給休暇管理簿には、次のような項目を記載する必要があります。 ・労働者が年休を取得した日の「日付」・スタッフが1年間で取得した「年休の日数」・6か月連続勤務などの所定の条件を満たし、年休を付与する「基準日」 さらに、「年次有給休暇管理簿」は、年休を与えた期間と期間満了してから3年間の保存が義務づけられていますので注意してください。保存方法は、データと紙媒体どちらでも構いません。 労働局の管理台帳や相談窓口を活用しよう また、都道府県労働局では、年休を取得しやすい労働環境づくりに向けたさまざまな支援を行っていますので、ぜひ参考にしてください。例えば、福井労働局のホームページでは、「年次有給休暇取得管理台帳」が公開されており、ダウンロードができます。 ▼福井労働局ホームページ有給休暇の計画的付与、時間単位年休および年5日の時季指定に対応した有給休暇の管理台帳を作成しました 北海道労働局のホームページでは、職場全体でも個人でも活用できる「年次有給休暇表」をはじめ、「年次有給休暇取得計画表」、「個人別年次有給休暇取得計画表」、「年次有給休暇取得状況チェック表」が公開され、ダウンロードができます。 ▼北海道労働局ホームページ年次有給休暇を適正に付与・管理していますか また、都道府県労働局では、「働き方・休み方改善コンサルタント」による電話相談や個別訪問など、無料で働き方・休み方改善のためのアドバイスを行ってくれます。詳細は、ステーションの所在地の都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)にお問い合わせください。 ▼厚生労働省ホームページ都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧 年休の管理や取得促進に取り組みたいと考える管理者の方は、ぜひこのような労働局のサービスをご活用いただき、上手に働きやすい職場づくりを進めてください。 ** 加藤 明子 加藤看護師社労士事務所代表看護師・特定社会保険労務士・医療労務コンサルタント ●プロフィール看護師として医療機関に在職中に社会保険労務士の資格を取得。社労士法人での勤務や、日本看護協会での勤務を経て、現在は、加藤看護師社労士事務所を設立し、労務管理のサポートや執筆・研修を行っている。▼加藤看護師社労士事務所https://www.kato-nsr.com/ 記事編集:株式会社照林社

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2021年10月26日
2021年10月26日

第4回 残業・休憩・休日編/[その3]知らぬ間に発生しているかも!? 注意したい、休日労働の割増賃金

休日には、「所定休日」と「法定休日」があることをご存知ですか? この違いは、休日労働の割増賃金にも関わりますので、正しく理解しておくことが必要です。ほかにも、休日を別の日に代える「振替休日」と「代休」にも違いがあります。管理者にとって必須の知識である「休日」の違いについて、今回は詳しく説明していきます。 私の事業所では、就業規則で週休2日制を採用しています。ある週の業務が忙しく、スタッフに2日ある休日のうち1日だけ、働いてもらいました。この場合、働いてもらった1日について、休日労働の割増賃金を支払わなければなりませんか?法律では、「毎週少くとも1回」の休日を与えればよいとされているので、就業規則で法定休日を特定していないならば、休日労働の割増賃金を支払う必要はありません。 休日にも「所定」と「法定」がある 休日には、「所定休日」と「法定休日」があります。 所定休日とは、労働契約上で付与されている休日のことです。質問のケースでは、就業規則で週休2日制を採用しているわけですから、「所定休日」は2日間ということになります。 対して、「法定休日」とは、労働基準法35条で定められた休日のことをいい、同条1項では、「毎週少くとも1回」の休日を与えればよいとされています。 昨今、週休2日制を採用する事業所も少なくありませんが、それは、労働基準法35条が求める最低基準(週休1日)よりも、多くの休日を事業所が自主的に与えているということになります。 このように「所定休日」と「法定休日」というのは別の概念です。そして、休日労働に対する割増賃金(35%増)を支払う必要があるのは「法定休日」です。要するに、「1週間に1日も休ませることなく働かせた場合は、その休日労働に対しては35%増で賃金を支払ってください」ということです。 法定休日を確保できていれば割増賃金は不要 質問のケースでは、就業規則で週休2日制を採用している事業所において、そのうち1日を働いてもらったということです。この点、法定休日は、「毎週少くとも1回」の休日を与えればよいわけですから、設例の場合では、法定休日は確保できていることになり、休日労働の割増賃金を支払う必要はないといえます。 私の事業所では、就業規則で1週間の始まりを月曜日と定めて、日曜日を休日にしています。ある週、容態が急変した利用者様に対応するため、急遽、スタッフに日曜日に出勤してもらいました。ただし、そのスタッフには、代わりに、次の週に1日追加で休日をとってもらっています。この場合、全体でみれば休日の日数は変わらないので、休日労働の割増賃金は不要ですよね?これは「休日の振替」ではなく、「代休」にあたります。その週に1日も休日を与えることができていない場合は、休日労働の割増賃金の支払いが必要です。 「休日の振替」と「代休」は意味が異なる 業務の都合などで、休日とされている日を事前に労働日に変更し、その代わりに、もともとは労働日とされていた別の日を休日にすることがあります。これを「休日の振替」といいます。ポイントは『事前に』という点です。 対して、質問のケースのように、急ぎの対応が必要なため、急遽、もともとは休日であった日に出勤してもらい、事後的に代わりとして、別の日に1日追加で休日をとってもらうということもあります。これを「代休」といいます。ポイントは『事後的に』という点です。 代休では法定休日を確保できないことも 休日の振替は、事前に休日を入れ替えているため、労働基準法35条1項が定める「毎週少くとも1回」の休日を結果として与えることができていることが多くあります。その場合、法律で定められた35%の休日労働割増賃金を支払う必要はありません。対して、代休は、あくまで事後的な対応であるため、例えば質問のケースのように、休日と定めていた日曜日に急遽出勤すれば、その週だけを見ると月曜日から日曜日まで1日も休まずに勤務したことになります。よって、法定休日である日曜日の労働に対して、35%の休日労働割増賃金を支払わなければなりません。 「休日の振替」には正しい運用が必要 休日の振替と代休は、いずれも休日を別の日に代えるという点では共通していますが、休日の振替はそれを「事前」に行うのに対し、代休ではそれを「事後」に行うという点に違いがあります。そして、法定休日を確実に確保するという観点からは、「事前」の対応である休日の振替が適しているといえます。 前回の記事のとおり、休日労働にあたる場合は35%の割増賃金を上乗せして支払う必要がありますので、スタッフの勤怠管理を適切に行えていないと、気づかないうちに割増賃金の未払いといった法律違反につながるおそれがあります。事前にスタッフの労働状況を把握して休日の振替を正しく運用し、それと同時に日頃から無理のない人員配置を心がけましょう。 ○ひとくちメモ○1週間の始まりは何曜日? 質問のケースでは、就業規則で1週間の始まりを月曜日と定めていました。では、そのような規定がない場合、1週間は何曜日から始まって、何曜日で終わるのでしょうか? 多くの人が、「月曜日から始まって、日曜日に終わるんでしょ?」と思うかもしれません。しかし、実は行政解釈では、1週間の始まりは日曜日とされています(昭和63年1月1日基発第1号)よって、質問のケースで、仮に就業規則に週の始まりを規定していなければ、急遽働いてもらった日曜日は1週間の始まりの日とされます。そのため、翌日からの月曜日〜土曜日のうちのどこかで1回休日を与えれば、「毎週少くとも1回」という法定休日は確保できていることになります。 就業規則に何も規定がなければ、この行政解釈が適用されますが、逆に言えば、週の始まりを何曜日にするかは、就業規則で自由に決めることができます。 「週の始まりは何曜日か?」という視点は、実務上は意外に重要です。ぜひ一度、就業規則の規定を確認してみてください。 ** 前田 哲兵 弁護士(前田・鵜之沢法律事務所) ●プロフィール医療・介護分野の案件を多く手掛け、『業種別ビジネス契約書作成マニュアル』(共著)で、医療・ヘルスケア・介護分野を担当。現在、認定看護師教育課程(医療倫理)・認定看護管理者教育課程(人事労務管理)講師、朝日新聞「論座」執筆担当、板橋区いじめ問題専門委員会委員、登録政治資金監査人、日本プロ野球選手会公認選手代理人などを務める。 記事編集:株式会社照林社

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2021年10月19日
2021年10月19日

第4回 残業・休憩・休日編/[その2]朝礼や昼休みの電話当番、これって労働時間に入りますか?

前回の記事で、労働時間には「所定」と「法定」があること、「1日8時間・1週間40時間」という法定労働時間を超える残業に対しては、時間外割増賃金を支払う必要があることを説明しました。今回は、休憩時間などの周辺知識を含めて、何が「労働時間」とみなされるのかを具体的に検討します。 私の事業所は9時から始業ですが、実際は、毎朝8時30分にみんなで集まり、その日の業務を確認する「朝礼」を行っています。この始業前の朝礼は、労働時間に含まれますか?朝礼への参加を義務づけていれば、労働時間になります。 使用者の指揮命令下にあるかどうかがポイント 労働時間とは、過去の判例で次のように定義されています。 「労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まる」(三菱重工長崎造船所事件・最高裁平成12年3月9日判決) 少し難しい表現ですが、ポイントは、使用者の指揮命令下にあるかどうかということです。あくまで客観的に判断するため、事業所が「始業時間は9時ですので、その前の朝礼は労働時間ではありません」と勝手に(主観的に)決めることはできません。 参加が義務づけられた朝礼は労働時間 質問のケースでは、仮に、朝礼に参加しなくてもよく、参加が完全に自由であれば、「使用者の指揮命令下」にあるとはいえないでしょう。 しかし、参加が義務づけられていたり、参加をしなければ上司から注意を受けたり、処分を受けたりするといった不利益がある場合には、「使用者の指揮命令下」にあるといえ、朝礼に参加している時間は労働時間になります。 私の事業所では、昼の12時から13時までを休憩時間としています。ただし、休憩時間中に利用者様から電話がかかってくることがあるため、その電話には出られるよう、スタッフに交代で電話当番をしてもらっています。先日、あるスタッフから「電話に出なくてはいけないなら、休憩時間といえないのではないか?」と言われました。電話がかかってくることは多くないので、それほど負担になっていないと思うのですが、これは休憩時間とはいえないのでしょうか?休憩時間とはいえず、法定労働時間になります。 必要な休憩時間を正確に把握しましょう 使用者(事業所)は、一定の休憩時間を労働者に与えることが法律で義務づけられています(労働基準法34条1項)。具体的には、図1に示すように、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、また8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩時間が必要とされています。ポイントは、「超える」という言葉の意味です。労働時間が8時間ぴったりちょうどの場合は、8時間を「超え」ていませんので、「8時間以内」として45分の休憩を与えればよいということになります。なお、この休憩時間は分割して与えてもよく、例えば1時間の休憩を30分×2回とすることも可能です。 図1 労働基準法上の休憩時間のルール ポイントは、休憩時間は「労働から解放されていなければならない」ということです。法律でも、労働者は、休憩時間を自由に利用できると定められています(労働基準法34条3項)。 休憩中の電話当番は労働時間 ここで質問のケースを振り返ってみましょう。この事業所では、休憩時間中に利用者様から電話があった場合は、当番制でその電話に出てもらうようにしているとのことですが、これはスタッフの立場からすると「電話にすぐに気づけるように、音楽を聞くのはやめておこう」「昼休みの外出はできないな……」というように、休憩時間を自由に利用できなくなってしまいます。そのため、労働から完全に解放されているとはいえず、結果的に電話当番をしている間も労働時間となっています。これは、仮に1本も電話がなかったとしても同じです。 休憩はみんなで一斉にとるの? この事業所の場合、12時から13時まで電話当番をしてもらうスタッフには、この時間帯とは別に休憩時間をとってもらうようにするとよいでしょう。 なお、法律では、休憩は全スタッフに一斉に与えることが原則とされていますが(労働基準法34条2項)、看護事業に関しては、例外的にそのような原則は適用されないこととされています(労働基準法施行規則31条)。そのため、訪問看護の事業所においては、休憩は皆バラバラにとってもよいことになっています。 看護事業に関しては特別な取り扱いが認められていますので、チェックしておきましょう。 上司から指示されているわけではないのですが、業務量が多いため、仕事を自宅に持ち帰ってやらざるを得ません。深夜に上司に対してメールで成果物を提出したりしています。この場合、割増賃金は何ももらえないのでしょうか。事業所が、自宅に持ち帰って仕事をしていることを黙認している場合、労働時間とされ、割増賃金の支払いが必要になることがあります。 使用者の指揮命令下であれば残業代は必要 これまで説明してきたように、労働時間にあたるかどうかは、「使用者の指揮命令下」にあるか否かによって決まります。仕事をする場所が、職場でないといけないという決まりはありません。 上司が、自宅で作業することを指示した場合、それは強制にあたり、仕事をしている時間は労働時間になります。 黙認された持ち帰り残業は労働時間にあたる場合も では、上司からの明確な指示がない場合はどうでしょう。 質問のようなケースでは、上司は、深夜にメールで提出された成果物を受け取っているのですから、スタッフが深夜まで作業をしていることを認識できているといえます。にもかかわらず、深夜の作業は止めるように指導せず、成果物を利用しているならば、結局、その上司は、スタッフが自宅で作業していることを黙認しているといえるでしょう。そのような場合は、作業をしていた時間は労働時間にあたるとされることがあります。そのため、事業所としては、①自宅での持ち帰り残業は「許可制」とし、②仮にスタッフが自宅での持ち帰り残業を事業所の許可なく行っていることがわかった場合は、それを黙認するのではなく、注意して止めさせるべきでしょう。また、スタッフ一人ひとりの業務量を見直すなど、職場環境の整備も必要といえます。 ** 前田 哲兵 弁護士(前田・鵜之沢法律事務所) ●プロフィール医療・介護分野の案件を多く手掛け、『業種別ビジネス契約書作成マニュアル』(共著)で、医療・ヘルスケア・介護分野を担当。現在、認定看護師教育課程(医療倫理)・認定看護管理者教育課程(人事労務管理)講師、朝日新聞「論座」執筆担当、板橋区いじめ問題専門委員会委員、登録政治資金監査人、日本プロ野球選手会公認選手代理人などを務める。 記事編集:株式会社照林社

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2021年10月12日
2021年10月12日

第4回 残業・休憩・休日編/[その1]この違いわかりますか? 割増賃金が発生する残業、しない残業

労働時間の管理は、労務管理の『基本中の基本』です。何が労働時間にあたるのかをきちんと理解していないと、法律で定められた残業代(時間外割増賃金)を適切に支払うことはできません。残業代の未払いに気づかず、ある日突然、スタッフからまとめて請求される……というケースも少なくありません。こうしたトラブルを未然に防ぐためにも、法的に正しい知識を身につけ、日頃からきちんと労働時間を管理しましょう。 私の事業所では、就業時間は9時~17時まで(うち1時間休憩あり)と決まっています。忙しい日にスタッフに18時まで1時間の残業をしてもらった場合、その分の割増賃金を支払う必要はありますか?この場合は法内残業にあたりますので、労働基準法が求める割増賃金の支払いは不要です。  労働時間には「所定」と「法定」がある 労働時間には「所定労働時間」と「法定労働時間」があります。まずはこの違いをしっかりと押さえることが管理におけるポイントです。 まず、「所定労働時間」とは、就業規則や雇用契約書の中で定められた労働時間のことで、始業から終業までの合計時間から休憩時間を差し引いた時間をいいます。所定労働時間は、企業や労働者ごとに自由に決めることができるので、労働契約の内容によってさまざまです。例えば、「9時~18時」と定めているところもあれば、「10時~17時」と定めているところもあるでしょうし、パートについては「13時~17時」としているところもあるでしょう。 対して、「法定労働時間」とは、その名のとおり「法律で定められた=法定」、つまり労働基準法32条で定められた労働時間をいいます。同法で、使用者は、労働者を1日あたり8時間、1週間あたり40時間を超えて働かせてはいけないことになっています。 これを超えて働かせるには、①36協定(※)を締結し、かつ、②労働基準法で定められた割増賃金(時間外労働は原則25%増)を支払う必要があります。 割増賃金の支払いが必要なのは法定外残業 この質問のケースでは、就業時間が「9時~17時、うち1時間休憩あり」なので、所定労働時間は、始業から終業までの8時間から休憩時間の1時間を差し引いた7時間です。 ですので、17時から18時まで1時間の残業を行っても、法定労働時間の「1日8時間」という上限を超えないため、割増賃金を支払う必要がありません。このように、残業はしているけれども法定労働時間内に収まっている残業を「法内残業」といいます。なお、賃金規程などで「法内残業についても割増賃金を支払う」と定めることは自由ですが、定めた場合は、当然その支払いをしなければいけません。 では、19時まで2時間の残業を行った場合はどうでしょうか。この場合、17時から18時までの1時間は法内残業ですが、18時から19時までの1時間は、1日8時間の上限を超えています。このように、法定労働時間を超える残業を「法定外残業」といいます。法定外残業に対しては、労働基準法で定められた25%増の割増賃金を支払う必要があります。 ここまでの内容を図1にまとめましたので、ご参照ください。 図1 所定労働時間7時間の場合の割増賃金 ※36(さぶろく)協定:労働基準法36条(時間外及び休日の労働)に基づく労使協定のこと。使用者が法定労働時間の上限を超えて労働させる場合に必要となる。 ある日、利用者様の体調変化が重なり、とても忙しい日がありました。スタッフのAさんは、午前9時から始業し、昼に休憩を1時間とりましたが、その後、午後11時まで働きました。この場合、13時間労働ということになりますが、割増賃金は1日8時間を超えた分に対して25%増で支払えばよいのですよね?いいえ。午後6時から午後10時までは25%増ですが、午後10時から午後11時までは深夜割増賃金が加算されますので、50%増で支払う必要があります。 割増賃金の3つの種類 割増賃金のしくみをきちんと押さえておきましょう。まず、割増賃金には、①時間外割増(1日8時間、1週間40時間超えの労働)、②休日割増(法定休日における労働)、③深夜割増(午後10時から午前5時までの労働)の3種類があります。それぞれの割増率は図2に示したとおりです。 図2 時間外労働、休日労働、深夜労働の割増率 時間外労働が1か月60時間を超える場合は、時間外割増は50%増となることに注意(ただし、中小企業は2023年4月1日以降から適応) 深夜労働が重なると割増賃金は50%増に 注意しなければいけないこととして、深夜労働の割増賃金は、時間外労働と休日労働の割増賃金に『加算される』ということです。下の図3をご覧ください。 図3 深夜労働と重なった場合 深夜労働をするという時点で、すでに1日8時間の法定労働時間は超過していることが多いですから、深夜に行われた作業に対しては50%増(25%+25%)の割増賃金を支払うことがしばしばあります。事業所としては、スタッフの健康のためのみならず、人件費抑制の観点からも、深夜の作業は可能な限り控えてもらうように指導したほうがよいでしょう。 なお、労働時間の管理については、厚生労働省が出している「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン 」が参考になります。厚生労働省のホームページから誰でもアクセスすることができますので、ぜひ、ご参照ください。 ** 前田 哲兵 弁護士(前田・鵜之沢法律事務所) ●プロフィール医療・介護分野の案件を多く手掛け、『業種別ビジネス契約書作成マニュアル』(共著)で、医療・ヘルスケア・介護分野を担当。現在、認定看護師教育課程(医療倫理)・認定看護管理者教育課程(人事労務管理)講師、朝日新聞「論座」執筆担当、板橋区いじめ問題専門委員会委員、登録政治資金監査人、日本プロ野球選手会公認選手代理人などを務める。 記事編集:株式会社照林社

インタビュー
2021年10月5日
2021年10月5日

コロナ禍に行ったアンケート調査にみる 不安を克服し前に進もうとする姿に誇り

公益財団法人日本訪問看護財団常任理事の佐藤美穂子さんインタビュー、後編は日本訪問看護財団が昨年から今年にかけて4回にわたり行ったアンケート調査から見えてきたものを中心に語っていただきました。コロナに翻弄される訪問看護師の不安と、その先にある光明とは。 コロナで明らかになった 日本人のヘルスリテラシー コロナ禍の中で1年半経って私が感じたのは、日本は諸外国に比べ、ヘルスリテラシーがしっかりしていると思っていましたが、実はそうでもなかったということです。「マスク着用」「手指消毒」といえば、みんな従うところは徹底しているなあと感心します。しかし、緊急事態宣言も度重なり、その効果はしだいに薄れてしまっています。 またコロナ禍で医療従事者にスポットが当てられ、報道番組などで多くのドキュメンタリーも作られましたが、メディアは「医療崩壊」などセンセーショナルな話題を取り上げる傾向にあります。現実には、感染病棟の看護師は、着脱に時間がかかる個人防護具のフル装備で、トイレを長時間我慢し、食事もままならないという現状がありました。医師は定期的に見回りに来ますが、人工呼吸器も経管栄養も、実際にベッドサイドでマネジメントしているのは看護師です。これらの行為は看護師の特定行為研修制度にもつながるのですが、そういう看護師の総合的な力量 —— 対応力、技術力、指揮力をこそ、メディアにもっと取り上げてほしかったですね。 看護師のメンタルヘルスを良好に保つためには 昨年から今年にかけて財団が4回実施しているアンケート調査からみえてきたのは、コロナ禍で働く訪問看護師のメンタルヘルスの不安定さが、完全に解消できていないことです。看護師は医療者として最前線に立ち、猛烈な感染力がある未知のウイルスに対峙しなければなりません。訪問先や、移動中に、万が一にも感染したらどうしようという恐怖心はどれだけのものだったでしょう。また、個人防護具が足りなくなることへの不安、本人たちの気分の落ち込み、疲労感、イライラ、孤立感を募らせた看護師が多かったことが、アンケートからうかがえました。利用者の命も、自分の家族の安全も守らなくてはならない緊張感に押しつぶされ、休職・退職していった看護師もいました。家族から「そういう(リスクの多い)仕事は休んだら」と言われ、身近な人から仕事に対する理解を得られなかったことで落ち込んだという人もいました。 一方で、不安でメンタルが低下したスタッフに対して、「このままではいけない」と別のスタッフが奮起してカバーしあっていることもアンケートからみえてきました。たとえば、ふだん控えめなスタッフが「とにかく感染に気を付けてこの危機を乗り越えよう」と発言したり、ウイルスについてもっと医学的・科学的・客観的に学ぼうという姿勢がみえたりしていました。なるべく接触時間を短くする分、ICTを活用して利用者の体調管理や健康相談を行っているステーションもありました。管理者はそういう姿を頼もしく感じ、スタッフに、いっそう感謝の気持ちを持ったといいます。 パンデミック下での訪問看護 管理者が行うべきこと 管理者ならではの悩みもあります。万が一スタッフが濃厚接触者や感染者になってしまうと事業所が回らなくなるので、とにかくみんなが安心して働けるよう、「スタッフの命は必ず守るし、健康な暮らしを第一に考えて行動しますから、皆さん安心して」など、管理者からのメッセージを丁寧に伝えて安心してもらっている様子もうかがえました。もちろんその裏付けとして、感染に対する正確な知識をみんなで共有する、個人防護具を全員が十分に使えるように整備するなどを、怠りなくやらなくてはなりません。 感染者に対する差別などが起こっている場合、スタッフの精神的な負担を管理者がフォローすることも大切なことです。濃厚接触者になって10~14日間仕事ができなくなったスタッフが職場復帰したときには温かく迎える。そして当事者の体験をしっかり共有して、根拠に基づく感染防護をさらに徹底する。そんなフォローも管理者には必要です。 訪問看護サミット2021で多くの仲間と会える日まで 感染症は、いつかは必ず治まります。来年あたりは、ポストコロナという新たな状況を描かないといけないでしょう。そして10年後くらいに、また新たなウイルスが出てくるかもしれません。今回、このような世界的なパンデミックをみんなが経験したのですから、これを契機に私たち訪問看護師には地域でどんな役割があって、どういうことをすればいいのか、地域とのつながりを強めるためにも、しっかり業務継続計画(BCP)を作成していただければと思います。 なお、これからも人材確保がままならない状況は増えてきます。みんなで集まることができない今、ICTを活用するなどして、屋根の下の連携ではなく大空の下での地域との連携をより強めていく必要があります。管理者層は、苦手意識を克服するためにも、ICTに強いスタッフの経験を共有し、若いジェネレーションとうまくやっていってほしいですね。 また、日本訪問看護財団の個人防護具無料提供は現在も続けています(2021年9月28日時点)。感染者対応に限定しているわけでもなく、フル装備でなくてもいいですし、ヘルパーさんにも使っていただけます。財団ウェブサイトより申し込みいただけますので、ご利用ください。◎日本訪問看護財団『感染防護具支援プロジェクト』https://www.jvnf.or.jp/covid-19_project2020.html また、11月6日には訪問看護サミット2021を開催します。テーマは「どんな時も共にある訪問看護をめざして、ポストコロナの最善のシナリオを描こう」です。ライブ配信を行いますので、ぜひご参加ください。 ◎訪問看護サミット2021の詳細はこちら↓https://www.jvnf.or.jp/summit2021/index.html ** 佐藤美穂子公益財団法人日本訪問看護財団常務理事 記事編集:メディカ出版

コラム
2021年10月5日
2021年10月5日

訪問看護の社長業~創業経営者 水谷氏から学んだこと 内部体制に関する方針 パート3~

第11回は、いよいよ「内部体制に関する方針」のパート3です。パート1の冒頭に紹介したとおり「成果はすべてお客様から得られます。会社の内部は全て費用でしかありません。赤字会社の社長は、いつでも内部管理に終始しますが、本末転倒です。」というのが基本姿勢ですが、とはいえ、そこで働くスタッフが基本方針を間違って解釈したり、方向性に迷ったりしないようきちんと明示しておくことは大切です。今回は、その中であえて1項目を抜き出して説明します。 会議に関する方針 以下、事業所専門職スタッフ全員参加のミーティングを想定しています。日常的に実施される専門職のケースカンファレンスだけではなく、事業所の運営をスムーズに行うための全体ミーティングを月に1回は実施すべきと水谷氏は勧めます。各事業所が自走経営するための会議、といったところでしょうか。ただ訪問すればいいだけ、という意識で仕事をするのではなく、労働生産性を意識して高め合うためにも、このような会議を定期実施してはいかがでしょうか。 ①情報交換と意思統一、計画・実績確認を重視します。 ②会議の目的とは? 以下の項目について情報共有と対策検討をします。 ・お客様サービス・ご要望・クレーム対応 ・ご紹介先、関係機関との情報疎通・増客 ・人員・設備の過不足、スタッフ空き情報、請求回収について ・教育・研修計画/実施、地域集会参加促進 ・制度変更や実地指導の確認 ③会議開始にあたり、前回決定事項の確認をする。終了時には、当日決定事項の確認をする。 ④お客様が主体ということを念頭におく。 ⑤機微、場の空気を読むこと。話が飛んだり、すり替わったりすると時間を無駄にし、全員の神経を疲労させます。 ⑥先行き対策に知恵を出すことが優先です。誹謗・中傷の場ではありません。 ⑦決まった時間内で終了するのがベストです。会議前には、話す要点を整理してくると運営がスムーズです。 ⑧アジェンダ(議題)と議事録は必須です。レジメは開始数日前、議事録は翌日が基本です。担当を決めて習慣にしてください。 上記、②は運営・経営に直結する内容。それ以外は、会議への臨み方です。各社多少のアレンジはあると思いますが、スタッフが慣れないうちは、社長や本部スタッフなどがファシリテートして会議を進行してください。大事なのは、現場で起きていること(特に悪い事)がきちんと社長へ上がることです。どこかでクレームが隠蔽されたり、ご要望に対して何かにつけボトルネックがあったりすると、正常な経営ができません。現場で起きていることが正しく社長・本部へ伝わり、逆に会社の経営方針や意思を現場に浸透させるには、膝をつめて話し合いを重ねるしかありません。ある程度の緊張感をもった「会議」を実施することで、なあなあ体質にならない集団ができることと思います。 さて、「水谷氏から学んだこと」も佳境に入って参りました。次回は「評価についての方針」についてお話しします。ご期待ください。 ** 一般社団法人訪問看護エデュケーションパーラー理事長  上原良夫 【略歴】2012年ソフィアメディ(株)入社。訪問看護事業の営業開発課長・教育研修事業部長・介護事業統括部長・医療連携推進室長を経て、(株)CUCの支援医療法人の訪問診療事務長、在宅事業企画担当。2020年7月より一般社団法人訪問看護エデュケーションパーラー理事長に就任。訪問看護事業の教育研修企画・ 各種 コンサルティング、業務委託においてアームエイブル(株)ゼネラルマネージャー兼務

特集
2021年10月5日
2021年10月5日

第3回 計画的な人材採用と育成/[その4]「目標管理」で“強いステーション”づくりを!

連載:働きやすい訪問看護ステーションにするための労務管理ABC 連載第3回目では[その1]~[その4]にわたり訪問看護ステーションにおける人材採用と育成について解説していきます。今回のテーマは“目標管理”です。ここでいう目標は事業所の理念や基本方針につながるものであり、利用者へのケアをとおして、その実現に貢献できる目標である必要があります。目標管理の重要性を職場にしっかりと周知し、理解を浸透させましょう。 ●ここがポイント!・目標管理とは、職員一人ひとりが目標を設定し、自らを管理することである。・目標設定では、個人と組織のベクトルを合わせることが大切である。・目標管理を形骸化させずより高い成果を得るために目標達成を支援するコーチの存在が必要不可欠である。 目標管理とは 目標管理とは、経営学者ピーター・F・ドラッカーによって提唱されたマネジメント手法です。ドラッカーの著書『現代の経営』の中で目標管理は次のように記載されています。 「今日必要とされているものは、一人ひとりの人の強みと責任を最大限に発揮させ、彼らのビジョンと行動に共通の方向性を与え、チームワークを発揮させるためのマネジメントの原理、すなわち一人ひとりの目標と全体の利益を調和させるためのマネジメントの原理である。これらのことを可能にする唯一のものが、自己管理による目標管理である。自己管理による目標管理だけが、全体の利益を一人ひとりの目標にすることができる。」(P.F.ドラッカー著,上田惇生訳 『現代の経営【上】』ダイヤモンド社,2015,p.187.より引用) 目標管理とは、職員一人ひとりが目標を設定し、自らを管理すること、つまり、目標による管理のことです。 目標管理は「Management by Objectives and Self-Control」と表記します。目標管理を構成する3つのキーワード、「マネジメント」、「オブジェクティブズ」、「セルフ・コントロール」について順に説明していきます。 マネジメント(management)とは 直訳すると「管理」、「経営」ですが、managementの動詞形manageの原義には「馬を手で扱う」という意味があり、そこから転じて「(扱いにくい人や事柄などを)うまく取り扱う」、また「なんとかやり遂げる」という意味があります。ここではマネジメントを英語の訳に即して「工夫や苦労を重ねてやり遂げること」と考えます。 オブシェクティブズ(objectives)とは 複数のストレッチ目標を意味します。ストレッチ目標とは、簡単に達成できる目標ではなく、背伸びをして手を伸ばさないと達成できないような目標のことをいいます。 セルフ・コントロール(self-control)とは 自分自身で目的を定め、計画を立て、意欲的、かつ主体的な行動をとれることをいいます。 目標管理のねらいと効果 目標管理のねらいは、主体的に考えて活動する人材を育成することにあります。 職員自らがストレッチ目標を設定し、目標達成に向けて創意工夫して取り組むことで、自分で考え行動し、壁を乗り切る力が身につきます。何か問題が生じたときにも、常に当事者意識をもって対処できるようになります。 また目標が達成されることで、自信が育まれ、レジリエンス(さまざまな困難な環境や状況に対しても適応し生き延びる能力)が鍛えられます。 目標設定のポイント 目標設定では、個人と組織のベクトルを合わせることが大切です。職員一人ひとりの目標が事業所のめざす最終目標(理念や基本方針)につながることで、事業所全体の利益が調和された状態になり、組織全体のパフォーマンスが向上します。 そして、目標は具体的に設定します。ここでは「グタイテキ」の頭文字に沿って、設定のポイントをご紹介します。 グ:具体的言った人のイメージと受け取った人のイメージが一致する。行動レベルの言葉にする。タ:達成可能ストレッチ目標を設定する。イ:意欲的達成することで自分自身、または周囲にどんな価値やメリット、意味があるのか考える。テ:定量化・数値化例えば、よく使われる「~に貢献する」「~をバックアップする」「~を推進する」「スムーズに~する」「迅速に~する」は具体的ではないため目標設定では不適切。キ:期限を定める 「いつまでに」達成するのかを明確にする。 目標管理の形骸化を防ぐコツ 目標管理を1人で行い続けるのは大変なことです。忙しさのなかで怠けてしまったり、中身が追いつかず形式的なものに陥ってしまったりしがちです。この形骸化を防ぐコツは成果を出して、成功体験を積み上げていくことです。 そして、成果を出すためには目標達成を支援するコーチの存在が不可欠です。コーチがいることで、達成に至るまでの時期が短縮され、成果のレベルが格段に上がります。コーチ役は上司が担うとよいでしょう。信頼関係が深まりチームワークが強化されます。 コーチに期待される役割には以下のようなものがあります。・新しい気づきをもたらす・視点を増やす・考え方や行動の選択肢を増やす・目標達成に必要な行動を促す基本的にコーチは一方的に指導したり、アドバイスを与えたりすることはしません。対話をとおして問いかけ、相手からさまざまな考え方や行動の選択肢を引き出します。この技法を「コーチング」といいます。 コーチ自身も目標管理を支援する能力が必要となりますので、部下の可能性を最大限引き出せるようなコーチングスキルを身につけましょう。 ** 齋藤 暁株式会社ムトウ コンサルティング統括部 部長中小企業診断士・社会保険労務士・医業経営・医療労務コンサルタント 医業経営・医療労務専門コンサルタント。全国の医療機関を対象に、中小企業診断士と社会保険労務士のW資格で経営と労務の両面をサポート。 ▼株式会社ムトウ コンサルティング統括部https://www.wism-mutoh.jp/business/consulting/ 編集協力:株式会社照林社 【引用文献】 P.F.ドラッカー著,上田惇生訳(2015)『現代の経営【上】』ダイヤモンド社

インタビュー
2021年9月28日
2021年9月28日

医療や介護を直撃した新型コロナウイルスが 訪問看護ステーションにもたらしたもの

トップランナーから現場へのエール 日本訪問看護財団は、現場の声を国や関係機関にあげ、職場環境改善や研修事業を行う訪問看護ステーションの職能団体の一つです。常務理事を務める佐藤美穂子さんに、新型コロナウイルス蔓延で訪問看護ステーションが受けた打撃について語っていただきました。 電話相談から見えてきた 感染対策、防護具不足、経営危機…… 新型コロナウイルスのパンデミック発生から1年以上が経過しました。この未知のウイルスは、訪問看護ステーションの運営をも直撃しました。私たち日本訪問看護財団は、情報発信と相談支援、国や関係省庁に要望を届けるための実態把握を、常日頃から行っています。コロナ禍においては、特に感染予防などに特化した形で数多く発信してきました。 情報発信としては、財団ウェブサイトに、感染症に関する特設ページを設けました。第一報は2020年3月6日で、平時の感染管理、利用者やスタッフの感染・感染疑い時の対応などを、細かく伝えました。この時の発信は、業務継続計画(BCP)としての側面に近い内容でした。 そのころすでに、外部者だからとの理由で、看護師の訪問が断られる事例が約15%発生していました。そこで、「訪問看護を利用する皆様へ」という利用者へのチラシのひな型を作成し、必要に応じて使っていただくようにしました。チラシには「訪問看護ステーションは感染管理を徹底しているので、部外者であっても安心です」といった内容をつづっています。 ウェブサイト上で無料電話相談の告知も行ったところ、新型コロナに関して300件を超える相談がありました。第1波が来たころは、感染対策をどうするかという相談が多かったのですが、すぐにマスクやフェイスシールドが手に入らないという相談が増えました。第3波が到来した2020年末~21年1月ごろは、変異株についての問い合わせが増えました。 管理者のこうした相談に丁寧に対応する一方で、新型コロナに関する緊急ウェブアンケート調査も4回実施しました。その内容は整理し、国へ提出しています。コロナ禍での混乱や管理者の不安が少しでも軽減されるよう、私たちも常に情報を発信しつづけ、かかり増し経費に対する交付金や、職員への慰労金についてもお知らせしました。 感染防護具や優先接種を国へ直接要望 財団が行った活動のなかで特に重要だったのは、先のアンケートの件もそうですが、厚労省や政府へ直接要望を伝えたことです。個人防護具の確保についても然りです。これは大変と思ったのが、訪問看護師はワクチンの医療従事者優先接種から外れていたことでした。最前線で活動している医療従事者であるにもかかわらずです。2021年1月15日にその事実を知り、すぐに、日本看護協会と全国訪問看護事業協会との連携で、田村厚生労働大臣に直接訴えました。そして、その月末には優先接種リストに訪問看護師を入れていただきました。 感染を防ぐために必須の個人防護具を訪問看護ステーションに届けることも、財団の急務でした。幸いにも、日本財団とネットライフ生命株式会社から7000万円の寄付をいただき、まずは4000箱(訪問看護ステーションや訪問介護事業所などが1週間使える程度の個人防護具のセット)を確保し、全国に無償で配送できるようにしました。これは現在でも続けているプロジェクトで、ぜひご利用いただきたいと思っています。 一時的な経営危機も 秋以降は利用者増へ コロナ禍では訪問看護ステーションも利用控えなどがあり、2020年4~6月は前年度に比べて1割程度収益が減少しているステーションが6割近くありました。ところが9月の段階では経営危機を乗り越えプラスに転じるステーションも多くなりました。 これには二つの理由があると思います。訪問看護ステーションは医療従事者が対応しているので、安心して利用できることを広く利用者に理解していただけたことが一つ。もう一つは、病院に入院していると面会制限で家族とも自由に会えないため、それなら家に帰って療養したいという人が増えたことです。 利用者が増えれば経営的には安定しますが、感染防護具の支出が増えて大変だという訴えもありました。医療保険では特別管理加算で算定できますが、介護保険では算定できません。そのため、2020年の第二次補正予算で、新型コロナウイルス感染症対策費としてかかり増し経費補助金が計上されました。介護保険事業者は、感染対策や人材確保によけいにかかった費用に対して、助成を受けることができるようになりました。2021年度は「サービス提供体制確保事業補助金」で、同様の助成金が受けられます。 このように財団は、訪問看護ステーションの生の声を国に届け、改善を訴えてきました。しかし新型コロナウイルス感染拡大は、平時の事業運営を根本から揺るがすものでした。それは、財団が4回にわたって行ったアンケート調査から明らかになりました。(後編へ続く) ** 佐藤美穂子公益財団法人日本訪問看護財団常務理事 記事編集:株式会社メディカ出版

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