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2021年11月30日
2021年11月30日

【セミナーレポート】看取りの作法 Q&A≪特別先行公開≫

本記事は2021年11月12日に開催したオンラインセミナー「看取りの作法」のレポート≪特別先行公開≫です。 当日は、家庭医療専門医である、杉並PARK在宅クリニック院長の田中公孝先生にご講演いただき、セミナー中にたくさんのご質問をいただきました。今回は先生のご厚意で、時間内に答えきれなかったご質問からいくつか抜粋し、解説いただきました。 在宅医として看取りに向き合う心構えや、訪問看護師さんへの期待について、先生のお考えを記事にいたしましたので、セミナーに参加された方も参加出来なかった方も是非ご覧ください。 老衰の看取りのケース 老衰の看取りの場合、ゆっくり機能が低下していく経過となりますが、ご本人やご家族に、どのようにお話されますか? ご質問ありがとうございます。老衰については、癌末期と違って予後予測が延びたりすることはお話ししています。また、老衰でご本人に説明するというシーンはあまり無いのですが、もしご本人に聞かれたら「もう〇〇歳ですからね、病気も沢山ありますし、年齢による影響は否めないと思います」とやんわり伝えるイメージです。ご家族については、老衰の看取りを自宅で行う決意をされたことを支持することをお伝えし、「病院よりも自然な形で過ごせますしね」や「癌で痛みがある例などに比べると穏やかで寝ているような時間が増えますよ」と声掛けします。また、食事が摂れなくなってきても無理に口には入れず、お楽しみ程度に、数口試して難しければやめるという助言をします。途中、せん妄状態になる方がいることもお話することで、手足をバタバタする、などの状況を理解してもらうように早め早めに説明します。最後の1週間は、講義でもお話した看取りのパンフレットを説明してお渡しし、それに沿って経過が流れることを確認しながら往診します。老衰の看取りはしっかりとサポートするとご家族も満足度が高い印象です。ただ、食事水分がほとんどとれない高齢者が予後予測よりも1週間以上延びたことが経験上あるので、癌末期の事例よりも非癌の事例の方が難しい面があると以前在宅のエキスパートナースの方がおっしゃっていた話は、実感するところです。 ガン末期の方のお看取りの心構え 今まさに、亡くなりそうなガン末期の利用者様がおられます。呼吸が止まれば連絡をいただくようになっています。私自身とても緊張しています。心構えをお教えください。 私も経験がありますので、よくわかります。心構えとしては、呼吸が止まった時の連絡をいただいたとき、どういう声かけや対応するか、死後の対応や説明をどうするか、を想定して詰めておくと少しは不安が和らぐ印象です。 例えば、ご家族の安心と不安の違いを過去に分析して感じたことなのですが、「人間、漠然としたものをそのままにしていると不安が募る」ようです。なので、専門職でも後のことについて漠然としていると不安が募りやすい側面はあると思いますので、この後のことをしっかり具体的に想定しておくことが大事と思います。また、定期の訪問時によくご家族とコミュニケーションをとっておくことも夜間電話がかかってくるかどうかの際の不安軽減につながります。というのも電話しながら、ご家族の表情や感じが目に浮かぶようになれば、呼吸停止の電話でも面と向かって喋っているような感覚で落ち着いて対応できるのではないかなと思います。 普段のケアのコミュニケーションが、いざというときの助けになる、というところは、看取り直前だけではなく、急変の場面でもそうだと思いますので、我々訪問の専門職は日ごろからぜひ意識したいところです。 誤嚥性肺炎を繰り返す方の往診医との連携について 訪問看護師です。現在、誤嚥性肺炎を繰り返している利用者さんがいます。本人は自宅を希望しており、家族も本人の意向を尊重したいと思われています。ただ、妻が食事形態を理解できず普通食を提供することが続いています。自宅看取りの方向ですすんでいますが、往診医はリスク説明をして、何かあれば救急搬送するしかないと言われています。本人家族の意向を叶えつつ、往診医との連携をうまくとっていくのをどうすれば良いか悩んでいます。 それは難しい状況ですね。。往診医との連携についてですが、まずは往診医以外の他職種と相談して、根回しをしながら担当者会議を開くのが良い気がします。本人家族はもちろんのこと、他の職種がリスクを承知でも自宅看取りを支えたいと思っていることを皆で伝えれば、理解を示してもらえる可能性が出てくるやもしれません。 他の手段としては、往診クリニックのスタッフさん(看護師さん、相談員さんなど)で普段からコミュニケーションとっている方がいたら、まずはその方に相談するというのも1つです。もしかしたら伝え方のヒントや一緒に考えてくれるやもしれません。参考にしてみてください。 家族間の看取りの調整 家族での看取りの方法が一致しない場合、どの様に対応したらよいですか? これも難しい場面ですね。。私であれば、まずは家族全員の意見を聞き、家族間の話し合いを促します。ただそれでも難しい場面もあると思いますので、自宅看取りの場面で想定されること、病院への救急搬送を言われる場面など、この後の様々なシチュエーションを想定しておいて、都度都度の対処に臨む心構えを私はしています。 また、意見がそれぞれ違うご家族と一度は直接面談することも重要です。やはりキーパーソンだけ喋っていて、方針の違うご家族と直接しゃべらないとあまりうまくいかない印象で、私も過去にどんでん返しを受けた事例がありました。できる限り意見の違う家族とも会い、この後予想されるシナリオをいくつか想定しながら、集まった情報をもとに多職種で話し合い、ともに考えるといったプロセスが大事かなと思います。 ちなみに多職種で話し合うと別の視点や情報、アイデアなども出てきますので、なかなか担当者会議となると家族もいて目の前ではできないという場合は、点数などは発生しませんが専門職だけで会議することをお勧めします。 特化型ステーションに在宅医が求めること 病院併設の訪問看護ステーションで働いています。緩和ケア病棟から異動になり、終末期に特化したステーションにしたいと思ってます。在宅医が求める訪問看護師について、何を求めるか、何が必要か、教えて頂きたいです。また、先生が考える特化したステーションとは具体的にどのようなステーションか知りたいです。 あと、在宅では介護者の高齢化や子の介入不足、地域性からか子に頼れない親も多く、介護負担で疲弊してしまうケースも少なくありません。初めての待機当番で夜中にオムツ交換で呼ばれ、翌日、主治医や病院側が訪問看護師の負担を考慮して即緩和ケア病棟に入院させたケースもありました。終末期のバルーンカテーテル留置は積極的に行ってよいのか迷います。 もっと在宅医とうまく連携して家族に寄り添ってできたらと日々葛藤です。本人ばかりに注目せず、もっと家族に寄り添い、グリーフケアにつながる看護ができたらと思いますが、なかなかチームでとなると難しいです。 ご質問ありがとうございます。私が看取りに特化した訪問ステーションと呼ぶ訪問看護は、 ・今回お話した看取りの作法ができている・困難だった事例も多く経験していて、イレギュラーな末期事例でも対応できる・麻薬や鎮静薬の提案タイミングが卓越している・グリーフケアの声かけが非常にうまい・家族の療養方針の迷いにしっかり対峙し、アドバイスができる・時には主治医の迷いに対してもしっかり応えられる・ケアマネジャー/サービス担当責任者に報告・連携・フォローしながら進められる あたりができているところだと思います。 私自身、看取りに卓越した訪問看護ステーションと組むと毎回こちらも勉強させられます。それくらい、人の看取りにまつわる技法というものは、医学の知識をしっかり蓄えながら、コミュニケーションの技術も向上させ、経験、心構え、ご自身のあり方を深めることが必要なのだと思います。おっしゃる通り、本人だけのケアでは在宅の看取りケアとしては片手落ちで、家族のケアをしながら、多職種で目線を合わせて迷いや葛藤が現れる過程をしっかりと取り組めるということが大事だと思います。 エピローグ オンラインセミナー「看取りの作法」にご参加いただきました皆さま、ご質問をいただいた皆さま、誠にありがとうございました。 田中公孝 先生のご講演内容やQ&Aセッションの様子を後日、セミナーレポートとして全2回でお送りします。明日からの訪問看護にいきる内容となっておりますので、ぜひご覧ください。 <セミナーレポート前編につづく> ** セミナー講師:田中 公孝 2009年滋賀医科大学医学部卒業。2015年家庭医療後期研修修了し、同年家庭医療専門医取得。2017年4月東京都三鷹市で訪問クリニックの立ち上げにかかわり、医療介護ICTの普及啓発をミッションとして、市や医師会のICT事業などにもかかわる。引き続き、その人らしく最期まで過ごせる在宅医療を目指しながらも、新しいコンセプトのクリニック事業の立ち上げを決意。2021年春 東京都杉並区西荻窪の地に「杉並PARK在宅クリニック」開業。 杉並PARK在宅クリニックホームページhttps://www.suginami-park.jp/ 記事編集:NsPace

特集
2021年12月7日
2021年12月7日

第6回 ハラスメント、育児・介護と仕事の両立支援編/[その1]スタッフをセクハラから守る! 事業所がとるべき10の対処

セクハラというと聞き慣れた言葉ですが、「具体的にどういった行為がセクハラになるの?」と聞かれると、正確に答えるのは案外難しいかと思います。 今回は、何がセクハラに当たるのかを解説し、さらに従業員がセクハラをしたり、利用者がセクハラをした場合、事業所としてどのように対応すべきかをご説明いたします。 若手の女性看護師から、「同僚の男性スタッフから、しつこく食事に誘われて困っています。どうしたらいいですか?」と相談されました。これはプライベートなことですし、恋愛事なので、事業所としては放っておいていいですよね? いいえ。セクハラになり得ますので、きちんと相談にのってあげる必要があります。 セクハラとは? セクハラの法的な定義は次のとおりです。 【男女雇用機会均等法11条1項】①職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、②又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること 少しややこしい言葉が並んでいますが、①の典型例は、上司が部下に性的な関係を要求したところ、部下がそれを「拒否」したため、上司が「逆恨み」して部下を降格するような場合です。一般に「対価型セクハラ」と呼ばれています。 対して②の典型例は、上司が部下の体を度々触るために、部下が苦痛に感じて仕事に行きたくなくなるような場合です。部下が「拒否」していなくても成立する点がポイントです。就業環境を害する点をとらえて「環境型セクハラ」と呼ばれています。 具体的に何がセクハラになるの? セクハラについては、厚生労働省が指針を出しています。 ただ、この指針では「事業所内にヌードポスターを掲示した」といったような極端な例しか挙げていません。そのため、「ここまでやらないとセクハラじゃないのか」といったふうに、セクハラを軽く考えてしまうおそれがあります。 そこで事業所としては、セクハラを撲滅するという観点から、国家公務員に適用される「人事院規則」を参考にするほうがよいでしょう。こちらのほうがセクハラをより厳しくみています。 【人事院規則でセクハラに当たるとされている例】・スリーサイズを聞くなど身体的特徴を話題にすること。・聞くに耐えない卑猥な冗談を交わすこと。・体調が悪そうな女性に「今日は生理日か」、「もう更年期か」などと言うこと。・「男のくせに根性がない」、「女には仕事を任せられない」、「女性は職場の花でありさえすればいい」などと発言すること。・「男の子、女の子」、「僕、坊や、お嬢さん」、「おじさん、おばさん」などと人格を認めないような呼び方をすること。・食事やデートにしつこく誘うこと。・女性であるというだけで職場でお茶くみ、掃除、私用等を強要すること。・カラオケでのデュエットを強要すること。人事院『人事院規則10―10(セクシュアル・ハラスメントの防止等)の運用について』の別紙第1から抜粋https://www.jinji.go.jp/kisoku/tsuuchi/10_nouritu/1032000_H10shokufuku442.html なお、セクハラは、上司・部下の関係になくても成立しますし、同性同士であっても成立します。例えば、「男性スタッフが、同期の男性スタッフに対して、卑猥な冗談を言う」といったこともセクハラになり得ます。 食事の誘いはセクハラ? ご質問のケースでは、人事院規則の「食事やデートにしつこく誘うこと」に該当する可能性があります。 ただし、食事やデートに誘うことがすべてセクハラになるということではありません。当然、相手が嫌がっていなければセクハラにはなりません。問題は「相手が嫌がっているかどうか」は主観的で、外部からわかりにくいということです。そこで、誘われた側が「あなたとは食事に行きません」ということを明確に伝えることが重要になります。 とはいえ、そういったことをはっきりといえないからこそ悩んでいるのでしょう。 そこで相談を受けた人が、本人に代わって、先方に対して「食事に何度も誘っているようだけど、本人が嫌がっているから今後はやめてあげて。この注意を受けてもまた誘うようだと、それはセクハラになるから、あなたに対して懲戒処分や配置転換を検討することになりますよ」などと伝えることになります。 事業所としてやるべき10のこと 先に紹介した厚生労働省の指針では、事業所は、スタッフをセクハラから守るために、次の10個の対処を行わないといけないとしています。 ①ハラスメントを許さず、②厳正に対処する旨を周知する。③相談窓口を設置して、④広く相談を受けつける。⑤相談があれば、事実関係を確認し、⑥被害者を支援し、⑦行為者に適切な措置を行う。⑧研修などを通じて再発防止に努める。⑨双方のプライバシーには配慮する。⑩相談したことをもって相談者を不利に扱わない。(詳細は以下のURLの3ページ目にある「4」以降を参照してください。厚生労働省『セクハラ防止指針』https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000605548.pdf) なお、この10個の対処は、パワー・ハラスメントとマタニティ・ハラスメントについてもほぼ同じ内容が求められています。よって、スタッフからの被害相談窓口は、「セクハラ相談窓口」「パワハラ相談窓口」「マタハラ相談窓口」といったふうに別々の窓口にするのではなく、「ハラスメント相談窓口」として1つにまとめておくべきです。被害者からすると、自分が受けた被害がどのハラスメントなのかよくわからないことがあるためです。 相談窓口としては、自らの事業所内や法人本部に設けることもありますが、それですと従業員が気を使って相談できないので、外部の弁護士事務所などに窓口を委託することもあります。法人内において「ハラスメント防止規程」を作ることも検討しましょう。 コラム 利用者からのセクハラにはどう対応する? 利用者(患者)からスタッフに対するセクハラも、厚生労働省の指針における「セクハラ」に含まれるとされています。よって事業所としては、スタッフからそういう相談を受けた場合は、上記の10個の対処を検討しなければなりません。 ここでは特に、「⑤相談があれば、事実関係を確認し、⑥被害者を支援し、⑦行為者に適切な措置を行う」という点が重要です。 ⑤まず、事業所として、相談者から話を聞き、さらに必要であれば利用者からも事情を聞きます。⑥その上でセクハラがあったと思われる場合は、相談者をその利用者の担当から外して、別の男性スタッフに担当させることが考えられます。⑦加えて、利用者に対して、事業所から「今後は、絶対にハラスメントをしないでください。今後も迷惑行為が続くようであれば、契約解除を検討せざる得なくなりますので、ご注意ください」といった内容の通知書を出して反省をうながすことを考えてもよいでしょう。 事業所としてハラスメントに対応することは、これからの時代、必須のことといえます。ぜひ、本稿を参考にして、明日からでも対応を実践してみてください。 ・スタッフをセクハラから守るため、厚生労働省の「セクハラ防止指針」を確認しましょう。・相談窓口は「ハラスメント相談窓口」とし、セクハラだけでなく、ハラスメント全般についての相談を受けられるようにしておきましょう。 ** 前田 哲兵 弁護士(前田・鵜之沢法律事務所) ●プロフィール医療・介護分野の案件を多く手掛け、『業種別ビジネス契約書作成マニュアル』(共著)で、医療・ヘルスケア・介護分野を担当。現在、認定看護師教育課程(医療倫理)・認定看護管理者教育課程(人事労務管理)講師、朝日新聞「論座」執筆担当、板橋区いじめ問題専門委員会委員、登録政治資金監査人、日本プロ野球選手会公認選手代理人などを務める。所属する法律事務所のホームページはこちらhttps://mulaw.jp/ 記事編集:株式会社照林社

特集
2021年12月7日
2021年12月7日

【座談会】訪問看護師の「寒さ対策」~冬の雨の日どうしてる?~

寒さ対策は必須だけれど、訪問先では上着を脱がないといけない……そんな悩ましい季節がやってきました。今回は東京で訪問看護師として活躍しているお二人に、『パーツ別』の寒さ対策を教えてもらいました。 ■座談会に参加してくれた看護師さんプロフィール 有希さん訪問看護歴5年目。自転車・バイク・公共機関を利用しての訪問経験あり。 香菜さん 訪問看護歴5年目。自転車での訪問経験あり。 冬は雪よりも雨がつらい! 移動時の防寒×室内の服装に悩みます 香菜:今年もやってきましたね、冬。このあと年末年始から2月くらいまではとくに覚悟が必要ですね。 有希:クリスマスを過ぎたあたりからグッと冷え込むよね。冬は雪の日より雨の日がツラくないですか? 香菜:雨で、さらに自転車移動やバイク移動だと、ほんとうに寒いですよね。しっかり防寒したいけど訪問先では上着は脱がないといけないから対策が難しいし。 有希:自転車やバイク移動でなおかつ雨に濡れると、濡れたところから北風が入ってきて、もう寒いというか痛い! ポイントは「なるべく軽く」「薄いものを少しずつ重ねる」こと 香菜:私は「なるべく軽くする」ことをモットーに、寒さ対策してます。もちろんあったかいことは重要なんだけど、洋服が重いとそれだけで体力を消耗してしまうから。いかに『軽さと暖かさを両立するか』を考えて着るものを選びますね。 有希:脱いだり着たりしないといけないから「薄いものを少しずつ重ねる」のも重要ですよね。私は薄いものから暖かいものの順に、十二単を着るみたいに重ねて行きます。少し話が脱線しますけど、十二単は実は防寒具だった説があるって聞いたことがあって、なるほど! って思いました(笑) 上半身の寒さ対策は? 有希:①長袖の発熱性保温肌着+②スクラブ(半袖)+③カーディガン+④ボアフリース素材のジャケット+⑤防風・防水アウターを重ねます。雨でなおかつ自転車移動の日に活躍するのは、防水のポンチョ! フード部分に雨除けのツバがついていて、丈が長くなっている前面を自転車のカゴにかぶせられる「ママチャリ用のポンチョ」を愛用してます。 香菜:私も発熱性保湿肌着は欠かせないです。気温によって厚みも調整して。①長袖の発熱性保温肌着+②スクラブ(半袖)+③ボアフリース素材のジャケット+④薄手の防水・撥水・防寒のフード付きアウター、というのが基本スタイル。雨の日はカッパを重ねます。 有希:やっぱりそういうスタイルになりますよね。 香菜:なりますね。いろいろ試した結果、『安いものよりちょっといいもの』を選ぶようになりました。ワンコインで買ったカッパが水も風も通すのを経験したから(泣) 有希:それはツライ(泣) 日本発のファストファッションブランドとか、最近オシャレな洋服が増えてるワーキングウエアブランドとか、強い味方ですよね。 香菜:あと、アウトドアブランドにもお世話になってます。 手首&手の寒さ対策は? 有希:発熱性保温肌着の袖を手の甲まで引っ張り出して、その上からバイク用の冬用手袋を着けてます。風が入らないようにしっかりカバーするのがコダワリです。 香菜:私はスキー用の手袋を愛用してます! 有希さんとは重ね方が逆で、手袋を着けた上から上着の袖で覆って、さらに上着の袖を絞って風が入るのを防ぐんです。 有希:バイク用の手袋もスキー用の手袋も、手を動かしにくいのが悩ましいですよね。 香菜:着けないわけにもいかないし、ほんと悩ましい。 首&頭部の寒さ対策は? 有希:愛用してるのは、マイクロファイバー素材のネックウォーマー。ワイヤーが入っていて、目の下から首まで全部覆えるデザインのものがお気に入りです。頭はニット帽で守ってます。 香菜:私はマフラー+ニット帽です。もこもこのボアがついてるマフラーで耳や鼻まで覆って、首はフード付きアウターでカバー。以前はイヤーマフを使ってたんですけど、周囲の音に気づけなかったことがあって、ニット帽に切り替えました。 下半身の寒さ対策は? 香菜:①発熱性保温肌着+②ゆるめのチノパンが定番スタイルです。上半身と比較するとかなり軽装ですね。下半身は動くからあまり重ねられないというのもあるし、そもそも動くからこそ、上半身よりは軽装でも大丈夫な気がします。 有希:私はお風呂介助がないときは、①腹巻きつきの毛糸のパンツ+②裏起毛のレギンス+③裾を絞れるタイプのズボン、と重ねます。お風呂介助があるときは①腹巻きつきの毛糸のパンツ+②裏起毛のチノパンだけ。雨の日はズボンの上から防水スプレーを吹きかけて、水のしみ込みを防ぐための対策も欠かせないです。 香菜:私は、雨の日は着脱が楽な防水性のアウトドア用のパンツを重ね着しています。 足首&足の寒さ対策は? 有希:①裏起毛の発熱素材の靴下+②内側がもこもこしているくるぶし丈の雪山用ブーツ、が定番スタイルです。 香菜:もこもこ重要ですよね。私は、①ふくらはぎくらいまでの長さの分厚い靴下+②足首くらいまでの長さの防寒シューズ、が定番です。ズボンの下に穿いている発熱性保温肌着がくるぶしくらいまで長さがあるから、肌着の上から靴下を重ねてます。 最重要アイテムは『一番下に着る肌着』 香菜:お話していて、防寒のために『どんな洋服やアイテムを選ぶか』はもちろん大事なんだけど、結果、一番重要なのは『一番下に着る肌着』かもしれないって思いました。発熱性保温肌着って肌に密着するから、体が守られてる感じがするのも良いのかも。 有希:うん、どれだけ肌を外気から守れるかで勝負が決まる。看護の仕事は体が資本だから、冷え対策は本当に大切だと改めて感じました。良い看護を提供するためにも、まず自分を守ることが大事ですよね。 記事編集:YOSCA医療・ヘルスケア

特集
2021年12月14日
2021年12月14日

第6回 ハラスメント、育児・介護と仕事の両立支援編/[その2]パワハラとアンガー・マネジメント 自分が加害者にならないために

2019年に改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)が成立し、2020年6月から大企業で施行されました。そして、2022年4月からは中小企業においても本格施行される予定です。前回はセクハラについて扱いましたが、今回扱うパワハラについても、今後は本腰を入れた対応が求められます。本サイトの読者の方々には事業所の管理者層の方も多いかと思いますが、管理者の方が特に注意しなければならないのは「自分がパワハラの加害者になっていないか?」ということです。 ここでは、何がパワハラになるのかをご説明し、さらに「アンガー・マネジメント」という手法をご紹介します。 実は私は、事業所のスタッフの中でどうしても苦手な人がいます。後輩なのですが、私の方針に口出ししてくるんです。それがまた、いちいち正しい指摘なので腹が立ってしまって……苦手意識があるので、その後輩にはできるだけ仕事を与えないようにして、口出しをされないようにしたいなと思っています。これは、許されることでしょうか?いいえ、パワハラに当たる可能性があるのでやめておいたほうがよいでしょう。 パワハラの定義 法的には、パワハラとは、以下の3つの要件をすべて満たすものを指します。 【労働施策総合推進法30条の2第1項】①職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより③その雇用する労働者の就業環境が害されるもの ①は、上司が部下に嫌がらせをする場合が典型です。ただし上司よりも部下のほうが専門知識をもっているような場合に、部下が上司に業務上の嫌がらせをすればパワハラになることもあります。 ②は重要です。つまり、業務上の指導が何でもかんでも「パワハラだ」と言われてしまうと、上司は部下に何も注意ができなくなってしまいます。そのため、「業務上必要かつ相当な範囲」の指導は許されます。逆に、そういった範囲を超えた「行き過ぎた指導」がパワハラになるということです。熱心に指導していたつもりが実はパワハラになっていた……なんてことにならないように注意しましょう。 ③は、「それをされたら普通の人だったら嫌だと思うよね」といえるかどうかで判断します。特別に傷つきやすい人が、普通の指導で傷ついたとしても、それはパワハラとはいえません。 パワハラにも6つの種類がある 前回の記事で書きましたように、厚生労働省はセクハラについて詳細な指針を出していますが、パワハラについても詳細な指針を出しています。事業所におけるパワハラ対応は、基本的にこの指針に沿って行うことが求められます。 この指針では、どういった行為がパワハラに当たるのかについて6つの分類をしています。これはとても重要な分類なので、ぜひ覚えておいてください。 【厚生労働省のパワハラ6分類】(1)身体的な攻撃(暴行・傷害)(2)精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)(3)人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)(4)過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)(5)過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)(6)個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)(詳細は以下のURLの3ページ目以降を参照してください。厚生労働省『パワハラ防止指針』https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000605661.pdf) ご質問のケースを6つの分類に当てはめてみよう ご質問のケースでは、「後輩にはできるだけ仕事を与えないようにしたい」ということですが、その理由が「後輩に正しい指摘をされて腹が立つから」というのでは、上司として合理的な理由があるとはいえないでしょう。 そのため、6つの分類の「(5)過小な要求」に該当するおそれが高いといえます。上司であるならば、部下に対して自らの非を認められるだけの器量を持ちたいものです。 なお、パワハラについて事業所が行うべきことは、前回の記事に書きました10個の対処と基本的に同じですので、そちらをご覧ください。 コラム 「アンガー・マネジメント」を学ぼう! 管理職の中には、「最近の自分は、どうも怒りっぽくなったなあ。どうしてこんなに怒ってしまうんだろう……昔はこうじゃなかったのに……」と悩んでいる人もいるかもしれません。 そのような人は、ぜひ、「アンガー・マネジメント」を学んでみてください。これは「自らの怒りをコントロールする手法」をいいます。 「アンガー・マネジメント」で検索すれば多くの書籍が出てきますので、詳細はそちらに譲るとして、ここでは大枠をご説明します。 人は、仕事に慣れて一通りのことができるようになり、自信がついてくると、知らず知らずのうちに、自分の中に「自分だけの常識」を作ってしまいます。「どうしてこれができないの!」「この仕事はこうやって進めるべきでしょ!」「そんなの当たり前でしょ!」「そんなの常識でしょ!」といったことをよく言ってしまう人はいませんか? この「どうして」「べき」「当たり前」「常識」といった言葉を使ってしまう人は、要注意です。自分の中に「自分だけの常識」を作ってしまっている可能性があるからです。 そして人は、この「自分だけの常識」に反することをされると怒りがわいてくると言われています。例えば、あなたが「朝は始業時間の30分前には職場に来ているべきだ」という「常識」を持っている場合には、後輩が始業時間の5分前に来ると怒りがわいてくるでしょう。 ポイントは、このような常識は経験を積まないと作られないということです。つまり、パワハラとは、経験を積んだ職業人にありがちな典型的な落とし穴・症状と言えるのです。 かつてのタバコの煙のように、パワハラ防止法が施行されるこれからの社会においては、「怒りの感情」は、社会から煙たがられ、疎まれる存在になるでしょう。その意味で、アンガー・マネジメントは、今後、必須のビジネス・スキルになると思います。 アンガー・マネジメントの出発点は、「自分だけの常識」が何かを知ることから始まります。ぜひ、一度しっかりと内省し、ご自身の心の声に耳を傾けてみてください。 ・どういった行為がパワハラに当たるのかは厚生労働省のパワハラ6分類を確認しましょう。・自分がパワハラをしないために「アンガー・マネジメント」を学びましょう。 ** 前田 哲兵 弁護士(前田・鵜之沢法律事務所) ●プロフィール医療・介護分野の案件を多く手掛け、『業種別ビジネス契約書作成マニュアル』(共著)で、医療・ヘルスケア・介護分野を担当。現在、認定看護師教育課程(医療倫理)・認定看護管理者教育課程(人事労務管理)講師、朝日新聞「論座」執筆担当、板橋区いじめ問題専門委員会委員、登録政治資金監査人、日本プロ野球選手会公認選手代理人などを務める。所属する法律事務所のホームページはこちらhttps://mulaw.jp/ 記事編集:株式会社照林社

特集
2021年12月14日
2021年12月14日

多発性硬化症

多発性硬化症とは、神経軸索を覆うカバーが壊れることによる、神経障害のさまざまな症状が生じる自己免疫疾患です。寛解と再発を繰り返すことが特徴です。 病態 多発性硬化症(たはつせいこうかしょう:MS)は、脱髄による神経傷害を繰り返す疾患です。 神経線維は、神経軸索という電線コードのような部分が、髄鞘というカバーに覆われています。髄鞘が傷害され内部の神経軸索がむき出しになることを脱髄といい、脱髄が起こると、神経の信号伝達が阻害されます。視力障害や運動麻痺、感覚障害など、伝達が阻害された神経部位に起因する症状としてあらわれます。 多発性硬化症では、脱髄が多発し、寛解と再発を繰り返します。 髄鞘は再生するため、しばらくすると症状は落ち着きますが、再発と寛解を繰り返します。病型により、機能障害が徐々に、または段階的に進行していく場合があります。 多発性硬化症は、免疫システムが髄鞘を誤って攻撃してしまう自己免疫疾患の一種と考えられています。欧米の白人で発症頻度が高く、人種差などの遺伝的要因と、血清ビタミンD濃度、EBウイルス感染、喫煙などの環境的要因の関与が指摘されています。 疫学 日本での多発性硬化症の推定有病率は10万人あたり8~9人程度で、約1.2万人の患者がいると考えられています。 若年成人の発症が多く、平均発症年齢は30歳前後です。発症のピークは20歳代で、15歳以前の小児でもみられますが、5歳未満ではまれです。60歳以上の発症も少ないのですが、再発例はあります。 女性に多く、有病率は男性の2~3倍におよびます。 2019年度末時点での、「多発性硬化症/視神経脊髄炎」の受給者証所持者数は約2万人です。 症状・予後 症状は、神経のどこが障害されたかによって異なります。 主な症状には視力障害、複視(物が二重に見える)、小脳失調(手の震え、歩行のふらつきなど)、四肢の麻痺やしびれ、四肢感覚障害・運動障害、膀胱直腸障害(排尿・排便障害)のほか、脊髄障害の回復期にみられる四肢の突然のしびれや突っ張り(有痛性強直性痙攣)などがあります。 欧米では、注意散漫、集中力低下などの認知機能障害も初期から報告されています。 髄鞘の再生により症状は治まり寛解しますが、再発を繰り返します。頻度は人によって異なり、数年に1回の人もいれば、年に3~4回の人もいます。また、再発・寛解を繰り返してもほとんど障害が残らない人もいる反面、少しずつ後遺症が出てくる例や、寝たきりになるなど突然ADLが著しく低下する例などもあります。 多発性硬化症に特徴的な現象として、ウートフ徴候があります。ウートフ徴候は、一過性の症状で、視力低下や筋力低下、感覚障害、認知機能障害などがよくみられます。体温の上昇に伴って症状の出現や悪化がみられ、体温が下がると治まる特徴があります。 ウートフ徴候は、日本では多発性硬化症患者の4~5割で起こるという報告もあります。寛解期にも起こるため、症状が重く出やすい人は、夏は長時間屋外で過ごさない、冬の室内の暖房は適切な温度にする、運動時は適度に休憩をはさむ、熱いお風呂に長時間入ることは避けるなど、日常生活でも体温が高くなりすぎないように注意する必要があります。 治療・管理など 急性期には、ステロイド大量点滴静注療法(パルス療法)や、自己抗体、サイトカインなどを除去して免疫バランスを取り戻す血液浄化療法が行われます。また、それぞれの症状への対症療法薬も用いられます。リハビリテーションを実施することもあります。 根治療法はまだありませんが、難病のなかではパーキンソン病に次いで治療の進歩がある疾病であり、再発予防薬も認可されています。 多発性硬化症と診断された後は、早期に専門診療・治療を検討し、再発予防薬を用いることが勧められます。また、過労やストレス、感染症は再発の危険因子となるため、日ごろの体調管理も大切です。 リハビリのポイント ●身体障害に応じたリハビリを実施し、必要時は補助具の導入を提案する●急性期、回復期、安定期で、介入目標をそれぞれ適切に設定する●急性期では積極的な運動療法はしない。麻痺などで身体を動かせない場合は、関節運動や良肢位保持、体位変換などを行う●回復期には、障害に応じて軽度のリハビリを施行する●安定期には機能障害などの程度に応じて、軽度から中等度のリハビリを行い、体力やADL向上を目指す●ウートフ徴候予防のため、運動強度や運動量、運動環境(温度、湿度)などを調整する 看護の観察ポイント ●日常生活に支障をきたしていないか●身体機能や認知機能の変化●過労やストレスなどがたまっていないか●適切な室温管理や夏場の暑さ対策などができているか●水分や食事が十分摂取できているか(熱中症の予防)●体温が下がった後もウートフ徴候が長く続いていないか(なかなか治らない場合再発の疑いもある)●妊娠・出産を考えている患者さんの場合、専門医から適切な指導を受けられているか●妊娠期~授乳期の薬剤使用について、医師・薬剤師から適切な指導を受けられているか ** 監修:あおぞら診療所院長 川越正平【略歴】東京医科歯科大学医学部卒業。虎の門病院内科レジデント前期・後期研修終了後、同院血液科医員。1999年、医師3名によるグループ診療の形態で、千葉県松戸市にあおぞら診療所を開設。現在、あおぞら診療所院長/日本在宅医療連合学会副代表理事。 記事編集:株式会社メディカ出版 【参考】 〇厚生労働省『難病・小児慢性特定疾病.令和元年度衛生行政報告例』2021-03-01.〇難病情報センター『病気の解説(一般利用者向け)』『多発性硬化症/視神経脊髄炎(指定難病13)』https://www.nanbyou.or.jp/entry/3806〇難病情報センター『診断・治療指針(医療従事者向け)』『多発性硬化症/視神経脊髄炎(指定難病13)』https://www.nanbyou.or.jp/entry/3807〇「多発性硬化症・視神経脊髄炎診療ガイドライン」作成委員会編『多発性硬化症・視神経脊髄炎診療ガイドライン2017』東京,医学書院,2017,352p.

特集
2021年12月14日
2021年12月14日

年末年始【訪問看護のシフト調整】ベテラン管理者に聞くシフト調整の基本

1年のなかで、最も訪問看護のシフト管理に気をつかう年末年始。悩ましい問題だけど誰にも相談できない……という方も多いのではないでしょうか。今回はベテランの管理者さん2名に年末年始の訪問看護におけるシフト調整の基本についてうかがいました。 目次▶ 「年末年始のシフト調整に協力的な看護師」に甘えてはいけない▶ 常勤看護師4名、平均年齢35歳のステーションのケース▶ 常勤看護師20名、平均年齢25歳のステーションのケース▶ これが年末年始、訪問看護シフト調整の大基本! 日頃からの意識統一が大事 プロフィール/ E戸さん(シフト管理歴10年目)病棟や複数の訪問看護ステーションでの勤務を経て2018年に起業。訪問看護ステーション経営者として看護師の教育を行いながら、自身も訪問看護師として活躍。管理者として勤務していた時期を含め、今年でシフト管理歴10年目のベテラン看護師さん。 S山さん(シフト管理歴4年目)急性期病棟で看護師として活躍したのち訪問看護へ。新規訪問看護ステーションの立ち上げから携わり、シフト管理歴は今年で4年目。看護師3名体制から始まり、現在は合計20名のシフトを管理している。20代看護師の育成にも尽力。 「年末年始のシフト調整に協力的な看護師」に甘えてはいけない S山:僕は、こういう看護師が年末年始のシフト調整に協力的でありがたいなと感じています。 【シフト調整に協力的な看護師】・独身で土日休みを希望していない看護師・家族に医療関係者がいる看護師・利用者目線が高い看護師 E戸:僕のところも同じです。協力を得やすい看護師はいますが、だからこそ、その方だけに負担がいかないようにするのが重要ですよね。 S山:少しずらした時期で有給を取得してもらったり、年末年始に出勤してもらう場合は『年末年始ならでは』の少し楽しい勤務をしてもらったり、という配慮も必要だと思っています。 E戸:協力的だからといって、毎年同じ方ばかりにお願いするのも避けたい。僕を含め、休んだ方は忘れてしまうけど、出勤した方は絶対に覚えていますから(笑)。特定の看護師がシフトの不満をためこんでしまうことがないよう、手当や休暇の部分でしっかりサポートします。 E戸さんの訪問看護のシフト調整テクニック 常勤看護師4名、平均年齢35歳のステーションのケース E戸:僕なりの年末年始の訪問看護におけるシフト調整テクニックをご紹介します。配偶者や子どもがいる看護師も在籍していますが、全員がオンコール対応できる体制を作っています。 【シフト管理を行っている訪問看護ステーションの基本情報】・24時間365日対応・看護師の人数:4人(常勤)+1人(非常勤)・所属看護師の年齢:31歳~48歳(平均年齢:35歳)・固定給制度 【年末年始のシフト調整難易度】いつもとても苦労する 【年末年始手当】5,000円/1件あたり ※12月31日~1月3日の期間 【ここがポイント】Point1 年末年始の勤務記録を見える化2019年、2020年、2021年……と、それぞれ年末年始に勤務した看護師を記録し、全員がひと目でわかるようにする。勤務記録をもとに訪問看護のシフト調整を行い、毎年同じ人が年末年始勤務を担当することがないようにしている。 Point2 全員でホワイトボードに出勤可能日を書き出す年末年始のシフトを決めるときは、全員参加でホワイトボードを活用。過去の年末年始の出勤履歴を見返しながら、自分が出勤できる日を自主的に書き込んでもらう。 Point3 大晦日と正月は訪問数を減らせるよう事前に調整年末年始の看護負担が大きくならないよう、利用者さんとも事前に連携。大晦日と正月は訪問数を減らせるように早めに調整を行う。 S山さんの訪問看護のシフト調整テクニック 常勤看護師20名、平均年齢25歳のステーションのケース S山:次は僕の年末年始の訪問看護におけるシフト調整テクニックをご紹介します。うちは20代の独身看護師が多く在籍していて、年末年始はどうしても休みたい! という方も少ないので、比較的シフト調整はスムーズだと思います。 【シフト管理を行っている訪問看護ステーションの基本情報】・24時間365日対応・看護師の人数:20人(常勤/4拠点合計)  ※訪問看護ステーション4拠点分のシフトをまとめて管理   ステーション間での看護師の行き来も頻繁にある・所属看護師の年齢:22歳~35歳(平均年齢:25歳)・固定給制度 【年末年始手当】1,000円/1件あたり ※12月31日~1月3日の期間 【年末年始のシフト調整難易度】普段と変わらない 【ここがポイント】Point1 11月初旬から看護師に年末年始休みの希望表を提出してもらう早め早めの調整が重要。全員に希望表を提出してもらい、11月初旬から調整を始めることで、不平等感のない訪問看護シフトに近づけていく。Point2 11月初旬から利用者にも希望を確認する利用者の方の要望に応じて必要な看護師の数を設定。できるだけ多くの看護師が休みをとれるための根回しも欠かさない。 Point3 看護師に出勤をお願いするときのポイントは『平等性』と『特別感』本人の希望通りのシフトを組むことが難しく年末年始の出勤をお願いするときは、『平等性』という視点から「なぜあなたに頼むのか」を伝える。そのとき「○○さんだからお願いしたい」と特別感を出して依頼すると承諾してもらいやすい。 これが年末年始、シフト調整の大基本! 日頃からの意識統一が大事 E戸:年末年始やゴールデンウイークなどの訪問看護におけるシフト調整はたしかに難しいですが、大前提として大事なのはこれだと思っています。 重要Point 利用者さんと看護師を固定化しないためのルール決め E戸:1人の利用者さんを1人の固定の看護師が看る体制をつくってしまうと、ゴールデンウイークや年末年始に看護師が休みにくくなりますから。だからそれを防ぐために、利用者の方との契約段階から「看護師の指名はできない」ことを伝えて理解してもらっています。 S山:そうですよね。利用者さんの気持ちをくんでどうにかしたい気持ちもあるんですけど、看護師を守らないといけない立場だからバランスが難しい。それに、担当制にすると自己犠牲でがんばりすぎる看護師が出てきてしまうんですよね。 E戸:看護師側も「私じゃなきゃこの利用者さんは看られない」なんて考えるようになってしまう人も、少なくないですからね。でもそれだと健全な関係を保てなくなることも多い。だから利用者さんに対してもだし、看護師に対しても『みんなで看る』ことを徹底するのが重要ですね。 記事編集:YOSCA医療・ヘルスケア

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2021年12月14日
2021年12月14日

【セミナーレポート】24時間365日体制の整備、訪問看護の機能拡大/訪問看護のこれから<前編>

2021年9月30日(木)、NsPace(ナースペース)主催で行った「訪問看護のこれから」についてのパネルディスカッションの様子を2回に分けてお伝えします。 ※全90分間のパネルディスカッションのなかから一部ピックアップしてお届けします。 【パネラー(3名)】●落合実さん「ウィル訪問看護ステーション」を運営するウィル株式会社 取締役。2019年からは「ウィル訪問看護ステーション福岡」管理者・緩和ケア認定看護師を兼任。 ●新屋将之 さん精神科病棟にて9年間勤務。現在は、精神科訪問看護「コモレビナーシングステーション」の業務委託やダンサーとして働いている。 ●関口優樹さん看護師として新卒で「ウィル訪問看護ステーション」へ就職し2年間勤務。現在は訪問看護分野での執筆活動を行っている。 【パネルディスカッションテーマ】1 24時間365日体制の整備や規模拡大について2 訪問看護の機能拡大とは?3 『看護の質』の評価について4 地域包括ケアへの対応について 1 24時間365日体制の整備や規模拡大について 落合:まずは「24時間365日体制の整備や、訪問看護ステーションの規模拡大を推進するうえでの問題は?」というテーマから始めたいと思います。お二人はご経験をふまえて、いかがですか? 新屋:僕が勤務していた訪問看護ステーションでは、「夜の対応が必要なときはどう対応するか」について、事前にスタッフと利用者との間で話し合っていたので、頻繁な電話は多くはなかったと思います。 関口:小規模の訪問看護ステーションでは、24時間365日体制をとるといっても実質、管理者さんだけがオンコール携帯をもっているところも多いって聞きます。まず人の確保が難しいのかなと思います。 落合:人の確保は多くの訪問看護ステーションが抱える課題ですね。24時間の対応体制加算は、多くの事業所が算定しているんだろうと思います。ただ、実質24時間365日体制で運営しているのかっていうと、実態は違うところも多いんじゃないかなと思うんですけど、どうなんでしょう。どうしたら無理なくやれるんでしょうね? 関口:訪問看護師として仕事をしていたときオンコール担当をしたことがあるんですけど、コール携帯を持ってる日は常にドキドキしてました。オンコールが来ても起きられないんじゃないかと思うと心配で眠れなくて(笑)。だから毎日持っている人はすごいと思うし、心理的なストレスも大きいだろうなと。 落合:最近よく感じるのは、体力よりも心の方が大事だなという点ですね。僕が運営してる「ウィル訪問看護ステーション福岡」では週に1回はオンコール担当が回ってくるシフトなんですけど、ときには夜間に2回呼ばれることもあります。前提として防げるオンコールであれば防ぐべきだと思っているんですが、防ぎようがないこともたまにあって。もう体力的にしんどいことはわかっていつつ、「自分がオンコール対応をしているから、利用者さんは今自宅で過ごせている」と思えるかどうかというのが大事だと思っています。ひいては、ステーション内でそういう組織風土を作れるかというのがとても大きい。 新屋:大変な仕事ほど、看護師自身が、意味のあることをしていると思えるかどうかというのは大事ですよね。 落合:一方で、僕たちが提供する看護の質が上がれば、実はオンコール対応で呼ばれないのかもしれないという思いもあります。オンコール対応が必要な患者さんを看れたことは尊いことだね、でも質も高めていかないといけないねと、メンバーとはよく話しますね。 新屋:もし、そういう風に思えない文化や雰囲気ができてしまいそうになったら? 落合:忙しくてということであれば、患者さんの人数を少し減らすことも検討するかもしれないですね。患者さんのケアは大事ですが、訪問看護師が気持ちよく患者さんを看れることも大事なので。また、24時間365日体制での訪問看護に対応できるだけの人の確保や心身の準備を整えようとしつつも、難しいのであれば、稼働実態としては24時間365日体制ではない運営方法を模索することも大切なんじゃないかと考えています。 2 訪問看護の機能拡大とは? 落合:「機能強化型看護」「小規模多機能」ってこれから増えるんですかね? 「看護小規模多機能型居宅介護(以降かんたき)」すごくステキでいいイメージはあるけど、どうなんでしょう。 関口:以前「かんたき」をやってる施設の取材をしたことがあります。利用者さんからすれば、なにもかも任せられるから安心だろうなと思いましたね。ただ、なにもかも施設内でやるから、仮に利用者さんとケアマネさんの相性が悪いとかなった場合は、選択肢がちょっと狭まるのではとも感じました。 落合:囲い込みが起こるんじゃないか、それは利用者利益なのか、という問題ですね。僕は「機能強化型看護」は、これから増えると思っているし、増えないといけないと思っています。小規模な事業所が多いですが、機能強化型くらいに規模化すると利用者利益を提供しやすく、またスタッフも働きやすくなる環境がより整うと感じています。 新屋:落合さんのところも機能拡大していく方針なんですか? 落合:規模は拡大したいなと思いますが、多機能化するとマネジメントロスしそうという危惧もあります。僕だけですかね? 記事編集:YOSCA医療・ヘルスケア

特集
2021年12月14日
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年末年始【訪問看護のシフト調整】素朴な疑問Q&A ~誰にお願いするのが正解?~

今年初めて年末年始の訪問看護のシフト調整をする、今の訪問看護ステーションではどうもシフト調整がうまくいかない……そんな方のために、ベテラン管理者さん2名に素朴な疑問をぶつけてみました。今からすぐに取り入れられる訪問看護のシフト調整テクニックも満載です。 目次▶ Q1 大晦日と元旦の勤務は、誰にお願いするのが正解ですか?▶ Q2 勤務をした看護師に、どんなお礼をしたらいいですか?▶ Q3 一部の看護師の発言権が強く、シフト調整が難航しがちで困っています▶ Q4 シフトの正解がわからない。誰にも頼れない場合はどうすればいい? プロフィール/ E戸さん(シフト管理歴10年目)病棟や複数の訪問看護ステーションでの勤務を経て2018年に起業。訪問看護ステーション経営者として看護師の教育を行いながら、自身も訪問看護師として活躍。管理者として勤務していた時期を含め、今年でシフト管理歴10年目のベテラン看護師さん。 S山さん(シフト管理歴4年目)急性期病棟で看護師として活躍したのち訪問看護へ。新規訪問看護ステーションの立ち上げから携わり、シフト管理歴は今年で4年目。看護師3名体制から始まり、現在は合計20名のシフトを管理している。20代看護師の育成にも尽力。 Q1 大晦日と元旦の勤務は、誰にお願いするのが正解ですか? E戸:特定の方や、お願いしやすい方に頼ろうとするのはあまり良くないかもしれませんね。できるだけ『公平性』を保つのが大事だと思います。最終的に、訪問看護のシフト調整に協力的な方にお願いすることになった場合でも、フォローをしっかりするのが重要です。 「シフト調整の基本」記事で詳細をCHECK≫ S山:うちは基本的に看護師全員で分担します。まず訪問看護のシフト調整は採用面接の段階から始まっていると思っていて。面接のときに「24時間365日対応」していることとその意味をきちんと伝えて、年末年始も勤務になることがある前提で看護師を採用しています。 Q2 大晦日&元旦勤務をした看護師に、どんなお礼をしたらいいですか? S山:年末年始手当を支給するのは前提として、部下にあたる看護師に年賀状を手渡ししたら喜んでもらえましたね。 E戸:年末年始手当に加えて、お正月らしい小さなおせち料理をプレゼントするようにしています。本当に小さなものなんですが、人間気持ちだと思うので。 S山:『出勤そのものを楽しむ』ことも大事じゃないですか? 年末年始の勤務=みんなが休んでるときに自分だけツライ、とはならないようにしたいと考えていて。みんなで年末年始の雰囲気を一緒に楽しむようにしています。 E戸:すごくステキな取り組みですね。具体的にはどんなことをしているんですか? S山:出勤予定の看護師に「(勤務後に)予定がなかったらみんなで一緒にごはん食べに行かない?」「一緒に年越ししない?」と声をかけて、勤務中もワイワイと終業後の計画を立てながら過ごすんです。訪問が落ち着いている年末年始ならではのコミュニケーションですね。年末年始の特別感をみんなで楽しもうよという提案に賛同してくれる看護師も多くて。若い看護師が多いからというのもあるかもしれないんですが。 E戸:いいですね。僕もまぜてもらいたい。全国で年末年始対応してる訪問看護師みんなオンラインでつなげて、一緒に年越ししましょう! みたいなことができたら楽しそうです。 S山:それは楽しそうですね! Q3 うちは一部の看護師の発言権が強く、シフト調整が難航しがちで困っています S山:あー、ありますね。そういう方が「自分は年末年始休むんだ! みんな休みにしたら良いんだ!」とおっしゃるようなパターンですかね。困りますね。 E戸:僕も何度もお会いしたことがあります。病棟でも訪問看護ステーションでも、一定数いらっしゃいますよね。 S山:そういう方って巻き込めたらすごく心強いと思うんですよ。味方になってもらうには、やっぱり日頃からの信頼関係構築が大事。小さなことでも報連相、日々の声かけ、挨拶。自分に協力してもらえるような信頼関係構築に向けて自ら動く……というような。ただ、そこに至れないまま年末年始の訪問看護のシフト調整となってしまったら……困るなぁ(苦笑)。 E戸:発言権が強くても、主義主張に根拠があれば基本的に問題ないんです。ただ、そういう方のなかには、会社の方針や本来看護で行うべき内容を自分の都合で変えようという感覚になる人が少なくない。それは利用者さんにも良くないし、組織風土としてもよろしくない。面談を繰り返しても理解してもらえず、やむなく退職いただいたことも過去にあります。 S山:僕も同じ経験があります。ステーションの理念にのっとってお話をして、それでもわかり合えない場合はしかたのないことだと思います。 Q4 シフトの正解がわからない。誰にも頼れない場合はどうすればいい? E戸:みんなにとって正解の訪問看護のシフトなんてないですよ。色々悩んでも結論は絶対でない。ひとりで気負わずに、みんなで考えればいいんだと思います。『自分でなんとかしなくては』っていうんじゃなく『みんなで考えましょう』って、看護師に言ってしまうのも手だと思いますよ。 S山:僕も最初、訪問看護のシフト調整にすごく悩んでいたんですが、今になって振り返れば、なんであのとき人に相談しなかったんだろうと思います。訪問看護ステーション内に頼れる人がいなくても「訪問看護ステーション連絡会」や「教育ステーション」など、地域ごとに訪問看護の悩み相談ができる窓口もあるし、まず誰かに頼ってみてください。ステーション内の看護師に自分が悩んでいることを打ち明けるのも良いと思います。そうすれば、自分ごと化して一緒に悩んでくれる人もでてきます。そういう協力者をどれだけ見つけられるかが大事なんじゃないでしょうか。 E戸:それでも訪問看護のシフトの空きができたら「もうしかたない。自分が出勤しよう」と割り切る覚悟だけしておけば、気持ちがラクになるんじゃないでしょうか。ときには、背中を見せてついてきてもらうことも必要です。 S山:背中を見せてもついてこないタイプの看護師には、懇切丁寧に説明して成長を促すしかないですね。このあたりは看護師教育の話になるのでまた今度にしましょうか。 記事編集:YOSCA医療・ヘルスケア

特集
2021年12月21日
2021年12月21日

第6回 ハラスメント、育児・介護と仕事の両立支援編/[その3]育休の分割取得も可能に、法改正でここまで変わる育児と仕事の両立支援制度

妊娠や育児と仕事を両立するためのさまざまな制度が法律で定められています。子育てをしながら訪問看護師として働く看護職も増えてきています。2022年4月からは、育児休業制度などの周知や意向確認も義務づけられますので、事業所は妊娠や育児と仕事の両立支援制度を整備し、活用できるように準備していきましょう。 先日、スタッフから「妊娠した」との報告を受けました。出産後も引き続き、この事業所で働きたいと話してくれています。妊娠中だけでなく、産後は子育てしながら仕事ができるように、職場としてしっかりサポートしたいと思っています。どういった支援を行えばよいでしょうか。 短時間勤務制度や所定外労働の制限や育児休業制度など、さまざまな育児と仕事の両立支援制度が定められています。さらに、2021年6月に育児・介護休業法が改正され、一層の拡充が進んでいます。改正ポイントもふまえたうえで、職場の制度を見直し、整備していくことが大切です。 妊娠や育児と仕事の両立支援のための措置・制度 まずは、労働基準法や育児・介護休業法などの法律で定められている妊娠や育児と仕事の両立支援制度について確認していきましょう。表1~表3をご覧ください。 表1 <妊娠~産前・産後休業期間>において法律で定められている両立支援のための措置・制度の一覧 ※産後6週間を経過後に本人が請求し、医師が認めた場合は就業することができます。 厚生労働省『育児・介護休業法のあらまし』を参考に作成https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000355354.pdf 表2 <育児休業期間>において法律で定められている両立支援のための措置・制度の一覧 ※男性の育児休業取得促進として、以下のような法制度が定められています。・夫婦で育児休業を取得すると、1歳2か月まで休業できる(制度名:パパ・ママ育休プラス)・妻の産休中に夫が休業した場合、夫は2度目も取得できる。・配偶者が専業主婦(夫)でも休業できる。 厚生労働省『育児・介護休業法のあらまし』を参考に作成https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000355354.pdf 表3 <職場復帰後>において法律で定められている両立支援のための措置・制度の一覧 厚生労働省『育児・介護休業法のあらまし』を参考に作成https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000355354.pdf 育児・介護休業法、ここが変わります! 2021年6月に育児・介護休業法が改正され、2022年4月からは育児休業を取得しやすい雇用環境の整備、スタッフへの個別の周知やスタッフの意向確認の措置が義務づけられます。 また、2022年10月からは「産後パパ育休」(出生時育児休業)の創設、育児休業の分割取得が可能となり、男女問わず育児と仕事の両立支援制度が手厚くなります。産後パパ育休とは、育児休業とは別に、父親が子どもの誕生直後8週間以内に最大4週間までの休業を2回に分けて取得することができる制度です。 では、2022年4月からどのようなことが義務づけられるのか、具体的に見ていきましょう。 ●育児休業を取得しやすい雇用環境の整備 育児休業と産後パパ育休の申し出が円滑に行われるようにするため、事業主は以下のいずれかの措置を講じなければなりません。 ①育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施②育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備等(相談窓口設置)③自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供④自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知厚生労働省リーフレット『育児・介護休業法 改正ポイントのご案内』より引用https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000789715.pdf  なお、①~④については複数の措置を講じることが望ましいとされています。 ●妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置 本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た労働者に対して、事業主は育児休業制度等に関する以下の事項の周知と休業の取得意向の確認を、個別に行わなければなりません。周知や意向を確認する方法も示され、面談、書面等での情報提供が挙げられています。 厚生労働省リーフレット『育児・介護休業法 改正ポイントのご案内』より引用https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000789715.pdf  これらの新しいしくみを整えて、スタッフの育児と仕事の両立を後押しすることが事業所に求められています。 ・事業所には、妊娠や育児と仕事の両立のためのさまざまな制度を整備し、運用する義務があります。・2022年4月からは育児休業を取得しやすい雇用環境の整備、スタッフへの個別の周知や意向確認の措置が義務づけられます。 妊娠や育児と仕事の両立を支援できる制度を整備したいのですが、どのように進めればよいのかわかりません。活用できる助成金制度もあるのでしょうか?事業所の制度を整備・促進するため、国や自治体でさまざまな支援活動が準備されています。専門家に相談することもできます。活用できる助成金制度もあるので、積極的に情報収集してください。 「仕事と家庭の両立支援プランナー」を活用しよう どのように制度を整備し、運用したらよいのか悩まれている管理者の方もいらっしゃるかと思います。そのようなときにお勧めしたいのが、「仕事と家庭の両立支援プランナー」です。 国の事業として、中小企業における育児や仕事の両立支援・経営支援のノウハウを持つ専門家が、無料で訪問支援を行っており、厚生労働省のサイトでは、次のような事業主に申し込みを呼びかけています。 ●出産予定の従業員がいて、産休・育休の前後をしっかりフォローしたい●育休を取得する男性従業員がいるが、どのように制度を整えたらよいか分からない●現在は、育休予定の従業員はいないが、社として備えておきたい ぜひ「仕事と家庭の両立支援プランナー」の利用を検討しましょう。詳しくは以下をご参照ください。 ▼厚生労働省ホームページ「仕事と家庭の両立支援プランナー」の支援を希望する事業主の方へhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000080072.html 助成金制度を活用しよう 職業生活と家庭生活を両立できる「職場環境づくり」のための、雇用保険の『両立支援等助成金』があります。2021年度における育児と仕事の両立支援推進を目的とした『両立支援等助成金』には、以下のようなコースがあります。 ・出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金) 57万円~・育児休業等支援コース 28.5万円~ ▼厚生労働省ホームページ2021年度 両立支援等助成金のご案内https://www.mhlw.go.jp/content/000811565.pdf これ以外にも、自治体で準備している助成金・補助金制度などもありますので、情報収集されることをお勧めします。 助成金・補助金制度については、細かな要件や提出が必要な資料があります。また、毎年内容が変更されることが多いので、リーフレットなどをよく確認しましょう。『両立支援等助成金』などの雇用関係助成金に関する相談窓口は、事業所を管轄する労働局ハローワークが窓口です。 国の支援などを上手に活用して制度整備を行い、スタッフが妊娠・出産・育児を理由に離職することなく、継続して働ける支援を行っていきましょう。多様な働き方ができる職場は、多才なスタッフが力を発揮できる強い組織となります! 育児休業など事業所の制度を整備・促進するため、プランナーの派遣や助成金・補助金制度など、国や自治体でさまざまな支援活動が準備されています。それらを積極的に活用しましょう。 ** 加藤 明子 加藤看護師社労士事務所代表看護師・特定社会保険労務士・医療労務コンサルタント ●プロフィール看護師として医療機関に在職中に社会保険労務士の資格を取得。社労士法人での勤務や、日本看護協会での勤務を経て、現在は、加藤看護師社労士事務所を設立し、労務管理のサポートや執筆・研修を行っている。▼加藤看護師社労士事務所https://www.kato-nsr.com/ 記事編集:株式会社照林社

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2021年12月21日
2021年12月21日

【セミナーレポート】『看護の質』の評価、地域包括ケアへの対応/訪問看護のこれから<後編>

2021年9月30日(木)、NsPace(ナースペース)主催で行った「訪問看護のこれから」についてのパネルディスカッションの様子を2回に分けてお伝えします。※全90分間のパネルディスカッションのなかから一部ピックアップしてお届けします。 【パネラー(3名)】●落合実さん「ウィル訪問看護ステーション」の運営を行うウィル株式会社 取締役。2019年からは「ウィル訪問看護ステーション福岡」管理者・緩和ケア認定看護師を兼任。 ●新屋将之さん精神科病棟にて9年間勤務。現在は、精神科訪問看護「コモレビナーシングステーション」の業務委託やダンサーとして働いている。 ●関口優樹さん新卒で「ウィル訪問看護ステーション」へ就職し2年間勤務。現在は訪問看護分野での執筆活動を行っている。 【パネルディスカッションテーマ】1 24時間365日体制の整備や規模拡大について2 訪問看護の機能拡大とは?3 『看護の質』の評価について4 地域包括ケアへの対応について 3 『看護の質』の評価について 落合:「『看護の質』の評価ってどうやってしているの?」みんなが悩んでいることですよね。そしてこれは、誰が評価するのかによって大きく変わりますね。医師にとっての良い看護と、患者さんにとっての良い看護と、訪問看護ステーションの管理者が考える良い看護は一部異なることがあります。 新屋:僕のステーション(精神科訪問看護ステーション)では患者さん自身の言葉でどういう風に自立して行きたいか目標を決めてもらって、僕たちがそのサポートをしています。その目標に対してどれくらい達成できたかというのも自分で評価してもらうので、『看護の質』の評価とはちょっと違うかもしれない。 落合:僕は管理者なので「管理者による『看護の質の評価』」という視点からお話すると、「患者さんの満足度=いい看護」というのは違うと思っています。なぜかっていうと、医学的に正しいか正しくないかにかかわらず、患者さんの希望通りに看護すれば患者さんの満足度は上がるから。なので「看護の質の良し悪し=看護目標が達成されるかどうか」だと思っています。 新屋:そもそも『看護の質』ってなんなのかっていうのもある。 落合:病院看護に比べて必要な配慮が多角的だから難しいですよね。たとえば緩和ケアで考えてみても「痛みが減る=いい緩和ケア」なのかっていうと、その痛みを取るプロセスで家族を不安にさせたら、それは『訪問看護師としての看護の質』は高くないのかもしれないとも思う。 関口:患者さんひとりひとり、ご家族それぞれで求めることって違いますよね。 落合:そうそう。だから、「ウィル訪問看護ステーション」では、看護師みんながひとつのフォーマットで看護記録をつけるようにしていて、その情報をもとに定量的にケアの成果を評価する専用のシステムを導入しています。『看護の質の評価』は、なんらかのスケールにのせないと判断が難しいものだと思いますね。 4 地域包括ケアへの対応について 落合:地域包括ケアへの対応について「訪問看護の役割ってどんなこと?」という議題ですね。僕自身の経験としては、行政の計画相談の方にご挨拶に行ったときに「訪問看護の使い方がわからないんだよね」とか「訪問看護がどれだけ何をしてくれるかわからないんだよね」とか、言われることが多いなという印象があります。 新屋:僕も保健師さんに同じこと言われた経験ありますよ。 落合:もちろん、かちっと役割分担を決めることのメリットもあると思うけど、もっとゆるい関係でも良いんじゃないかなと思いますね。あとは、地域によっても訪問看護の役割に違いがある可能性もあるんじゃないのかな。 関口:ヘルパーステーションが少ない地域だと、看護師が担う役割は幅広くなりそうですよね。 落合:一方で、ここのところ訪問看護サービスの開設ブームもありますよね。もう国内の人口増加は止まってしまったから、新しい介護施設を作るよりも将来を見越して訪問系サービスを増やそうという動きになっている。 関口:訪問系サービスめちゃくちゃ増えましたよね。 落合:サービスを行う事業者が増えれば、それに比例してサービスの多様化が起こるのは当然だよね。対応範囲が大きくなると「それは本当に訪問看護師の仕事なのか?」とかおっしゃる方がたまにいるんですけど、僕としては「必要だったらやる」スタンスです。地域によって役割は変わると思う。ケアマネージャーのような仕事もすることもあれば、看護師にしかできない仕事に集中することもある。 新屋:看護師がやらなくてもいいけど看護師がやってもいい、という線引きの難しい仕事も多いですからね。 落合:そうですよね。ただ、行政の地域包括ケア担当の方から「医療的ケアがないと訪問看護が使えない」という説明を受けたこともあります。その結果、地域包括ケアと言いつつ、ケアが必要な人にケアが届かないことも起こってしまっている。なんとかして解決していかないといけない問題ですね。 記事編集:YOSCA医療・ヘルスケア

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